海上を高速で飛び続ける。
上からは不可視の弾丸、後ろからは紅の剣士。
今私は二対一という不利な戦闘をしていた。
そもそもの始まりは一夏がISの操縦に支障が出るほどの怪我をしたこと。
十五時から予定されていた二対二の模擬戦に一夏が参加できなくなり、人数が足りなくなってしまったこと。
そこで私が一人で戦うと織斑先生に申し出たことが原因だ。
相手は篠ノ之さんと鳳さんのタッグトーナメント優勝ペア。
その連携は見事としか言いようがなかった。
「くっ!」
上空に陣取って《龍咆》を私に向かって打ち続ける鳳さん。
それを盾で受けずに躱し続ける私。
もし龍咆を盾で受け止めた場合、私の後ろをぴったりとついてきている篠ノ之さんに切られてそこで終わりだろう。
「っくそ!」
だから躱し続ける。
鳳さんに一瞬の隙ができるのを待って。
つまりこれは我慢比べ。
私が龍咆にあたるか、
鳳さんのエネルギーが切れるか、
篠ノ之さんがしびれを切らして突っ込んでくるか。
鳳さんの目線とインパルスのセンサーを頼りに回避し続け。
そして我慢比べは私が勝った。
(今だ!!)
鳳さんがエネルギーを気にして砲撃を緩めた瞬間に急ブレーキをかける。
そして後ろを振り返り、盾を捨てながら《フォールディングレイザー対装甲ナイフ》を、盾を持っていた左手で抜き放ち篠ノ之さんに切りかかる。
「っなに!?くっ!」
私のナイフと篠ノ之さんの刀が拮抗し、鍔迫り合いになる。
だがこうなってしまえばこっちのものだ。
力を抜き、篠ノ之さんの刀を受け流す。
そして一瞬のスキを突き、刀を弾き飛ばした。
(ナイフ戦闘じゃ教官に勝ったこともあるんだから!!)
内心でそう思いながら篠ノ之さんの腹に蹴りを放ち、その反動で鳳さんのほうに向かって飛ぶ。
フォースシルエットからデスティニーシルエットに換装して一気に加速。
「!速い!?」
どんどん減っていくエネルギーを尻目にナイフを鳳さんに投げつけながら右手に持つビームライフルを二連射、牽制として撃つ。
それをよけた鳳さんのもとへと飛びながら肘から《フラッシュエッジビームブーメラン》を抜刀。
「はぁぁぁぁぁああああ!!!」
ビームの出力を落として両手に持って切りかかる。
デスティニーに装備されている《フラッシュエッジ2ビームブーメラン》と違ってサーベルとしての機能を想定していないため、無理な使用にエッジが悲鳴を上げるが、構わずに振るう。
鳳さんも二振りの青龍刀を呼び出して応戦するが、小ぶりなエッジと大ぶりな青龍刀ではやはりこちらに分があり、やがて私の刃が鳳さんのISの装甲を削り始める。
「私を忘れるな!!」
ようやく復帰したのか篠ノ之さんが叫びながらこちらへ飛翔する。
振るわれる刃を間一髪で回避しながら《テレスコピックバレル延伸式ビーム砲塔》を展開。
「当たれぇ!!」
二人に向かって撃った。
「きゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
「くっ!くそ!」
鳳さんは直撃。
篠ノ之さんはギリギリ回避したが装甲の右半身をビームに焼かれていた。
(やっぱり厄介ね。機体性能の差っていうのは)
篠ノ之さん自身の実力はこう言っては悪いが大したことない。
みんなが同じ性能のISで戦えば、多分専用気持ちの中で一番弱いのは彼女だろう。
では、なぜそんな彼女が鳳さんがよけれなかった私の砲撃を回避できたのか。
それはやはり彼女がまとうISの性能のおかげなのだろう。
篠ノ之さんのISは世界にまだ二機しかないという第四世代型。
それも束さんがコアからすべて作り上げたまさしく彼女のためだけの機体だ。
その性能は現在存在するISの全てを凌駕する。
もしそれで彼女が鳳さんほどの技術を持っていたらと思うとぞっとする。
鳳さんも強いが、鳳さんくらいの練度の兵士はC.Eではたくさんいる。
そんな彼女ほどの技術を持つだけで誰も手におえない化け物を生み出せるのだ、
あの紅いISは。
(まったく………アスランじゃないんだから)
手におえない化け物なんてあの二人だけで十分だ。
思考を中断して、篠ノ之さんに向かってエッジを投げる。
右半分が機能不全になったISでは満足によけることもかなわずに、彼女に直撃。
こうして二対一の戦いは私が制した。
「二対一という有利な条件であったというのに………情けないぞ、貴様ら」
織斑先生の呆れたような声が聞こえる。
二対一の圧倒的に有利な状況。
その状況で私のISに大したダメージを与えられていないのだからまぁ当然だろう。
「っていうか!なんでそんなに簡単にあたしの砲撃をよけられんのよ!!?あんたは!」
鳳さんが声を荒げて聞いてくるが、これはどうしようもないことだ。
聞いた話によると彼女は実戦と呼べるものを何回か経験しているらしいが、それでもやはり経験が違う。
私はあの泥沼の戦争をほぼ毎日休みなしで戦ってきたのだ。
あの戦争で得た経験値は計り知れないだろう。
「鳳さんの砲撃はまっすぐだから、目線さえ見ていればどこに飛んでくるかわかるよ」
鳳さんが絶句しているが気にしないことにしてアドバイスを続ける。
「鳳さんの技術は確かに高いけど、攻撃がまっすぐすぎて分かりやすいんだよ。
