『さあ始まります第四回戦!実況は引き続き黛がお送りさせていただきますひゃっほー!』
無駄にテンションの高い司会の声を聴きながら目の前の敵を見る。
さっきの三回戦の二人のように気負っているわけでもない。
戦いに最高の状態、準備は万端と言わんばかりの眼で睨まれる。
『今回は参加者の要望により戦いは一対一の決闘になります!と言ってもルールは同じ!
勝った方が次の五回戦に進む!
違うのは相方が手を出した瞬間に負けというタッグトーナメントとは何だったのか?という試合になっております!
そして気になる参加選手はこちら!
ご存じイギリスの代表候補性!戦いと紅茶にはちょっとうるさい、でもどこか憎めない高飛車女!
セシリア・オルコット!!』
会場からの大歓声。
(やっぱりお祭りよね)
と、どうでもいいことを考える。
『対するはこちら!
謎の転校生!だけど実力は折り紙付き!
織斑君のパートナーになったことで女子生徒の嫉妬を一身に集める天災篠ノ之 束博士の助手!
今日はどんな戦い方を魅せてくれるのでしょうか!?
飛鳥 進!』
紹介が終わる。
もうすぐ始まる。
一対一の決闘が。
『さあではカウントを取ります!』
「飛鳥!」
いつでも飛び出せるように前に出ようとした瞬間、織斑君に呼び止められる。
「えーと、まぁその……なんだ……」
「勝てよ!」
「うん!」
『試合開始ー!』
決闘が始まる。
相手は遠距離タイプ。
相手の得意な距離で戦う必要はないのでフォースシルエットの特性を活かして一気に距離を詰める。
「甘いですわ!」
オルコットさんが《スターライトmkIII》を発射。
その正確な射撃に防御のために足が止まる。
この射撃………。
あっさりと距離を取られる。
オルコットさんは私のはるか上空に陣取る。
それを追って私も急上昇。
私が十分な高度を取った瞬間、
「お行きなさい!《ブルーティアーズ》!!」
オルコットさんから四機のビットが発射される。
ビットは私の死角に回りながらビームを連射、私は回避に集中する。
蒼い
ビットとライフルの計五か所からの絶え間ないビームの嵐。
レイとの訓練経験がなければとっくに負けているだろう。
だけど、
高みからこちらを見下ろす目………
頭の奥がチリチリする。
これはお祭りだ、戦いじゃない。
そう必死に自分言い聞かせるが、オルコットさんの姿を見るたびに否が応でも思い出してしまう。
(違う!ここはあそこじゃない!)
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。
オルコットさんの
思い出すのはメサイアでの戦い。
短い間だけ交わしたあの問答。
《君は!あの慰霊碑の!インパルスのパイロット!?》
《フリーダム!今日こそ!》
《やめろ!?僕は君と戦うために来たわけじゃない!》
《何を言ってるのよ!?あんたは》
《君は初めて会った時に言った!「いくらきれいに花が咲いても、人はまた吹き飛ばす」と!》
《それがどうしたっていうの!?》
《あの言葉の答えを、ずっと考えていた!
そして僕は答えを見つけた!この戦争で!》
《なに!?》
《いくら吹き飛ばされても!僕らはまた、花を植える!きっと、また!
だから君も!一緒に戦おう!吹き飛ばすことを認めない君が吹き飛ばす側になっちゃだめだ!
君も、僕らと一緒に花を植えよう!》
花を植える?
ナニヲイッテイルンダアイツハ?
吹き飛ばされた花は二度と同じ花を咲かせない。
だというのにあいつは花を植えるだって?
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!」
つまり、あいつは吹き飛ばされた
そんなわけがない!
だというのに!
あんたは!
