[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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一万文字は超えてないからセーフ!


第三十三話 「決意あるいは一生」後編

「お姉ちゃんの人生は……あの日から狂い始めました」

 

マユちゃんが歩きながら言う。

俺たちが歩く横では、さまざまな光景が広がっていく。

 

家族を失って悲しんでいるところを、軍人に励まされる進。

 

その軍人と一時的にいっしょに住み始め、軍人にきつく当たる進。

 

最後はお礼を言いながらシャトルに乗って、宇宙に上がっていく進。

 

「あれは?」

 

「プラント……コーディネーターの……くに……」

 

箒の問いに、ステラが答える。

 

「コーディネーター?」

 

聞きなれない言葉に、再び鈴が問う。

 

「あらかじめ遺伝子を調整されて生まれてくる人たちです。容姿をある程度決められたり、普通の人より病気にかかりにくくなったり、運動神経がよくなったり頭がよくなったり……そういうのを生まれてくる前に決められるんです」

 

「それは……」

 

その言葉にラウラが反応する。

ラウラは試験管ベビーだ。さっきマユちゃんが言ったコーディネーターと同じく遺伝子を改造されて生まれてきていた。

だから反応したのだろう。

 

「国っていうことは、貴女たちの世界ではそれは普通なのね」

 

「はい。コーディネーターは私たちの世界では広く認知されています」

 

会長の問いにマユちゃんが頷く。

だけど、その次に発せられた言葉に俺たちは驚愕した。

 

「だけど、そのせいで戦争が起こってしまったんです……ナチュラルとコーディネーター……普通の人間と遺伝子を改造された人間のどちらかを滅ぼすまで終わらない戦争が……」

 

「戦争……」

 

背景が切り替わる。

 

『ここが…プラント……』

 

進のつぶやきが聞こえる。

 

『お姉ちゃん待ってよー!』

 

『速くしなさいメイリン!急がないと遅刻よ!

あんたもそんなところでボーっとしてないで急いだ方がいいわよ!』

 

『う、うん』

 

赤い髪を揺らしながら駆けてくる姉妹。

 

「ルナマリア・ホークさんとメイリン・ホークさん……のちにお姉ちゃんと戦友になる人です」

 

「あまり……強くなかった……でも…ふつう…」

 

また背景が切り替わる。

 

『勝者、アスカ!』

 

何かの訓練らしく、勝ったのは進だった。

 

『…ッケ!こんなんに本気だしてんじゃねえよ。女のくせに…』

 

負けたやつが負け惜しみを言いながら去ろうとする。

すると進がいきなり振り返りそいつの胸ぐらをつかんだと思ったら思いっきり殴りつけた。

 

『……女だから何?』

 

『ッてめえ!チョーシに乗りやがって!』

 

男が殴りかかろうとした瞬間、教官らしき男が進を殴りつける。

 

『アスカ!貴様は訓練が終わり次第ここの掃除だ!貴様も負け惜しみを言うくらいならもっと強くなれ!』

 

進が教官をにらみながら列に戻る。

 

「お姉ちゃんは私たちが死んじゃってからやさぐれちゃったから……ああいう風な衝突はよくあったんです」

 

「コーディネーター……自分が偉いって……思ってる……プライド高い……」

 

「自分よりも大した遺伝子操作を受けていないお姉ちゃんを下に見ていたんです」

 

ステラの言葉を補足するように言うマユちゃん。

 

場面が変わってどこかの部屋。

 

『今日から三人一組で行動してもらう!』

 

そう言って進は自分の班のところに行く。

 

そこには最初に出てきた赤い髪の少女と金髪の美人がいた。

 

「綺麗な人だな……」

 

「レイ・ザ・バレルさん。お姉ちゃんの親友になる人です」

 

『さて!自己紹介しちゃいましょうか!ルナマリア・ホークよ!よろしくね!』

 

『シン・アスカ…』

 

『レイ・ザ・バレルだ』

 

…………。

 

『えーと……それで終わり?』

 

『ええ』

 

『ああ』

 

「全然愛想がないな…」

 

ポロリと漏らした俺の言葉にマユちゃんは苦笑いしていた。

 

