ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

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峡谷の迷宮

 □Noside

 

 死屍累々──そんな言葉がピッタリな光景がライセン大峡谷の谷底に広がっていた。ある魔物は頭部を地面にめり込ませ、その頭部を黒焦げにされている。またある魔物は頸を滑らかに裂かれ地に横たわる。

 頭部を粉砕され。あるいは眼窩を抉られ、脳髄が後頭部にぽっかりと穴空く様に飛び出ている魔物の死骸もある。その死に方は様々だが、一方的にそして何よりそれらは一様に‘一撃’で絶命させられている。

 当然、この世の地獄、処刑場と様々な語彙でトータスの人々に恐れられている。このライセン大峡谷で、こんなことが出来るのは……

 

「一撃必殺ですぅ!」

 

 ゴパンッ! 

 

 風さえも砕きうる轟音と共に大戦鎚が振り下ろされ、哀れな魔物はその大質量と地にサンドイッチにされて致命傷を負い、それと同時にドカンと雷鳴が轟く。

 すると、地を走る稲妻が。あたりに群がっていた魔物の身体を貫き、感電させ。それによる神経回路を焼かれたことにより生命機能を停止、絶命する。

 

「……邪魔」

 

 ゴヒュウッ! 

 

 引き金を引き、飛翔した槍の穂先が魔物を貫く。そして、その射線上にいた走り寄る複数の魔物をその穂先が着弾した地点で強烈な爆風が発生。後続の魔物達を易々と吹き飛ばし、槍に光が募ると無くなったはずの穂先が再装填される。

 これは双葉が作ったアーティファクトの‘爆砕ショットランサー(ブリューナク)’で、引き金を引くことで穂先が射出され遠距離対象を突き穿ち貫通する。そして着弾すると穂先に仕込まれていた雷管により、内部に詰められている燃焼石に引火して激しい爆発を引き起こすのだ。

 そして次弾はユエの‘簡易宝物庫’から再装填される仕組みで、残弾がある限りは何度でも撃つことが可能だ。

 

「うぜぇ」

「ここまで数が多いと辟易するねー」

「まぁ、数だけが取り柄なのは救い……でもないな。ウゼェだけだ」

 

 ドパンッ! ドウッ! 

 

 ぼやきながらドンナーの引き金を引くハジメ。周囲を警戒しつつ、香織も銃声を峡谷にこだまさせる。

 

「文句言ってる暇ないわよー」

 

 ズパンッ! 

 

 間延びした声を出しつつもその槍捌きはとうとう音速を超えて。目で追うのも一苦労な迅撃、ひと薙ぎすれば真空刃が発生して、豪快に魔物をまとめて両断する。

 

 ……言わずもがな、ハジメ達であった。彼らはブルックの町を出た後、魔力駆動二輪を走らせて、かつて通った【ライセン大峡谷】の入口にたどり着いた。そして現在は、そこから更に進み、野営もしつつ

 現在は【オルクス大迷宮の転移陣】が隠されている洞窟も通り過ぎて、更に二日ほど進んだあたりにいた。

 

 峡谷では、相変わらず懲りもしない魔物達がこぞって襲ってくる。が、圧倒的戦闘能力を活かして双葉とシアが前面に立ち、ハジメたちの消耗を抑えるように行軍していた。

 

「ほい、そこぉ!」

「了解ですぅ〜っ!」

 

 双葉が指示を出して右手に持っていた槍を投げる。‘幻影魔槍術・投影’。それはヴァルキリーが使う魔術の一つであり、投擲して発動。槍の着弾地点に蜃気楼を発生させる。すると、効果範囲内にいた魔獣の類は視覚を狂わされてしまう。

 また、嗅覚と聴覚も潰されるのでその場をふらふらと歩き続けるしかできない状態へと陥る。ちなみに、格下相手には絶対成功するので結構な初見殺しである。

 

 シアの大槌がその絶大な膂力をもって振るわれ文字通り一撃必殺となって魔物を蹴散らし潰し。その攻撃を受けた魔物は自身の耐久力を遥かに超えた衝撃や雷撃に為す術もなく。

 潰され、灼かれて絶命する。シアの持つ大鎚の威力は、地球での御伽噺に出る「餅つきウサギ」も真っ青な破壊力である。

 そんなシアと魔術によってサポートする双葉の活躍によって、谷底に跋扈する地獄の猛獣達が完全に雑魚扱いだった──大迷宮を示す何かがないかを探索しながら片手間で皆殺しにして行く。彼らの征く道中には魔物の死体が溢れかえっていた。

 

「はぁ~、ライセンの何処かにあるってだけじゃあ、やっぱ大雑把過ぎるよなぁ」

「でも現状はこうするしかないんだよねぇ」

「ん……手記の手がかりだけじゃ少ない」

 

