ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

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ライセン迷宮 激闘編/後半

 □noside

 

「最初から本気の本気。掛け値無しだ!」

『『我ら二天の龍、対なりし力、互いに補完せり。至るは夢幻、或いは無限っ!! いつか見た、龍神への(きざはし)へと昇ろう! 我ら、主人と共にあり!!』』

 [Welsh Dragon ×(cross) Vanishing Dragon ──二天統一の龍帝皇(Dual xceed Drive)ッ!!]

「32倍だぁぁ!」

 

 双葉は切り札たる‘D×D()’を解放してグレンデルへと立ち向かった。その出力は限界値の32倍加。身体的、精神的成長を経てその段階へと登った。

 

「その辺は古臭え赤龍帝と変わらねぇなぁ!」

「どらっしゃぁ!」

 

 双葉が穂先を叩き込まんと突き込み、それに合わせてグレンデルも拳を突き出す。重い金属音が谷に響き渡り、邪龍は仰け反りながらたたらを踏み、双葉は逆方向へ吹っ飛ばされる。

 

「互角、じゃないな。押し通せる!」

「洒落臭せぇ! この程度ジャブに決まってんだろ」

 

 双葉は空中で体勢を立て直し、壁を蹴りさらに加速しつつ、グレンデルへ再接近する。邪龍が突き出す真っ直ぐ(ストレート)を紙一重で滑る様に躱し、懐に潜り込むと。

 

「だらっしゃぁ!」

「効かねぇなぁ!」

 

 全力の蹴撃をその鳩尾に叩き込む。‘ドムン!’と音を鳴らしたそれも有効打になり得ない様だ。しかし、双葉の狙いはそこではない。

 

「触れ、たぁ! アルビオン!」

『承知!』

半減(Divide)ッ!!’

 

 触れた事で半減を喰らわす腹積り。しかし、その試みは──

 

「古臭えつってんだろぉがぁ!」

「なっ!?」

『おい、赤いの。コイツは』

『レジストされたか……』

 

 グレンデルはどういう訳かそれを跳ねとばすと、双葉は数瞬のうちに原因に辿り着く。漆黒のオーラ、つまりは‘(よこしま)なオーラ’により弾かれたのだ。

 双葉のわずかな隙を逃さず、グレンデルは顎門よりブレスを吐き出した。

 

「ちっ、やっぱ邪龍はやりにくい!」

 

 牽制のブレスと読んでいた双葉は縮地で左に飛び退き。そこへ──

 

「おい、グレンデル。お口がガラ空きだぜ!」

「鱗のないところ晒して、馬鹿なの?」

「……ん!」

 

 ハジメ達の銃火器による攻撃が叩き込まれる。特にハジメはミサイルランチャーの‘オルカン’を宝物庫より呼び出していた。回転弾倉の採用によりそれは十二連装というとんでもない火力を誇る。それをグレンデルは口に叩き込まれる訳なのだが……

 

「はんっ、そんなのろまが当たるわけね、ほげっ!?」

「油断大敵、ですぅ!」

 

 グレンデルは上体を逸らし、射線から逃れようと試みるが。そこへ回り込んでいた、後ろからシアの。ミョルニルによる痛烈な打撃が、彼の頭部を強かに打ち付ける。

 効いていないようだが、そこへダメ押しのサンダークラップ鉱石によって発生した‘放雷’による追加の衝撃でその巨体が一瞬ぐらついた。

 

「やりや、ぐのわぁ!?」

「‘縛煌鎖’。逃がさないよ!」

 

 香織の拘束魔法がグレンデルの自由を一瞬だけ奪い、ミサイルの直撃。加えてユエのショットランサー(ブリューナク)による爆雷攻撃が炸裂した。

 爆炎に飲まれ、黒々とした黒煙が晴れて。戒める鎖を引きちぎりながら邪龍は嬉々と嗤った。

 

