ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双   作:ゆきほたる

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1章
奈落の底の自己紹介


 □noside

 

「ここが奈落、その底……か」

 

 他の階層と似たような、それでいて違うような……雰囲気が全く上層と違う薄暗い場所。奈落の底に双葉たちは降り立った。

 

「……綺麗な翼だねぇ。シャドウ・ディバイン・ディバイディングだっけ?」

「そもそも、双葉って何者なんだ……赤い籠手とかあれ……身体能力とか倍加してたよね?」

「よくわかったね、ハジメ。これは擬/白龍皇の光翼(シャドウ・ディバイン・ディバイディング)。アルビオン、挨拶」

『全く、物好きだなフタバは。私はアルビオン。大昔には白き龍(バニシング・ドラゴン)と呼ばれていたドラゴンだ。以後、お見知り置きを』

「喋るの!? ジャズレイの声に似てるかな!?」

「やめて差し上げて、香織さん!?」

『……ぉぉぉんッ!? 私をあのケツアゴと一緒にするな!!』

「──なんでやねん」

 

 無邪気に騒ぐ香織と、双葉が静止して。そして叫ぶアルビオン。その様子に思わず関西弁で突っ込むハジメ。いや、中の人は一緒だけども。

 

「あ、アルビオン……さん? もういいよ、喋らなくても。無理しないでね?」

『……ありがとう、フタバ。少し、私は眠る』

 

 アルビオンがそう声を発すると白龍皇の光翼は沈黙。不貞寝するように、霧散して消えてしまった。

 あの夢で並行世界のアルビオンを見てから、双葉はなるべくアルビオンとドライグに優しくするようにしていた……繊細な彼らが精神疾患を患う様を見たら。こう、過保護にもなってしまうだろうか? 

 

「アルビオンは繊細だから、声優ネタで弄るのはやめてあげてね香織。ここまで降りてこられたのもあの子のおかげなんだし」

「あぅ、ごめんなさい」

 

 香織を嗜めつつ、双葉は擬/赤龍帝の籠手(シャドウ・ブーステッド・ギア)を顕現させるとドライグに呼びかける。

 

「ドライグ、アルビオン……どう?」

『……白いのが不貞寝したぞ。何かあったのか?』

「これも喋るの!? はじめまして、碇ゲンドウさん!」

『……おう、マダオって呼ばないのか、マダオの方が幾分か気楽なんだがな』

「なら長谷川 泰三さん?」

 

 香織はならば、とその名を呼んだ。すると、擬/赤龍帝の籠手、その宝玉部分が激しく点滅する。

 

『言い直さなくていいから! ね? 落ち着こうね!?』

「ドライグ!? キャラ崩壊してるわよ!?」

「──なんでやねん」

 

 思わず突っ込むハジメ。ツッコミが板についてきたとからは思っていた。

 

「ドライグも、ありがとう。かっこいいマダオもいるから、あまり気にしないでね?」

『たまに良いキャラするけどさぁ!? ──かっこいいマダオって結局マダオじゃねえか!!』

「……それもそうだった」

『無自覚!? わざとだよね!? わざとだって言ってくれフタバぁぁぁぁ!?』

「ご、ごめん」

 

 少し──いや、かなり。ドライグが騒いだが、しばしして落ち着きを取り戻してから彼は自己紹介を行った。

 

『ふぅ、やっと落ち着けたな。俺はドライグ、赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン)とか呼ばれてたが赤龍帝ってのが通り名だ。よろしくな、ハジメ、カオリ』

「こちらこそ、宜しくお願いします!」

「よろしくね、ドライグさん」

「んじゃそろそろ魔力やばいから、ドライグ……休んでね」

『おう。ここは異質だ……気を付けろよお前ら』

 

 赤龍帝の籠手が霧散して、双葉は2人に向き直る。

 

「改めて私のことも話しとくね。私は天龍双葉……隠してる名前を明かしておくと、‘レギンレイヴ’って呼ばれるわ。ヒトとヴァルキリーの合いの子であり、‘神器(セイクリッド・ギア)’を使う‘異能者’と呼ばれる存在よ」

「なるほど、‘自称ヴァルキリー’はガチヴァルキリーだったんだね!」

「厨二病を拗らしてたわけじゃなかったのか……ごめん、双葉」

「アンタら殴っても良い? 良いよね?」

「「ごめんなさいっ!」」

「人が真剣な話をしてるときに揶揄うのはマナー違反よ」

 

 揶揄った2人は凄む双葉の迫力に圧され、反射的に謝罪する。それだけ恐ろしい気配を感じたらならば誰だってそうするだろう。

 

