思いつかないんだ!
門の前で足を止めてしまう。
(友達の家に招待されるなんて何年振りだろう?)
前回来たときはシャルと一緒で招待とはとても呼べないものだった。
強盗に巻き込まれて警察の事情聴取を受けた帰り、あまりにも時間が遅くなったので急遽織斑先生が泊めてくれると言ったのだ。
あの時はなぜか一夏が悔しがっていた。
急に決まったため私たちをちゃんと持て成せなかったのが悔しかったらしい。
「?どうしたのよ?早く押しなさいよ」
後ろから鈴につつかれる。
「ちょっ、ちょっと待って。ちゃんと友達の家に招待されるのなんて何年振りかわからないから緊張しちゃって……」
「じれったいですわねぇ。ほら!行きますわよ!」
「あ、ちょっ!」
いつまでもインターホンを押さない私に痺れを切らしたセシリアが代わりに押してしまう。
すぐに家の中から返事が聞こえ、しばらくしてからドアが開く。
「お!いらっしゃい!」
「ね、姉さん!?」
なぜか現れたのは束さんだった。
「わざわざ暑い中ご苦労様!暑かったでしょう?部屋は冷ましてあるから早く入りなさい!」
「どこのおばあちゃんよ…………」
年よりくさい口調で話す束さんに鈴がツッコミを入れる。
それでもいつまでも暑い中突っ立っている気はないのでありがたく入らせてもらう。
「来たか……」
中で待っていたのは織斑先生だった。
「織斑先生?」
「一夏はどうしたんですか?」
「あいつは今買出しに行かせている。今日は二つお前たちに用事があってな」
私たちに用事……?
「まず一つ目は束からだ」
「ほいほ~い!じゃあ、あーちゃん以外の子の専用機を預からせてもらってもいいかな?」
「わたくしたちの……」
「専用機を?」
私以外のみんなの専用機を預かる?
というか私以外か……なんか仲間外れにされた気分だ……。
「あ~!違うんだよあーちゃん!仲間はずれにしたわけじゃないんだよ!!ただインパルスは束さんが作ったわけじゃないしそのままでも十分完成されてるしセカンドシフトもしてるから改良案が思いつかなかっただけなんだよ!」
「いや、別に気にしてないですけど……改良案?」
それってつまり……、
「僕たちのISを篠ノ之博士が改良するってことですか?」
「そうだ。更識から聞いていると思うが、飛鳥は現在何者かに狙われている状態である。
幸いにもそいつらはまだ目立った動きをしていないが、いつ飛鳥を狙ってくるかは分からん」
「そこでみんなのISを強化して戦力アップを図ろうと思ったわけだよ!」
そういえば私って狙われてるんだっけ?
最近の生活が楽しすぎてそんなことすっかり忘れてた。
「それはうれしいけど……」
「専用機と言っても国から譲り受けたものですし……こちらで勝手に改造するわけには……」
「その辺は私がうまくやっておく。篠ノ之束の技術と言えば、各国の研究機関が喉から手が出るほどほしがるものだろう?
束の技術はもはや天才の一言では片づけられない領域になっている。
その技術の一端が無償で手に入るのだ。文句はつけようがないだろう」
織斑先生が悪い顔をしながら言う。
確かに束さんの技術はもはや脅威だ。
それがただで手に入るなら文句はつけられない。
C.Eに……連合に束さんがいなくてよかった。
「姉さん。なぜ私たちだけで進の物は改良しないのですか?あれは姉さんが作ったんじゃないんですか?」
「う~ん、残念ながらあーちゃんのISは私が作ったわけじゃないんだよ。もちろんISにしたのは束さんだけど基礎設計は私じゃないしそもそも全部の再現は……」
「束さん!!」
私の呼びかけにハッ我に返る束さん。
「ごめん箒ちゃん!今のなし!みんな聞かなかったことにして!」
「え、ええ。分かりました……」
インパルスにはこの世界にない技術がかなり詰め込まれている。
それが流出するのは避けたい。
(いや……違うよね)
ただみんなに私が異世界から来たと知られたくないだけ。
異世界のことを話したら、どうしても戦争のことを話さなくてはいけない。
そしてこの世界に着た経緯を聞かれるだろう。
私が載っていたMSという兵器のことも……。
(みんな……私が人殺しだってわかったらなんていうかな?)