 洞窟などがあれば調べようと、注意深く観察はしているのだが、それらしき場所は一向に見つからない。ついつい愚痴をこぼしてしまうハジメに相槌を打ちながら銃撃と爆撃を行うのは香織とユエ。そこへ暴れに暴れ、掃討を終わらせた双葉とシアが合流する。

 

「まぁ、大火山に行くついでなんですし、見つかれば儲けものくらいでいいじゃないですか。はぁ、疲れましたぁ〜っ」

「まぁ、そうなんだけどよ」

「大火山の迷宮を攻略すれば、手がかりも見つかるかもしれないしね〜。この辺で野営する? そろそろ日も暮れて来たし」

「さんせー。ハジメ、用具出して出して」

「わかったよ、今日はここまでだ。双葉、結界頼むぞ」

「……手伝う」

「あいよー、ユエもありがとね」

「それじゃ私は火を起こしますぅ〜」

 

 谷底から見上げる空に上弦の月が美しく輝く頃、ハジメ達は野営の準備をしていた。野営テントを取り出し、夕食の準備をする。町で揃えた食材と調味料と共に、調理器具も取り出す。この野営テントと調理器具、実は全てハジメ謹製のアーティファクトだったりする。

 調理器具型アーティファクトや冷暖房完備式野営テントを作った時のハジメの無駄に洗練された無駄のない無駄な技術力で作り出されたご自慢のアーティファクト群である。

 

 そして、双葉の調理したククルー鳥のクリームスープ、ライ麦の黒焼きパンなどなど、食べ応えのある満足感あふれる夕食を終えて、その余韻に浸りながら。いつも通り食後の雑談をするハジメ達。

 テントの中にいれば、双葉とユエの貼った‘生物避け’の結界が働き、魔物も寄ってこないので比較的ゆっくりできる。ただ、完璧とは言えない……この峡谷の性質の都合上やはり結界にほつれができ、そこから寄ってくる魔物に対してはテントに取り付けられた窓からハジメが手だけを突き出し発砲して処理する。そして、就寝時間が来れば、五人で見張りを交代しながら朝を迎えるのだ。

 

 その日も、そろそろ就寝時間だと寝る準備に入るのはユエとシア、香織。最初の見張りはハジメと双葉だ。ちなみに双葉は三日間は一睡もしなくても問題はない状態にある。

 理由としてはヒト型ドラゴンへと変貌している彼女の肉体にあり、元々ドラゴンは多くの時間を睡眠に充てる。悠久の時を生きる彼らは眠ることで力を蓄える。その理由としては莫大な魔力を内包する魔力炉心たるその心臓を制御するため。

 眠っている間に大地とドラゴン自身を繋ぎ止め、龍脈と呼ばれる星の胎動にその魔力を流し込み循環させることでその土地を安定させるなどして星の守護者としての役割を果たす。

 

 神代においては当たり前。幻獣と呼ばれる神の産物達が平常的に行っていた習慣だったが、現代ではそれらは全く行われてはいない。

 神代が終わり、自然に対しての信仰が廃れて以来、その権能は自然災害として人々に牙を剥き。物理法則と呼ばれる人々が無意識に認識する共通概念が世界を統べている。

 現代地球において。ドラゴンを代表とする幻獣は姿を消し、冥界などの他の世界で生きている。

 自然災害とは、人々が自然という名の神を崇めることを忘れたことに対して起こるモノ。現代においても、人が制御できないものである事を悠然と示していた。

 

 そして、なぜ双葉が睡眠を必要としないのか。それは先述の魔力炉心と化した彼女の心臓にある。二天龍の因子を持つヒト型ドラゴンの双葉はいわば彼らの特性を兼ね備えるハイブリッド体。倍化と半減。この性質が双葉の魔力属性‘調和’によって均衡が保たれているために……常に莫大な魔力を垂れ流しているのだ。

 ‘調和’の魔力はどんな世界にも循環させることが可能なため、双葉は‘歩く龍脈’と化していて。この異世界を双葉の魔力が循環していき、訪れる土地は少しだけ豊かになる……双葉は無意識にこの世界に貢献していたりする。

 そして、それだけ放出してもなお尽きない魔力のせいで彼女の生命活動時間がほぼほぼ無限になっていて、疲れも知らない状態にある。

 そのため、疲労回復のための眠気を感じれなくなっており……眠ることができなくなっているのだった。

 

 さて、テントの中にはふかふかの布団があるので、野営にもかかわらず快適な睡眠が取れる。と、布団に入る前にシアがテントの外へと出ていこうとした。

 

 訝しそうなハジメに、シアがすまし顔で言う。

 

「ちょっと、お花摘みに」

「谷底に花はないぞ?」

「そういう事を言うんじゃないの」

「イッてぇっ!?」

 

 ゴスッ! ドシンッ! 

