[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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第八話 「心配あるいは■■」

「あたれ!」

 

 織斑君の《雪羅》から高出力の荷電粒子ビームが発射される。

 おそらく牽制のつもりで撃ったのだろう砲撃は、しかし高速で空中を飛ぶ私にかすりもしない。

 

(やっぱり射撃は素人並みか……)

 

 そう確信しながらフォースシルエットのブースターを全開にして織斑君へ急接近。

 ビームライフルで牽制しながら《ヴァジュラビームサーベル》を盾をつけている左手で引き抜く。

 

 ある程度まで近づくと射撃を止め、一気に加速。

 そのまま織斑君と切り結ぶ。

 得意な接近戦で相手をしているせいか、織斑君の表情に余裕がある。

 

 織斑君のブレードが変形する。

 

 すると今まで切り結んでいた私のビームサーベルが、織斑君のブレードに触れた瞬間ビーム部分が霧散する。

 

(これが《零落白夜》……!)

 

 織斑君から聞かされた白式のワンオフ・アビリティー。

 すべてのエネルギー攻撃を無効化する代わりに自分のエネルギーも喰らう諸刃の剣。

 

(だけど!)

 

 使いどころが悪い。

 ただ闇雲に使っても効果は薄い。

 そこを織斑君はまだ自覚していないようだ。

 

 刀身をかき消され柄だけになったビームサーベルを織斑君に投げつける。

 意表を突かれたのか一瞬だけ織斑君の動きが止まる。

 

「やぁ!」

 

 そこを見逃さずに織斑君に渾身の蹴りを叩き込む。

 鍛えられた肉体とISによるブーストもあって私の蹴りを受けた織斑君はそのまま地面に落下。

 

 そんな織斑君のちょうど真上に陣取りフォースシルエットをパージする。

 

 推力の大部分を失った私は当然落ちていくが、残ったブーストを総動員して織斑君の背後に着地できるように調整する。

 

 織斑君が体勢を立て直し、上を見上げる。

 

 そこには制御を失い自由落下するフォースシルエットがあった。

 

「なんだぁ!?」

 

 驚いている織斑君の後ろに着地した私は拡張領域から《エクスカリバーレーザー対艦刀》を一本だけ呼び出すと、それを織斑君の背中に突き立てる。

 

 操縦者の危険を敏感に察知した白式が《絶対防御》を発動させる。

 

 それに私のエクスカリバーが阻まれて、

 

 それが決着となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑君はさぁ……雪羅と零落白夜に頼りすぎなんだよ」

 

 模擬戦は私の勝利に終わり、反省会の真っ最中。

 

「この二つは確かに強いし頼りたくなるのもわかるけど、使えば使うほど自分の首を絞めていく武器なんだよ?もっと使いどころを選ばないと……?」

 

 私が少し口うるさく注意するが当の織斑君はボーっとこちらを見るだけで何も反論してこない。

 

「織斑君? 聞いてる?」

 

「っ! あ、ああ! 聞いてる!」

 

 少しびっくりした反応をしながら織斑君が返事をする。

 もしかして目を開けながら寝てたとか?

 

「いやでも零落白夜は結構良かったと思うぜ? 実際サーベルを消されて少しびっくりしてただろ?」

 

 と、やっと織斑君が反論してくる。

 

「確かにあれは意表を突かれたけど、私みたいなビームサーベルを使ってくる相手ならもっとうまい使い方があるよ?たとえば相手をもう少しで倒せるっていう瀬戸際まで追い込んでから接近戦に移る。起死回生をかけて相手が振ってきたビームサーベルを零落白夜を使って相手の戦意ごとかき消すとか」

 

「それは……やられると心が折れるな」

 

「雪羅の荷電粒子砲だってそうだよ? あれは下手をすると零落白夜以上にエネルギーを持っていくんだから確実にあたる! ってところで撃たないと無駄になっちゃう。牽制に使うなんて論外よ」

