[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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第十九話 「厄日あるいは殺気」

進が泣いている。

 

おれやセシリアと居る時は表情をコロコロ変えていつも楽しそうな進が、

 

ひとたび戦闘になるとその高い技量と卓越した指揮能力で圧倒的な実力を見せる進が、

 

異世界という全く違う環境に一人で放り出されているにもかかわらず今まで文句の一つも言ってこなかった進が、

 

 

 

 

 

目の前で泣いている。

 

 

 

 

 

大事な携帯だったんだろう。

いつも持ち歩いているのは知っているし、一人になった時によくいじっている姿も見かけた。

 

 

 

 

それが目の前で砕け散った。

 

 

 

誰も、

 

 

 

誰も進に声をかけることができなかった。

必死に壊れた携帯をかき集める姿がまるで迷子になって母親を探している幼い子供のようで、

手を差し伸べて救ってあげたくなるほど弱弱しくて、

触れれば壊れてしまいそうなほどに儚くて、

 

そんな彼女から猛烈な何かが放たれた。

 

これが殺気というものなのだろうか?

セシリアと戦った時にはなった殺気よりももっと強く、もっとドロドロした何か。

 

この部屋にいる全員に、

 

      この旅館にいる全員に、

 

            この世界にいる全員に、

 

 

そのすべてに向けられて放たれたような殺気。

 

周りを見てみるとこの部屋にいるほぼ全員がへたり込んでいた。

かろうじて立っているラウラも膝が震えている。

 

(こんなことが………本当に人間にできるのか?)

 

いったい何があればこれほどの殺気を放てるようになるのだろうか?

 

「………して」

 

進が口を開く。

 

「………返してよ」

 

ゆっくりと立ち上がってISの待機状態である胸元のペンダントを握りこむ。

 

「返せぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」

 

進の絶叫とともにISが起動した。

 

 

 

進のISは変化していた。

今までの鎧を着こんでいるような印象からよりISらしい装甲に。

 

背中の追加装備(進はシルエットと呼んでいた)は装甲に接続するものから非固定武装となって俺の白式の羽のように背部に浮いている。

装甲は鋭角的になり、攻撃的なものになった。

またPICも搭載されているらしく、通常状態でもバーニアを使わずに浮遊している。

そして何よりも変わったのが左手だ。

 

青い籠手のようなものがついており、手の甲には黄色い発光体が装着されている。

右手よりも微妙に大きくなっており、左右非対称のアンバランスさは嫌悪感を生み出している。

 

「………セカンドシフト?」

 

誰かが声を出す。

そう、進のISはセカンドシフトしていた。

 

涙で瞳を濡らしながら進が叫ぶ。

そうしてあの砲戦形態の装備を呼び出して、

 

「逃げろ!!!」

 

それと同時に俺たちは旅館の窓から身を投げ出した。

 

 

 

遅れてくる衝撃。

進がビームを放ち、旅館の部屋を吹き飛ばした。

 

「いきなり撃ってくるとはな!」

 

「戦闘態勢!ISを起動しろ!!」

 

「!ですが相手は!」

 

「このままじゃ殺されるわよ!!ISだけでも着ときなさい!!」

 

「こんなことになるなんてね………」

 

言いながら全員がISを起動する。

こうなった原因があの携帯電話にあるのは間違いない。

きっと大切なモノだったのだろう。

だけど……、

 

(これはやりすぎだぞ!進!)

 

先ほどの一撃は間違いなく俺たちを殺す気で撃ってきていた。

 

そこまでする必要があるのだろうか?

 

「返してよ………」

 

呟きながら進が出てくる。

 

「返してよ…………マユの携帯………」

 

……マユ?

唐突に出てきた誰かの名前(おそらく)に俺は首をかしげる。

 

「残ってたのあれだけなのに……たった一つの………形見だったのに………」

 

形見。

あの形態はマユという人の形見だったのか。

進の言葉に、全員が衝撃を受ける。

 

(まさかそんなに大事なものだったとは……)

 

 

 

「返してよ!!」

 

そう叫びながら進は槍を展開、

ラウラに向かって投げつける。

 

それをラウラがプラズマ手刀を展開して弾く。

 

「!?ぐあぁぁあああ!?」

 

「ラウラ!?」

 

その瞬間にラウラに電撃が走る。

 

動けなくなったラウラに向かって砲身を向ける進。

 

発射される間一髪というところで俺が射線上に割って入り雪羅のシールドを展開。

 

「止めろ!進!」

 

俺の声を無視して近接形態に換装した進が、二本の大剣を構えて俺に突撃してくる。

 

「返せぇぇぇえええええ!!」

 

《雪片弐型》で受け止めるも、重量の差で押されていく。

 

(錯乱しているのか!?)

 

こちらの呼びかけに一切答えずに攻撃を続ける進。

 

(どうにかして落ち着かせないと!)

 

そう思い剣を握る手に力を込めようとし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をやっている!!!!貴様ら!!!!」

 

怒号が響いた。

 

鍔迫り合いの状態のまま吹き飛ばされた部屋を見ると千冬姉が入り口で仁王立ちしていた。

その手には打鉄のブレードが握られている。

 

「貴様ら………覚悟はできているな?」

 

そういった瞬間に目の前にいた進が吹き飛んだ。

 

「「「「「「………は?」」」」」」

 

訳が分からずに全員が同じことを呟く。

 

進が浜辺まで吹き飛んでいて、先ほど進がいた場所に千冬姉がいた。

 

 

千冬姉が俺たちに知覚できない速度で進に接近してブレードで進を殴り飛ばした。

 

言葉で説明すれば簡単だ。それだけだ。

 

(いやいやいやいや!!ありえねえだろ!?)

 

本当に人間か!?

 

「さて、事情を説明してもらおうか?」

 

改めてこの人には逆らってはいけないと思った。

 

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(まったく………)

 

心の中で嘆息し、手に持ったブレードを見る。

 

ひびが入っている。

 

久しぶりに本気を出した。

進の実力は知っている。

下手に手加減をすればこちらが返り討ちにあっていただろうということも理解している。

故の本気の一太刀。

 

だというのにあいつは反応し、あまつさえ防ごうとしてきた。

 

事情を聴けばなんてことはない。ただの不幸な事故だ。

問題はその事故にあった件の携帯電話があいつにとって命よりも重いものだったということだ。

 

進がまだ学園に入学する前に聞いたことがある。

 

 

『お前はいつもその携帯を持っているな』

 

『………これ、妹のなんです』

 

『妹の?』

 

『二年前……私の世界でですけど……大きな戦争があって、その時に避難してる時に妹が携帯を落として、

あの子にとって思い出の詰まったものだったので拾いに行くと言ってきかなかったんです。

だから私が代わりに拾いに行って………そのまま』

 

『もういい。すまないな、辛いことを思い出させて』

 

 

 

あいつは家族の遺品はあの携帯しか残ってないと言っていた。

それがあんな風に粉々になったのだ。その心境は私が思っている以上に怒りや悲しみに満ちているのだろう。

手を差し伸べてやりたいが、

 

 

 

 

 

「飛鳥、お前をこれからIS学園に帰す。

その後は寮の自室で謹慎処分だ。頭を冷やせ」

 

私が教師ではなくただの人ならもう少し優しい言葉をかけてやれたのだろう。

そう思うと今の立場が恨めしかった。

 

 

 

 

 

 




正直千冬姉がいなきゃ死人が出てた。

なんか千冬姉がチートくさいけど気にしない。

というか作者の技量ではこのくらいが落としどころですかね?



次回は設定紹介二回目です。
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