「げははは! なかなかやる、少し効いたぞ小僧ども!」

「余裕ぶってんじゃ、ないわよ!」

「あれだけ食らってなんでそんなにピンピンしてんだよ」

 

 げんなりしつつ、内心の焦りを飲み込むハジメを他所に。グレンデルに一直線に突っ込む双葉。その右手に‘ダークネス・リパルサー’のオーラ(ブレード)を発生させながらグレンデルに躍りかかる。ガングニールを突き込み、そのまま流れるようにオーラ剣で斬りかからんとしたが。

 

「あん? そいつは嫌なオーラだな!」

「なっ、はや……きゃあっ!?」

 

 穂先を弾き、オーラ剣の斬撃を受けることを嫌がったグレンデルはその巨体から想像もつかないほどの俊敏な動きで回避しながら強かに双葉を尻尾で薙ぎ払った。

 強烈な威力、体勢を立て直すこともできず双葉は迷宮だった場所の壁に叩きつけられたのだ。肺から全ての空気を吐き出す感覚、飛びそうになる意識を唇の端をきつく、裂けることを厭わず噛み、その痛みで繋いだ。

 

「あぐっ……ちっ、やっぱり。か」

 

 ダーク・リパルサーの性質を見抜いた戦闘的な勘の良さに苛立ち、ガングニールの穂先を地に刺して伏していた双葉は起き上がる。

 

「一番やべーのはやっぱり手前だな、混ざりもん」

「……混ざりもん?」

「げっげっげっ。中途半端止まりのテメェを赤龍帝か白龍皇と同列に扱うのはちと違和感があってよぉ。覇龍も使えねぇんだろ、え?」

「……そんなのなくてもお前程度!」

「げひははっ!(・・)程度、かぁ。禁手化(バランスブレイク)にも至っていねぇ‘雑魚’を恐れるエヒト君の情けなさに嘆きを禁じえねぇなぁ」

 

 哄笑。弱者を前に、強者が嘲笑うというその明確な侮蔑。それは双葉の逆鱗を踏み抜いた。怒りに身を任せ、双葉は立ち上がった。痛覚を遮断して、よろよろと立ち上がる。

 

「取り消せ……」

 

 渦巻くドス黒いオーラが双葉より漏れて溢れかける。その眼光にその場にいた者達、グレンデル以外の者たちは凍りついた。

 

 “ナニコレ。赤龍帝……がいるの?”

「お前みたいなのに憑いてる‘赤龍帝(ドライグ)’と‘白龍皇(アルビオン)’が憐れだなぁ」

『おい、グレンデル(クソガキ)。邪龍如きが、あまり調子に乗るな』

『フタバ、落ち着け。我々はお前を歴代最優の主人と認めている』

「……ありがと、二人とも」

「ちっ、覇龍と遊びてぇんだが、つまんねえな」

 

 怒りを孕んだドライグの不機嫌な声。双葉を心配して、諌める声音のアルビオンの声に双葉は落ち着きを取り戻す。新たに床に描かれた文字に気がついたハジメは「そーだよ」とぶっきらぼうに応えた。

 

 “ふぅん、そっか”

「双葉、すぐに治すよ! 聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)ッ!!」

「助かる、香織……ん?」

 

 双葉の感謝の言葉の後、銀腕の違和感が消えたことに気がついた。よく見ると、擬似神経の不具合が解消されていたのだ。

 

「そうか、これ。生身の延長扱いだから聖女の微笑みで修復されたんだ」

 

 無垢なる銀(イノセント・シルヴァ)。それは双葉の生体と共に修復される様に進化していた。成長する、共に。その性質を知った彼女は今はそんなことより。と面前の敵を睨む。

 

「余裕が出てきたじゃねえか、なら次はこっちの番だ」

 

 グレンデルは圧倒的な速度で双葉に殴りかかる。その俊敏性は双葉の想定を3つほど上回っていた。

 双葉は苦肉の策として‘ノルンの瞳’による「未来偏差観測」で技の軌道を読み取り、かろうじて。本当に紙一重で回避していた。

 

