「アスラン!?」
女の声が聞こえて、アスランは振り返る
そこにはザフトの軍服に身を包んだ赤毛の少女
アスランはその少女をよく知っていた
「ルナマリアか?」
「何時もシン達のお墓に花を添えてたのってあなただったのね」
ルナマリアがどこか納得したような声を上げる
「君も毎日ここに?」
「ええ、私が来なかったら誰も来ないしね」
結局あなたが来ていたけど、と付け加えるルナマリア
「あれから、どうなったんだ?ミネルバは」
と、アスランが聞くとルナマリアは溜息をつき
「何も知らないの?」
「すまない、最近オーブとの橋渡しで忙しかったから」
「ああ、代表代理だったかしら?敬語で話した方がいいですか?代表代理?」
「やめてくれ。立場では上になってしまったが、俺は君たちには畏まられたくない」
アスランは今、オーブの代表代理という立場でプラントに来ている
カガリがオーブ国内の問題で手いっぱいなので、プラントとの今後の交渉役に指名されたのだ
少しの静寂
そしてルナマリアが口を開いた
「ミネルバ隊はメサイヤ戦役の責任を問われて解散したわ」
アスランが驚くが、ルナマリアは構わず続ける
「議長も艦長も亡くなって他に責任を取る人がいなくなって、ミネルバの副館長をしていたアーサー副館長は今回の責任を問われて地球のザフト軍駐屯地に飛ばされたわ。
「館長に艦を頼むって言われたからね、クルーを守るのも僕の仕事さ」なんて言ってたわ」
「彼が………」
「他のミネルバクルーも今回の上層部の対応に嫌気がさしてほとんどが辞めていった。まだ軍に残っているのは私とヴィーノとアーサー副館長くらいね」
淡々と現状を報告していくルナマリア
「ヴィーノ……確かキミやシンと仲の良かった整備士の一人だったな。もう一人……確かヨウランという名前の男がいたはずだが、彼は?」
そうアスランが言った瞬間、ルナマリアがアスランを睨む
「貴方が!」
だがすぐにルナマリアは元の無表情に戻る
「…………ヨウランは戦死しました。ジャスティスのエンジン部へのリフター攻撃によって発生した爆発に巻き込まれて」
「…………」
アスランには何も言えなかった
言えるはずもなかった
これが彼の選んだ道なのだから
ザフトを抜け、ラクスの側についた
その結果がこれだ
「…………す」
ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!
アスランが何かを言おうとした瞬間、アスランの携帯が鳴る
それに少しイラつきながら携帯をとったアスランは、
(……キラ?)
その発信者を見て訝しむ
プライベートの携帯にかけてくるなんてよっぽどのことなのだろう
「すまない」
そう一言ルナマリアに断わってから、電話に出る
「もしもし、キラか?どうした?」
《アスラン。いまどこにいる?》
キラの平坦な、だけど少し焦ったような声
「今墓地にいるが、どうした?」
《誰か近くにいる?》
「ルナマリア……ミネルバに居た頃の部下がいる。メイリンの姉だ」
《ミネルバの……彼女なら大丈夫かな?今からそっちに行く。重要な話があるからそこで彼女と一緒に待ってて!》
そこで通話が切れる
「おい、キラ?……なんなんだ?」
「私は席をはずした方がいいかしら?」
ルナマリアが聞く
「いや、一緒に待っていてほしいらしい」
そして十分もしないうちにキラが墓地に現れた
「キラ!いきなりどうしたんだ?」
「ごめんアスラン、緊急なんだ。
……君がルナマリアさん?こうして顔を合わせるのは初めてだね。キラ・ヤマトです。今日はよろしく」
キラが握手をしようと手を差し出す
「元ミネルバ隊、現ザフト地域警邏隊、ルナマリア・ホークです!お噂はかねがね聞き及んでおります!」
それにザフト式の敬礼をもって答えるルナマリア
その態度にキラは一瞬傷ついたような顔をするが、すぐに気を引き締める
「ここは見通しがいいから誰かがいてもすぐに気付けるし、盗聴の心配もないから大丈夫だね」
「盗聴?どういうことだ?」
アスランが聞き
「じゃあさっそく本題に入るよ」
と言ってキラが紙の資料を二人に渡す
「これを見てほしいんだ」
渡された紙をアスランが読み上げる
「デスティニー量産化計画?なんだこれは?」
「まだラクスにも知らせてない、極秘の資料だよ。
デュランダル議長に縁のある場所を独自で調査していたら見つけたんだ」
アスランがページをめくり、読み上げる
「本計画で最大の難点はデスティニーの生産性の悪さである。シン・アスカに譲渡した一号機と、もう一機制作した二号機だけでもデスティニーは量産化に向かない機体であることは間違いないことが分かった。
そこで何が問題なのかを調べたところ、ミラージュコロイドシステムとヴォワチュールリュミエールシステム、並びに背中の翼型の推進ユニットとその他の大型の武装とパルマフィオキーナが生産性を著しく下げていることが判明した。
そこで、三号機からは先に挙げたものをすべてオミットし、デスティニーにシルエットシステムを組み込むことで生産性と武装の両立を図ることに成功。
デスティニーの元の武装が肩のフラッシュエッジとビームライフルのみとなってしまったが、これによってデスティニー量産化計画は成功を収める。
現在十九機の先行生産が完了しており、二号機と合わせて最終調整の段階に入っている……………そんな馬鹿な!?」
驚愕の声を上げるアスラン
その隣でルナマリアも開いた口が塞がらないと言った顔をしている
「キラ!この量産機は今どうなっている!?」
「わからない」
「なに!?」
そこでアスランがキラの胸ぐらをつかむ
「わからないとは何だ!?ここまでわかっているのなら生産された場所もわかっているんだろう!?」
「本当に分からないんだ!!」
キラがアスランの腕をつかみ、叫ぶ
「生産場所も調べがついてるし、そこにも実際に行ったさ!
だけど何もなかったんだ!!」
そのキラの一言にアスランは呆然とする
「何もない……だと?」
「そうさ!確かにそこでは何かが作られた形跡があった!だけど何もなかったんだ!
シルエットシステムも!
量産型のデスティニーも!
資料にあった二号機も!!
まるで消えてしまったみたいに!」
「消えた………?」
そこでアスランが思い出すのは月でのシンとの戦い
アスランがシンを倒し、月に落ちていったシンがいきなり消えてしまったあの瞬間
「お二人とももうやめてください!」
ルナマリアが二人の間に割って入る
「お二人で話を進めなくてもクライン議長にお話しして軍を動かして捜索すればいいじゃないですか!
仮に消えてしまったのだとしても、二十機ものMSが放置されているんですよ!?
ここで言い争いをしている場合じゃないでしょう!?」
「……そうだね、ごめん。ルナマリアさん。アスラン」
「いや、俺も悪かった。すまない」
そして三人は墓地を後にする
プラント行政府につくまで、三人の間には不気味な静寂が伴っていた
忘れたころにやってくる。
どこに行ったんでしょうかねぇ?(すっとぼけ)