ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
■双葉side
今頃、シアとユエが模擬戦をしているんだろうな、何て考えながらあたしはハウリア族の皆さんに今日のノルマを伝える。
「わかった。期待に応えれるよう、今日も行ってくる」
「「「「「では、行ってきます。師匠っ!」」」」」
物静かで落ち着いた雰囲気になったカムさん。その雰囲気の静かさは某北斗三兄弟が次男の様に静かなのだ。
そして、どこか熱血漫画の主人公の様に熱いハートを燃やすウサミミたちにあたしは引き攣った笑みで応え、いってらっしゃいと一言かける。彼らは影に潜る様な……見事な気配遮断を実行して樹海に消えていった。
あたしは隣でその様を見て遠い目をしているハジメにため息と共に話しかける。
「こりゃ完全にやり過ぎたね、ハジメ。だから“水影心”はダメだって言ったじゃん」
あたしの語る“水影心”とはなんぞや、と声が出そうなので解説すると。私の祖母の知り合いに‘霞拳志郎’と言うエインヘリアルが存在しており。かの人が祖母に教えたのがきっかけだと言う。
ヴァルハラでの暇つぶしも兼ねて、弟子みたいな調子で教えられたこの水影心……某北斗神拳の奥義だった。死後の世界とか言う夢心地の中ではっちゃけた拳志郎さん……何やらかしてるんだろうか。一子相伝の縛りはまぁ、死んだ後だから別に構わんと。しかし彼もまさか私に伝授されてるなんて知らないだろうなぁ……
とまぁ、“水影心”は相手から受けた技、あるいはそれを見て「心で知り、体で識る」ことで。自らのものとすることが可能になるという……使い手以上の身体能力があれば模倣可能になるわけである。
なお、あたしはオーラを使える様になってすぐに‘流派東方不敗’やら、‘柔の拳’を模倣してみたが、これかなりしんどかった……まぁ何年もかけたら物には出来たけどね。しかし、北斗神拳の使い手ではないので、流石に秘孔を見抜いたりは出来ないけどね?
「……教えれるとか言うから……ほら、楽に強くできるだろ?」
「アホっ! ──“水影心”はね、相手の技を「理解する」ためのものであって。それを使えるのかどうかは修練次第なんだよ! まぁ、ハウリア族の集中力や動体視力、身体能力をなめてたあたしにも責任はあるわね……シアをきっかけになんでみんなオーラに目覚めるかなぁ……」
ハウリア族はシアがオーラに覚醒した後。あたしから教わった“ 水影心”を用いてオーラそのものを理解したのか。連鎖的にその使い方を学んで……いき。
向こう七日しかなかった期限の中で三日目にちょっとしたきっかけで技を見せる事になった‘天翔百烈拳’をカムさんが取得したのはほんとに意味不明だった。
彼は指先にオーラを纏わせ、オーラで強化された目で。気の流れを目視したのか魔物の秘孔を見抜き、突き穿つ様になってしまったのだ。
流れる水に逆らわず、麗しき水鳥がその水を濁さず飛び発つ様に、流麗かつ強かな身のこなしで。‘柔の拳’を用いて、魔物の突進を跳躍で避ける。
「ふっ、その程度。私の‘柔の拳’の相手では無い……行くぞ、‘天翔百烈拳’っ!!」
「ぐるぁあ……」
「せめて痛みを知らず。安らかに逝くがいい」
天高く舞い、カムさんは魔物の秘孔を突き崩す。秘孔を穿たれた魔物はそのまま緩やかに意識を刈り取られ、夢心地なのか、眠る様に息を引きとる。
そしてあるいは。
「「「爆熱ぅぅ……ゴッド、フィンガぁぁああぁぁっ!!」」」
その手を紅蓮に染めた男たちが、オーラを弾けさせながら自分達よりも大きな魔物に──‘ダイヘドア’に立ち向かう。が、尻尾で一蹴され……ない。彼らはそのうち降ろされた尻尾を足場にして魔物の顎門の下に潜り込み。
「「「ヒート、エンドッ!!」」」
「ぐぎゃおおおおん!?」
片方の頭を吹き飛ばして見せる。あれは自身のオーラを増幅させ、味方のオーラと同調。共振させることで超振動を引き起こし。双頭ティラノサウルスの片方の脳をクラッシュさせつつ。流し込まれたオーラが許容をオーバーフローして形を保てず。内部から弾け飛んだと見るべきだろう。