「くっ、デカい上に早いとかふざけんなっての!」

「そらそらそらぁ!防戦一方じゃねえか。ガラ空きだぜぇ!」

「ぐっ、あっ……っ!?」

 

 しかし、さらにギアを上げたグレンデルの連撃を前についに捉えられた双葉は蹴りを見舞われ、地を跳ね、何度もバウンド。ゴロゴロと転がりようやく止まる。

 

「ぐ……かはっ、この……」

「げははは! 弱すぎんだろ、なぁ!」

「がっ、があぁぁっ……!」

「潰れねえかぁ。流石龍種に覚醒した個体だな、頑丈さは俺らとあまり変わらねえ、よ。そこは褒めてやる……ぜぇ!」

 

 双葉を踏みつけ、潰さんとそのまま踏み躙る。しかし彼女の肢体の頑丈さを見て以外そうな顔をする。が、凶悪な笑みを浮かべるとグレンデルは彼女を蹴飛ばした。ガードもできない状態で蹴飛ばされた双葉は再度壁に叩きつけられる。

 

「くっ……けふっ、かはっ、えふっ……」

 

 血を口から流し、それでもなお双葉は立ち上がった。どこか、内臓をやったのかもしれないのに。そこへ聖女の微笑みを使った香織の力が双葉の傷を癒す。

 

「双葉、一人で無理しないで!」

「神器使いがもう一人いたのかぁ、でもそっちはあまり殺すなって言われてたな。何度も回復されちゃめんどくせぇ、先に半殺しにするか」

 

 ジロリ、香織を見つめるグレンデルだったが、そこへ割り込む様に仁王立ちするのはハジメ、そして側に控えるユエとシアだ。

 

「おい、俺の女だ。手ェ出させるわけねぇだろ」

「……香織は守る」

「そーですぅ、ふざけんな!」

「よく吠える小僧共だ。そっちの雑魚がこうも手が出せねぇのによぉ?」

 

 その言葉に、ハジメは渋面になりかけるも。気合いで睨みつけるのを諦めなかった。

 

「いいぜ、10秒も保たねぇだろうけどよ。サッカーボールにはなれるよなぁ?」

「随分、舐め腐ってくれるじゃねえか」

「訂正だ、1秒で十分だろ」

 

 振るわれるその尾。ハジメは‘金剛’と‘豪脚’を用いて。さらに‘限界突破’、‘魔力強化’で身体能力を向上、そして。

 

「シア、手伝え!」

「言われなくてもぉ、ですぅ!」

 

 ハジメが向かってくる尾を蹴り、シアの馬鹿力で振るわれるミョルニルが追加で叩き込まれた。遠心力を利用したその一撃はほぼ同時にインパクト。しかし、その威力を少し抑える程度だったか、ハジメとシアは反動を利用して後退する。

 

「ちっ……!」

「て、手が痺れますぅ」

 

 止まらないということがわかっていた。そこに……ミョルニルを劣化宝物庫にしまいながら‘身体強化’をフルパワーにしたシアが涙目になりながらも再び踏み込んだ。

 

「ふん、援護するぞ!」

「……‘緋槍・龍騎’六輪っ!」

「真空ぅぅぅ、砲爆けぇぇんっ!!」

 

 ドンナーとシュラークの12連射。オーラを高めたシアの‘真空砲爆拳’と消費魔力を無視したユエの緋槍を強化した魔法がフルスイングされる尾を弾き飛ばしたのだ。

 

「ほう、1秒は保つもんなんだなあ?」

 

 ハジメとユエ、シアの必死な顔に嬉々としたグレンデルの雰囲気はまるで新しいおもちゃを見つけた様な様だった。

 

「あんたの相手はあたしだって、言ってんでしょうが……っぇ!?」

「双葉……クソッ!」

 

