[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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次におめーは「一夏ー!逆!逆!」と言う。


第十六話 「準備あるいは過去」

「海だーーーー!!!」

 

「二回目だけど海だーーーーー!!!」

 

同じバスに乗っている生徒がはしゃぐ。

私にとっては初めての臨海学校だが他のみんなにとっては今回で二回目らしい。

 

一夏の周りにはいろんな人がいるし、セシリアもその輪の中に入っている。

二人のように社交的とは言い難い私は必然的に一人で海を眺める。

 

 

 

(海か…………)

 

 

 

思い出すのはオーブの海。

 

あそこで生活している間は海が近いこともあってよくマユと一緒になって遊びに行っていた。

私とマユと近所の子供たちと、たまに父さんと母さんも一緒になって。

 

 

(父さん……母さん……マユ……。

ここの海はあそこよりきれいだよ)

 

 

「あっすー。あっすーは泳ぎ得意~?」

 

布仏さんが聞いてくる。

 

「得意だよ」

 

「じゃぁついたら競争しよ~?

こう見えてわたしも泳ぎ得意なんだよ~?」

 

妙に間延びした声で聴いてくる布仏さん。

その間にも私に突き刺さる視線。

 

布仏さんはクラスのマスコットのような存在だ。

誰にでも優しく、すぐに打ち解けられるムードメーカー。

一夏とセシリア以外で私に話しかけてくる希少な存在。

 

この視線はおそらく危険な私が布仏さんに何かしないか警戒しているのだろう。

 

(こうまで露骨だと面倒ね……)

 

落ち着いて会話もできない。

 

「いいよ、やるときにまた誘って」

 

だから早々に会話を切り上げる。

 

「おっけ~~!じゃあまた誘うね~!」

 

そして輪の中に戻っていく布仏さん。

その瞬間にほっとしたような空気になる。

 

(はぁ………)

 

露骨な雰囲気に心の中で溜息を吐く。

なれたものとは言ってもやはりつらいものはつらい。

おまけに海を見て昔を思い出すというおまけ付きだ。

 

 

 

バスが旅館に着くまで何回溜息を吐いたかは数えていない。

 

 

 

 

 

 

「では十五時まで自由行動だ!羽目を外しすぎるなよ!それと絶対に遅刻するなよ!」

 

織斑先生の号令とともに生徒が一斉に動く。

パーカーを羽織った私はとりあえずどこかで時間をつぶそうと思って歩き出す。

 

「進さん!」

 

セシリアがこちらに来る。

 

「どーしてパーカーを着ているんですの!?」

 

「え?だって海に入らないのに水着のままだったら体が冷えるから」

 

「なぜ海に入らないんですの!?」

 

「することないから?」

 

そこでセシリアが頭を抱える。

 

「せっかく海に来たんですから楽しめばいいんですのに……」

 

「ありがと、セシリア。

けど……」

 

そこで一度言葉を切る。

私は………。

 

「けど………なんですの?」

 

セシリアが聞いてくる。

 

「私は……、海は好きじゃないんだ」

 

思い出すから。

 

楽しかったあのころを。

 

すべてを奪われたあの日を。

 

守りたいと思った男の子に出会った日のことを。

 

それを奪われた日を。

 

奪った男を落とした日を。

 

尊敬していた男をこの手で刺した日を。

 

雪の中で人がたくさん死んで、たくさん殺した日を。

 

殺したと思っていた二人の男が再び私の前に現れた日を。

 

 

 

思えば私の悲しい記憶はほとんどが海での………水に関わる場所での出来事だ。

 

 

 

「進さん?大丈夫ですの?」

 

また考え込んでいたらしい私はセシリアの声で我に返る。

 

「うん、ごめん大丈夫。

ごめん、しばらく一人にして………」

 

そういって歩き出す。

 

セシリアは私をだまって見送ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩場に足を踏み入れる。

 

何も考えずにここまで歩いてきた。

 

そこで岩場の影から服がはみ出しているのを見かける。

その服は見覚えがあった。

 

「…………一夏?」

 

「…………その声……進か?」

 

一夏が岩場から顔を出さずに答える。

 

「そうだけど……こんなところで何してるの?」

 

「いやちょっとな……女子の体力についていけなくなったというか……」

 

「なにそれ?」

 

いまいち要領を得ない会話だ。

そのまま一夏の隣に行き、膝を両手で抱えて座る。

 

「し、進こそどうしたんだよ!こんなところまで」

 

「ただの散歩だよ」

 

「そ、そうか。散歩か!」

 

なぜか会話が続かない。

原因は何だろうか?

