トレセン学園はトレーナーも魔境(荒木荘風味)   作:銀能神

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日常6『ジョニィとスローダンサーと○○○1』

 ここはチーム『SBR』の部室。

 そこには一人のトレーナーと一人のウマ娘が畳の上でちゃぶ台を挟んでお茶を飲んでいた。

 トレーナーの名前はジョニィ、ウマ娘の名前はスローダンサーといった。

 

「ふぅ、ようやく書類が片付いた。助かったよスローダンサー」

 

「いえ、感謝されるような事では……貴方の担当ウマ娘として当然です」

 

「そう言って貰えると助かるよ。そろそろスカウトするウマ娘の資料をじっくりと見たかったからね」

 

 スローダンサーはそんなジョニィの言葉にピクリと耳を立てて神経を研ぎ澄ます。

 お茶を飲みながらリラックスしていますという風を装っているが、ジョニィはそんなスローダンサーの内面を見抜きながらこれからスカウトをするウマ娘の資料をちゃぶ台の上に並べていく。

 

 そんなことをすれば当然スローダンサーの目にも入る訳で。

 

「トレーナー、私が見ても良い資料じゃ無いのでは?」

 

 今スローダンサーの視界に入った資料を少し見るだけでそう思わせられる程その資料の機密は高そうに見えた。

 何故なら普通に体重身長等の基本データは勿論レースの出走歴に挙げ句は普段行っているトレーニングの情報などが見えたからだ。

 寧ろどうやってこんな綿密なデータを手に入れたのだと呆れる程である。

 

 だがジョニィはそんな言葉をそよ風のように受け流す。

 

「君は僕の足と同じだ、特例で理事長に許可は取ってるし何も問題はない。寧ろ見てくれないと困る」

 

「いつの間にそんな……というか良く許可が取れましたね」

 

「昔の君ならいざ知らず今の君なら問題ないと判断したんだろう。僕もそう思ったから申請した」

 

 スローダンサーは、トレーナーに自分の足だと断言される程信頼されて嬉しい反面でこれから来る新入りのデータに目を通さないといけないという事実で感情がグチャグチャになりそうだった。

 

(何故私はこの空間を壊しに来る新入りを自分で見なくてはならないのだろう……)

 

 そんなことを思いながらスローダンサーはトレーナーの信頼を裏切ることが出来ず資料を手に取り読み始めた。

 

「トレーナー、幾つか候補がありますが……」

 

「ピンと着た娘を見せてくれ」

 

「えぇ……」

 

「君の勘なら信頼できると思ってる」

 

「……分かりました」

 

 そしてスローダンサーは適当に資料を幾つか流し読みして、ある程度の情報と感覚で何枚かを抜き出してちゃぶ台の上に並べていく。

 ジョニィの方も何度か唸っていたがやがて資料を横に置いて、スローダンサーが抜き出した資料を手に取る。

 更に何枚かスローダンサーは目を通して一つ、今まで見たウマ娘のデータから共通点を見つけた。

 

「トレーナー、このウマ娘達の資料って……」

 

「あぁ、基本的に伸び悩んでいる娘や何か問題があると言われている娘達だ」

 

 それは何故、と聞こうとして……スローダンサーは一つ心当たりが有りそれ以上声に出せなかった。

 その心当たりとは、スローダンサー自身の事だ。

 

「ト、トレーナー……もしかして…… 」

 

 ジョニィは溜め息を一つ吐いてからスローダンサーに一声「おいで」と声をかける。

 スローダンサーは恐る恐るといった様子でジョニィの方へ近寄っていった。

 耳が垂れて尻尾も元気が無くなったスローダンサーの頭をジョニィは軽く撫でながら目を合わせて言葉を紡ぐ。

 

「君の考えている事は分かる、自分のせいだと思っているんだろう? おおよそ『問題児であったスローダンサーを更正させ、更に冠まで被せたトレーナー』であり、それ以上他のウマ娘を何時までたっても取らない僕に上層部がシビレを切らして今回の件となった。その実力を見込んでという建前で問題児を送りつけられるというおまけ付きで」

 

「では、やはり……」

 

「うん、大体合ってるね」

 

 トレーナーに迷惑を掛けてしまったという事実が確定となってしまい、更に気落ちしそうなスローダンサーの顔を両手で支えて上を向けさせるジョニィ。

 

「けれど……」

 

「?」

 

「それでこそ良いものを見付けられた」

 

「それは、どういう?」

 

「このウマ娘、君が選んでくれた書類の中に居たこのウマ娘だ」

 

「その娘、ですか……練習は真面目に出ているし意欲もある、だがレース当日に無断で欠勤するという話ですが」

 

「なら何故君はこのウマ娘を僕に見せた?」

 

「それは……」

 

 スローダンサーは言えない。

 選んだ理由が、不覚にもそのウマ娘の瞳が自分のトレーナーの瞳と何処か同じものを感じ取ってしまったからだと。

 

「何となくならそれで良い、僕も同じ感想だ。だけど、そうだな……何処か気になってしまった。こんなのは君のレースを見たとき以来だ」

 

 ジョニィは表情を一切崩さないままそう言いきり足を引きずりながら傍にある車イスへ向かう。

 

「トレーナー?」

 

「スローダンサー、行こう」

 

 唖然と見つめるスローダンサーを他所に、()()()()()()()()()()ストンと車イスに収まるジョニィ。

 

「ど、何処に?」

 

「……? 決まってるだろう、そのウマ娘の元へさ」

 

 一人でもそそくさと行ってしまいそうなジョニィを急いで追いかけるスローダンサー。

 

「何故急に……!?」

 

 急な動き出しに驚きながらもスローダンサーはジョニィの車イスに手を持ち押していく。

 ジョニィは携帯端末を取り出して何かを操作しながら答える。

 

「僕ら二人が顔を見ただけで()()()()()理由はそれだけで充分だろう?」

 

 次の瞬間、ジョニィの携帯端末に表示された一人のウマ娘のプロフィール。

 その名前は、ライスシャワー。

どの日常が見たい?

  • 副会長とトレーナー探索(22)
  • ナイスネイチャとゲーム対決(13)
  • スカイのフラワートレーナー偵察(23)
  • 会長と黒幕トレーナー(17)
  • 帝王とジョナサン2(31)
  • 踊り子と新入りと車椅子2
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