ありふれない天龍姫と魔王の異世界無双 作:ゆきほたる
□noside
双葉と合流した香織とハジメ。しかし、ダメージのせいで回復魔法を使用しても彼女は深い眠りについたままであった。
そんな折に、ぐるるるる……と何やら音がする。それは腹の虫で、香織とハジメはお互いに顔を見合わせ苦笑した。
双葉への処置は終わっている。服の破れはハジメが錬成で修復したし、新たな槍も作り出した。彼女が目覚めるのを待つだけなのだが……
「双葉ちゃん、ほんとによく眠るなぁ……お腹すいた……」
「うん、ほんとにお腹がすいたよ……カバンの中の保存食はなかったから多分。魔物に襲われて逃げるために……」
双葉が生きていて良かったと思う反面。これで自分たちは決断を迫られている気がするハジメ。視線を移すと、二尾狼の亡骸がある。
「魔物を食べると体が弾け飛んで死ぬ。だけど、このままじゃどのみち僕たちは飢餓であの世行きだと思う」
「なら死なないように食べればいい。だね?」
ハジメの言葉に追従するよう、香織は彼の言わんとすることを理解した。
そして、ハジメは錬成を用いてノコギリ状のナイフを作ると、肉を切り出した。
どこが食べれるかなどわからないが、大腿あたりの筋肉な部分を抉り。そして香織が発生させていた火種の上で炙る。
肉食獣の肉故にその臭み、えぐみが煙に混じり。酷いことになっていたが2人は我慢する。
「覚悟はいいか、香織」
「栄養失調で死ぬか、これを食べて死ぬか……その二択なら、可能性がある方を私も選ぶよ」
そしてハジメがまず、覚悟を決めて。魔物の肉を噛み、咀嚼。飲み込んだ。
「ゔ……まずい……めちゃくちゃまずい……でも、お腹を満たせるならこれでも食べれる」
「体に変わりはない? 大丈夫?」
「へいきへっちゃらさ──ッ!? アガァ!!!」
「ハジメくん!? どうしたの!?」
突如全身を激しい痛みがハジメを襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。
「すぐに治すから! 天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん──‘天恵’ッ!」
香織は持てる魔力の全てを注ぎ込み、ハジメの治療を行う。みるみるうちに彼の内をのたうち回る痛みが引いていく。
「ぐぅあああっ。また、だ……──ぐぅううっ!」
しかし、耐え難い痛みが。彼を再び侵食していく何か。たまらず、ハジメは地面をのたうち回る。
「なんで治らないの? くっ、天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん──‘天恵’っっ! ……あぅ、魔力が……」
「香織、無茶する、な! ──ひぃぐがぁぁ!! くそ、あがぁぁ!」
再び治療の魔法をハジメに行使する。そのうち、魔力が枯渇してしまい香織は地に伏せてしまった。
が、しかし。香織は震える手で、神水を掬い取ると飲用。すると、みるみる魔力が漲り回復する。
「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん──‘天恵’っっ!」
ハジメの体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打つ。至る所からミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。
しかし次の瞬間には、治癒魔法が効果を発揮して体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛。そして修復。
香織は魔力枯渇から回復、枯渇を繰り返しながらハジメの治療に専念する。
ハジメはただ痛みに耐え続け、香織を信じて。折れそうな心を叱咤して意識を保つ。
ハジメは声を飲み込み、かわりに地面をのたうち回り、頭を何度も壁に打ち付けながら終わりの見えない地獄を味わい続けた。何時間か、何分か、あるいは何秒か。時が永遠にも感じ始めた頃──ハジメの体に変化が現れ始めた。
まず髪から色が抜け落ちてゆく。日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。
まるで、この層にいる魔物達のように、白く染まっていく。
次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。
──超回復という現象がある。
筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象で、ボディービルダー達がよく筋肉を鍛える時に利用する自然現象である。そして、これは骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。今、ハジメの体に起こっている異常事態も原理はそれと同じ。