「普通の人間……とは言えないけど、あたしは今もあなたたちを……」

 

 聞くのが怖い、そんなネガティブな心が一瞬。双葉の足を止めた……が。

 

「私にとって双葉ちゃんは大事な幼馴染だよ! 例え、生まれが違っても友達に、親友に、好きな人に変わりはないから!」

 

 屈託のない笑みを浮かべる香りが彼女に抱きついた。そして、微笑ましい光景を見ているハジメもまた。

 

「僕も香織と同じだよ、双葉。君のおかげで僕は香織と付き合えたし、何より。趣味を共有できる友達が増えて僕は嬉しかったしさ……幼馴染、みたいに親しい関係じゃないけど、君は僕にとって。何者にも変えがたい友達だよ」

「香織……ハジメ……ありがとう」

 

 双葉は拒絶されるのでは、と身構えたが。それは杞憂だったようで。2人は彼女を受け入れる。

 

「あ、さっきの‘好きな人’っていうのは性的にも好きって意味だからね?」

「「……は?」」

 

 香織のその一言は色々台無しにした気がするが、2人は聞かなかったことにした。

 

 ■双葉side

 

 2人に神器とはなんぞや、そして神滅具(ロンギヌス)についてを説明しつつ。私は前々から感じていた2人の内側にある力を指摘することにした。

 

「で、香織とハジメにもその神器が宿ってる気がするのよね」

「ホント!?」

「マジで?」

「ここで嘘つくメリットがあると思う?」

 

 とは言え。何が宿っているかはわからないし、いつ発現するかもわからない。生涯、使うことなく終えるかもしれない。

 

「まぁ、あなたたちの今後次第で使えるか使えないかはわかると思うよ」

「りょーかい。「所有者の想いと願いの強さに応えるように力を顕現させる」……かぁ……」

「そうとしか言いようがないのが実情よ。さて、そろそろ魔力も回復したから……今後の方針を決めましょっか」

 

 私は2人に向けて指を三本立てて見せる。そして、簡潔に提案した。

 

 一つ、ここで救助を待つ。

 二つ、上層に至る階段を見つける。

 

「そして、三つ目。「この奈落を攻略してしまう」……こんな感じね」

 

 一つ目は望みの薄い選択だろう。ここはどう見ても65層目よりもさらに下。人類の到達点よりも遥かに深い階層だろう、なので無理だと判断する。

 

 二つ目。階段があると思うが、何日も保たないだろうと思う。理由は……

 

「食料がないもんね……」

「元々日帰り。一応、私はこんだけ持ってきてるけど」

「用意周到だね……けど、これって2週間分?」

「1人だけで2週間保つ程度、それもギリギリまで切り詰めて、ね。3人だとたぶん、3日保つか保たないかじゃないかな?」

「ここを彷徨い続けるくらいなら、下層に行ってみるのも価値があるってことね」

 

 手持ちの保存食を見せて、香織が納得したかのように頷いた。

 

「攻略しよう。その方がいいと僕は思う」

「オーケー。ハジメは攻略に一票ね? 香織も同じ?」

「うん、現状を打開するにも進む方がいいと思う」

 

 2人の意見を聞き、わかったと頷く。

 

「そんじゃ行きましょっか。生きるために、ここをなんとしても攻略、そして地上に帰りましょ」

「うん!」

「もちろんさ……生きて帰るためにも!」

 

 2人は先よりも希望を見つけたようで何より。絶望感はまだあるが……私は光すら見えなくなった頭上を見るが、前途多難。だが、それがどうした。

 

 できないことはない。そう自分を鼓舞するよう、一歩を踏み出す。

 

「ハジメ、そういえば錬成の魔法陣見せてくれる?」

「え、ああ、はい」

 

 手袋を見せてもらい、私は魔力の流れなどをイメージすると

 

「こうかな?」

 

 付近の壁を触りながら‘錬成’。簡素ながらも槍を作り出す。

 

「魔力操作ってずるいなぁ」

「その代わり派生スキルが一切獲得できないのが玉に瑕なのよ」

 

 悔しがるハジメに苦笑しつつ。私たちは歩き出した。

 

 ──この時はそう言い聞かせて奈落の底だろうがなんだろうが攻略できる、と思っていた。

 

 だけど、あたしは現実を突きつけられる。その代償は……とても大きなものであるなんて、この時は思いもしなかった。

 

 ──

 

 to be continued

双葉はハジメのハーレム入りすべき?

  • NOハーレム入り。孤高で
  • YESハーレム入り。ラブラブ目指して
  • 別のキャラと良い感じに?
  • 何故かティオのご主人様に
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