「続くわっ! 超級覇王電影弾っっ!!」
ハウリア族の女性が‘荒ぶる鷹のポーズ’のままオーラを練り上げ、それを一気に放出しながら走り出す。その身には強固なオーラをによって作り上げられた外殻を見に纏い。翡翠色の闘気を螺旋状に乱回転させながら突っ込む。もちろん、外殻は顔以外をすっぽり積んでおり、カウンターしか防ぐ方法がなさそうな気がする。
その強烈な体当たりを、頭が物理的に弾け飛んだことで重心バランスを崩したダイヘドアの脚にお見舞いしてぶっ倒すと。そこへ多くの矢が飛来する。
その矢は鉄よりも硬く、オーラエネルギーを秘めていて刺さると爆発する。
ハジメの組んだクロスボウを片手にハウリア族の女子供連合がオーラを矢にわけ与え。無機物を強化する……あたしですら困難な高等技術を普通に使っているのを見てもう、あたしはツッコミは放棄した。
そんな濃いメンツを生み出したのは、あたしとハジメである。もうこの惨状を諦観と共に受け入れて。楽しむことにしたらこのざまである。
あたしたちの持つ知識を如何なく発揮する彼らは、この世界にオーラを持ち込んではいけない、とあたしに十二分に悟らせるのは無理もなかった。
「もはやギャグだね……」
「オーラ……‘気’に関係するものなら全部模倣できるよな?」
「ここまで万能とは思わんよ……あれだ。やっぱ、亜人だからこそ。生命力においては人間以上に親和性が高いんだろうなぁ」
だいぶん現実逃避気味ではあるが。誰もあそこまでしろとは言ってない……まぁ、生存性とかの懸念もクリアできたからもういいや。そして明日はいよいよ大樹のもとに行くこととなる。
そう、約束の期限なのだ……そして、シアのことをハジメに話そうと思った。
「ハウリア族はもう、あたし達なしでもやっていけるわよね。あそこまでやれる様になったなら」
「そうだな。ぶっちゃけ、熊の亜人程度なら一蹴できるだろうよ」
「シアもかなり強くなってるからなぁ……つか、あの子が一番バグってるわよ」
「バグウサギってことか? どんなふうにバグってんの?」
「ぶっちゃけ、今のシアならユエといい勝負ができるくらい……かな? もちろん、殺し合いじゃなければの話だけどね?」
「ふぅん……」
「──あのシアになら、香織とユエの護衛が務まると思うよ?」
「……んだよ、藪から棒に」
あたしは自分なりの考えをハジメに告げた。ここで腐らせるにはいささか勿体ない人材である、と。
「シアはあたし達の旅について行きたいって、本気で考えてるみたいでさ。あたしもそれは認めてもいいと思う。オーラの修行はハジメでも匙を投げたのに、シアはやり切った。あたしよりもすごい雑草魂じみた、‘根性’でね」
「……そりゃ、‘生命力の発露’を司る器官の認識なんざ元が一般人の俺にできるかよ!」
「そりゃあごもっとも。だけど、シアはやり切った。本気であたし達に追いつきたいって、仲良くしたいって頑張ってるんだよ……あたしは連れていっても問題ないって先に言っとくわね」
「へーへー。まぁ、お前だけでなく、香織とユエの意見を聞いてから判断するよ。三人が同じ意見なら俺も認めざるを得まい」
「よし、言質とったかんね?」
「……おう?」
ハジメの言質を取り、あたしは若干上機嫌になったのかもしれない。彼の肩に少しだけしなだれかかり……そのまま寝てしまうのだった。
□noside
香織達がハジメのもとへ到着したとき、ハジメは双葉にもたれかかられ、腕を組んで近くの樹に背を預けて座り、瞑目しているところだった。
三人の気配に気が付いたのか、ハジメはゆっくり目を開けて。彼女達の姿を視界に収めると、ハジメは片手を上げて声をかけた。
「お疲れさん。あー、双葉はこのまま寝かせてやってくれ。最近、ハウリア族の修行につきっきりで寝る間も惜しんでたからさ」
「っ……はい。本当に、頭が上がりませんね……」
