だからギャグは苦手なんだってヴぁ!
血だまりを歩く。
足元は死体。
眼前は果てしない闇。
いくら歩いても終わりは見えない。
だから、前だけを見つめてひたすら歩く。
いつか出口が見つかることを信じて。
『出口なんてないよ』
どこかから声が聞こえる。
それを無視して歩き続ける。
『いい加減諦めちゃいなよ』
うるさい。
『自分がしたことからは逃げられないよ』
うるさい。黙れ。
『足元を見なよ。それがあんたのしてきたことだよ』
…………黙れ。
『認めなよ。あんたは幸せになれない。なっちゃいけないんだ』
…………。
『学生ごっこは楽しかった?本当の自分を隠した友達ごっこは幸福だった?』
…………。
『あんたが今までやってきたことをあいつらに話せばどんな顔をすると思う?』
…………。
『所詮あんたは人殺しよ。一生日陰者だ。彼らと一緒にお日様の下を歩くなんて無理だったんだよ』
「黙ってよ!!私のくせに!!」
『そう。私はあんた。だからあんたが何者か知ってるし、あんたがあの人たちと友達になんてなれないことを知っている』
『もう諦めちゃいなよ。ほら、向こうでみんなが呼んでるよ?』
いつの間にかうつむいていた顔を上げる。
視線の先には懐かしい顔。
「マユ……ステラ……レイ……」
『ほら、早くいかないと………
また手遅れになる』
その言葉が聞こえた瞬間、私ははじかれた様に走り出した。
三人の頭上でもう何百回もみた光が見えた。
あれは…………、
ビームの光。
緑色のビームが三人を飲み込んでいく。
あれはISのビームじゃない。
あれは私が慣れしたんだもの。
MSのビームの色。
はるか上から翼をはやした黒い影が舞い降りる。
「また…………あんたは私から奪っていくのね!!私の全てを!!」
上空の黒く塗りつぶされた天使をにらみつける。
二年前、すべてを奪われたときと同じように。
半年前、ベルリンで守ると誓った少年を奪われたときと同じように。
「どれだけ私の大切なモノを奪えば気が済むのよ!!あんたは!!!!」
黒塗り天使に向かって吠える。
「フリーダムゥ!!!」
『本当にそうなの?』
声が聞こえた。
『ほら、よく見なさい。あれは何?』
まるで誘われるかのように、その声に従って舞い降りた黒塗りの天使を凝視する。
あれは…………?
「…………デスティニー?」
そこにいたのは青い天使を纏ったあの男ではなく、運命を象った悪魔を纏った私だった。
「進!!!」
抱き締められる。
何が起こったのかわからない。
だけど…………。
(……あったかい)
そうして私は意識を手放した。
このぬくもりの中なら、安心できると思った。
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「やっぱり元気ないよね」
シャルが言う。
話題は進のこと。
今ここにはいつものメンバーがそろっている。
みんな実家から帰ってきていた。
「私たちと居る時は何ともなさそうなんだがな」
「一人になると途端に暗くなんのよねぇ~」
箒と鈴が答える。
今いるのは食堂。
みんなで朝食をとりながら実家に帰っている間に何をしていたかを話していた。
そしてシャルが進と買い物に行った時のことをはなし、そのさなか進を一人にしてアイスを買いに行き、戻ってきたとき進は暗い顔をしていたという。
「そういえば、その進さんが起きてきませんわね」
「ふむ、あいつにしては珍しいな」
時刻は午前八時。
いつもの進なら起きている時間だ。
「まいったな……せっかく誘おうと思ったのに」
手で持っているチケットを見る。
最近できたプールの団体チケットだ。
ここにいる全員と進を誘っていこうと思っていたのだが、進が起きてこないとその話ができない。
(もちろん二人で行きたいのは山々なんだけどな…………)
正直間を持たせる自信がない。
自分でも気の聞いた話ができる方じゃないという自覚はある。
それでも友達としてならだいぶ話せるんだが…………。
(進と一緒だとなんかこう…………慌てちまうんだよなぁ)
今更だがみんなが俺と居る時に妙に挙動不審になっていた理由がやっとわかった。
もうちょっとみんなの気持ちを考えればよかったと思うが、もうそれは終わってしまったことだ。
それにいま俺の気持ちははっきりと進に向いている。
そんな俺が今更みんなのことを気にかけても、みんなからしてみればふざけるなと言いたいところだろうと思う。
「しょうがない。直接進のところに行くか!」
だから俺はいつも通りにふるまう。
「だな。寝坊など軟弱なことをするあいつの根性を叩き直してやる」
「あまり無理をさせてはいけませんわよ?」
「やっぱりあんた、あいつことになるとお母さんみたいになるわね」