 傷を癒やし、立ち上がった双葉が前に出るがしかし。その双葉の身に纏っていた神滅具(ロンギヌス)がフッと消える。唐突に消滅したのだ。そのまま双葉はぐらり、と倒れかけるが香織の手によって抱き支えられる。

 

「なっ、双葉!?」

「くっ……ダメージが大きすぎた……!」

 

 疲労、蓄積したダメージの治療は結局は代謝の前借りに過ぎない。そのツケで双葉はスタミナを失った。その結果、‘D×D’の維持が不可能となり、神器は消滅したと彼女は分析した。それでもなお、槍を構えることをやめなかった。

 

「──まだ、終わっちゃいない!」

「……ええ、そうよ。まだ」

 

 よろめいた双葉に香織が肩を貸し、命尽きるまで争う意志を示した。

 

「おうとも。ここで終わるわけにゃいかねぇなぁ!」

「……ん、私も地球に行きたい……!」

「私だって、ですぅ!」

 

 希望を捨てない、抗って見せる。その意志を貫く姿勢の一向を前にグレンデルはめんどくさそうな表情となる。

 

「はぁー、ほんと叩き潰しがいのある奴らだぜぇ!」

 

 まとめて蹴飛ばす、と。その腹積りでグレンデルが動こうとしたその時。

 

『面白そうじゃん、私も混ぜてよ』

 

 突如として地面が捲れ上がり。そこより巨大な影がぬぅ、と姿を表した。

 

「あん!? 何だテメェ!」

『なんだかんだと聞かれたら、応えてあげるは世の情け』

「何でお前がそのネタ知ってるんだよ」

 

 乱入してきたのは、大型の騎士甲冑型ゴーレムだった。その口上に思わずツッコミつつ、ハジメは警戒を怠らず……自分達を守る様に現れたそれを見上げる。

 

『私はミレディちゃんだよ〜? 覚えていってね、邪悪なドラゴン君』

「……おう」

 

 その空気に、明らかにやる気が失せた様子のグレンデルだが、目標を殺せていない以上。目の前の珍妙なゴーレムをどうするかと思案した。

 

『そこの子たちは少し休憩しときなよ。私がその間は守ってあげるから安心した前!』

「ちっとも安心できやしねぇ。まぁ、任せる」

『エヒトが殺したがってる人間なんて面白いのが現れるなんて。そういう子は保護するって取り決めだから、試練は一旦中断ね♪』

 

 めんどくさい。そう口に出しかけるも飲み込むハジメは双葉の口に神水の入った容器を突っ込んだ。壊獣バトルに巻き込まれるのはゴメンだと動こうにも、グレンデルがそれを許さないだろうと。ここに留まる判断をせざるを得なかった。

 

「んぐ……なかなか魔力が回復しないわ。神水の効率じゃもうあたしの方は追いつかないみたいね」

「んだよそれ。まぁいい、どうする?」

「やるしかないでしょ。んなもん」

 

 アレを倒さないとこの世界がどうなろうと知ったことではないが。なんかよくわからないがエヒトに香織が狙われているのだ、無視できるわけがない。

 それを他所に。戦い始めたゴーレムとグレンデルの戦いは中々互角……とはならなかった。

 

『何こいつ、クソ硬いんですけど!?』

「げはははっ! そこそこな打撃だがそんなチンケな鉄の塊で俺を殺せると思ってくれるなよ? ましてやゴーレム風情にやられるドラゴンがいてなるものかよ!」

『ぐぬぬ、やっぱドラゴン相手はキッツイなぁ! でもやるしかねー!』

 

 左腕のモーニングスターで殴りかかり、面白そうだからというふざけた理由で受けたグレンデルにヒットした後。その超重量のボディを、重力を無視した様な身のこなしで後退しつつ……左腕をぐわんと振り回しながらモーニングスターを射出した。

 スリムなデザインの装甲内の何処にチェーンを内蔵してるのだろうかと思っていたがそうではなく。

 

 まるで宙に浮く(・・・・・・)様にして手元に戻る。

 

