[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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真夏の臨海学校
第十五話 「逢引あるいは準備」


束さんの格納庫で、シートがかけられた大きな何かがあった。

 

そのシートをはずすと、そこに現れたのは私の愛機。

 

そのまま愛機をまとい、起動する。

相変わらず動力部は異常を吐き出しており、モニターにはアラート文字が映っている。

 

《エネルギー残量63%》

 

「あれー?あーちゃん何してるのー?」

 

そこで束さんに呼ばれる。

 

「デスティニーのチェックですよ。定期的にチェックしておかないと、いざ帰るとなった時に動かなくなったらいやですからね」

 

答えながら、目を走らせる。

 

「そういえば束さん、最近デスティニーをISにさせろって言わなくなりましたね?どうしたんですか?」

 

「あ~それね!え~っと実はね~……」

 

と束さんが言いよどむ。

 

「どうしたんですか?」

 

「いやね?デスティニーのIS化は中止したんだ」

 

その言葉に驚く。

束さんはとにかく私のデスティニーを改造したがっていたからだ。

 

「どうしてですか?」

 

「そのヴォワチュールリュミエールシステムとISコアを一緒にすると危険なの。

何回かデスティニーにISコアを搭載するシュミレーションをしてみたんだけどどのパターンでもISコアとヴォワチュールリュミエールが干渉してどうなるかわからないの。

だからIS化は中止しました!」

 

デスティニーの電源を切り、降りる。

束さんはふざけて言っているように見えるが、一か月近く一緒にいる私にはよくわかる。

 

(悔しいんだなぁ……)

 

どうなるかわからない。

それが悔しいのだろう。

デュランダル議長から小耳にはさんだことがあるが、科学者や開発者にとって分からないというのはもっとも言ってはいけない言葉のうちの一つらしい。

 

「わかりました。まぁこれ以上デスティニーをいじられる心配はないってことですね?」

 

「そういうことかなぁ……」

 

そういって束さんは言葉を切り、

 

「やっぱり帰っちゃうの?」

 

と、聞いてきた。

 

「あーちゃんが何も言ってくれないから私は向こうの世界のことをデスティニーの戦闘記録でしか知らない。

それでも向こうがひどい世の中だってことは断片的な情報の中からでもわかる。

終わらない戦争、

戦争にまで発展するレベルの人種差別、

それを当然のことと思って相手を滅ぼそうとする人々、

薬で無理やり戦わされている子供たち。

あーちゃんが帰る必要なんてないよ……。

この世界で暮らそう?

わたしや箒ちゃんやいっくんやちーちゃんと一緒にこの世界で暮らそう?

わざわざ戦争に飛び込んでいく必要なんてないよ」

 

束さんが訴えてくる。

 

この世界で暮らす。

そんなこと考えたこともなかった。

元の世界で戦争を終わらせる。

私の手で終わらせる。

 

その考えしかなかった。

 

だから、

 

「無理ですよ」

 

束さんの言葉を否定する。

 

「この前一夏と遊びに行ったときに不思議な人と話をしました。

知り合いに私と似た人がいるって。

戦場帰りで平和の中で生きられなくなった知り合いがいるって。

その人のことを聞けば聞くほど私自身のことを言われているような気分になって、

その時に改めて思いました。

私はここにいちゃいけないって」

 

私の独白を、束さんは黙って聞いてくれた。

 

やがて束さんは、何も言わずに格納庫から出ていった。

その後、格納庫には静寂だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視線が突き刺さる。

みんなが私を見ている。

そっちを振り向くとそそくさとその女子生徒は逃げるようにどこかへ行った。

 

あのタッグトーナメント以来、私は周囲の生徒から危ない奴として認識されている。

 

そんな視線は軍事学校(アカデミー)時代から慣れているので今更気にならないが、

 

(鬱陶しい………)

 

言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに。

 

 

「進さん!」

 

そんなことを考えていると、後ろから声をかけられる。

 

「セシリア?

どうしたの?」

 

「進さん、貴女臨海学校の準備はできていますの?」

 

「うん。まぁそれなりに」

 

と答えるとセシリアが、

 

「水着は?」

 

と聞いてきた。

 

「え?」

 

「水着はどうしましたの?」

 

「学校指定のだけど……」

 

このIS学園もなにもISだけを教えているわけではない。

普通の高等教育もちゃんとあるし、夏には水泳の授業もある。

私が持っていくのはその時に着なければいけない学校指定のスクール水着だ。

 

「そんなことだろうと思いました!!今日の放課後町に行きますわよ!!」

 

「?なんで?」

 

「水着を買いに行くためです!女の子なんですからおしゃれにも興味を持ちなさい!」

 

おしゃれ。

私には無縁の言葉だと思っていた。

もともと着飾るのはあまり好きではない。

 

(それでもマユが居た頃は無理やり着せ替え人形のようにされていたっけ?)