怖がるだろうか?
嫌われるだろうか?
(!ダメだ!考えちゃ!)
頭を振って思考を止める。
これ以上考えるとおかしくなりそうだ。
「すでに一夏の白式は預かっている。あとはお前たちの物を預かるだけだ」
織斑先生の言葉にみんなは顔を見合わせ、
「分かりました。」
「拒否する理由はありませんわね」
「まあ、あの篠ノ之博士直々に見てもらえるんなら、預けるしかないわね」
「むしろ願ったりかな?」
「普通は大金を使ってもかなわないことだからな」
そうしてみんなが待機状態のISを束さんに渡す。
「だけど教官。そこまで危険な相手なのですか?」
「ああ。敵に実力は未知数だが、機体の性能に関しては明らかに向こうの方が上だろう」
その言葉にみんなが息をのむ。
「単純な性能だけで考えればこの中で対抗できるのは紅椿だけだろう。
戦闘はISの性能だけが勝敗を分かつ絶対条件ではないとはいえ、やはり性能で負けていいと言う通りではないからな」
確かに、性能差だけで勝敗は決まるわけではないが、性能は大事だ。
「さて、この話はここまでにしよう」
そう言って織斑先生は一度手を叩いた。
「もう一つの用事を済まそう」
そう言って織斑先生は真面目な顔をして、
「お前ら、あいつのどこが好きなんだ?」
と言ってきた。
「?あいつって一夏のことですか?」
「ああ、その通りだ」
どこが好き……か。
「やっぱりやさしいところかなぁ?ここに来たばかりで右も左もわからない私にやさしくしてくれたし、こんな私でも親友になってくれたから」
今までの十六年の人生で親友と呼べる人はレイか一夏しかいない。
レイ……いまどうしてるんだろう?
最後に見たのはフリーダムを追って宇宙をかける姿だった。
最近よく夢にも出てくる。
「そういう意味ではないんだがなぁ……では飛鳥。言葉を変えるぞ」
「え?」
「一人の女として、一夏はお前にとってどういう存在だ?親友としてではなく、一人の異性として見て……だ」
それはつまり、一夏を恋愛対象としてみて……ということだろうか?
「それは…………」
恋愛対象として見た一夏……そんなこと考えたこともなかった。
オーブにいるころはそんなことに興味が出る年齢ではなかったし、アカデミーでは毎日死に物狂いでそんな余裕はなかった。
ミネルバにいた時も私は腫れもの扱いだったし、いつだれが死んでもおかしくない最前線にいたからそんな話は聞いたことがない。
つまり、私は恋愛には疎い。
それに私は異世界から来た人間だ。
いつか元の世界に変えるのに、この異邦のちで恋人など作れやしない。
(それに……私には誰かを愛する資格なんてない……)
愛する人をだれも守れなかった私が、また誰かを愛する資格なんてあるわけがない。
だから……、
「私は…………」
「ただいまー」
応えようとしたら、一夏が帰ってきた。
「おー、みんないらっしゃい……ってなんだよその眼は」
「いや……つくづくお前は間が悪いと思っただけだ」
「なんだよそれ……」
そう言って織斑先生が席を立ち、冷蔵庫をあさる。
「ちーちゃんお昼からお酒~?」
「休みの日くらい固いことを言うな。一夏、つまみ」
「はいはい。分かったよ」
缶ビールを取り出し、いきなりだらけ始めた織斑先生にみんなが呆気にとられる。
「あ、織斑先生。これなんかどうです?ビールじゃなくてえーと、日本酒?ですが」
私はインパルスの拡張領域から「田酒」と書かれたお酒を取り出す。
「ほう……なかなかいいものだ……が、なぜおまえが酒を持っている?」
言われてハッとする。
そう言えばこの世界では私はまだお酒を飲めないことになっているんだった。
「こ、細かいことはいいじゃないですか!さあ!飲みましょう!」
「いやダメだろ!」
一夏の鋭いツッコミ。
この前会長と一緒に飲んでお酒の味を思い出してから無性に飲みたくなる日ができてしまった。
そして一夏に私のお酒を取り上げられる。
「あ~~…………」
「い、いや!そ、そんな上目づかいで訴えてきてもダメだからな!?」
「一夏の裏切者~~……」
「なにが!?」
一夏の手がふらふらと揺れている。
もう少し!