『鱗固すぎでしょドラゴン君!』

「俺の鱗は邪龍ん中じゃピカイチの硬度だからなぁ! そらこっちの番……だぁぁ、クソッ手前もなかなか硬えじゃねえか、気に入った!」

『オー君に作ってもらったアザンチウムのボディ凹ませる様な奴に気に入られたくねーよぉぉ!』

「サンドバックにもってこいなんだよぉ!」

 

 ‘売り言葉に買い言葉’。そんなやりとりをして嫌々殴り合ってるゴーレムと嬉々として殴り合うドラゴンの応報は双葉の想定以上に時間を稼いでいだ。そんな中で、ハジメは焦りを見せる。

 

(どうやってあの‘硬度’を超える火力を用意する……一手はある。だが、捉えるまでに時間がかかり過ぎる。あのゴーレムだってあと数分保つかどうかだ……!)

 

 べこべこの装甲を見てハジメは戦慄する。アザンチウムを、あそこまでボコボコにするのだ。その拳の威力は双葉以外、自分達が直撃すれば致命的な一撃になりかねない。

 

 ── で、香織とハジメにもその神器が宿ってる気がするのよね──

 

(……そうか。そういうことか)

 

 かつて言われた双葉の言葉がハジメの中でフラッシュバックする。

 

「所有者の想いと願いの強さに応えるように力を顕現させる……」

「ハジメ?」

(だが、‘想い’と‘願い’。そんな抽象的なもんで本当にいいのか?)

 

 ハジメは残されたわずかな時間で自分の‘望み’に気づいた。

 

(俺が生み出したいものは何だ。魔剣とかかっこいいよな、そうだそういう‘奇跡の創造’だ……!)

 

 ハジメは強くイメージする──自分の憧れを。その男に近い姿になってしまったのは正直言ってもう一度気絶したい。だけど、その男が成し得なかった‘本物’を作りたいという‘願い’

 

「励起しろ……‘夢幻の金床(インフィニティ・フォージ)’……!」

「……ハジメくん!? それって……!」

 

 ハジメの呟き。迸ったオーラが形となり……彼の右手に現れるのは‘黄金のハンマー’だった。その作りは精緻で、美しいものだ。幾何学模様の赤いラインが目を引く……ソレは間違いなく。‘神器(セイクリッド・ギア)’だった。

 

「そうだ。俺が望んだ、俺が作りたいのは。‘武器’だ」

 

 彼はハンマーを振るった。宝物庫より取り出したのは‘金’だった。

 

 カーン!と一振りで金は光の粒子へ

 

「数多ある可能性」

 

 カーン!と二振りで粒子は剣状に

 

「行き着くべき逸話」

 

 カーン!と三度振ればその鋒から柄頭までがあらわに。

 

「その再来をこの世に呼び戻そう!」

 

 カーン!と最後に振りかぶれば……

 

「‘神器再生(ギア・リプレイ)’……‘永久に至らぬ黄金の剣(エクストラ・ロスト・カリバーン)’づっ……!」

 

 血涙に鼻血を流すハジメに驚きながらも、香織は聖女の微笑みで彼を治療する。癒しの波動で楽になった彼は自分が作り出したものを見て、「なるほど、な」とつぶやいた。

 ソレを解析。荒い部分などもあるが、間違いなく。「聖剣に限りなく近い使い捨ての武器」と見抜いた。

 芯鉄の加工の未熟さを顧みればその点は仕方ない……ハジメは素人なのだから。

 スタミナを回復させた双葉もまたその一部始終をぼーっと眺めていた。いや、何やねんソレという顔をしているが。

 

《フタバ……おい。聞いてんのか》

《ふぁっつ?》

《ったく、おい。白いの》

《急かすな赤いの。フタバ、今の現状を打開する方法を提案する。あのゴーレムも保ってあと1分だ》

《ふぁっ!?》

 

 精神世界に突如として引き込まれた双葉。

 