フェイントを入れたり攻撃に緩急をつけたりした方がいいかも」
視界の端で織斑先生が頷いていることからも、私の指摘が間違っていないようだということがわかる。
「なら私も聞きたい。お前のアドバイスを」
と、今度は篠ノ之さんが聞いてくる。
静かな口調だがそこからは隠し切れない悔しさがにじみ出ていた。
それに何も言わずに私はアドバイスを続ける。
「篠ノ之さんは機体の性能に頼りすぎかな?紅椿……だっけ?あれは確かに性能がすごいけど篠ノ之さんの技術が追い付いてない感じだったなぁ。
あれは篠ノ之さん自身が強くなればなるほど応えてくれるから、一度紅椿を封印して打鉄かラファールの量産機でひたすら技術を磨いてみてもいいかも……」
「ふむ………」
思い当たる節があったのだろう。
黙り込んで真剣に考え始める篠ノ之さん。
「見事だ、飛鳥。
だが私から言わせてもらうとお前も龍砲の攻略が遅いな。
ISの性能を引き出せばあの強化形態を使わずともお前なら二人を攻略できたはずだ。
お前は早くそのISに慣れろ」
「……はい」
そう。
織斑先生の言ったとおり私はまだISというものに慣れていない。
MSに似ている分、細かい違いに違和感を覚えてしまう。
「よし!次は残った四人での模擬戦だ!全員しっかり見るように!」
そうして今日の日程はつつがなく終了した。
「ふ~~~…………」
温泉につかってゆっくりと息を吐く。
温泉は初めてだ。
昔ルナがミネルバの甲板で温泉を掘ろうなんて冗談を言ったことがあるが、今ならその気持ちがわかる。
(こんなに気持ちいいならあの時ルナに賛成してればよかったかな………)
それにしても今日はよく昔を思い出す。
やはり海が近いからだろうか…?
そんな疑問も温泉の気持ちよさに溶けて消えていく。
「進さん?わたくしはもう上がりますけど、貴女は?」
「ギリギリまで入ってる~~~………」
わかりましたわ、と言ってセシリアが湯船から上がる。
(平和だなぁ~………)
そうしみじみと思った。
だけどその平和もつかの間の物だったということを、部屋に戻った私は思い知った。
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「そろそろ消灯だな」
箒が声に出す。
なぜそんなことをいまさら言うのかというと、飛鳥が戻ってこないからだ。
「セシリア、なにか知らない?」
「進さんでしたらギリギリまで温泉につかっていると言っていましたわ」
シャルの問いにセシリアが返す。
昼の模擬戦についてのアドバイスをもう少しもらいたかった私としてはやきもきしながら待つしかない。
ラウラと共に布団をひき、いつでも寝れるようにして飛鳥を待つ。
現在私たちがいるのは普通より少し大きい部屋。
ここで専用機持ち全員で泊まろうという話になり、四組の更識が辞退。
セシリアが渋る飛鳥を強引に連れてきて六人になった。
そもそもどうしてこうなったのかというと、セシリアの一言が原因である。
「貴方たち少し進さんに冷たくありません?」
班決めの際にセシリアが言った。
「愚問だな、セシリア。
理由など分かりきっているだろう?
あいつは我々の敵で、危険な存在だ」
ラウラがはっきりと言う。
「ラウラの言い方はきついけど、僕も大体おんなじ気持ちだね。
あの子は危ない。
そんな感じがする」
「あの飛鳥と直接対峙したセシリアならわかるだろう?」
シャルがラウラに賛同し、ラウラがセシリアに問う。
だがセシリアは、
「分かりませんわね」
と言った。
「それと、彼女はわたくしの友人です。
いくら貴女たちでも、彼女を悪く言うのなら許しませんわよ」
そういったセシリアはいつもの彼女よりもかっこよく見えた。
「よく知りもしようとしないからそんなことを言うんです。
今度の臨海学校で一緒の部屋で寝食を共にしてみましょう。
そうすればその認識も改まりますわ」
そしてセシリアの言う通り、あたしの中での彼女の印象はだいぶ変わった。
怪我をした一夏を助けたというのもあたしの中で大きかった。
そしていままで冷たく接してきたあたしにちゃんとしたアドバイスをくれたりした。
(謝ろう)
そう思ったあたしの耳にその会話は入ってきた。
「なんだこれは?携帯電話か?」
「随分古い型だね。
ボロボロだし。
誰の?」
ここにいる全員が首を横に振る。
ということは飛鳥の物なのだろう。
「本人がいない間に勝手に触るのはよくないな。
ラウラ、どこかわかりやすいところに置いておいてやってくれ」
「了解した」
そういってラウラが立ち上がり、
歩き出そうとしたときに悲劇が起こった。
シャルがラウラの横に座った時に彼女の浴衣のすそを踏んでおり、
それに気付かずにラウラが歩き出し、
足を引っ掛けて転び、
その衝撃で携帯を手放してしまい、
携帯が机に当たり無残に砕け散った。
「………………………………………何やってるの?」
最悪のタイミングで飛鳥が帰ってきた。
遅くなって申し訳ないです。
これも全部SAOの新作ゲームってやつのせいなんだ!
フィリア可愛いよフィリア!
はい、ごめんなさい。
ルナマリアの冗談の元ネタがわかった人はケンコウになれます。