 

(私なんだろうなぁ………)

 

私が暗い顔をしているから、一夏も怒って会話をつづけようとしないのだろう。

そう考えるとますます気持ちが沈んでいく。

 

「なぁ、どうしたんだ?さっきから暗い顔をして」

 

聞かれる。

 

「別に何でもないよ……。

昔を思い出してただけ」

 

「昔って……進の元の世界の話か。

そういえば聞いたことないな。

どんな世界なんだ?」

 

ついに聞かれる。

今まで聞かれたことはなかった。

それを今聞かれる。

 

なぜか………。

 

 

 

本当になぜか……………。

 

 

 

 

一夏には私が人殺しだということを知られたくないと思った。

 

 

 

 

 

「別にこことそう変わらないよ。

ただここよりも宇宙開発が進んでるんだ」

 

「宇宙開発?」

 

「うん。宇宙にプラントっていうコロニーを打ち上げて人が住めるようにしたんだ。

他にも月を開拓して軍事基地にしたり、火星まで行ったって話も聞いたかな」

 

「すげぇな!そんなに進んでいるのか!」

 

一夏がはしゃぐ。

 

「そろそろ戻ろう?あんまり遅くなると織斑先生の出席簿が飛んでくるよ」

 

「っと!そうだな、そろそろ戻るか………うぉわあ!?」

 

一夏が足を滑らせる。

 

「大丈夫?一夏………うわ!痛そう」

 

「いってー!!」

 

一夏の足は岩の先で切ってぱっくりと開いていた。

 

「ちょっと待って、今応急処置するから。

動かないでね」

 

「わ、悪い。頼む」

 

持っていたペットボトルの水を一夏の傷にかけ、傷口を洗う。

 

「いってー!しみる!」

 

「はいはい、もうちょっと我慢して」

 

言いながらパーカーを脱ぎ、袖口を利用して傷口の近くを縛り止血する。

 

「お、おい!パーカー汚れるぞ!」

 

「別にどうってことないよ。

ほら!肩貸すから足元気を付けて」

 

そういって一夏に肩を貸しながら集合場所まで歩いて行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「織斑君ビーチバレーしよ!」

 

「織斑君泳ごう!」

 

「織斑君オイル塗って!」

 

「織斑君!」

 

「織斑君!」

 

「織斑君!」

 

 

 

「ごめん全部無理!!」

 

 

 

おれは にげだした!

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

 

岩場の影に身を潜めて一息つく。

今回はクラスメートだけでなく他のクラスの女子も言い寄ってきたのでいつもの倍くらい疲れた。

 

(随分と海岸から離れたし……ここなら大丈夫だろ)

 

そうやって隠れていると足音が聞こえてくる。

 

(誰だ…?見つからないようにしないと)

 

「一夏?」

 

「(そっこーで見つかったー!って……ん?)…………その声……進か?」

 

俺は岩場から顔を出さずに答える。

 

「そうだけど……こんなところで何してるの?」

 

「いやちょっとな……女子の体力についていけなくなったというか……」

 

「なにそれ?」

 

ホントなんなんだろうな?

 

そのまま足音が近付いて来て、

進が俺の横に座った!

 

(お、おお!)

 

膝をかかえて座る進。

 

健康的な太ももとか膝の隙間から見える水着とかが、なんというかこう………。

 

(やばいおちつけおれ!)

 

「し、進こそどうしたんだよ!こんなところまで」

 

気を紛らわすために聞く。

 

「ただの散歩だよ」

 

「そ、そうか。散歩か!」

 

だが会話が続かない。

原因は何だろうか?

 

 

 

(俺が緊張してるから!)

 

 

 

本当になんなんだこの気持ちは!?

