[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

27 / 73
動乱の夏休み
第二十話 「殺気あるいは登場」


「34……35……36……」

 

退屈と身体能力の低下を防ぐためにトレーニングを続ける。

臨海学校での騒動から三日、臨海学校に行った一年生たちが帰ってくるまであと一日というこの日。

私は寮の自室で筋トレに励んでいた。

 

「37……38……39……」

 

ひたすら体を動かす。

余計なことを考えないように、ただひたすら頭をからっぽにして。

 

 

 

あの後……、私はIS学園の寮に強制送還された。

 

許可なくISを起動し、武装を非戦闘状態の生徒に向け、あまつさえ発砲したのだ。

退学にならずにすんで僥倖と言ったところだろう。

 

「40……41……42……」

 

一夏やセシリアに銃を向けてしまった。

 

友達だったのに……友達だと言ってくれたのに……!

 

「43……44……45……」

 

いつもこうだ。

私が大事だと思ったもの、守りたいと思ったものは私のせいで壊れていく。

 

私に力があれば、家族を守れた。

 

力を手に入れても、戦争に翻弄される少年を守れなかった。

 

手に入れた力で、友達をもう少しでなくしてしまうところだった!

 

「46……47……48……」

 

壊れた携帯が脳裏をよぎる。

たった一つしか残っていない家族との繋がり。

それを壊された憤りを感じる。

 

あれは事故だ。

 

冷静な自分が告げる。

そんなことはわかっているのにどうしても怒りがこみあげてくる。

 

この衝動に身を任せて、何もかもを壊したくなる。

 

「49…………50!!」

 

感情をすべて吐き出そうと最後の一回は叫んでみたけど、あまり効果はなかった。

顔を上げ、立ち上がり時間を確認する。

 

「……………っ!」

 

失敗した。

時計なんか見るんじゃなかった。

 

この世界に来て、ここで過ごすようになってからすっかり定位置となっていた時計の横にマユの携帯がないことを認識してしまう。

 

乱暴に服を脱いで、汗を流すためにバスルームに入る。

せめてこの感情をシャワーで洗い流せればいい。

 

だが逆効果らしく、今は体に当たる水しぶきの一滴から体に張り付くこの長い髪まですべてが不快だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく湯船につかってボーっとする。

 

どこで間違えてしまったのだろうか?

 

こんなはずじゃなかった。

 

家族を奪われ、

祖国を捨て、

軍に入り、

戦争をして、

たくさん殺して、

かつての祖国に裏切られ、

守りたいと思った少年にあって、

その少年を殺されて、

殺した相手を殺して、

裏切った上司を殺して、

議長が示した世界の敵を殺して

殺して、

殺して、

殺して、

殺して、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は本当は………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何がしたかったんだろう………?」

 

口に出した問いは、

バスルームの壁を反響して消えていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「千冬姉!」

 

旅館の廊下を歩く千冬姉を呼び止める。

 

「……なんだ?」

 

「聞きたいことがあるんです」

 

後ろにいたセシリアが声を上げる。

今ここにいるのはいつものメンバーから進を抜いた全員。

聞きたいことはみんな一緒だ。

 

「私の部屋へ来い。ここは目立つ」

 

そうして俺たちは千冬姉に付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が聞きたいんだ?」

 

千冬姉が聞いてくる。

 

「進についてだ」

 

「あいつの何が聞きたい?」

 

「知ってること全部」

 

俺の答えに千冬姉は溜息を吐く。

 

「それを私に聞いてどうする」

 

「どうもしません。ただ友人として知りたいだけですわ」

 

セシリアの答えにもう一度ため息を吐く。

 

「私もあいつの全てを知っているわけではない。

あいつから聞かされた身の上程度しか知らん。

それでもいいか?」

 

全員が頷く。

 

そして少し間をあけて千冬姉は語りだした。

 

 

 

「四人家族の長女、四つ下の妹と優しい両親に囲まれて平和に暮らしていた。

だがある出来事がきっかけとなってあいつを残して家族は全員死去。

お前たちが誤って壊したあの携帯は妹の………あいつの家族がたった一つだけ残した形見だ」

 

 

 

たった一つの形見。

 

その言葉が俺たちの肩に重くのしかかる。

そんな大切なものを、俺たちは壊してしまった。

 

「その……ある出来事って?」

 

鈴が聞く。

 

「それは私の口からは言えん。

これ以上詳しく知りたければ本人に聞け」

 

その言葉で解散となった。

 

 

 

だけど、

 

 

 

「お前たち、あいつの過去を聞いても、どうか今までと同じように友人として、クラスメートとしてあいつに接してやってくれ」

 

 

 

最後に言われた千冬姉の言葉が心に強く残った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

チャイムを鳴らす。

 

この扉の向こうにいるのは要注意人物。

一歩扱いを間違えばこちらが痛い目を見る爆弾。

 

だけど大丈夫。

 

私だっていくつもの修羅場をくぐってきたと自負している。

それに比べたらキレやすい十代の女の子の扱いなんて朝飯前だ。

 

『はい?誰ですか?』

 

さぁ、これがファーストコンタクトだ。

 

できるだけ鮮烈に、

 

相手に印象を与えるために鮮明に、

 

そして派手にいきましょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒会長の更識 楯無よ!!」

 

《夜露死苦》と書かれた扇子で口元を隠しながら、私は自己紹介をした。

 




たっちゃん登場!
そして新章突入!


物語は大きく動き出す………。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。