ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
□noside
聖教協会の神殿より魔法的なゴンドラを用いてハイリヒ王国へ移送されたクラス一行はまずは王への謁見を行うと真っ直ぐに玉座の座す場所へ通される。そこではやはりというか、教皇であるイシュタルの力が強いのだろう……王と思しき者が玉座より立ち上がり、一行を。イシュタルを迎えるのをみて双葉はやっぱりか、と言わんばかりに小さなため息を吐いた。
威厳な雰囲気を持つ王が跪き、イシュタルの手に触れずの距離で口付けをするような様子を見せられてはどちらが上か下かなど一目瞭然だろう。それが当たり前のように振る舞うイシュタルの様子から見て確信したのだ。
そして、そこからは自己紹介に時間を費やされる。
国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナと紹介を受ける。
双葉は視線を感じると、その線上を見る。その先にはランデル王子が熱っぽい視線を自身に突き刺していたのに気がつき苦笑した。
双葉はお淑やかにしていれば、普段の
なお、彼女の事を‘裏の女神’と影では
その後、王宮主催の晩餐会が執り行われ。双葉は盛大にネコをかぶりながらランデル王子に応対していた。なんでこんな目に合わにゃいかんのだと内心ではぐずぐず愚痴をこぼしていた。
「この料理、お口に合いますか。フタバ様?」
「ええ、美味しいですね。私の故郷にはない味ですから作り方にも興味がわきます」
「よかった! 使徒様方のお口に合うか心配だったのですが、フタバ様がそうおっしゃるなら大丈夫ですね!」
にぱぁ、と幼子特有の無邪気な笑み。10歳の美少年のアルカイックスマイルにキュンとなりかけるが、鋼の意思で耐える双葉──ショタコンの趣味はない。ないったらないのだ。
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晩餐会も終わり、双葉は与えられた部屋へと足を運んだ。
ドアを開けて飛び込んできたのはまず天蓋付きのベットなどのやたら豪華な家具を備え付けられた部屋だった。
「えらい金かけてるわね……それだけ私らが肝いりなのか、よっぽど切羽詰まってるのかなぁ」
『おおよその王族は危機感が薄いからな。戦争に付き合うのは兵士だけさ』
誰もいない事を確認して、双葉は左手に
「やれやれ、本当に厄介なことになったわね……明日からは座学や訓練になるみたいだけど」
『フタバには必要がなさそうだが……
「ドライグは
『備えあれば憂いなしだよ。何もせず死ぬのはごめんだろうに』
「それはごもっともです」
ドライグの言い分に食ってかかることなく双葉はベットにダイブした。
ランデル王子には悪いが「脈はなし」と演じたが故に、諦めてくれたはずだろう。
「明日もあるし早めに寝よう。おやすみ、ドライグ」
『ああ、よく寝ろよ』
赤龍帝の籠手は虚空に霧散した。目を閉じ、すぐに眠りは訪れる。そして、双葉は夢を見た。
それは別世界の赤龍帝の記憶だろうか?
[ハーレム王に、俺はなる!]
煩悩とエロに忠実な男が世界を救ったり、危機を打ち破ったり。
はちゃめちゃが押し寄せてくるそんな怒涛の転生人型ドラゴンの半生を見た。
「……なんなの、この赤龍帝は……」
エロが絡むととんでもない力を発揮する、果ては女性の乳首をつついて禁手化に至っていたり……理解できないパワーアップの仕方をしている、そんな赤龍帝だった。
「土壇場の逆転劇は確かに凄いけど、エロから抜けれないのはサガという物なのね」
覚醒が近づく自身の意識。その、赤龍帝の記憶を心に留めんと……参考にできそうにはないが留めておいた。なにせ、おっぱいドラゴンだとか、ケツ竜皇だとか呼ばれた末にドライグとアルビオンが精神疾患を患っているように見えたのだから、そんな未来は自分たちに訪れることはない……はずだと双葉は自身に言い聞かせた。
翌日の午前。クラスの面々は王宮内の広間に集められる。集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られ、皆は不思議そうに配られたプレートを見ている所へ、‘騎士団長’メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
双葉は「団長殿は暇なのか?」と突っ込みたい衝動を抑えて説明に耳を傾ける。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は
生徒達もその方が気楽で良かった。はるか年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト……魔法的なアイテムってことかな」
アーティファクトという単語に双葉は納得するように頷いた。さすがファンタジーな世界だと言いたいのだろうか? 『お前の存在も十分ファンタジーだろうが』とドライグが一言。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
なるほど、と双葉たち生徒は、注射器を思い出すような痛みに思わず顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し。傷から浮き上がった血を魔法陣に擦りつける。
すると、魔法陣が一瞬淡く輝きその効果が早速発揮される。
そして、双葉はそのステータスを見ると……
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天龍双葉 17歳 女 レベル:1
天職:
筋力:500
体力:200
耐性:200
敏捷:300
魔力:300
魔耐:400
技能:全属性適性・全属性耐性・全魔法適性・魔力操作・物理耐性・魔力耐性・複合魔法・槍術・神速・縮地・擬/赤龍帝の籠手・擬/白龍皇の光翼・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・ノルンの瞳・限界突破・言語理解
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ぶっ飛んでいた。
■双葉side
メルド団長の説明を聞きながら思ったのは、これ……前線に送られるパターンじゃね?