《グレンデルのやつ、異常な進化をしている様でな。どうにも引っかかるが、おそらく今のままでは勝てん》

《故に、‘至る’必要がある》

《……でも、それって……一歩間違えたら‘ヴォーティガーン’が目覚めるじゃん!》

《ソレも承知の上だ。俺たちの心を一つにするのが難しいか?》

《赤いの……いや、ドライグ》

《言うな、アルビオン。あとはフタバの心一つだ》

 

 二人の決意、双葉に問いかける。覚悟はあるか、と。

 

《でも、どっちかにしかなれないんでしょ?》

《ああ、俺たちのどちらかの鎧しか使えんだろうな》

《どっちを選ぼうとも、我々に悔いはないさ》

《バカ。あたしが納得できないよ》

 

 二人と共に歩まねば意味はない。双葉はそう切って捨てた。

 

《なら、三人で至ろうよ。‘ヴォーティガーン’を恐れて何もしない方が間違いだから!》

《お前ならそういうと思っていたぞ》

《同感だ、だが。悪くない》

《でもさ、至るって……どうやるの? そもそも資格はあるの?》

《条件は既に満たしている。ソレほどまでにお前は色々経験しているからな》

《うむ。あとはきっかけ次第だ……フタバの願い次第だ》

《あたしの‘願い’……》

 

 目を瞑り、考えた。脳裏をよぎるのは、仲間たちの笑顔。幸せな世界……辛く絶望に飲まれかけたこころを救ったのは友達や親友、愛するヒト……

 

《あたしは、負けたくない。どんな奴が来ようと、‘無限’に強くなりたい! ‘夢幻(ゼロ)’をも超えるほどに!》

「かけがえのない、みんなを守るために! 限界だって超えて見せる!」

 

 心の叫びが現実に顕れた、ソレは双葉の願い。友と共に地球に帰る約束──付き従ってくれる友と共に調和を願う心が奇跡を起こす。

 

「行くよ、ドライグ、アルビオン。赤龍帝の籠手! 白龍皇の光翼!私の魔力は‘調和’。相反する力二つを調和する!」

 

 オーラを昂め、高める。手を繋ぐ様に、神滅具と経路(パス)を繋ぐ。

 

禁手化(バランス・ブレイク)……いいや、違う」

 

 双葉は今までのソレを容認しない。思い描くは己たち3人の最強の姿。手を天に掲げ、高らかに詠う。

 

「我、理を超越せし新たなる天龍なり。王道を超え、覇道を制し。‘無窮久遠’をその手に掴もう! 新たな、真なる龍神に至るその始まりを征く!」

 

 至る心。三つの心が一つに調和してゆく。そして、それは解放される

 

「──‘双禁手化(コスモス・ブレイク)’ッッッ!!」

 [Welsh Dragon ×(cross) Vanishing Dragon ──Evolution next stage‼︎ Warning! Warning! ……Cosmos Blake!!]

 

 赫く、銀の煌めきを見に纏い。双葉の姿が変わってゆく。赫を基調とする白金の縁取りの施された厳かな威容の鎧、胸当て、草摺、籠手、脛当て。そして目を引くのはソレらと共に双葉の衣服がスリムなバトルドレスへと変貌したことだろう。

 双葉の豊かな肢体を際どいところで見えないくらいに守るドレスだったが気にすれば負けだ。その背には青い円光と2対の白い龍翼を背負う。

 双葉の毛先のグラデーションに虹色の光が宿り。黒鉄色の髪はところどころに赤と白のメッシュが入る。

 右の青の瞳は燃える様な燐光を引き、高まった魔力を著し。左の金の瞳は未来を見通すことを表すのか、時計版を模したかの様な紋様が見える。

 

二天龍の姫鎧(エヴォルター・アーク・ドラゴンドレス)!」

 

 新たな産声を上げるのは、秩序も超える進化を果たした二天龍姫。いま、彼女は飛翔する。そして、刮目せよ。その強さを!

 

 ──

 

 to be continued

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