「俺の約束の履行の為にここまでさせっちまったしな……今度埋め合わせしてやるから……っ!?」
「「(……)じゃあ、今夜は愉しみにしてるね♪」」
ハジメは悪寒に襲われ、その場から逃げ出したくなったが。気持ちよさそうに熟睡する双葉のために逃げ出すことはなかった……否、出来なかった。完全に墓穴を掘ったハジメはそれを諦めた様に、話題を切り替える。
「で、ユエとシアの。‘勝負’とやらは終わったのか?」
「はい! 私の勝利です!」
「不正も文句もなく、かな? シアちゃん……見違えるほどに強くなってるよ?」
「へぇ……は? いや、ユエが負けたのか!?」
「……ハンデありとは言え、油断したのは事実……だけど、手は抜かない私に傷をつけれた……化け物と呼んで差し支えない……」
ハジメも、二人が何かを賭けて勝負していることは聞き及んでいる。シアのために渋々ではあったが、彼女が今身につけている手甲と脚甲(タウス鉱石製でめちゃ頑丈)の両方を用意したのは他ならぬハジメだった。
シアが真剣な表情で、ユエに勝ちたい。自分に最良の武器が欲しいと頼み込んできたのは記憶に新しい。それに対してはユエ自身も特に反対しなかったことから、何を賭けているのかまでは知らなかった。
それを聞いても教えてもらえなかったが、ユエの不利になることもないだろうと作ったものだった。
実際、ハジメは、ユエとシアが戦っても十中八九、ユエが勝つと考えていた。奈落の底でユエの実力は十二分に把握している。いくら魔力の直接操作が出来るといっても今まで平和に浸ってきたシアとは地力が違うのだ。
だがしかし、帰ってきた彼女達の表情を見るに、どうも自分の予想は外れたようだと驚愕するハジメ。そんなハジメにシアが上機嫌で話しかけた。
「ハジメさん! ハジメさん! 聞いて下さい! 私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ! いや~、ハジメさんにもお見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを!」
「……大技硬直後に全身氷漬けにされてたくせに……残念ウサギが調子にのらない」
「はぅあぁ!? 言わない約束ですよ、ユエさん!?」
「まぁ、実戦ならあのまま凍えて眠りウサギだねー」
ふふん、と鼻を鳴らしてドヤ顔しかけたシアをユエが若干不機嫌な声で一蹴。さらに香織の補足を受け。シアは耳がへたり、四つん這いになって落ち込んでみせた。
その様子を尻目に……ハジメは香織とユエに意見を求める。
「で? どうだった?」
勝負の結果というより、どんな方法であれユエに勝ったという事実は信じ難い。香織とユエから見たシアはどれほどのものなのか、気にならないといえば嘘になる。ユエは己の意見でしかない、と。香織はわかりやすさ重視でと言う感じでハジメの質問に答えた。
「……魔法の適性はハジメと変わらない。……香織が匙を投げるくらいには」
「……俺に関しては仕方ねえだろうが。そもそもの適性が……って、ありゃ? それはつまり魔力は宝の持ち腐れだな……で? 香織はどう思ったよ」
「……んー、魔法は無理だったけど。やっぱり魔力によっての身体強化に特化してると思う。そっちにシフトしたら見違えたからね、シアちゃん」
「……へぇ。俺達と比べると?」
「……ん、物理に特化してる。正直、化物レベル……」
ユエの評価に目を細めるハジメ。正直、想像以上の高評価だ。ユエは、ハジメの質問に少し考える素振りを見せるとハジメに視線を合わせて答えた。
「…… ‘強化なし’の双葉にならいい線まで戦える……と思う。実践経験の欠如で、経験値の差はあると思うけれど」
「マジか……最大値だよな?」
コクリ、とユエが頷いて見せる。ちなみに。ユエの語る双葉の現在ステータスとは、以下の通りである。
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天龍双葉 17歳 女 レベル:???