 

思えば進に出会った時からこうだ。

 

妙にドキドキして、いつもの自分を装うのに精いっぱいになって……。

 

自分の気持ちの正体を探していると、進が妙に暗い顔をしていた。

 

そして進の元の世界の話を少しだけした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ戻ろう?あんまり遅くなると織斑先生の出席簿が飛んでくるよ」

 

そういわれて時間を確認する。

 

「っと!そうだな、そろそろ戻るか………うぉわあ!?」

 

進の世界の話を聞き興奮していたのか、足を滑らす俺。

 

「大丈夫?一夏………うわ!痛そう」

 

「いってー!!」

 

俺の足は岩の先で切ってぱっくりと開いていた。

 

すごく痛い!

 

「ちょっと待って、今応急処置するから。

動かないでね」

 

「わ、悪い。頼む」

 

進が持っていたペットボトルの水を一気に傷口にかけ、洗う。

 

「いってー!しみる!」

 

「はいはい、もうちょっと我慢して」

 

進は俺の悲鳴を聞き流しながらパーカーを脱ぐ。

今まで見れなかった進の水着姿があらわになる。

 

この前町に遊びに行った時のような白いワンピースタイプ。

 

これで麦わら帽子でもかぶれば避暑に来たご令嬢のような感じになるのだろう。

 

それに見惚れていると、進がパーカーの袖口を利用して傷口の近くを縛り止血する。

 

「お、おい!パーカー汚れるぞ!」

 

「別にどうってことないよ。

ほら!肩貸すから足元気を付けて」

 

そういって進に腕を持たれる。

 

(む、胸が!?腕が!?)

 

進の小ぶりだが確かにここにあると自己主張してやまない胸が俺の腕に押し付けられている。

 

だがその至福の時間は長くは続かず、俺の腕は進の肩に回される。

 

(………これ絶対逆だよなー)

 

そんなことを思いながら…………進と密着していることにドキドキしながら、俺と進は集合場所まで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……事情は分かった」

 

千冬姉が答える。

 

進が俺の傷を気にしてゆっくり歩いてくれたおかげで傷はほとんど悪化させずに集合場所まで来れた。

 

問題は集合時間に後れてしまったことだ。

 

千冬姉は絶対に遅刻するなと言った。

それを俺たちは破ったのだ。

 

(何とか進だけは出席簿を免除してもらわないと………)

 

進は俺に付き合ったせいで、俺が怪我をしたせいで遅れてしまったのだ。

あいつは何も悪くないんだから怒られるいわれはない。

だけど、

 

「そういう事情なら仕方がないな。以後二人とも気を付けるように!」

 

と言った。

 

「え………?」

 

「なんだその意外そうな顔は?

正当な理由があるならばむやみに罰したりはせん。

それとも貴様は私がそんなに血も涙もない鬼だと思っていたのか?」

 

「いえそんなことぜんぜん!」

 

すぐに否定する。

危機は脱したようで、安心する。

 

「そうだ、一つ忘れていた」

 

 

 

 

バシーーン!!!

 

 

 

 

頭に激痛が走る。

 

「一人でそんなところに行ってあまつさえ怪我をして女子に肩を貸してもらいながら帰ってきた軟弱者に対する罰だ」

 

痛い……。

 

「お前が怪我をしたせいでスケジュールを変更しなくてはならなくなった」

 

スケジュール?

 

「本来ならこの後専用気持ちで二人一組になって模擬戦をやってもらうはずだったんだが……、

お前が怪我をしたせいで人数が奇数になってしまった」

 

言われて数える。

 

俺、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、進、あと四組の子でちょうど八人。

そこで俺が抜けたら七人。確かに一人足りなくなる。

 

「あの……」

 

そこで進が手を上げる。

 

「私一人でいいですよ。もともと遅刻したのは私ですし。

それに私のISは一対多も想定してますから人数的不利も問題ないです」

 

「そうか?なら飛鳥、不利な戦闘になるが頼むぞ」

 

「分かりました」

 

その様子をボーっと眺めていると、

 

「はい!では織斑君はこっち!」

 

と言って保険医の桜井先生に引っ張られた。

 

「え!?ちょっ授業は!?」

 

「それよりも先に手当よ。

手とり足とり見てあげるわ」

 

「どこを見るつもりですか!?」

 

そうして俺は桜井先生に連れていかれて授業を見学することができなかった。




シンちゃんの胸はCカップです!



一夏君の基準は千冬さんです。
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