 

 うっ、と織斑君が呻く。

 やはり牽制のつもりだったのか。

 

「じゃあこうしよう!」

 

 そこで私はある案を思いつく。

 

「今からもう一回模擬戦をやるけど、織斑君にはある条件下で戦ってもらいます!」

 

「条件?」

 

 織斑君が首をかしげる。

 

 以前ヨウランが同じことをやった時はキモいだけだったのに彼がやると様になっている気がする。

 そんなどうでもいいことを考えながら条件を発表する。

 

「零落白夜の使用時間はトータル五秒! 雪羅の荷電粒子砲は一発だけ! これから私と戦うときはこの条件で戦ってもらいます!」

 

「………はぁ!?」

 

 織斑君が信じられないとでもいうような声を上げる。

 

「ちょっとまてよ! なんでそんなに厳しい条件で戦わなきゃいけないんだよ!」

 

 案の定織斑君が抗議の声を上げる。

 

「ちゃんと意味はあるよ? まず使用時間を限定することでどこが使いどころなのかを自分で考えてもらう。あとは織斑君の浪費癖を治すためかな」

 

「浪費癖? 俺はこう見えて結構倹約家だぞ?」

 

 と、織斑君が的外れなことを言ってくる。

 

「お金の話じゃなくてエネルギーの話! 真面目に話すと織斑君は零落白夜と雪羅に頼りすぎてエネルギーをすぐに使い切っちゃう癖がついちゃってるの。だからそれを治そうっていうわけ」

 

 なるほどなぁ…と織斑君が一応納得したような声を上げる。

 

「はい! じゃあもう一回模擬戦をするよ! 織斑君は早く白式を起動して!」

 

 それでもぶつぶつ文句を言う織斑君に向かって私は切り札を切る。

 

「もし織斑君がこの条件で私に勝ったら……一日何でも言うこと聞いてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もちろん織斑君が私に勝てるわけがなかった。

 

 

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 最近一夏の様子がおかしい。

 あれは確か一週間くらい前だったかしら?

 一夏があたしたちに向かって「女の子の日」だなんてふざけたことを言ってきた日の次の日あたりだったわね。

 何をするにしても上の空で、千冬さんにいつもの倍くらい出席簿でたたかれてたのを覚えてる。

 そして一夏のそんな状態が二日くらい続いて……。

 

 あの転校生がやってきたんだ。

 

 初めて見た時は驚いた。

 

 すっごくきれいな黒髪だなって思った。

 箒の髪もきれいだけど、転校生……飛鳥の髪は次元が違った。

 

 何か特別な手入れとかやってるの?って聞くと、

 

《妹がね、「お姉ちゃんはせっかくきれいな髪なんだからちゃんときれいにしなきゃ!」って言ってくれたからね。それからは毎日欠かさずに手入れしてきたんだ》

 

 って、嬉しそうに、そして悲しそうに話してくれた。

 

 だけど問題はそれじゃない。

 

 問題なのは一夏が飛鳥のことばかり見ていることだ。

 飛鳥が転校してきた初日に今まで渋っていたタッグトーナメントのペアを飛鳥にするって言ったり、お弁当の時に一人でどこかに行こうとする飛鳥を追いかけて一緒に食べようって言ったり。

 

 あの鈍感な一夏に限ってまさか…………飛鳥のこと……■■だなんて、

 

 そう! ホントにまさかよ!

 

 そんなことってあるの? それだったらあたしの今までの努力って一体……。

 

 そんなあたしの苦悩をよそに一夏は今日も飛鳥とアリーナへ向かう。

 

 そしてそんな二人を盗み見る気配があたしの他に四つ。

 

 そう……みんな同じ事考えてたのね。

 

 負けたくない。

 ここにいるみんなに、

 今一夏の隣にいる飛鳥に、

 そしてそんな二人を見てあきらめかけているあたし自身に、

 

 

 

 

 

 負けない!

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