天職:
筋力:16000
体力:19000
耐性:17000
敏捷:12500
魔力:21000
魔耐:26000
技能:全属性適性・全属性耐性・全魔法適性・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮] [+遠隔操作][+効率上昇][+身体強化] ・想像構成[+イメージ補強力上昇] [+複数同時構成]・物理耐性[+金剛]・魔力耐性・複合魔法・槍術[+刺突速度上昇][+ダメージ効率上昇][+無拍子][+二連一撃]・神速[+疾風迅雷]・擬/赤龍帝の籠手×擬/白龍皇の光翼[+
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彼女のぶっ飛び具合はもはやどうしようもないので、ハジメも追いつくことは諦めている。このメンツの中で、ハジメのステータスを見れば魔法職としての香織とユエに魔力等で追いつけないが、他のステータスは彼女達以上。しかし、双葉を除く三人のステータスを合算したような出鱈目な能力を持つ双葉が別格なだけなのかもしれない。
「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」
「おぉう。そいつは確かに化物レベルだ」
ハジメは、ユエから示されたシアの化物ぶりに内心唖然としながら、シアに何とも言えない眼差しを向けた。強化していない双葉と渡り合える可能性があると言えば、本気で身体強化したシアはほとんどのステータスが
まさに“化物レベル”の出力であり、それは曲がりになりもユエに土をつけることが出来たわけである。いまだショックから立ち直れないウサギの尻を眺めているハジメ(体勢的に立てないためである)は呆れ半分驚愕半分の面持ちである。
シアは、ハジメが眺めている事に気がつくと。いそいそと立ち上がり、急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情でハジメのもとへ歩み寄った。
背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事をするのだ。
「ハジメさん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」
「……いいぞ」
「即答!?」
まさか今の雰囲気で、悩む素振りも見せず即答で受け入れられるとは思っていなかったシアは、驚愕の面持ちで目を見開いた。その瞳に映ったのは「え、何でその反応?」と困惑するハジメの顔だった。
「ハジメさん。あっさり……受け入れてくれるんですか……?」
「連れて行く
「ち、違いますよ! 今のは私だけの話です! 父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど……その……」
「その? なんだ?」
何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでハジメをチラチラと見る。あざとい。だが、ハジメには逆効果であって、彼は不審者を見る目でシアを見る。
「その……私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」
「別についてきてもいいが、今なら一族の迷惑にもならないだろ。それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」
「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」
「……ハジメは受け入れてる。普段通りの根性見せろ、駄ウサギ」
「ほらほら、頑張って。シアちゃん!」
モジモジしたまま中々答えないシアに対してハジメは首を捻る。そんな様子に呆れて。ユエは尻を蹴る様に。香織が促してシアが女は度胸! と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。
「ハジメさん達の傍に居たいからですぅ! みなひゃんが、しゅきなのでぇ!」
「……は? みんなが好き……?」
緊張のあまり「噛んじゃった!」と、あわあわしているシアを前に、ハジメは鳩が豆鉄砲でも食ったようにポカンとしている。まさに、何を言われたのか分からないという様子だ。しかし、しばらくしてようやく意味が脳に伝わったのか思わずといった様子でツッコミを入れる。
「いやいやいや、みんなが好きって、俺を含めてこのメンツが好きって事か? ……自分で言うのも何だが、お前に対してはかなり雑な扱いだったと思うんだが、どこで俺に対してのフラグが立ったんだ? ……まさか、そういうのに興奮する口か?」
「誰が変態ですか! そんな趣味ありません! っていうか雑だと自覚があったのなら改善をよーきゅーします!! もう少しくらい、優しくしてくれてもいいじゃないですか……」