「もう……一夏さん?そんなに誘惑に負けそうになってたら示しがつきませんわよ?」
そう言ってセシリアが一夏からお酒を受け取る。
「お願いセシリア!それ頂戴!」
「ダメです!お酒は二十歳になってからですわ」
どうやらセシリアのガードは堅いようだ。そのまま私が持ってきたお酒はあえなく織斑先生のもとへ。
「ご苦労、オルコット」
「いえ、当然のことをしたまでですわ」
次にお酒を飲める日が来るのはいつになるのだろうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうだ?」
薄暗い部屋で、男の声と何かの作業音が聞こえる
「70%と言ったところですね」
「そうか」
「貴方の出した仕様書の通りにこいつを仕上げるのは苦労しましたよ。
元がひどいじゃじゃ馬でしたからね」
「そのじゃじゃ馬に乗ってあれだけの戦果をたたき出した彼女は何なのだろうな?」
「天才……いや、化け物なんじゃないですか?」
会話はしているものの、彼らはお互いのほうを見ていない
その視線は同じものを見ていた
「各種武装の強度、無いはずのエネルギー切れ、戦闘中に消えるビーム刃。
それもこれのこのリミッターのせいでしたね」
「プロトユニットからもたらせるエネルギーは莫大だ。このような形にしないとMSに組み込めなかったのだろう」
「そのせいで負けても本末転倒じゃないですかね?」
「どうせプロトユニット運用の試作機だ。完成系は別にある」
「だからって負けていい理由にはならないとおもんですが…」
「パイロットに経験を積ませる目的でもあったのだろう」
仮面の男は若干投げやりな口調で言う
「そういうもんですかねぇ?」
と、もう一人の男が納得しきれていないような声を出す
「で?パーティーの開催はこいつができ次第ってことですか?」
「いや、その前に仕掛ける」
「へぇ?そりゃまたなんで?」
「連合側とオーブ側を抑え込むことが難しくなってきたのでな。ここで一度ガス抜きをする」
「警戒されるんじゃないですかい?」
「いや……私の予想では、面白いことになるだろう」
そう言って仮面の男の口が吊り上がる
「面白いこと?」
「ああ。うまく事が運べば、彼女を労せずに無力化できるかもしれない」
「あの『鬼神』を!?」
「彼女はこの世界で幸福を手に入れた。なら、それを壊すだけでいい。
彼女に現実を突きつける。たったそれだけでいい」
「私は貴方だけは敵に回したくありませんね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そうして仮面の男は部屋を出ていった
「『鬼神』……たしか、シン・アスカとか言ったっけ?正直同情するよ」
残された男は目の前に鎮座するかつての彼女の愛機と酷似した機体を眺めながらつぶやいた
文字数4444です!
不吉です!
狙ってません!
作者の中の一夏君はこんな風に間が悪いイメージ。
酒の金?キニシナーイ!
最近ネギまのオリ主小説のアイディアがわいてきてこっちの執筆に影響が出始めた作者です。
もうすぐ完結というところでなぜにこうも……!
あ、最終回まであと20話もない予定です。
ジャンジャジャ~ン!!今明かされる衝撃の真実~!!
姑息な手を…………(最終話どうしようか考えながら)。
アンケートは6月10日の午後24時ジャストで締め切ります!
まだの人はお早めに!
長くなってしまった日常回もそろそろ終わり!
次回への複線も張ってあとはラストスパート!
ではまた次回!!