ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

25 / 43
罪への想い

 ■双葉side

 

 帝国兵を障害として判断、排除したあたしとハジメ。呆然とあたし達の行った殺戮の跡である血溜まりを眺めていると、シアが話しかけてくる。

 

「双葉さん……悲しいんですか?」

「……ん? いきなりどしたの?」

 

 兎人族の面々はドン引き……まぁ、魔物も人間族も敵ならば容赦はしないとハジメは最初から語ったし、あたしも‘殺人’に対しては忌避感もなかった。

 忌避感がないのはやはり奈落の底で‘殺さねば、こちらが殺される’……この経験からあたし達の価値観が大きく歪んだ。ユエは元々、ハジメ、香織、あたし以外はどうでも良いと言わんばかりの雰囲気だから。赤の他人に対しては別にどうだって良いと考えていると思う。

 

 ちなみに帝国兵らの遺体はユエが谷底に吹っ飛ばして落としたので残ったのがこの血溜まりだ。気分はまぁ、よくはない……かな。

 

「いえ……その……」

「気にしないで。あたしも試したいことがあったから、そのついでよ」

「試したいこと……?」

「まぁそれは進みながら教えてあげる。さ、行きましょ?」

 

 あたしは残された殺意を霧散させるべく、兎人族のみんなに微笑みかける。

 

「……双葉。……せめて血は払うべき」

「あ」

 

 ユエの言葉にあたしは自分の姿をやっと自覚する。なんかハジメまでドン引きしてるような……

 

「血みどろで微笑まれると逆にこえーよ」

「……近接職なんだから仕方ないじゃん!!」

 

 あたしはそう言ってその場に頽れるのだった。

 

 □noside

 

 岩陰に逃げ込み。簡易型シャワーのアーティファクトで血を洗い流そうとしている双葉に気遣ってか、しばしの休憩としてハジメ達はあの殺戮の場所を離れたところへ移動していた。

 

「……ハジメ。どうして止めたの?」

「ん?」

「……あの時、どうして私を止めたの?」

「ああ、そのことか」

 

 ユエが言っているのは帝国兵との戦いのことだ。あの時、魔法を使おうとしたユエを制止して、ハジメは双葉を暴れさせて、援護する事を選んだ。

 ユエが参加しようがしまいが、双葉は帝国兵を全滅させていただろう。しかし絶対とは言えないこともある。

 

「万が一、いや。億が一に双葉がやられることがあったら。困るだろ?」

「……え?」

「ユエはまぁ、‘絶対’って言葉にどれほどの価値があると思う?」

「……わからない」

「だろうな。わからない……「何が起こるか、わからない」んだよ。それこそ、双葉がドジって人質にでもなったらどうする?」

「……フォローすれば良い。私たちが……あ」

「そういうことだ。気づけて偉いぞ、ユエ」

 

 どんな人にも失敗は必ずある。故に、ハジメは一人でも二人でも動けるように考えた。負けるつもりなど、毛頭ないが。神の振る骰子が致命的失敗(ファンブル)を齎らす可能性はゼロではない。そのために、少々過保護かもしれないが。

 

 双葉に切り込ませて、ハジメが援護に回ったのである。結果はあの通りの蹂躙だったが、慎重に立ち回る方がいいに決まっているのであった。

 

「手数の多さは武器だ。トラップカードや速攻魔法の伏せカードも多い方が牽制になる」

「……なんの話?」

「あ、悪い。とある‘カードゲーム’のことだ……故郷に帰ったら教えてやるよ」

「……楽しみにしておく」

 

 ユエはそう言い残し、双葉の元に行く。直後に双葉が悲鳴をあげて、しばらくしてから岩陰からぐったりとして出てきたのを見て。小腹がすいたユエに血を吸われたのだとすぐにハジメは理解できた。

 

「ハジメ。気分はどう?」

「ん、問題ないぞ? 別に人殺しをして良心が痛むとかはないな」

「そっか。やっぱ、私たちの価値観って崩れちゃったね」

「初の人殺しだったわけだが、特に何も感じなかった。随分と変わったもんだよな……だからって殺人を楽しんでる訳じゃないさ。ここ(心臓)に嫌な気分はきっちりあるから、易々と人殺しなんざしないよ」

 

 香織が隣に座り。彼に聞く──その返答に彼女は安堵を覚え、胸を撫で下ろした。が、若干の不安は覚える言葉をハジメは続ける。

 