 

 

 

《お姉ちゃんはせっかくきれいなのに無頓着すぎる!わたしがきれいにしてあげる!》

 

 

 

「進さん!聞いてますの?」

 

セシリアの声で、我に返る。

 

「ああ、ごめん。今日の放課後だよね?

一夏も呼ぶ?」

 

そう聞いたらセシリアが一瞬驚いたような顔をし、

 

「だめです!一夏さんには内緒です!」

 

と怒ってきた。

 

「どうして?友達なんだから一緒に行ってもいいじゃない」

 

友達なんだし仲間外れはよくないよね。

 

「これは一夏さん以上に…………苦労しそうですわね、一夏さん」

 

「?何か言った?」

 

「いえ、今後の一夏さんの苦労を察していただけですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後。

一夏とは着たことがあるけどセシリアとは始めて来る町。

 

「進さんと町まで来るのは初めてでしたわね」

 

セシリアも同じことを考えていたようだ。

 

「うん。やっぱり一夏も呼んだ方が………」

 

「だめです!」

 

どうしてダメなのだろうか?

三人で遊んだらきっと楽しいのに……。

 

「とにかく行きますわよ!」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん?セシリアか?」

 

セシリアと水着を選んでいるとセシリアが呼ばれる。

篠ノ之さんと鳳さんだ。

 

「それと………飛鳥か」

 

「あら?奇遇ですわね?こんなところで会うなんて。

貴女方も水着を?」

 

「ええ………そっちも?」

 

二人とも妙に私のほうを見てくる。

 

(当然か)

 

セシリアと篠ノ之さんたちは以前から友達だったのだ。

その友達が私のような危ない奴と一緒にいたら心配もするだろう。

そう思うといたたまれなくなって、

ここにいたくなくなって、

 

「セシリア!私向こうで水着選んでるから!」

 

「あ、ちょっと進さん!?」

 

セシリアの制止も聞かず、私は駆け出した。

 

 

 

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「進さん………」

 

彼女は駆け出して行ってしまった。

 

「クラスメートに挨拶もなしか。まぁ別にいいがな」

 

「まぁいきなりフレンドリーに話しかけられてもね」

 

と、箒さんと鈴さんが言う。

 

「それで?飛鳥ってどんな感じの奴なの?」

 

鈴さんが聞いてくる。

 

「どんな感じって………どうしてそんなことを?」

 

「だって気になるでしょ?飛鳥とあんたの試合、正直あたしはあの時の飛鳥は怖かったわ」

 

そう、この前のタッグトーナメントで進さんはISを変形させていきなり襲い掛かってきた。

試合という範疇を超えて………。

 

「こんなことは言いたくはないが、彼女には気を付けた方がいい。

何せあの姉さんの助手なのだしな」

 

そう、進さんはあの天災の篠ノ之 束博士の助手でもある。

 

(進さん……あなたは何者なの?)

 

二人に言われて改めて考える。

 

最初は恋敵としてみていた。

一夏さんの本心を察した後は一夏さんの気持ちを尊重しようと思った。

だから彼女と決闘して自分の気持ちに整理をつけようと思った。

 

だけど彼女は私が思う以上に危うい人だった。

 

自分を制御できていない、そんな危なっかしい人。

 

だけど友達となって分かったことがある。

 

彼女は子供で、大人なのだ。

 

一般常識に乏しく、男女の機微に疎いことがあれば妙に達観したような態度をとることもある。

 

特に私生活と戦闘時のギャップがすごい。

少し抜けたところがある彼女は、こと戦闘になるとだれよりも強くなる。

 

そんなアンバランスな人。

 

普段は子供なのに、時折わたくしたちよりも大人びていることがある。

 

(本当に……何者なのかしら?)

 

知りたい。

わたくしは純粋にそう思っていた。

 




うちのセシリアさんはおかん属性があるようですね。

それよりもこのままだと鈴&箒が嫌な奴になってしまう!
どうにかせねば……。

シンちゃんって意外と依存度高いよね。

そして臨海学校ではここまで影の薄かったあの子がスポットを浴びます!
シンと言えばあの子!わかるかな?
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