魔物の肉は人間にとって猛毒だ。魔石という特殊な体内器官を持ち、魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する魔物。体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする。それは魔物にとっては普通のことだ。しかし、人間は違う。とにかく、この変質した魔力が人間にとって致命的なのだ。人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。
過去、魔物の肉を喰った者は例外なく体をボロボロに砕けさせて死亡するのは人間の細胞が耐えきれず、破壊され──体を崩壊させるためだ。
「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん──‘天恵’……死なせない、私が絶対に死なさないから!」
「香織……ぐっ……」
しかし、傍で懸命に治療を続ける香織がいたので、ハジメが死ぬ前に体を修復される。その繰り返しでハジメの体はより強靭に作り替えられていく。やがて、脈動が収まりハジメはぐったりと倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっており、服の下には今は見えないが赤黒い線が数本ほど走っている。まるで蹴りウサギや二尾狼、そして爪熊のようである。
ハジメがピクリと動いた。閉じられていた目がうっすらと開けられる。焦点の定まらない瞳がボーと自分の両手を見る。やがて地面を掻くようにギャリギャリと音を立てながら拳が握られた。ハジメは、何度か握ったり開いたりしながら自分が生きていること、きちんと自分の意思で手が動くことを確かめると彼はゆっくりと起き上がった。
「やれやれ……本気で死ぬかと思ったよ。ありがとな、香織」
「ハジメくん……よかった……!」
少し、雰囲気が変わった。それでも香織にとって彼は‘愛しの君’だ。
香織はハジメに抱きつき、無事を喜ぶ。抱きつかれたハジメは押しつけられる柔らかな二つの感覚に対して意識しないよう努力した結果。疲れ果てた表情で、苦笑うハジメ。
「香織、そろそろ離れてくれ。理性が溶ける……押し倒して一線越えそうだから、な?」
「私は別にいいよ……? 乱暴にしてくれても堪えるから、むしろウェルカム!」
「双葉がいるだろうが。せめてもう少し余裕がある時に、な? 約束するから」
「絶対だよ? 忘れたら許さないから!」
「わかってるって。俺が約束を破ったことはないだろ?」
言質は取ったと言わんばかりに香織は内心でほくそ笑む。なお、この言質は他の一名も混じって実行され、干物の如くハジメが絞られる事になるが、少し先の未来での話である。言っておいていうのもアレだが、ハジメは桃色地獄を見たとのちに語ったとか、語らなかったとか。
それはさておき。壮絶な痛みにより疲れはあるが妙に体が軽く、力が全身に漲っている気がするハジメ。それはベストコンディションと言ってもいいのではないだろうか。腕や腹を見ると明らかに筋肉が発達しており、実は身長も伸びている。以前のハジメの身長は百六十五センチだったのだが、現在は更に十センチ以上高くなっている。
「新生した気分だな…… 俺の体、一体どうなったんだ? なんか妙な感覚があるし……」
「大きくなってるよ、ハジメくん。成長した感じじゃないかな」
「たしかに、こんなに香織ちっさかったか?」
「ちっさいいうな〜!!」
ポカポカと力の入っていない‘はんまーぱんち’で抗議する香織をどうどう、と宥めつつ。ハジメは体の変化だけでなく、体内にも違和感を覚えていた。温かいような冷たいような、どちらとも言える奇妙な感覚。意識を集中してみると腕に薄らと赤黒い線が浮かび上がった。
「……キモいな、我ながら。なんか魔物にでもなった気分だ。……洒落しゃれになんねぇぞこれ」
「そう? 私はかっこいいと思うけど」
「──そうだ、ステータスプレートは……」
厨二病を発病したような気がして、香織に治療してもらおうかと本気で考えかける自身の思考をスルーするために、現実逃避気味にハジメは自らのステータスプレートを眺める。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8
天職:錬成師
筋力:200
体力:400
耐性:200
敏捷:300
魔力:400
魔耐:400
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解
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「……なんでやねん」
「すっごいね……双葉ちゃんには劣るけど、私よりすごいよ?」
「そうだな。マジで魔物化した気分だよ」
軒並みステータスが爆上がりしていた。
「魔力操作って、双葉のアレか。俺もできるようになったみたいだな」
「ほぇ〜……(ぐるるるぅ……)。私もお肉食べるね」
「ああ、そうだな。食わなきゃやってられないだろ」
香織も狼の魔物肉を食べたが、先のハジメほど激しい変化は起きなかった。
