[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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今回はシン視点は後半になります。


第十八話 「事故あるいは厄日」

(今日は厄日かな?)

 

そんなことを思いながら俺は千冬姉の部屋を出た。

昨日の夜更かしが祟って寝不足で、バスの中で寝ようと思っていたらみんなに話しかけられて全然寝れなかった。

その後は一人になろうとしている進でも誘って親睦もかねてみんなで泳ごうかな、と思っていたらとっくに進はいなかったし、みんなに詰め寄られてゆっくりなんて全然できなかった。

進の世界のことを聞けたり、その後のうれしいハプニングもあったりしたけど千冬姉の出席簿(臨海学校にまでもってきている)とお説教のせいでその嬉しさも半減。

総合的に見て今日は厄日なのだろう。

 

(きついことがあったから同じくらいいいことがあってもいいだろ?神様?)

 

「あれ?一夏?どうしたの、こんなところで」

 

後ろから声をかけられて振り返るとそこには風呂上がりの浴衣姿の進がいた。

 

旅館に備え付けてある浴衣だがその地味なデザインが一層進の魅力を引き出している。

箒と並べばどちらも日本人形のように見えることだろう。

 

「ああ、進か。

ちょっと昼間のことで千冬姉に説教されてな」

 

ははは、と乾いた笑いをこぼす俺。

 

「それは、お気の毒に……。

足はどう?結構深く切ってたと思うけど……」

 

「見た目がひどいだけで大した怪我じゃないらしい。

進のおかげだな。ありがとう」

 

そうお礼を言ったらキョトンとした顔をされた。

 

「治療したのは桜井先生でしょう?

なんで私にお礼を言うの?」

 

「先生が褒めてたんだよ。

進の処置が良かったから怪我がひどくならずに済んだって」

 

「別にそんな大したことじゃないのに……」

 

そう言いながら顔を赤くさせる進。

 

「それと悪かったな、俺のせいで二対一なんて不利な戦いをさせて」

 

「それこそ気にしないでよ。私にしてもいい経験になったし」

 

千冬姉に聞いた話じゃ箒と鈴のタッグ相手に圧勝したらしい。

あんな風に人を褒める千冬姉は初めて見た。

 

「っと、そろそろ消灯時間だし部屋に戻るね」

 

と進が切り出す。

 

そこで千冬姉にみんなを呼んで来いと言われていたのを思い出す。

 

「俺も行くよ。

千冬姉に専用機持ちを呼んで来いって言われてたんだ」

 

「そうなの?じゃあ一緒に行こうか」

 

 

 

それから進と話をしながら部屋に向かう。

雪羅の効率的な運用方とか、接近戦での動き方など、主にIS関連の話だったけど楽しかった。

 

 

 

そして進たちの部屋に着いた。

 

進が襖を開ける。

 

それと同時にガシャンと何かが砕ける音がした。

 

 

 

「……………………何してるの?」

 

 

 

ゾクっと背筋が凍った。

部屋にいた全員が動きを止める。

進の視線はただ一点を見つめている。

 

机のそばに落ちているばらばらの何かの破片を見ている。

 

その背からはセシリアと戦った時と同等の殺気を感じて………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然進がその場に崩れ落ちた。

 

 

 

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『お姉ちゃーん!みてみて!ほら!』

 

『それって携帯?買ってもらえたんだね、マユ』

 

『うん!というわけで記念写真!お姉ちゃん!撮って撮って!』

 

『はいはい、じゃあそこに立って』

 

『はーい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん!』

 

『ん?うわ!』

 

『へっへーん!ゲームしてるお姉ちゃんを激写!』

 

『こらマユ!』

 

『にっげろーーー!!』

 

『待ちなさい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん見て!熊さん!』

 

『へぇ、かわいいね。

どこでとってきたの?』

 

『ゲームセンターで!一発でとって来たよ!』

 

『すごいじゃない!』

 

『だから記念写真!』

 

『また写真?好きねーマユは』

 

『いいから!ほらケータイでとって!』

 

『はいはい。それじゃ行くよー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『できたー!』

 

『クッキー?へぇ、よくできてるね。おいしそう』

 

『まだ食べちゃダメ!写真に撮るの!』

 

『分かった分かった。ほら、携帯貸しなさい』

 

『やったー!ありがとう!お姉ちゃん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結婚記念日おめでとう。お父さん、お母さん』

 

『おめでとー!!』

 

『なんだか照れるなー』

 

『ありがとう。二人とも』

 

『ほら、家の前に並んで!』

 

『?どうしたんだい?マユ?』

 

『記念写真!マユがとってあげる!』

 

『ありがとう、マユ。あなた?』

 

『分かってるよ、こうだろう?』

 

『お~ラブラブだね!』

 

『マユの弟か妹が生まれる日も近いかもね』

 

『シン、あまりからかうな』

 

『じゃあいくよ~!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お母さんお母さん』

 

『どうしたのマユ?』

 

『あのね…………』

 

『分かったわ。行きなさい!マユ!』

 

『ラジャー!マユ・アスカ!突貫します!

