ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
□noside
深い深い奈落の底に作られた穴蔵に響く打撃音と刺突音。
「グルゥォウ!」
「ええい、うっとおしい! あーもう、狼ってホントめんどくせぇぇぇ!!」
壁際に錬成で穴蔵を掘って窪みを作って逃げ込んだはいいが、一体が塞ぐ前に入り込んできたため、双葉が応戦中である。
ハジメと香織はの奥の方へ避難しているので、今のところは無事である。
「だらっしゃあ!!」
「ぎゃぁうっ!?」
跳ね回る狼の横っ面を蹴りつけ怯ませるとそのまま引いていた槍に‘神速’を載せて突き込む。しかし、ぐんっ! と硬い毛皮に阻まれて貫くことはできない──それでも刺突のダメージは入っているので狼も無傷では済まないのだが。
「双葉ちゃん、なんか危ないと思うよ!」
「やばい! こっちにきて、双葉!」
香織が赤黒い雷の発生を感じた直後。二本の尻尾が逆立ち、赤黒い稲妻が双葉目掛けて飛来する。
「グルウォォォォン!!」
「なんだばばばばば!?」
‘魔力耐性’が自動発動。双葉を守るべく魔力を犠牲にダメージを抑える。が、しかし……想定以上の威力で一瞬硬直してしまう。その隙を逃さんと狼は噛み付くべく顎を開き飛びかかる。
「ガァッォッ!!」
「やっ、ば、い──なんてね!」
だが、しかし。痺れたふりをしていた双葉は、その噛み付きに対して腰に差していた短剣を抜くとそのまま狼の口内に放り込む。短剣には‘風刃’……万物を割く風の付与魔法が施されている。
「オオオッガッ!?」
喉の奥に短剣を突き立てられ、呼吸する度に肺に血が流れ込む。窒息間際といったところに。
「
真紅の籠手を左腕に出現させ[
ゴキャッ! と派手な音とともにパキンッ! とも聞こえる。
狼は首をへし折られて絶命し、その喉に突き刺さっていた短剣もついでに折られていた。
「はぁぁぁぁ……疲れた、なんなのコレ。一体倒すのにめちゃくちゃ苦労するんだけど」
「おつかれ……双葉。怪我はない?」
「とにかく治療するね?」
香織の治療を受け、休憩しようと提案した双葉は。肩から下げているバックの中から手書きの地図を取り出すとハジメ、香織に見えるように見せる。ヴァルキリーの五感によって捉えられた、反響する音をもとに書き上げられたこの地図は正確なもので精度は完璧である。
「今いる場所はあのスタート地点から離れてここ。限界まで気配感知を伸ばしたらおよそ五百メートル以内にウヨウヨ魔物の反応があるからたぶん、この階層だけで一平方キロメートルは普通にあると思う」
「えっと、時計の通りなら今日で2日目。食料も……やばいね」
「どこかで食べ物を探さないとダメかなぁ」
「そうね。食べ物を探さないと死ぬわ、間違いなく。ただ、ね?」
双葉は地図に書き込んである未知の反応を指し示す。
「ここにクソデカ魔力溜まりがあると思うんだよね。未だに到達はできないんだけど、絶対何かある。埋まってるのかもしれないし」
「双葉ちゃんの魔力感知に[特定感知]が着いてから魔物の位置も正確性が出てきたもんねー」
双葉はこの2日間で大きく成長していた。ふとステータスプレートを見てみると。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
天龍双葉 17歳 女 レベル:4
天職:
筋力:800
体力:500
耐性:500
敏捷:600
魔力:600
魔耐:700
技能:全属性適性・全属性耐性・全魔法適性・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・物理耐性・魔力耐性・複合魔法・槍術・神速・縮地・擬/赤龍帝の籠手・擬/白龍皇の光翼・高速魔力回復・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・ノルンの瞳・限界突破・言語理解
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
双葉はこの‘奈落の底’にてやっとステータスが伸び出したことを実感する。いや、今もなお異常な成長率は実感しているが。上層部の雑魚では試練もヘッタクレもない雑魚散らしのようなものだったから当然といえば当然なのだろう。