「まぁ、確かめたいことは確かめることが出来たから問題はないさ」

 

 彼の語った理由は‘実験’である。双葉への援護の際、彼女の負担軽減も兼ねて頭部を優先的に狙い撃っていた。しかしながら実は、鎧部分にも撃ち込んでいたりする。

 なぜそんな効率の悪い。致命傷程度になる様な部分を狙ったのかというと、‘魔導電磁方(レールガン)’を必要とするかどうかの実験ということだった。

 街中など、無関係な人が住まう場所では。レンガや石造りの構造物の耐久性を無視して弾丸が何処までも貫通してしまい、危なっかしくて使えない──「暴漢を木っ端微塵にするのは何の問題もないが、背後の民家を突き破って団欒中の家族を皆殺し!」なんてことに陥る可能性もゼロではない。

 よって、今回の結果は上々で。炸薬の量なども調整できるだろうとハジメは当たりをつけた。

 

 ──────

 

 双葉は血糊やら肉片やらを炎の魔力を操って、消し炭に。そして、防具と服一旦脱いで、簡易シャワーのアーティファクトが生み出す水を浴びていた。

 人を寄せ付けない結界を張っているため、誰も彼女の近くに来ることはないだろう。

 

「あーあ。やっぱ……覚悟はしてたけど、変質は起こってたかぁ」

 

 天を仰ぎ、しみじみと言葉を零しながら。身体に付いた水滴を風の魔力を身に纏い、吹き飛ばすと。服、防具も洗って同じ様に風の魔力で乾かし着込み直す。そして人払の結界を消滅させて、双葉はハジメたちの元へ歩き出す。

 その途中。ユエがやってきたが……

 

「……双葉……大丈夫?」

「ん? ユエ、大丈夫だけど……」

「……ウソ」

「ゔっ……嘘じゃないよ?」

「……素直にならないならお仕置き」

「いや、単純に血を吸いたいだ…… ア────ッ!?」

 

 ユエに襲われ、血を吸われた双葉はふらふらになりながらも歩こうとするが、そこにユエが肩を貸し、弱った分素直になる双葉の事を知っていたが故に血を吸ったと独白。そして、双葉に

 

「……人を殺して、なんとも無いなんて……言っちゃダメ」

「……いやー……たしかに思うところはあるよ。でも‘特に何も感じなかった’から、随分と変わっちゃつたなーとは」

「──双葉がつらいと、私も辛い。……辛いなら言うべき」

「……ごめんね、ユエ。ありがと」

 

 ユエの身を案じる言葉に、感謝しつつ。ハジメ達と合流した。

 

「ごめんねー、時間取らせちゃってさ」

「いや、血塗れで行動するのもどうかと思うし。これで良かったんだよ」

「そうそう。身なりは綺麗に……双葉も女の子だし」

「双葉さん、大丈夫ですか? お顔色が優れないみたいですよ?」

 

 時間を取らせたことを謝罪する双葉だったが、思った以上に気遣う言葉が飛んできて困惑の表情を見せる双葉に、ハジメは

 

「俺は平気だけど、慣れてないんだろ? 人殺しに」

「っ! だ、大丈夫だよ。ハジメだけにやらせるわけにはいかないから」

「無理すんな。そんな、泣きそうな顔で。そんなこと言われて信用しろって話の方が無理だよ……お前にゃ恥ずかしがった顔か、笑顔が似合うんだ」

「何言ってんのハジメさん!?」

 

 ハジメはここで折れられては困ると、双葉にたたみかける。メンタルケアは大事なのだ……何より。

 

「お前が無理するなら俺はもっと無理をしてやるからな? せめて、役割くらいは俺にもよこせ」

「あ……ごめんなさい」

 

 左手で双葉の腰を抱き寄せ、ハジメは生身の右手で彼女を撫でる。すると、双葉は嗚咽を漏らし。我慢ができなくなった彼女は、彼の胸元で泣き出した。

 

「う……ぐすっ……肉を断ち切る感覚が生々しくて……ひぐっ……吹き出した血が生暖かくて……」

「そうだな。ただ撃てばいいだけの俺と違ってお前は直接槍を突き込んで薙ぎ払う必要がある。その辺の違いのことすっかり忘れてた。わりぃ──よく頑張ったな」

 

 そこに居たのは等身大の少女。いくらその身姿は成人したものとは言え、双葉はまだ子供だろう。本来、殺人とは無縁の平和な少女が背負う人の命。それを奪うという‘業’……その重さはハジメも改めて理解する。