そのまま訓練に突入。

MSと呼ばれるISによく似た機体で進たちは宇宙を飛び回る。

 

『こいつら!』

 

『シン・アスカ!前に出すぎだ!指示に従え!』

 

『あーもう!こりゃ赤点ね……』

 

まったく統制のとれていない動き。

俺たちが知る今の進とは大違いだ。

 

「進にも……こういう時期があったんだな」

 

「一夏…最初から強い人なんていないよ」

 

呆れたようにシャルが言う。

そのあと乾いた音が聞こえてきた。

見ると進がレイというやつに平手打ちされていた。

 

『どうして指示に従わなかった?』

 

『……』

 

『まあまあ!レイも抑えて!せっかくこれから卒業まで同じ班なんだから仲良くやろうよ!』

 

ルナマリアさん……頑張るなぁ。

 

それからも時が過ぎていく。

 

シュミレーターで最高得点を出したレイと同点を取った進。

 

その進に負けじとさらにハイスコアを出すレイとそれを追い越そうとする進。

 

いつの間にか仲良く戦闘での意見を交し合う進とレイを嬉しそうに見つつその輪に入っていくルナマリアさん。

 

そして卒業。

 

赤い服を着た進とレイ、そしてルナマリアさんと他にも緑の服を着た数十人の少年少女たち。

 

「あの赤い服は何ですの?」

 

「あれは赤服と言って、訓練校を優秀な成績で卒業したエリートに贈られる服なんです」

 

「エリート……」

 

そうしていく間にも場面はどんどん切り替わる。

 

MSインパルスのテストパイロットに選ばれた進。

 

インパルスの取材に来たジャーナリストと一緒にテスト飛行をはじめ、そこで同期の男に命を狙われる進。

 

その男をジャーナリストと一緒に撃墜する進。

 

そしてインパルスとともに新造艦ミネルバに配属されることが決まった進。

 

そこで仲の良かった同期の訓練生やレイ、ルナマリアさんと再会する進。

 

浅黒い肌のヨウランと呼ばれた男と町を歩くシン。

 

その進とぶつかる街中で踊っていた男の子。

 

「あれ……僕…シンと……ここで出会った…」

 

ぶつかった拍子に二人がもつれ合って倒れ、ステラが進に覆いかぶさるように倒れる。

そのステラは進の胸をもんでいた。

 

『……柔らかい』

 

『!触るな!』

 

進の蹴りをよけるステラ。

そのままステラはどこかに走っていく。

 

『ヒュー!さすがラッキースケベされる能力!ふつうあんな風にはならねえよ!』

 

『ヨウラン!』

 

『おお!怖い怖い!とっとと帰りましょうかね』

 

うん。なんか胸の奥からふつふつと何かが湧き上がってくる。

これが嫉妬というものだろうか?

 

そしてまた場面が変わり、警報が鳴り響く。

 

アナウンスを聞くとどうやら新型のMSが三機強奪されたようだ。

 

進が迎撃に出る。

 

三機のMS相手に苦戦しながらも対等に戦い続ける進。

 

だが逃走を許してしまう。

 

「ここで逃げられなければ、状況は変わっていたのかもしれません」

 

そこからは怒涛の展開だった。

 

奪われた三機を追って宇宙に飛び出すミネルバ。

 

そこで戦闘に巻き込まれてやむなくミネルバに同乗した進の故郷の代表。

 

憎しみのこもった眼でその人をにらむ進。

 

残骸が漂う宇宙での交戦。

 

同僚二人の死。

 

三人だけになったMS隊でなおも相手を追うミネルバ。

 

戦争で最初に破壊されたコロニーが地球に落とされるという報告を受けて地球に急ぐ進たち。

 

『でも、実際自業自得だよな。これで全部燃えてきれいさっぱりする方が、かえってよくなるんじゃないか?』

 

ヨウランが冗談交じりに言う。

他の人達も冗談だとわかっているのだろうが、不謹慎には変わりない。

レイが咎めるように名前を呼ぶ。

 

『お前たち!もう一度言ってみろ!!』

 

