………うちのたっちゃんは真面目なんです。
「言い訳を聞きましょうか?」
現在の状況。
生徒会長が「怒」と書かれた扇子を持って私の前で仁王立ちしている。
私は正座している。
なぜこうなったのか?
それは冷蔵庫に入っていたある飲み物が原因だった。
こことは違う故郷のことを思い出す。
C.Eでは………プラントでは一五歳で成人を迎える。法律上で一人前の大人とされるのだ。
アカデミーの卒業式の後の打ち上げでは祝いの席の無礼講ということで私も酒を飲まされた。
そこでわかったことだが私はお酒をおいしく飲める人種だったということだ。
思い返せば父さんもなかなかの酒豪だったこともあってその血筋も影響しているのだろう。
そこで同じミネルバ隊に配属されたショーンに聞いたことがある。
『悪夢にうなされる?なら酒を飲め!酔いつぶれるくらい飲んだらそんな悪夢なんて見ねぇよ!』
残念ながら向こうにいる間はいつスクランブルがかかるか分からなかったし、教えてくれたショーンもデブリの海に消えていったから試せなかったが、こちらにいる間は問題ないと思い臨海学校前に買ってきたのだ。
そして謹慎中という今の立場を利用してヤケ酒でも煽ろうかと思っていた。
だがここで私は二つ間違えを犯していた。
一つは世界が違えば常識も法律も違うということ。
もう一つは今日から私は一人部屋ではなくなってしまったということ。
「正直、私はあなたは少し怒りっぽいとこがあるけど優等生の部類に入ると思っていたわ。
実際行事での暴走を除けば授業態度はまじめで文武両道、品行方正。
少し協調性に欠けるけどそれは個性と割り切れるし、自分のした間違いも素直に謝ることができる。
十分優等生ね、これがなければ」
そう言って生徒会長が私に見せつけるように目の前に置いたのは一升瓶。
私が臨海学校の前に買ってきてそのまま冷蔵庫に入れっぱなしにしていたものだ。
それをお風呂上がりに生徒会長が何か飲もうと冷蔵庫を開けた時に見つかってしまった。
最初は何に怒っているのかわからなかったが、
「私たちはまだ未成年です。そして二十歳未満の未成年が飲酒することは法律で禁止されています!」
と言ったことでこっちの世界では私の年齢はまだ未成年だということが発覚した。
通りで買った時に怪訝な顔をされたわけだ。
「とにかく、これは織斑先生に報告させてもらうわ。さすがに飲酒は庇いきれないし、生徒会長として見過ごせないしね」
まずい。
織斑先生は私の事情を知っているからと言って罰則を緩めたりはしてくれないだろう。
異世界人だと主張しても自分で調べなかったせいだと言われたらおしまいだ。
(かくなる上は………)
生徒会長が携帯を取り出している隙に気付かれないように一升瓶を持って立ち上がる。
そして生徒会長に足払い!
「きゃっ!?」
このまま押し倒そうと思ったら生徒会長は受け身を取ってすぐに起き上った。
見事な身のこなしだが感心している暇はない。
軍隊仕込みの格闘術で生徒会長に迫るが、それを紙一重で躱され、いなされる。
「いきなり!なにするの!?」
「黙って喰らってください!」
「いやよ!」
ついに壁際に追い詰めた私は生徒会長に掴みかかるように襲い掛かる(後で思い返すと暴漢みたいだった)。
それに対して身構える生徒会長を確認した瞬間、急ブレーキをかけそのまま水面蹴り!
意表を突かれた生徒会長は今度こそ倒れこむ。
倒れた生徒会長に馬乗りになった私は一升瓶のふたを握力に任せて外し、その飲み口を生徒会長の口に突っ込んだ!
