[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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第二話 「驚愕あるいは絶望」

「本当にごめんなさい!」

 

 意識を取り戻した彼に向って、私はすぐに頭を下げた。

 

「いや、いいよ気にしてないし。それに今日は厄日だってわかってたからな………」

 

 と言いつつ本当に幸せが逃げていきそうな溜息を吐く目の前の男性を見て、その姿がある男とダブって見えた。

 

 そう…………アスランがルナマリアやアスハ、そしてラクス・クラインに言い寄られてため息をついていた姿とダブって見えて、私は自然と笑みをこぼした。

 

 

 

 そしてそんな自分に気付いて驚く。

 

 

 

 まさかアスランのことを思い出して笑う日が来るなんて思ってもみなかったかだ。

 

 

 アスラン・ザラのことはミネルバ隊の中では最大級のタブーとなっていた。

 前大戦でザフトのエリート部隊「クルーゼ隊」に入隊。

 当時最強と言われた連合のストライクを単独で撃破し、その功績が認められFAITHに任命される。

 その後当時のザフトの最新鋭機《ジャスティス》を受領。その後はまさかのザフトから脱走。三隻同盟の一員として、連合とザフトの前に立ちふさがる。

 前大戦終結後は身分を偽りオーブ国家元首カガリ・ユラ・アスハのボディーガードとしてオーブに移住。約二年間オーブで暮らすも視察のためにアスハと共にアーモリーワンに訪れたことがきっかけでまた戦場に立つこととなった。

 一時はアスハを守るためという理由で「アレックス・ディノ」として戦場に立ったがその必要がなくなると正式にザフトに復隊、その力をいかんなく発揮する。

 だが戦場にフリーダムが介入してくるようになってからは態度が一変する。

 ともすれば反逆罪として問われても仕方ないような発言を繰り返し、私がフリーダムを撃破した時は訳が分からないことを言いながら殴り掛かってきた(女の子にグーパンとかする? ふつう)。

 その後、最新鋭量産機の《グフ・イグナイデット》を奪い脱走。

 それを私が撃墜したと思ったらまた新しい機体をまとって私の前に現れた。

 

 そのことからミネルバではメサイアでの戦闘前ではアスランのことは「蝙蝠野郎」「ザフト最低の蝙蝠」という風に言われていた。

 

 

 そんなアスランのことを私は笑い話として思い出せるようになっている。

 さっき(私の体感では)まであんなにも憎かったのに、今ではそのアスランのことを私は認めている。

 

(やっぱり、私に勝ったからかな)

 

 

 

⦅あんたが正しいっていうのなら、私に勝ってみせろ!!⦆

 

 

 

 

 そう言って戦いを挑んだ私に、彼は見事に打ち勝ったのだ。

 

 

(結局…………アスランのほうが正しかったのかな…………?)

 

 

 気分が沈み、暗い顔をしているだろう私を見て目の前の男の子は何を勘違いしたのか慌てだす。

 

 そんな彼がおかしくて、

 

 

 

 

 

 

 そこで私の感覚がある違和感を持った。

 

 

 

(なに……ここ……?)

 

 

 

 どう見ても病室には見えない。

 少なくともザフトでFAITHの称号を持つ私に与えられるはずのない病室。

 

 ザフトならもっといい部屋を与えられるだろうし、連合ならもっとひどい部屋を与えられるだろう。

 

 

(というより……懐かしい?)

 

 雰囲気が懐かしい感じがする。

 似ているところを上げるなら、オーブで当時通っていた学校の保健室やザフトの軍事学校(アカデミー)の医務室に近い雰囲気。

 

 

「……? おい? どうしたんだ?」

 

 男の子が聞いてくるが無視して頭をフル回転させる。

 

 

 

 

 

 そこで窓が目に入る

 

        何の変哲もない窓

 

             だけどそこには映っているはずのものが無く

 

 

 

 

 映るはずのないものがあった

 

 

 

「太陽!? そんな……! なんで……!?」

 

 

 窓の向こうに移っているのは少し広い森と

 

 

 

 

 地平線と

 

 

 

 

 あるはずのない太陽だった

 

 

 

 

「ここは……地球!?」

 

 

 ありえない!

 

 月から地球まで何キロあると思っているんだ!?

