「生徒会長?」
そう名乗った目の前の女性は扇子で口元を隠しながら不敵に笑う。
「そう、このIS学園の頂点である生徒会長。
それが私よ」
胡散臭い。
まずそう思った。
そういえば何回か見たことがあったような気がするが、はっきり言って興味がなかったので覚えてない。
「それで、その生徒会長さんが私に何の用ですか?」
「そんな他人行儀な呼び方をしなくても、フレンドリーにたっちゃんでいいわよ。
これから一緒に住むんだし」
「……………は?」
この人はなんて言った?
一緒に住む?
「大丈夫ですか?」
「先生から許可は取ってあるわ。問題ない!」
「いえ頭が」
「頭!?」
許可を取っているということはこの生徒会長が同室になると言いだしたのだろう。
自分から私と同じ部屋になりに来るなんて正直頭が大丈夫なのかと問いたくもなる。
「まさか頭の心配をされるとは思わなかったわ」
何かショックを受けている生徒会長に私は問いかける。
「それで?なんでわざわざ私と同室に?」
「その話をしたいから部屋に入れてもらえないかしら?」
立ち話もなんだしね。と言ってきたので仕方なく招き入れる。
「何もない部屋ね」
「必要なものはあります」
「そういう意味じゃないんだけど」
仕方ないのでお茶を出す。
そんなに上等なものはないので勾配で買ったペットボトルのお茶だが。
「なぜペットボトル?」
「他にないからです」
生徒会長が溜息を吐き、
「では、本題に入りましょう」
説明が始まった。
「理由はある程度想像つくでしょう?」
「さぁ?あいにく、貴女のような人に付け回される理由には心当たりがありません」
ピクリと生徒会長の眉が吊り上がる。
「何のことかしら?」
「最近校内を歩いていると視線を感じるんですよ。
他の生徒のような私を警戒するような視線ではなく、窺うような視線を。
貴女か、もしくはあなたの部下なんじゃないですか?」
しばしの沈黙。
ややあって先に口を開いたのは生徒会長のほうだ。
「よく気付いたわね」
「視線には敏感な方ですから」
そうでないと生き残れなかったからね。
「その通りよ。ここ最近、タッグトーナメントからあなたのことをずっと監視させてもらっていたわ。
理由は………言わなくてもわかるでしょ?」
「まぁ、あれだけ派手に暴れましたからね。
今回は影からこそこそ覗くのではなく直接監視ですか?」
「表現が悪いけど半分正解よ」
「半分?」
まだ理由があったというのか?
思案する私に向けて生徒会長が問う。
「亡国企業って知ってる?」
「亡国企業?」
あたりまえだけど聞いたことがないな。
「目的や存在理由や規模などの詳細が一切不明の謎の組織で、世界中の警察組織に追われても今まで全く尻尾を出さなかった厄介な奴らだったわ」
だった?
「過去形なんですね?」
「いいところに気が付いたわね。話が早くて助かるわ」
つまりはもういないと言うことなのだろうか?
「つい最近、その亡国企業が壊滅したのよ。
そしてその亡国企業をつぶした奴らの目的は、おそらく貴女」
「どうして私なんですか?」
「さぁ?私はそう聞いただけよ。
理由はあなた自身が知っているって織斑先生が言ってたけど?」
私自身が?
(私の特異性………)
訳の分からないやつらに狙われる理由。
それはやはり………。
(異世界から来た………から?)
それしかないだろう。
だけどそいつらはどうやって私のことを知ったんだ?
私が異世界から来たことを知っているのは四人だけ。
いずれも仲のいい人たちだ。
(それとも、他に見ていた人がいた?)
私がこの世界に来た時のことを他の人が見ていて、その情報が独り歩きしてそいつらに伝わった?
分からない。
「というわけで、我が校きっての問題児である貴女の監視と護衛を兼ねて私が貴女と同室になったということよ。
これからよろしく」
生徒会長は「挨拶」と書かれた扇子を取り出してそう言った。
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包みを持って考える。
⦅残ってたのあれだけなのに……たった一つの………形見だったのに………⦆
飛鳥の言葉が脳内で反響する。
⦅ある出来事がきっかけとなってあいつを残して家族は全員死去。
お前たちが誤って壊したあの携帯は妹の………あいつの家族がたった一つだけ残した形見だ⦆
千冬さんの言葉を思い出す。
あの携帯は飛鳥の大切なものだった。
その携帯を壊してしまうきっかけを作ったのは誰だ?
⦅本人がいない間に勝手に触るのはよくないな。
ラウラ、どこかわかりやすいところに置いておいてやってくれ⦆
こけたのはラウラで、ラウラがこける原因はシャルロットだ。
だが携帯を移動させるように指示したのは私だ。
床に置いたままだと踏んでしまうかもしれないと、そんな余計な気を利かせた結果がこれだ。
私のせいで彼女を悲しませてしまった。
(このままでは終われない)
壊れた携帯を見た時に垣間見た彼女の本当の姿。
迷子になって母親を探している幼い子供のような姿。
そんな風に泣かないでほしいと思った。
おそらく私は憧れているのだ。
普段の彼女に、
突然現れて、誰もたどり着くことができなかった一夏の隣にまるで運命のようにすっぽりと納まった彼女に、
強く、誰よりも強かった彼女に。
そうあってほしいと言うのは私の押し付けなのだろう。
彼女からしたら私の押し付けなど迷惑でしかないのは理解している。
だけど、彼女には私が目指す目標であってほしいと思ってしまった。
そしてもし許されるのなら、
(私もセシリアのように……………)
彼女の友人になりたい。
(そのためにも、まずは謝らないとな)
帰ったら謝ろう。
そう決意して、私は睡魔に身を任せた。
まさかの亡国企業終了のお知らせ。
そして最近ちゃんとした戦闘がない件について!
次回ぐらいに入れれたらなぁ………。
次回か次々回くらいに番外編を予定しています!
お楽しみに!