「セシリアママか…………なんとなくお母さんと雰囲気が似てるかも……?」
「ふむ……私は母親と言うものを知らんが、今のセシリアのようなものなのか?」
「貴女たち……!!いい加減にしなさい!!」
「セシリアお母さんが怒った!」
「逃げるぞ!!」
「あ!ちょっと待って二人とも!僕を置いていかないで!」
「お待ちなさ~い!!」
だからみんなもいつも通りにふるまう。
みんな、俺の大切な仲間…………友達だ。
進の部屋をノックする。
「はいは~い!ちょっと待っててね~!」
奥から聞こえるのは更識会長の声。
「はいお待たせ。って織斑君じゃない?まさかお姉さんのところに朝駆けに来てくれたの?ダメよ!お姉さんと貴方は生徒会長と一生徒!みんなを守る私があなただけを贔屓にするわけには!」
「はいはい。分かりましたからどいてください」
会長のギャグをさらりと受け流す。
「あらつまらない。もっと慌てふためくと思っていたのに」
「進からあなたの弱点は相手にしないことだと聞いたので」
「え~!!」
ブーイングを繰り返す生徒会長をわきにどけて中へ入る。
初めて来た頃よりだいぶものが増えた進の部屋。
二つあるベッドの窓側に進が寝ていた。
「やっぱりまだ寝ていたのか……」
「まったく、お寝坊さんですわね」
そんな進を起こそうと思い近づいていく。
「…………フリー…………ダム……」
そんな進が何かを呟いた。
(フリー……ダム?自由…だっけ?寝言か?)
苦しそうにしている進を見て、楽しい夢ではないと思い起そうとする。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!」
突然、進が叫びながら起きだした!
「進!?」
「何!?」
「進さん!!」
そのまま叫びながら暴れまわる。
何とか暴れる進を止めなければ……!
そう思って進を抱きしめる。
「進!!俺だ!一夏だ!大丈夫だ!大丈夫だから落ち着け!」
抱きしめた直後はなおも暴れようとした進だが、次第におとなしくなった。
今は寝息が聞こえる。
「……なんだったの?」
「どうやら悪夢を見てるみたいなの。たまに私のほうが早く起きた時はいつも苦しそうだったわ。
だけど、こうして暴れまわったのは初めてね」
悪夢。
そんなものを見ないようにしてやりたい。
「たまに落ち込んでいるのはこれのせいなのかな?」
「おそらくそうなのだろうな」
進は悪夢を見ている。
そのことで落ち込んでいると言うのなら。
チケットを持った手を握りしめる。
守りたい。
今、俺の腕の中にいるこの少女を守りたい。
絶対に守る。
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「あ!見て見てちーちゃん!あれ箒ちゃんたちだ!」
「何?なぜあいつらがここにいるんだ…………」
はい!みんなに問題!!
今束さんたちはどこにいるでしょうか!
時間切れです!正解はプール!
ちーちゃんの後輩のおっぱいの大きい子がチケットをもらって、それに便乗して束さんも一緒に来ました!
やったね!
「ねぇねぇ、ちーちゃん!」
「行くなら一人で行って来い。私はここにいる」
「え~なんで~!」
「なぜ休みの日まであいつらの面倒を見なければいかんのだ」
「一緒のほうが楽しいのに……」
見ればいっくんとあーちゃんがウォータースライダーに一緒に乗っている。
ワオ!いっくん顔真っ赤!
逆にあーちゃんは平気な顔してる。
あ~あれはすっごくいっくんを信頼してる眼だ。
でも友達……親友かな?そうとしか見てないね!
やったねいっくん!信頼されてるよ!
男としては意識されてないけどね!
頑張れいっくん!
「千冬先輩!篠ノ之博士!冷たいもの買ってきましたよ~!」
「ありがとう、麻耶」
「ホイホイ、あんがと~」
一瞬ちーちゃんが咎めるような視線を送ってくる。
仕方ないじゃん!これでもよくなった方だよ!
「でも飛鳥さん、みんなに馴染めているようで本当に良かった。
最初異世界から来たって言ってた時はどうなるかと思いましたよ」
「そうだな。特に、あのバカがいらんことをしないかとひやひやしたな」
「束さんはあんまり心配してなかったかな~?だっていっくんだしね!」
あ!いっくんがあーちゃんに怒られてる!
あれはウォータースライダーの中で絶対胸に触ったね!
間違いない!
おー!中国の子の見事なドロップキック!
名前なんだっけ?まあいっか!帰ってからまた覚えよう!
「まったく、あのバカは…………」
またちーちゃんが溜息ついてる。
「それで?束。例の物はできたのか?」
「うん?ああ!あれね!問題ないよ!あとは実装するだけだね!」
あ!いっくんが沈められてる!