 精神が変貌した自分は平気なのは、「殺した」実感がないから。銃器による射殺だから軽く撃てた。ところが双葉は近接で仕留めにかかる……肉を断ち切り、骨を砕き。その絶命までに意識はあるため、‘怨嗟の視線’を直に感じるはずだろう。

 最初の涙がこぼれてしまうと、あとはもうとめどがないのは然るべきだろう……そんな双葉の内情を知ってか知らずか。

 

「双葉さま。お顔を上げてください……我々のために、あなた様に無理をさせてしまったことを、深くお詫びを申し上げます。しかし、これだけは。これだけは、心に留めてほしい──殺されてしまったであろう、我が一族の者達。そして、我らが祖父と祖母たちの仇討ち……我々では達成できなかったでしょう。本当にありがとうございます……そして、本当に申し訳ございません」

「父様……はい! ハジメさんも、双葉さんも……本当にありがとうございました!」

 

 ハジメと双葉に内心で怯えを覚えたカム達兎人族。しかし、双葉の吐露を見て。その怯えがどれほど愚かなことなのかを思い知る。目の前にいるのは鬼神の如き強さを持つ者。しかし、その内面は年相応の、シアと同じ年代の少女だ。

 カムはどこか、自身の娘と同い年の彼女に親らしく振る舞うべきか、などと頭をよぎったが、頭を振り。

 

「……ぐすっ……ごめん」

「……ああ、そうだな。道草を食ってる暇はない」

「……ん、行こう」

「目指せ、樹海探検隊! だね!」

 

 香織の様子に、双葉は涙を拭い。前に進むべきだと思い直す。彼女は少しだけ振り返り、自身の犯した罪を認識する。そして、謝罪はせず。

 

「あたしは謝らない。でも、殺したあなた達のことは忘れない……せめて、安らかに眠って……」

 

 鎮魂歌など歌えない。ましてや殺した者のために祈るなど場違いだが、‘願う’ことはできる。

 こうして、双葉は改めて。ハジメもまた「殺人をなんともない」などとは考えぬ様に。戒めを心に先に進むのであった。

 

 ■双葉side

 

 襲い来る魔物を蹴散らしながら、あたし達は樹海を行く。その道中でシアがあたし達に聞きたいことがありそうな顔をしていたので。あたしは事情を尋ねた。すると……

 

「あの、あの! ハジメさん達のこと、教えてくれませんか?」

 

 と尋ねられる。ある程度は話して……あー、詳しいことは話してなかったわね。

 

「? 俺達のことは話したろ?」

「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落? という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、皆さんのことが知りたいんです」

「あー、なるほどねぇ。でも……」

「……聞いてどうするの?」

 

 ハジメはどうしたものか、と。香織は何となく納得した様であるが、ユエが少し鬱陶しそうだった。対して、シアは……

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとみんなのことを知りたいといいますか……何といいますか……」

 

 畳み掛けてきたのである。これには、ユエもフリーズ。そしてしばらくしてから再起動して、ハジメにどうしようかと言わんばかりに目線を向ける。

 そう言えば‘魔力操作’に関して軽く話して以来。随分嬉しそうにしていたと、ハジメとユエ、香織は思い出し。香織は出会いの事を思い出してか、罪悪感に打ちひしがれたのか少し気を落としているようにも見える。谷底でも魔法が使える理由など簡単なことしか話していなかった。きっと、シアは、ずっと気になっていたのだろう。

 

 確かに、魔物と同じ体質を持った人など世界が受け入れがたい存在だろう。仲間意識を感じてしまうのも無理はない……樹海に到着するまで、まだ少し時間がかかる。特段隠すことでもないので、暇つぶしにいいだろうと、ハジメがこれまでの経緯を語り始めた。

 

 そして、その話を聞き終えると……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。……香織さんと双葉ざんは……ハジメさんのだめにぞこまでできるなんて……そ、それ比べたら、私はなんで……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

 号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。自分は大変な境遇だと思っていたら、彼らが自分以上に波乱万丈な思い(物理)をしていたことを知り、あの程度……いや、シアも十分に不幸なのだが。ともかく、‘自分は不幸’だと思っていた事を情けなく感じたらしい。

 

 あたしからすればもう過去のこと。そんな程度で根を上げていたら生きてはいないだろうとは語らない。生きるためなら‘何でもする’と──その様子をどう感じたのか。メソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。