《
《全ロックを解除》
頭の中で、何かがはじけたような気がした。
《デスティニーシルエットをアンロックします》
運命の衝動が産声を上げた
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「なんだ?あれ?」
飛鳥が何かを叫んだ瞬間、
インパルスが変わった。
装甲は血のような紅く染まり、
左手の盾が消え、代わりに肘のところに突起ができる。
その背には二本の大剣と二門の砲身があらわれる。
そして悪魔のような赤い羽根。
見るものに畏怖と狂気をもたらすような、そんな造形。
いや、そんなことはどうでもいい。
一番重要なのは俺が、
「セシリア!逃げろ!」
白式で空に舞い上がりながらセシリアに警告し、
紅い悪魔がセシリアを襲った。
二本の大剣を一つにつなげて振るう。
それはまるで嵐のように、セシリアを容赦なく切り刻む。
ブルーティアーズの装甲が次々切り落とされる。
まだ使っていなかった残った二機のブルーティアーズとスターライトが破壊される。
「くぁっ!くっ!ブルーティアーズ!」
セシリアがビットで死角から飛鳥を攻撃する。
だが飛鳥は、まるで後ろに目でもついているんじゃないかと思いたくなるくらい完璧な回避をして見せた。
飛鳥はそのまま周囲のビットに目を向けて、
「邪魔」
インパルスの全ブースターを駆使して高速飛行を続けるビットに肉薄すると、ひとつ残らず叩き切った。
「次」
飛鳥がセシリアを見る。
どうやら次の獲物をセシリア本人に定めたようだ。
「い、《インターセプター》!!」
セシリアがショートブレードを呼び出す。
それよりも早く飛鳥が距離を詰めていた。
「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおああああああああああ!!!!!!」
獣のような叫び声とともに飛鳥が大剣をふるう。
それをセシリアがインターセプターで防御しようと前に掲げ、
インターセプターのブレード部分がたたき折られそのままセシリアを《絶対防御》の上から切り裂いた。
セシリアが地に叩き付けられ、シールドエネルギーが0になる。
『し、試合終了ーーー!!!
まさに電光石火の早業!
これが実力の差だと言わんばかりの…………え?』
試合終了が宣言されたのに飛鳥はISを待機状態に戻すどころか構えを解くこともしない。
そして飛鳥はセシリアのもとへ飛ぶ。
その手に剣を構えたまま。
『ちょっと飛鳥さん!試合終了です!飛鳥さん!』
司会の警告を気にも留めずセシリアのそばに降り立った飛鳥は剣を振り上げとどめを刺そうと、
「やめろ!!!」
振り下ろす前に間一髪俺がその剣を遮る。
「止めろ!飛鳥!勝負はついた!」
なおもセシリアにとどめを刺そうとと剣に力を込める飛鳥。
そんな彼女に俺は、
「進!!」
《雪片弐型》を投げ出して進を抱きしめる。
「もういいんだ!終わったんだ!だからもうやめろ!」
「いつものお前に戻ってくれ!進!」
「ぁ………」
寝息が俺の肩から聞こえてくる。
どうやら疲れて寝てしまったようだ。
(進、お前は何者なんだ?)
こうして四回戦は俺たちの反則負けで終わった。
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その様子を盗み見る仮面をつけた男が一人
「まさかあれほどとはな……」
男は笑みを漏らす
彼女は自分と同じ側の人間だと
彼女は彼以上に自分の理解者になってくれると
「《鬼神》か、鬼程度であったならまだ可愛げがあったろうな」
心地いい殺気を浴びて高揚した男はつぶやく
《鬼神》だと?それは彼女の本質を鬼程度と見誤ったバカどもがつけた名前だ
《運命の担い手》だと?それは彼が彼女の本質を隠すためにでっち上げた虚構の称号にすぎん
彼女を例えるなら…………そう。
《破壊神》
「アスラン……君の教え子は、随分とわたし好みに育ってくれたよ」
歯車は狂う
狂っていた歯車はさらに狂う
はたして狂っているのは歯車なのか
それとも………………
これにてタッグトーナメント編は終わりです!
できれば鈴&箒戦もやりたかったけど一番やりたかったセシリア戦がやれたので良しとします。
期待してた方申し訳ない。
次回はデートです。
塩の用意をしろ!