その理由は香織の魔力量にある。元々、天職が治癒師だったため魔力の才覚が高く。魔物肉を食べる前から魔力のステータスが150を軽く越えていたため。ハジメは体力も魔力もないもやしだったが故に「消耗するものがなかった」から瀕死になりかけ続けた事情がある。
そして、香織は神水を使って魔力を徹底的に回復し続けた結果。それほど激しい痛みに襲われずに済んだと言う訳である。
「……なんかごめんね?」
「いや、以前の俺が。俺が雑魚すぎただけだよ……負けた気なんてしてないからな!!」
ハジメの、男としての矜持を深く傷ついたくらいの被害であった。そして、香織のステータスプレートを見てみると。
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白崎香織 17歳 女 レベル:15
天職:治癒師
筋力:300
体力:500
耐性:400
敏捷:200
魔力:1000
魔耐:600
技能:魔力操作・回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動] ・光属性適性・結界術適性・高速魔力回復・胃酸強化・纏雷・言語理解
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先ほど、必死で延々と回復魔法を使い続けていた結果。回復魔法はエキスパートクラスの使い手に急成長していた。また、レベルも15になっていた。
「これはレベルの差だな、うん!」
「そうだね! ──これ、双葉が魔物の肉を食べたらどうなるのかほんとに興味あるわ」
「……考えたくもないが、双葉が食べたら……魔王くらいになるんじゃないか?」
「否定しようにも否定できないわ」
寝ている間に散々な言われようの双葉は泣いても許されるのではなかろうか?
とはいえど。2人が騒いでいる間も双葉は眠っていたが……彼女もまた目覚めようとしていた。
■双葉side
長い夢を見ている気分だった。それはまた、赤龍帝さんの記憶を覗くような感じで──並行世界を観測してしまっていた。
これ多分、‘ノルンの瞳’の仕業だな??? まぁ、タダで見れてるからいいとしよう。で、今回の赤龍帝は何をしているんだろうか? ……どうやら冥界で戦っている記憶を覗いているようだ。
……アレが‘
少なくとも、サドン・インパクトとかやらないよね……やってるけど。
そして、その相手は中華系のイケメンで、なんと曹操とか名乗っている奴だった。人間でありながら転生悪魔の赤龍帝を圧倒する能力の持ち主で、宿している
神滅具が並行世界には18個あるようだが、まだ見たことないんだよなぁ……ホントに存在するのかなってくらいだし。中華系イケメンの話を聞くに、詳細は不明だが始まりの神滅具こと、‘トゥルー・ロンギヌス’とやらとのこと。まぁ、トゥルー・《ロンギヌス》だしねぇ……納得もいく。さて、曹操に関しては。その槍捌きは神業の部類で、槍術を嗜んでいるあたしにはいい見本だ。必死に覚えるべく、彼の御業をパクらせてもらう事にしよう。
そして、その
しかし、若さからくる自信が原因なのか、だいたい赤龍帝さんに一矢報われる醜態を晒してるから……強いのか弱いのかよくわからん。いや、どこまで行っても「人間」だから一撃もらったら戦闘不能なんだろうけどさ。
──特別タフネスはない、弱っちい人間だしね。
さて、相手さんの話はもういいだろう。つか、赤龍帝さんについては深く触れないでおく。なんやねん、乳龍帝と
そして赤龍帝さんの恋人っぽい紅髪のお姉さんのおっぱい……正確には乳首からビームが迸り。赤龍帝さんに直撃すると体力とオーラが回復して、恋人さんのおっぱいが物理的に縮む特殊能力に目覚めていたりと訳がわからない。
──ガッツリ触れてるやないかというツッコミはやめてほしい。私だって触れたくないけど、ドライグとアルビオンが可哀想過ぎる。さすがに、相方の性癖のせいで威厳ある赤龍帝と白龍皇が。カウンセリング必須の精神疾患を患うのは理解できるわ……毎度毎度おっぱいで覚醒とか……私がドライグなら病んでるな! 絶対病んでるわ!
終生、この夢をドライグとアルビオンに聞かせるのはやめとこう……カウンセリングなんかできやしない、ドラゴンのカウンセラーとかニッチな職業なんてありませんからね。
こうして、あたしの意識は浮上するのであった。
──
to be continued .
双葉はハジメのハーレム入りすべき?
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NOハーレム入り。孤高で
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YESハーレム入り。ラブラブ目指して
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別のキャラと良い感じに?
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何故かティオのご主人様に