なお、ばったり出会って即戦闘などは、二つの特定感知のおかげか。出会い頭に襲われるようなことはなくなってはいる──双葉以上の力を持つ格上に対しては反応しないと言う弱点もあり、過信はできない代物だ──が。なお、だいたい単独で行動しているのがウサギ、群れているのが狼である。
「とりあえず、水がないし。水源に行くわよ」
「あい!」
「了解」
2人の返事を聞きながら、双葉たちは移動を開始した。
■双葉side
地図を頼りに私たちは迷宮を歩く。そして、水場の近くに来て……気配感知に何かが引っかかり、2人に無言で片手をあげて止まるように指示する。
少し間を置いて、じっとしていると、何かがぴょこぴょことやってきた。それの正体は…… 可愛らしい見た目のウサギの魔物。クソみたいな性悪だけど見た目は可愛いとだけ言っておいてやる。
いや、やっぱ前言撤回。ものすごく不気味。
そりゃ、大きさが中型犬くらいあり。後ろ足がやたらと大きく発達しているし、何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っているときた──正直グロい。
まぁ、面倒なのでやり過ごそう、そう考えて様子を伺っていると……ウサギもどきはぴんと背を張り、耳を立てる。見つかったわけではないが、と考えていると。二尾狼が4体、ウサギもどきに突撃していった。
おうおう、死んだわあいつら。瞬く間に瞬殺される狼の群れを見て、その凄絶さに怯えた2人が無意識に後ずさった時。カラン……と静寂の中で音が鳴り響いた。ギョッとしてそちらを向くとハジメが石を蹴ってしまったようだ。なるほど……ヤバイね。
ハジメは油を刺していないブリキ人形みたいに私の後ろを見て、ウサギと目を合わせてしまっていた。
「……逃げなさい!」
私は掴んでいた狼の死骸の尻尾を振り回し、毛玉に投げつけつつ。2人が逃げ出すのを見届ける。
そしてすぐに「オゥゥゥゥンッ!」と吠え真似。それと同時に擬/赤龍帝の籠手を左腕に出現させてすぐに倍加を起動。
狼がまだいたのかとうんざりしたような雰囲気で死骸を蹴り、あっけなさすぎる結果に違和感を感じたのか、「キュ?」とマヌケを晒している。その隙を逃すわけもなく、ウサギに不可視の魔力、風刃を射出した。
「キュウッ!?」
「それ、囮だから」
ウサギもどきは空を蹴って跳躍して魔力を躱すが、遅い。縮地で距離を詰めながらその首に腕を引っ掛けながら神速で加速。ウサギの頭を迷宮の壁に挟むようにして叩き付ける。
当然、ステータスの暴力……とはいかず。ウサギの頭を「壁に埋める」くらいしかできない。だが、時間は稼げた。このままもう1段階上げて槍を突き込めば倒せる。
この時、失念していた。なんとか、これで倒せるだろう、とか。レベルは上がるかな? とか……あたしは油断しきっていた。そして、此処がどこなのかを忘れたわけではなかったけど。ここ最近の順調さに対して慢心を抱いていたのは否定できない。
何が言いたいのかというと。ズン、という音とともに唸り声が聞こえた。ハッとしてすぐにその場を逃れるべく、後ろに飛ぶ。振り返りながら飛んだのは不味かったかもしれない。だけど、それを後悔する暇はなかった……視界の端で鮮血が舞う。やけに、右腕が軽い……ひどく、痛む……
「ぎっ……は? ──あ” あ” あ” あ”っっ!?」
落ちた腕。右腕に手を伸ばそうとするも、ズン! と大きな手が、前足がそれを阻んだ。見上げると、あたしの腕を落とした‘敵’がそこにいた。白い体毛の、大型猛獣。レベルの差があったから接近に気がつかなかった……いや、遭遇した事が無かったから分からなかったんだろう。
その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら白熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えている。
「っ……天恵っ!!」
「ルォァァァァ!!」
あたしはフルに魔力を傷の回復に回し、止血つつ、振り上げられた手を避けるべく神速の最大出力で後退。30mほど離れた位置に移動してそこに肩から下げていたバックの中から、保存食……頼みの綱である食べ物ををそこらにばら撒いて捨てる。
「いっつ……遠距離攻撃待ちかよ!」