くらえ!お姉ちゃん!』

 

『うわ!?マユ!?いきなり何するの!?』

 

『今だよ!お母さん!』

 

『はい、チーズ』

 

『え?え?何?何なの?』

 

『あ~~~!!お姉ちゃんが動くからちゃんと撮れてない!』

 

『いやそりゃ動くよ』

 

『もう一回!今度は動かないでよ!』

 

『はいはい』

 

『じゃあもう一回。はい、チーズ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《はい、マユで~す!でもごめんなさい。マユは今電話に出られません。ピーってなったら…………》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にあるピンク色の何かの残骸。

あれは何だろうか?

私の心がそれを理解することを拒絶する。

だが頭はいたって冷静だ。

 

 

心と体を切り離す。

 

心が否定しようとも体は………頭は事態を冷静に見極めようとする。

 

あの戦争で身に着けてしまったものだ。

 

これがあるからアスランを落とせた。

連合のステラと同じ境遇にある人たちが纏っているデストロイを簡単に潰せた。

 

これのおかげで今まで生き残れたというのに、今はこれが心底憎い。

理解してしまったからだ。

 

あの残骸が何かを。

 

あれは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一つしかない家族との繋がり(マユの携帯)だ。

 

 

 

 

 

 

 

視界がいきなり下がる。

どうしたのかと思えば私はその場にへたり込んでいた。

立ち上がろうとしても足に力が入らない。

 

不意に、足に水滴が落ちてくる。

雨漏りかと思ったら視界がにじんでよく見えなくなった。

 

何かと思って目をこするとその手は濡れていた。

 

それが何か理解できず、そんなどうでもいいものは放っておいてマユの携帯のほうへ行く。

足に力が入らないので這っていく。遅々として近づけないのが恨めしい。

 

ようやくそばまで来て、拾い集めようとしても視界がにじんでうまく見えない。拾えない。

 

 

 

何度も目をこすり、ようやくつかんだのは一枚のSDカード。

 

ひび割れてしまっていて中の画像が生きているのかどうかわからない。

にじむ目を凝らし、他を見る。

 

真っ二つに割れた基盤。

粉々になった外装と辺り一面に散らばった部品。

割れて何も映さない画面。

 

それらを認識して、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プツン、と、何かが切れる音がした。

 

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「凄まじいな」

 

旅館から離れたところにある小高い山の中で、男が呟いた

 

「ここまで殺気を感じますね。あれって本当に人間ですか?」

 

「殺気などというものは人間にしか出せんよ」

 

仮面の男が答える

 

「生き物を殺すのは人間だけじゃないでしょう?」

 

「動物は食べるために………生きるために殺すものだ。殺すために殺す生き物など人間以外に存在せんよ」

 

だからこそ殺気が生まれる、と仮面の男が付け加える

 

「なるほど、よく分かりました」

 

「分かってもらえて何よりだ。さて、彼女がこうも殺気立っていてはこちらの計画も迂闊に実行に移せんな。

あいにくと勘のいい女性もいたようだしな」

 

その一言が合図だったかのように山の中から人の気配が消えていく

 

「また《鬼神》に邪魔されましたね」

 

「言うな。これでもショックなんだ」

 

そう言いながら厳つい顔をした男とその部下らしき男が引き上げていく

 

「………やはり君はこちら側のようだ」

 

すべてを殺さんとするかのような殺気を浴びながら、仮面の男は呟いた

 

「やがて君も絶望するだろう。いくら平和の中に身を浸そうとその本質は変わらないということに」

 

仮面の男は笑う

今まで理解者しか得られなかった男は、この異世界で初めて同類に出会えた

 

もっと早く出会いたかった

 

元の世界で出会っておきたかった

 

その狂気が誕生した瞬間に立ち会いたかった

 

「さあ、見せてくれ。この私に!キミの絶望の深さを!

そして共に……………」

 

すべてを滅ぼそう。

 

そう言って仮面の男は嗤った

 




次回もシン視点は後半になるよ!

もしかしたら無いかもよ!

やばいなこれ………どうしよう。
助けてアスラン!
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