自分の推測にまさかと思いつつ、シアを見てドン引きしたように気持ち一歩後ずさるハジメ。シアは突然の変態扱いに猛烈に抗議、そしてある程度の改善を要求した。
ハジメは、一度深々と息を吐くとシアとしっかり目を合わせて、一言一言確かめるように言葉を紡ぐ。シアも静かに、言葉に力を込めて返した。
「わかったわかった。対応に関しては一応善処してやる。……で、確認だ。俺たちに付いて来たってその、お前の望む全部に応えてはやれないぞ?」
「……知らないんですか? 未来は絶対じゃあないんですよ?」
未来は覚悟と行動で変えられると信じている……双葉とハジメがぶっ壊して回った本来の未来を尻目に。
「俺たちは神に喧嘩を売る。正直、危険だらけの旅だぞ?」
「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」
長老方にも言われた蔑称。しかし、シアにとってはもうそれは‘誇り’。化物でなければ為すことのできない事がある。何より、認めてもらいたいから。
「俺の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」
「話し合いました。‘それでも’です。父様達もわかってくれました」
今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。
「俺の故郷は、お前には住み難いところだ」
「ハジメさん……だとしても、ですぅ!」
シアの想いは既に示した。そんな‘言葉’では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。
「……」
「ふふ、終わりですか? なら、私の勝ちですね?」
「勝ちってなんだ……」
「私の気持ちが勝ったという事です。……ハジメさん」
「……何だ」
もう一度、はっきりと。シア・ハウリアの望みを。
「……私も連れて行って下さい」
見つめ合うハジメとシア。ハジメは真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。
そして……応えた。
「わかった。香織達に異議もないみたいだし、多数決で決定な……ったく、物好きな奴め」
その瞳に何かを見たのか、やがてハジメは溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。
「やったぁぁぁぁ!! やりました! 言質は取りましたからね!?」
「おめでとう、シアちゃん! これで計画が進められる……」
「……おめでとう……でもシア。もう少し静かに……寝起きの双葉はすごく機嫌が悪い……」
「──少し、静かにしてくれないかなぁ?」
「「……あっ」」
その後、樹海の中に二つの悲鳴が響き渡り。ユエは惨状に巻き込まれぬ様に、悲鳴の発生場所から避難する。双葉がキレながら単純な魔力弾とオーラ弾をばら撒いて環境破壊をしている……その様子に、ハジメは、いろんな意味でこの先も大変そうだと苦笑いするのだった。
■双葉side
寝起きの癇癪を起こしてしまって、香織とシアを気絶させてしまい。あたしはいつものように後悔しながら彼女らに回復魔法を浴びせて背負う。シアはあたしが、香織はハジメが。その後ろをゆったりついてくるユエという構図だ。
しばらく歩いてカムさん達の帰りを待っていると……茂みから彼が現れる。
「師父ハジメ。我々の領域に侵入を試みている一段がございます……どうしましょうか?」
「あん? どういう事だ、カム」
「エイミー、パル。頼んだぞ」
「「はい! お師匠様、土産も無しに申し訳ありません! 報告がありますっ!」」
快活な言葉を発するのはかつてハジメが花を撃ち抜いて泣かした幼女と、その兄である少年で、彼らは語ってくれた。
「大樹への道にて警戒していたら、完全武装の熊人族、そして同じく武装した虎人族を発見しました!」
「おそらくは大樹への道筋で私たちを襲撃するものかと思われます!」
「ほぉ、やっぱ手出しはしてくるか。しかも、徒党を組んできたみたいだな。双葉、どうするよ?」
「……んー、まぁ適当にあしらってその自信を木っ端微塵に粉砕してあげる方がいいかなぁって」
「……師父。発言の許可をいただきたい」
あたしは最も被害を出せる方法として彼らの自信という精神的支柱を木っ端微塵にしてやる方がいいと提案する。すると、そこにカムさんが。
「堅苦しいのはなしでいいって……ん、提案かな?」
「はい、彼らの相手は無手の我々が行おうかと思いますが。いかがでしょうか?」
「できる?」
「……“No problem.”」
「……おっけー。やっちゃって」
こっち指示に一言返し。彼らは霧に紛れるように下がって行く……身のこなしがもう暗殺者のそれなんだよなぁ……あたしのため息をよそに。この惨状をシアにどう説明したものかとあたしは頭を軽く悩ませるのだった。
──
to be continued .