 

「私、決めました! 皆さんの旅に着いていきます! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向に皆さんを助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達はたった五人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

「え、断る。現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ? 完全に足でまといだろうが」

「……さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている……」

「まぁー、シアちゃんが着いて来れるかどうか……不安だし」

「あたしは別にいいけど、ハジメが断るとなるとなぁ」

「ハジメさん、ユエさん!? な、何て冷たい目で見るんですか……心にヒビが入りそう……というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ」

 

 意気込みに反して、ハジメに、ユエが冷めた反応を返され若干動揺するシア。そんな彼女に追い討ちがかかる。

 

「……お前、単純に旅の仲間が欲しいだけだろう?」

「!?」

 

 ハジメの言葉に、シアの体がビクッと跳ねた。まぁ図星だろうなぁ……

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ? そこにうまい具合に‘同類’の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか? そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしな」

「……あの、それは、それだけでは……私は本当に皆さんを……」

 

 案の定、しどろもどろになるシア。でも、その気持ちはわからなくもない。ハジメの言うように、都合よくあたし達は‘出会った’こと。

 

「ハジメ、ユエ。頭ごなしに言うのは良くないと思うよ。まぁ、あたしは別にいい……お守りが増えてもあたし達なら切り抜けられるわよ、きっと」

「双葉……まぁ私も賛成かな?」

「その心は?」

「私とユエだけだと逃げるの下手くそだから、護衛がいてくれると嬉しいかなーって。シアちゃんは多分。魔法を使うのは下手だろうけど、身体強化に特化してるのかもしれないからさ……武器があればどうにかなりそうだよ?」

「……一理あるな。だが、今は断る」

「そんなぁ〜」

 

 がっくり項垂れるシア。まぁでも……シア自身があたし達に強い興味を惹かれているというのは嬉しい事なんだよね? 

 一族のことも考えると、まさに、シアにとってあたし達との出会いは‘運命的’だとも思わなくもないし──だって、シアにとってはめちゃくちゃ都合がいいのよね。

 

「別に、責めているわけじゃない。だがな、変な期待はするな。俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。おそらく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない」

「……死にたいなら来ればいい」

「……」

 

 ハジメの、ユエの全く容赦ない言葉にシアは相当凹んだのか。黙りこくる……それからしばらく、シアは難しい顔でうんうん唸っていたので。

 

「シア、着いて来るなら。ハジメに覚悟を見せてあげて」

「双葉さん……?」

「ハジメはあんなこと言ってるけど。あなたの事を案じてるのはわかってあげて欲しいかな……巻き込んで死なせちゃったりしたら……あなたも一族の誰かが死んだら悲しいでしょ?」

「香織さん……それは……はい……」

「まぁ、諦めたらそこで試合終了。頑張ってね」

 

 あたしはあくまでもエールを送ることにした。そこからどうするかはシア次第なのだから。ちなみに、樹海内はカムさん達の案内で問題なく進めている。

 さすが兎人族。警戒能力は本物なのか、索敵能力が相当高い。

 まぁ、魔力探知であたりを探るのも悪くはないんだけど。人に任せれるならそっちの方が都合はいいでしょう? 

 そんなこんなで、樹海に入って数時間が過ぎた頃。今までにない無数の気配に囲まれ、カムが、兎人族のみんなが歩みを止める。

 数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。

 

 あたしも思わず。相手の正体に気がつき、面倒そうな表情になった。

 

 その相手の正体は…… 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

 剣呑な雰囲気は、その事情は分かる。樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている訳だし……。

 周りはおそらく……うん、囲まれてるわね。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているみたい……あたしはハジメと視線を交錯させ、彼が頷いたので。

 

「自分たちの縄張りに入られた事を怒るのはわかるし、あたし達も不躾だとは思ったけど……ちょいたんま。言葉わかる?」

「……人間族と話す事などない。ん? ──白い髪の兎人族……だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する!」

「おい、クソトラ野郎。問答無用は分からんでもないが……もうちょい、‘彼我の戦力比’はするべきじゃないかしら?」

 

 流石にイラついたので、あたしはオーラを解放する。今まで、たびたび使っているこのオーラとは。‘生命力の発露’で、人間や生物が体内に持つ‘活性の点穴’と呼ばれる器官を修行や一定の条件を満たして覚醒させることで発揮可能だ。

 神器(セイクリッド・ギア)使いはこれらを目覚めさせた時にその器官を覚醒させるのだが、特訓すれば誰でも覚醒はさせれるようになる。

 そして、このオーラ。傷の修復を早めたり、身体強化ができる様になったり。人間が悪魔に一矢報いる方法としても良く話には出る。そして、あたしがオーラを解放すると、どうなるかと言うと……

 

 バガンッッ!! 