だらり。と生暖かいものが流れる感覚とともに激痛を感じた箇所を見ると、左肩を切り裂かれていた……風属性の魔法でも纏わせてるってわけかよ畜生め! 内心で閣下みたいに愚痴りつつも、加えて錬成を行い。あたり一面に短く、鋭い棘を仕込み。ばら撒いた保存食の付近にセットする。
そして、また錬成。次は後ろに下がり、距離を取りながら壁を幾重にも重ねて作る。その厚みは一枚六十センチメートルほどで、5枚作り出した。突破は困難だろう。保存食はくれてやる。マップさえ押さえれれば問題はない……しかし食料を全て失った。
2人になんと説明しようか……そして、逃走しながら腕を確認。左腕は無事で右腕は肘の付け根から先がスパッと切られていた。今はもう止血及び傷口の治療……完全に傷口を皮膚で覆い、うっすらと肉をつけて骨の露出も抑えるように回復させていた。
失った血はすぐに止血したから問題はない量で抑えてある。しかし、2人にどう説明するか……ともかく、食べ物を探さないとダメかなぁ。ふと、先程ウサギに殺されていた狼の死骸が目に入った……食べれるのか、これ?
魔物を食べるとまず普通の人間は死ぬ。あたしも死ぬかもしれない。ドライグは今眠っている。倍加を使いすぎるとドライグに負担を強いるので、基本的に眠らせてあるわけである。
気がつくと狼の尻尾を掴み、ずるずると引きずりながらハジメと香織を探していた。そして、錬成の痕跡がある壁を見つけてそこに入ると、壁の中には通路が。
奥に行くと青白い光が室内を照らし、輝いていた。
「双葉ちゃん! 無事!? 大丈夫!? 怪我はして……え?」
香織に触れられると、力が抜ける。いや、たぶん……限界を越えたんだろう。意識が遠ざかる。前に進めない。右腕を失いながらも、なんとかハジメと香織の元に合流することができたのであった。
■ハジメside
水を汲み、僕は双葉にわかるようわざと錬成の痕跡を残して壁に穴を開けて奥に入ってきた。そして、見つけた。双葉の探していたものを、神々しい魔力の塊を。
「双葉ちゃん? ……そんな、双葉ちゃん!!」
「香織、落ち着いて! 双葉は気を失っただけ──」
「ハジメくん、どうしよう……双葉ちゃんの右腕がないの!」
「……え? 嘘でしょ!?」
案の定、僕らに気がついて双葉が戻ってきたのだが……戻ってきた彼女の姿はとても痛々しいものだった。服の至る所に裂けたような跡があり、左肩には致命傷は避けてはいたが、大きな3つの裂傷がある。
そして、ない。彼女の「右腕」が。何と戦えばそうなるんだろうか? 彼女がなぜこんな目に合わないとダメなのだろうか?
「こんなの、こんなのあんまりだよ……」
「香織……今はこれを飲ませてあげようよ」
僕は香織にそう提案するしかなかった……頭上で青白く光るこの石は神結晶。
図書館で勉強していた時に偶然見た伝説の鉱物だ。
神結晶は、大地に流れる魔力が、千年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。直径三十センチから四十センチ位の大きさで、結晶化した後、更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。
その液体を神水と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。神代の物語に神水を使って人々を癒すエヒト神の姿が語られていると本には記載があった。
「双葉が目を覚ますのを待とう」
香織に苦し紛れの提案をして、彼女が頷くのを確認した僕たちは。今は眠ることにするのだった。
──
to be continued
双葉はハジメのハーレム入りすべき?
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NOハーレム入り。孤高で
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YESハーレム入り。ラブラブ目指して
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別のキャラと良い感じに?
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何故かティオのご主人様に