彼の説明を簡単にまとめるとこうだ。
・レベル
各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。最大値はレベル100。その限界まで至るのは人間としての潜在能力を全て発揮した極地である。
・ステータス
ステータスはレベルの上昇以外にも日々の鍛錬で上昇する。
魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。
魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。
・天職
才能である。技能と連動しており、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。しかし、本来は天職持ちは少なく、戦闘系天職と非戦系天職に分類されるが戦闘系は千人に一人、あるいは万人に一人の割合とされる。
非戦系も百人に一人。または、十人に一人という珍しくないものも存在する。生産職は持っている者が多い。
とのことだ。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
光輝が早速メルド団長にステータスプレートを見せに行ったがそのステータスの数値は全て100だった……天職も勇者と来てるしそのステータスは一般人のおよそ10倍だろうか?
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……双葉はどうなんだい?」
「あーうん。えっと、はい」
照れ笑いを浮かべる光輝が私に振ってきたのでとりあえずメルド団長にステータスプレートを見せる。ばつが悪い顔をしてる私に彼は不思議そうな顔をしつつ、そのステータスプレートをみて硬直した。
「竜騎戦乙女……見たこともない技能が多いんだけど……勇者様よりも凄いんだけど……俺が教えることないよなコレ」
「……」
メルド団長は呆然としながらも言葉をなんとか紡ぎ出し、光輝は絶句していた。
若干化け物を見る顔されるのはちょっと傷つきそうになるが、まぁその気持ちはわかる。私だってそうなるわ!
そんなこんなで私はステータスの確認を終えるが……どうしようかと考えていた矢先にまたあのアホがやらかしかけていた。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
南雲くんに絡む檜山の姿が見えた。香織はそれを見て「ゴミがまたハジメくんに絡んでる」と仄暗い声音でニコニコと呟いていた……怖っ!?
まぁでも、あんな典型的な小物じみた行動がよくできるなぁ……アホらしい。プレートを受け取り、そのステータスが貧弱な物であると皆に伝えるように檜山と取り巻きは南雲くんをさらにバカにするように笑い出した。
「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇかぁぁぁぁあっ!?!?」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
「そう、ならそんなアンタらは南雲君よりも強いのよね?」
もう我慢ならない……私は嗤う檜山の首根っこを掴み、持ち上げながら。コイツが驚き手をジタバタさせる手からステータスプレートを奪い取る。
「ぐえっ、首がしま……!!」
「なによ。アンタだって弱いじゃない。呆れた」
そう言いながら、私は南雲くんにステータスプレートを渡す。
「離してくれ……息が……!!」
「なに? 聞こえないわよ? ……このまま黄泉に落としてやってもいいかなって思うんだけど、まぁ煩いし? ほれ」
持ち上げていた手を離し、檜山は酸欠状態だったのかそのまま尻から着地、ひっくり返って頭を打っていたが自業自得だよんなもん。
「双葉ちゃん……だからあだ名がメスゴリラなんだよ?」
「やはり筋力。筋力が全てを解決する」
香織と雫がいらない補足をしてくれているが無視だ無視。
「天龍さん……ごめん……」
「なんで謝んのよ。南雲くんは気にしなくてもいいわ」
首元を押さえてゴソゴソとしてる檜山や追従して青い顔しながら離脱していく取り巻きはまぁどうでもいいので無視しておく。
「私は前線に出ないけど、後衛を守るくらいならどうって事はないわ。南雲くんの錬成師も兵站を考えると十分重要な立ち位置よ」
私は南雲くんと目を合わせるようにして対話する姿勢で嘆くことはない、弱いなら弱いなりに戦うステージは違う……
「そもそも戦争に参加する意思を示していない南雲くんに、戦闘力を求めるのが大いに的外れなんだけどね?」
私は檜山に釘刺すようそう言い放つと奴はびくりと肩を震わせ、こちらを見ていた。
これであのアホのド阿呆な行いが止まればいいんだが……内心は嫌な予感がひしひしとしていたが、次のステップへと進むのだった。
──
to be continued .