 

 

「そこのあんた!」

 

「は、はい!」

 

 私の言葉に身を固くする男

 

「ここはどこ!? 私は今どこにいるの!?」

 

 その言葉に彼は

 

「どこって…………IS学園だけど?」

 

 私が予想した答えのはるか上をいく答えを言った

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「織斑先生!」

 

 私を呼ぶ声に反応し、私……織斑 千冬は振り返った。

 

「山田先生。それに桜井先生も」

 

 私と同じ1-Aを受け持つ山田麻耶先生と保険医である桜井了子先生がこちらに駆け足で近づいてくる。

 

 と、山田先生がさっそく切り出してきた。

 

「連絡つきましたか?」

 

「ええ。こいつの写真を送ったら案の定飛びついてきましたよ」

 

 と言いつつ私は振り返って今回の騒動の原因を眺める。

 

 

 それは従来のISより一回りほど大きく、そしてその装甲は激しい戦闘を物語るようにボロボロだった。

 

 両腕は切り落とされ、背部についていたと思われる両翼は半ばから切断されている。

 背中にあるウェポンラックと思しきものは爆発でもあったのか使い物にならなくなっており、装甲で無傷なところはないに等しい。

 いったいどんな戦いを繰り広げればここまで損傷するのか。

 

「桜井先生、例の少女は?」

 

「さっき少しだけ目を覚ましましたわ。けど疲労がたまっているようで、すぐにもう一度寝かしました」

 

「起こすことは?」

 

「医者の観点から見て、止めさせていただきます。たとえ素性がわからなくても、生死の境を彷徨うような大怪我を負った彼女に無理をさせるわけにはいきませんわ」

 

「そうか……わかった」

 

 

 どうしたものかと悩んでいると、

 

 

 

 

 キーーーーーーーン

 

 

 

 

 

 という風切り音が聞こえてくる。

 

 私は山田先生と桜井先生の手を引いてすぐにその場を離れる。

 

 すると

 

 

 

 

 

 ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 という音とともに人参の形をした何か(おそらくロケットだろう)がグラウンドに着弾し、大きな砂埃を巻き上げた。

 

 

「ジャジャーーン!! 天災の束さんとうちゃーーーーーく!!!」

 

 

 相変わらず派手な登場の仕方だ。

 出席簿で頭をたたいてやろうと近づくと、束はすぐに件の機体のほうに走って行ってしまった。

 

 

「これかな~~ん? 国籍不明でこのわたしが見たことがない謎のISは~~!」

 

 

 もともと興味がないものにはとことんやる気が出ないやつだが、それは裏を返せば興味が出たものに対してはどこまでも貪欲になるということだ。

 

「ふんふんなになに? ですてぃにー? この子の名前かな? ちーちゃーん! なんて意味だっけー?」

 

「運命だ! それくらい覚えておけ馬鹿者!」

 

 束を一括すると何か文句を言いながら作業に戻っていった。

 

 あとは束に任せようと思い踵を返そうとすると、

 

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!」

《きゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!》

 

 

 

 と、束が叫ぶのと同時に校舎……おそらく保健室のあたり……からも悲鳴が聞こえる。

 

「山田先生と桜井先生は保健室へ行ってください」

 

「「わかりました(わ)!」」

 

 二人が急ぎ足で保健室に向かうのを見届けてから、私は束の方へ振り替える。

 

「何があった?」

 

「これISじゃない!!」

 

「なに?」

 

 ISじゃない?

 

「だってコアがないもん! 束さん特製のコアがどこにも見当たらないし! それに動力もやばいのと聞いたことがないものが使われてる!! こんなの初めて!!」

 

 どうやら束はかなり興奮しているようだ。

 

「落ち着いて順番に話せ馬鹿者。やばいのとは何だ?」

 

「核!!」

 

 

 …………なに?

 

「だから核エンジンだって! 今は異常があったのか知らないから動いてないけど、このサイズに収まるまでに小型化された核分裂路が動力に使われてるの!!」

 

 にわかには信じがたいことだ。

 

 そもそも核エンジンは取り扱いが難しい。

 莫大なエネルギーが得られる代わりに事故に陥った時の危険性が大きすぎる。

 束が白騎士を開発した時も、今のシールドエネルギーが見つからなければ核動力を積むつもりだったと後になって言っていたことを覚えている。

 

「あとでゅーとりおん送電システム? とかいうのと核エンジンを合体させたハイブリッド機関でハイパーデュートリオンシステムって言うんだって! 聞いたこともないや!」

 

 束が興奮している。

 

(無理もないか……)

 

 束が考え付かなかったまったく新しい動力。

 

 このIS(束によると違うらしいが)を作った人物は、こと発想という一転においては束を超えたことになるのだろう。

 

「ねぇちーちゃん! これバラしていい!?」

 

「ダメだ」

 

「ダメェ!? 今日は厄日だわ!!」

 

「せめて持ち主が起きてそいつから事情を聞けるまで待て。すべてはそれからだ」

 

 

 そう言って束をなだめつつ、私はこのIS……この正体不明の機体を見る。

 

 

(胸騒ぎがするな………)

 

 

 何も起こらなければいい

 

 

 そんな思いを否定するように、翼をもがれた運命は不気味な沈黙を保っていた。

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