 

 ハジメのデリカシーのない発言に双葉がゲンコツをかまし、彼の頭が地面に埋まる。すまし顔を崩しキッと彼を睨みつけていたシアも、その様に流石に真顔で同情した。

 なお、ハジメはもちろん意味がわかっていたので揶揄いたくなったための冗談だったが双葉には通じなかったようである。

 

「んむぐぐ! ぶはっ! ……はぁ、はぁ……窒息すると思った」

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、二人ともすまん……流石にデリカシーに欠けてたわ」

 

 じたばたともがき頭を自力で引っこ抜いて、這々の体で土まみれになった顔で素直に謝るハジメにシアはオロオロしつつも別にいいですよ、と。そしてその場を後にしていった。

 

「分かればよろしい。まぁ痛いだけで生命力は失わなかったでしょ?」

「そう言う問題じゃねえわ! まぁ、手加減はしてくれたみたいだが……」

「手加減してないならハジメの頭は割れたスイカみたいになるって」

「それもそうか? まぁ、悪かったな」

 

 いいわよ、と双葉はハジメに応じていたその直後。「ハ、ハジメさ~ん! 大変ですぅ! こっちに来てくださぁ~い!」と、シアが大声を上げる。何事かと、ハジメと双葉は顔を見合わせてシアの声がした方へ行く。

 と、そこには。巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れおり、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。

 そこでシアは興奮冷めやまぬような雰囲気でぶんぶんと両手を振ってアピールしていた

 

「こっち、こっちですぅ! 見つけたんですよぉ!」

「わかったから、取り敢えず引っ張るな」

「落ち着いてくれないと、何にそんなに興奮してるのかわかんないんだけど」

 

 はしゃぎながらハジメと双葉の手を引っ張るシアに、ハジメは少し引き気味だった。そして、彼女に導かれて岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり。

 意外なほど広い空間が存在した。そして、その空間の中程まで来ると、シアが無言で、しかし得意気な表情でビシッと壁の一部に向けて指をさした。

 

 その指先をたどって視線を転じるハジメと双葉は、そこにあるものを見て「は?」と思わず呆けた声を出し目を瞬かせた。

 

 二人の視線の先、其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

 

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

 文字が妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

 

「……なんじゃこりゃ」

「……めっちゃチャラいんですけど」

 

 ハジメと双葉の声が重なる。その表情は、「混沌としたものを見つけた」という表現が似合うかもしれない。二人共、呆然と地獄の谷底には似つかわしくない看板を見つめている。

 

「何って、入口ですよ! 大迷宮の! おトイ……ゴホッン、お花を摘みに来たら偶然見つけちゃいまして。いや~、ホントにあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮って」

 

 能天気なシアの声が響く中、ハジメと双葉は何とも言えない表情になり、困惑しながら顔を見合わせた。双葉は訝しそうにその石板を眺めている。

 

「……双葉、これが……マジだと思うか?」

「まぁ……そうね、マジじゃないかなって」

「根拠はやっぱ‘’ミレディ”か?」

「うん、そだね」

 

 双葉は何とも言い難いと、その顔を困惑に染めている。「ミレディ」……その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームだ。ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるが、彼女の名前は知られていない。故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かった。

 

「神経が苛立つな、これは」

「やってみせろよ、マフティー!」

「それはガウマンだろうが」

 

 思わず溢れたネットミームに即座に反応した双葉のボケを捌きつつ、ハジメとしてはオルクス大迷宮の内での数々の死闘を思い返し、きっと他の迷宮も一筋縄では行かないだろうと想像していた。

 しかしこの雰囲気から見て、否応なくハジメを脱力させるものだった。ふざけたやり取りをしながらも双葉も、大迷宮の過酷さを骨身に染みて理解しているだけに……若干表情が強張っている。また、「こんなチャラいのが迷宮なのか?」と彼女の内心には渦巻いている。

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね? 奥も行き止まりですし……」

 

 そんなハジメとユエの微妙な心理に気づくこともなく、シアは、入口はどこでしょう? と辺りをキョロキョロ見渡したり、壁の窪みの奥の壁をペシペシと叩いたりしている。

 

「おい、シア。あんまり……」

 

 ガコンッ! 

 

「ふきゃ!?」

 

 ハジメの警告。「あんまり不用意に動き回るな」そう言おうとしたその眼前で、シアの触っていた窪みの奥の壁が突如グルンッと回転し、巻き込まれたシアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。さながら忍者屋敷の仕掛け扉だ。

 

「「……うそん」」

 

 やはり、ライセンの大迷宮はここにあるようだ。まるで遊園地の誘い文句の様な入口にハジメと双葉は、顔を見合わせて溜息を吐く。そして、消えたシアと同じように回転扉に手をかけた。

 扉の仕掛けが作用して、二人を同時に扉の向こう側へと送る。中は真っ暗だった。扉がグルリと回転し元の位置にピタリと止まる。と、その瞬間に。

 

 ヒュヒュヒュ! 