「むぐっ!?んんんん!?」
生徒会長が中のビールを飲んだのを確認してから解放する。
「ぷはっ!?なにするのよ!?」
「飲みましたね?」
「へ?」
「生徒会長も飲みましたね?未成年なのに?」
サッっと生徒会長の顔が青くなる。
「それはあなたが無理矢理!」
「でも飲みましたよね?全校生徒の手本となるべき生徒会長が飲酒しましたよね?」
ぐっと生徒会長が言葉に詰まる。
賭けは私の勝ちのようだ。
正直この状況のありのままを誰かに話せば間違いなく生徒会長は無実になるだろう。
だけど今の彼女は酒を飲んだことで慌てており、さらにもう酔いが回ってきて正常な判断ができなくなっているようだ。
「このことがばれるとお互い面倒でしょう?だから二人だけの秘密にしましょう」
考える必要がないことを必死に考える生徒会長。
「私ももう絶対お酒を買いませんから。だからお願いします」
そしてあくまで立場は生徒会長のほうが上だと思わせるために「お願い」する。
そしてややあって……。
「………わかったわ。その言葉をしんじましょう」
最後のほうは酔いが回っているからか発音が少しおかしかったがしっかりと言質が取れた。
(まさかこんなところで議長流交渉術その3が役にたつなんて………)
議長が会食の席で私にふざけて渡してきた本を読んでおいてよかった。
だけどまだ安心できない。
そして私は生徒会長のコップにビールを注ぎ、外堀を埋めていった。
(ショーンの嘘つき)
目が覚めて最初に思ったことがそれだった。
いつも通りの悪夢。
しかも携帯が壊れてから見るようになった悪化した悪夢。
マユが泣いているのだ。
泣かないでほしい。お姉ちゃんが悪かったからもう泣かないでほしい。
そう言って頭を撫でてやりたくても周囲の亡者どもが邪魔をする。
私が殺した人たちが私の足をつかんで離さない。
マユを慰めてやりたくても、身動きが取れない。
そうしてしばらくもがいていると翼の生えたMSが飛んできて、マユに銃口を向ける。
そこで目が覚める。
(最悪だ……)
結局何の解決にもならなかった。
「昨日のことはお互い忘れることにしましょうか」
そういった生徒会長は頭痛がひどそうだ。
下手に掘り返して織斑先生に報告されても面倒なので黙っていることにする。
「昨日の模擬戦は覚えてるかしら?」
「ああ、あれよかったんですか?私謹慎処分中だったんですが」
「許可はとっているから大丈夫よ。
問題はあなたの実力よ」
そこで一度コップの水を飲みほし、話を続ける。
「水がおいしいと感じたのは久しぶりね……。
とりあえず、あの模擬戦で実力は十分すぎると判断したので、貴女には生徒会に入ってもらいます」
ん?生徒会?
「どういうことですか?」
「そのままの意味よ。あなたには夏休み明けの二学期から生徒会に籍を置いてもらいます。
理由は学校内でのあなたのイメージの改善と私が警護しやすいからよ」
「後者はともかく前者は必要ないです」
「貴女の友達に迷惑がかかるとしても?」
そういわれると弱いが、
「別に問題ないですよ。もうあの二人も私に愛想つかしちゃってるだろうし………」
私はあの二人に銃を向けたのだ。
そして殺す気で撃った。
愛想つかされて当然だろう。
そういうと生徒会長は何か考えていたようだが、
「まぁ主な理由は後者だから問題ないわね。
貴女の謹慎も期末テストまでには解除されるようにしといたから、今はテスト勉強でもしときなさい」
「分かりました」
正直今更勉強することなんてIS関連しかないが一様復習しておくか。
そしてやることもない私は机に向かって言われたとおり勉強を始めた。
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(まさか私が体術で後れを取るなんて……)
正直、ただの怒りっぽい少女だと思ってなめていた。
あの動きは明らかに軍隊に所属している者の動きだ。
更識の党首である私が、戸籍上ではただの少女であるはずの彼女に後れを取った。
そもそもただの少女である彼女が亡国企業をつぶした謎の組織に狙われているというのもおかしい。
何か裏がある。
私でなくてもそう思うだろう。
今までしっぽさえつかめなかった亡国企業をあっさりと壊滅させた謎の組織。
織斑先生との電話の向こう側で聞こえた戦闘音。
狙われる理由と聞いて妙に納得したような顔をした飛鳥さん。
(今までで一番大事になりそうね)
一筋縄ではいかないだろう。
正直、目の前の彼女は私と同等かそれ以上の強さがある。
そんな彼女を守るのは至難の業。
だけど守って見せる。
更識の任務も織斑先生からの頼みも関係ない。
(ただの刀奈として守って見せる)
それが私が友達になりたいと思った少女に向けた誓いだった。
タイトルを二字熟語で全部まとめるのに限界が来ました(白目)。
というかギャグを書くつもりはなかったのにギャグっぽくなってしまった。
だけど大丈夫!次回はシリアス!
一夏たちが臨海学校から帰ってくるよ!
この夜の酒宴は要望があれば次回の番外編にでも載せます。