 

「総員かッ!? ──なにがぁぁぁ!?」

 

 爆発的な衝撃波の発生。足元には深さ二メートルほどのクレーター。先頭にいたトラの亜人だけが五メートルほど吹っ飛ばされた。

 敵味方識別可能なので、ハジメを筆頭に兎人族は全くの無傷。トラの亜人は猫の様に体を丸めながら、しなやかに着地して……あたしに対して畏怖の表情だ。

 

 そして、ハジメが悠々と私の前に立って、ドンナーを構える。

 

「俺が行える攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらの位置も全て、把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ……無駄なことはしない様にしたほうがいいぞ? 頭を柘榴みたいにかち割られたくはないだろう?」

「ハッタリだと思って軽率な行動はお勧めしないよ。あたしの力の一端はあんなものじゃない……あれはまだ挨拶程度だから……ね?」

 

 あたしは光翼を展開して飛翔、空から亜人たちを睥睨。放出したオーラが周囲の空気を重苦しいものに変貌させ、彼らを制動する。

 

「俺たちを殺るというのなら容赦はしない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな……ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ」

「そう言うこと。あんた達が束になったとしてもあたし達には及ばないってことは理解なさい」

 

 ハジメはシュラークも抜いて構え、あたしも動けるように、空中でガングニールを構える臨戦態勢。どうやら、ハジメは‘威圧’の固有魔法を使ってたみたいで、そりゃ大人しくなるよなとあたしは納得した。

 

「だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」

 

 少し睨み合い、あたしは危害を加えてこないだろうと思ったので。ハジメの隣に降り立つ。そして、ハジメも銃を下ろして問いかけた。

 で、その言葉にトラの亜人は悩んだ末に。こちらの目的を探ろうと掠れた声で。

 

「……その前に、一つ聞きたい──何が目的だ?」

「樹海の深部、大樹の下へ行きたいだけだ。俺たちをなにと勘違いしてるのかは知らんが、少なくともお前達を奴隷にしようなどと考えちゃいねぇよ」 

 

 ハジメは自分たちが奴隷商ではないとため息を吐きながら。樹海深層へ用があると述べる。すると

 

「大樹の下へ……だと? 何のために?」

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

「本当の迷宮? 何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

「いや、それはおかしい」

「なんだと?」

 

 妙に自信のあるハジメの断言に虎の亜人は訝しそうに問い返した。

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎるのよ。あたし達からすれば雑魚も雑魚だからね」

「なんだと……いや、先程の闘気を見せられたら納得せざるを得ないか」

 

 亜人はあたしを、そして後ろにあるクレーターを見て。反論できないご様子だった。

 

「……俺たちが相手をした大迷宮の魔物ってのは、どいつもこいつも化物揃いだ。少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

「……なんだ?」

「大迷宮というのは、〝解放者〟達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ? それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

「……」

 

 ハジメの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せちゃいない。ハジメの言っていることが分からないからだろうけど。だ、なにかしら納得したのか……

 

「……お前が、お前の仲間が。国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がる……ほう? こいつ、理性的だな? 

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

 その要求にあたしはハジメに頷きかける。待つのは慣れてるだろう? と。

 彼からすれば限界ギリギリの譲歩なのだろう。今も、本当はあたし達を処断したくて仕方ないはずだ。だが、そうすれば間違いなく部下の命を失う。それを避け、かつ。あたし達を野放しにしないためのギリギリの提案。

 

「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」

「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

「了解!」

 

 伝令を見送りあたし達はこの場で待つことにした。そして……あたし達はとある長老に。フェアベルゲンに迎え入れられることになるという驚くべき展開になったのは言うまでもなかった。

 

 ──

 

 to be continued .

双葉の進化先、バランスブレイクはどちらを優先する?

  • 赤龍帝の鎧ベース。これしか勝たん
  • 白龍皇の鎧ベース。銀の腕だし映える
  • 二天統一ベース。オリジナル亜種禁手化
  • 禁手化を状況的に使い分けろ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。