 

 無数の風切り音が響いたかと思うと暗闇の中をハジメ達目掛けて何かが飛来した。ハジメの〝夜目〟はその正体を直ぐさま暴く。それは矢だ。全く光を反射しない漆黒の矢が侵入者を排除せんと無数に飛んできているのだ。

 双葉が即座に反応し、ガングニールを振り回して飛来するものをはたき落とす。それらは本数にすれば二十本。一本の金属から削り出したような艶のない黒い矢が地面に散らばり、最後の矢が地面に叩き落とされる音を最後に再び静寂が戻った。

 

 と、同時に周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。ハジメ達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でとある言葉が掘られていた。

 

 “ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして♪ (*ノ∀`)ノ゙))アヒャヒャ”

 “それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? …… (*ˊ艸ˋ)”

 

「「……」」

 

 ハジメと双葉の内心はかつてないほど一致している。すなわち「うぜぇ~」と。わざわざ、「アヒャヒャ」と「イヒヒ」の部分だけ彫りが深く強調されているのが余計腹立たしい。特に、パーティーで踏み込んで誰か死んでいたら、間違いなく生き残りは怒髪天を衝くだろう。

 ハジメも双葉も、額に青筋を浮かべてイラッとした表情をしている。そして、ふと思い出したように呟いた。

 

「あれ? ……シアは?」

「あ」

 

 双葉の呟きでハジメも思い出したようで、慌てて背後の回転扉を振り返る。扉は、一度作動する事に半回転するので、この部屋にいないということは、ハジメ達が入ったのと同時に再び外に出た可能性が高い。結構な時間が経っているのに未だ入ってこない事に嫌な予感がして、ハジメは直ぐに回転扉を作動させに行った。

 

 果たしてシアは……いた。回転扉に縫い付けられた姿で。

 

「うぅ、ぐすっ、ハジメざん……見ないで下さいぃ~、でも、これは取って欲しいでずぅ。ひっく、見ないで降ろじて下さいぃ~」

 

 何というか実に哀れを誘う姿だった。シアは衣服のあちこちを射抜かれて非常口のピクトグラムに描かれている人型の様な格好で回転扉に固定されていた。あの仕掛けを間一髪で躱した様ではあるが。

 ウサミミが稲妻形に折れ曲がって矢を避けており、明らかに無理をしているようでビクビクと痙攣している。もっとも、シアが泣いているのは死にかけた恐怖などではないようだ。なぜなら……足元が盛大に濡れていたからである。

 

「そう言えば花を摘みに行っている途中だったな……まぁ、何だ。よくあることだって……」

「あ゛りま゛ぜんよぉ! うぅ~、どうして先に済ませておかなかったのですかぁ、過去のわたじぃ~!!」

「後悔は先を走ってくれることはないからねぇ……じっとしてね」

 

 女として絶対に見られたくない姿を、よりにもよって惚れた男の前で晒してしまったことに滂沱の涙を流すシア。双葉の手を借りながらようやっとおろしてもらった彼女のウサミミもペタリと垂れ下がってしまっている。なお呆れた表情を向けているハジメの様子に。それがシアの心を更に抉っていた。

 

 シアは自身の〝宝物庫〟から着替えを出して、顔を真っ赤にしながらも手早く着替えていた。

 そして、シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ! と意気込み奥へ進もうとして、シアが石版に気がついた。

 

 顔を俯かせ垂れ下がった髪が表情を隠す。しばらく無言だったシアは、おもむろにミョルニルを取り出すと一瞬で展開し、渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! という破壊音を響かせて粉砕される石板。

 よほど腹に据えかねたのか、親の仇と言わんばかりの勢いで大槌を何度も何度も振り下ろした。

 すると、砕けた石板の跡、地面の部分に何やら文字が彫ってあり、そこには……

 

 “ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~ꉂꉂ(*´∇`*)ケラケラ”

 

「ムキィ──!!」

 

 シアが遂にマジギレして雷撃を地に奔らせながらミョルニルを振い始めた。部屋全体が小規模な地震が発生したかのように揺れ、途轍もない衝撃と破裂音が何度も響き渡る。

 発狂するシアを尻目にハジメはポツリと呟いた。

 

「ミレディ・ライセンだけは解放者云々関係なく、人類の敵で問題ないな」

「……まぁ、そうね」

 

 どうやらライセンの大迷宮は、オルクス大迷宮とは別の意味で一筋縄ではいかない場所のようだった。

 

 ──

 

 to be continued .

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