あーちゃんがオロオロしてる!なんか小動物みたいでかわいいね!
「そうか。なら、この夏休み中に実装するぞ」
「りょ~かい!」
お~!いっくんがみんなを投げ飛ばしてる!さすが男の子!
水の中とはいえ女の子を投げ飛ばすなんて!
と思ったら箒ちゃんの胸がすごいことになってる!
プルンプルンだよ!
眼福眼福!
「本当に来るんですか?先輩」
「ああ。この夏休み、仕掛けてくるだろうな」
あれ?あーちゃんがこっち見てる?
気付いてたのか~。手振って見よう!
おお!ちゃんと返してくれた!束さんなんか感動!
「狙いはやっぱり……」
「ああ。何の目的かは知らんが、十中八九飛鳥狙いだろう」
お!あーちゃんにつられていっくんも気が付いた!
さすが!いつもあーちゃんを見てるいっくんは違うね!
「いつもとやることは変わらない。生徒を全力で守る。それだけだ」
「はい!」
横ですごくいいこと言ってるけどみんなこっち見てるよ?
みんなどうすればいいのかわかんなくて固まってるよ?
「束さん!織斑先生!山田先生!」
「お~あーちゃん!あーちゃんたちもここに来てたんだね!」
「はい、さっきクラスメイトも見ました」
「そうか。羽目を外しすぎるなと言っておいてくれ」
「あんまり危ないことしちゃだめですよ~?」
「分かってます!それじゃ!」
「ばいに~!」
あーちゃんはみんなのほうに戻って行っちゃった。
「もうちょっとおしゃべりしたかったなぁ~」
「休みの日にまで教師としての仕事を思い出させないように離れたんだろう。
まったく、この思いやりが少しでもうちのクラスの人間にもあればな……」
「まぁ手のかかる子ほどかわいいと言うじゃありませんか!
わたし、教師生活であだ名つけられたの初めてですよ!」
お~変なところで喜んでる!
あ!水泳競争かな?
あ~ちゃんと眼帯の子速いな~!
中国の子もなかなか速い!
あれ?この三人に共通する部位が…………。
うん!束さんは何も考えなかったよ~!
「さて、私も少し泳ぐか。二人はどうする?」
「あ!わたしも行きます!」
「じゃぁ束さんも―!」
最後にもう一回箒ちゃんたちに向けて手を振る。
いっくんとあーちゃんは返してくれた!
他の子もお辞儀してる。
あ…………あれは!!!
箒ちゃんがそっぽ向きながら手を振り返してくれてる!!!!
「箒ちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!!!!!」
「な!?姉さん!?なぜこっちに!?」
なんか後ろでちーちゃんが何か言った気がしたけど今の束さんには何も聞こえない!
「箒ちゃん!!お姉ちゃんすっごくうれしい!!もう大好き!!!!」
「ちょっ!!離れてください!!」
「やだーーー!!!!」
うん!やっぱり最高!!
恥ずかしがる箒ちゃんが見れて大満足だった!
うん。まずは謝ろうと思います。
書いてて作者も思いました。
これってプール回って呼べるのか?
だって作者は女の子とプールに行ったこととか無いし!(震え声)
家族としか行ったことしかないし!(血涙)
原作のプール回とは状況が全く違うからほぼオリジナルで書くしかないし!(言い訳)
うん、ごめんなさい。
このままプール回を普通に書いても作者の力量ではすっごい駄文になると思ったのでこんな形になりました。
それでもプール回が見たいという要望があれば頑張って書いて番外編に載せます。
それにしても束さん視点は思ってたより書くのがオモシロかった。
またやろう!
それぞれの思惑が絡み合い、物語は終幕へとひた走る
「これが……新しい白式」
「姉さん……私は!」
「さぁ!魅せてあげますわ!セシリア・オルコット最後のワルツを!」
「こんなことで……負けてらんないのよ!!」
「お母さん……僕ね……友達ができたよ」
「見せてやる!軍人としての矜持を!わたしの意地を!」
「生徒を守る!それが私の役目よ!」
「何がブリュンヒルデだ…………!」
「信じてるよ…………あーちゃん」
「トダカ一佐の仇!!」
「僕は……どうしてこんなところに……来てしまったんだろう?」
「諦めるな!!」
「腰抜けどもがぁ!!」
「グゥレイト!!」
「私一人でどうしろって言うのよ!シン!レイ!」
「さぁ!ともに世界を壊そうじゃないか!!」
「私は……あんたとは違う!」
狂った歯車は二度と元に戻らない
「お疲れ様!シン!」
「おかえり!お姉ちゃん!」
「よく頑張ったな。シン」
もうすぐ、夏が終わる
「シン・アスカ!デスティニー!行きます!」