その直後、進の故郷の代表がどなりながら入ってきた。

一国の代表が相手だからか進以外の全員が姿勢を正す。

 

『自業自得だと?かえってよかっただと?やっぱりそうだったのだな!お前たちザフトは!あの大戦から何も学ばなかったのか!?』

 

反論したくても相手は一国の代表。

誰も何も言わなかった。

 

ただ一人を除いて。

 

『別に本気で言ったわけじゃないよ。ヨウランも』

 

『なんだと!?』

 

『シン』

 

『あーそうでしたね。偉いんでしたね。あの人。オーブの代表でしたっけ。偉い人にはジョークも理解できないんですよね』

 

咎めるレイを無視してさらに進は言葉を重ねる。

 

『君は大した理由もなく、代表を侮辱する気か?それならばこちらにも考えがある』

 

紫色の髪をした男が進に凄む。

 

だけどそれを聞いた進は逆に怒りで持っていた紙コップを握りしめる。

 

『大した理由もないだって……?私の家族は、アスハに殺された!あんたたちが理念を守ったせいで、誰かが死ぬかもしれないって、ちゃんと考えたの!?』

 

「お姉ちゃんは、オーブを憎んでます。オーブの理念は私たち家族を守ってくれる。そう思っていたんだと思います。

だけど、実際に理念はオーブという国を守りましたが、そこに住む人々は守ってくれませんでした…」

 

そのままミネルバはコロニーの破砕作業を始める。

 

妨害してくる今回の事件の首謀者でもある元ザフトの軍人たち。

 

思うように壊れないコロニー。

 

そのまま地球に落ちる進たち。

 

地球での戦闘。

 

オーブへの一時避難。

 

ステラとの再会。

 

中立のはずのオーブの裏切り。

 

戦闘。

 

英雄、アスラン・ザラの帰還。

 

戦闘。

 

アスランとの衝突。

 

戦闘。

 

ガルナハン基地の攻略とアスランとの和解。

 

フリーダムの出現。

 

戦闘。

 

連合の放棄された基地の発見。

 

敵襲とステラとの再会。

 

オーブとの戦闘。

 

ステラの連合への返還。

 

仲間の負傷。

 

進一人になった状態での巨大なMSとの戦闘。

 

そのMSに乗っていたのがステラだったという事実。

 

ステラの死。

 

フリーダムとの戦闘と撃破。

 

壊れていく進。

 

デスティニーの受領。

 

アスランの裏切り。

 

戦争を裏から操るロゴス。

 

戦闘。

 

オーブとの戦闘。

 

再び現れたフリーダムとアスラン。

 

プラントの危機。

 

戦闘。

 

ロゴスの終焉。

 

デスティニープランの発表。

 

オーブからの武力行使。

 

そして決戦。

 

アスランとの一騎打ち。

 

そして俺たちの世界へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

誰も、何も言えなかった。

 

戦いばかりの進の人生。

奪って奪われての繰り返しの悲惨な戦争。

 

「後は、皆さんの知っている通りです。この世界に来て、お姉ちゃんは再び年相応の生活ができるようになりました。本当に皆さんには感謝してます」

 

深々と頭を下げるマユちゃん。

 

それにつられるようにステラも頭を下げる。

 

「そんなに大したことはしてないさ…」

 

「それでもです。本当に、ありがとうございます」

 

そうしてマユちゃんは俺たちにさんざん感謝した後表情を変える。

 

「お姉ちゃんのいるところまでもうすぐです。ここをまっすぐ行けば……」

 

「まて、マユ」

 

奥から声がかかる。

 

全員がそちらを向くと、金髪の男性がいた。

 

「レイさん?」

 

そこにいたのは進の記憶にも出てきていた進の親友だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まて、マユ」

 

「レイさん?」

 

俺の呼びかけにマユが答える。

そして俺はこの中にいた男……織斑一夏に目を向ける。

 

「織斑一夏……だったな」

 

「そうだけど……」

 

「構えろ」

 

レジェンドを呼び出し、銃を向ける。

ここはシンの心の中。

ここでできないことはない。

生身で空を飛ぶこともできるし、こうしてレジェンドを呼び出すこともできる。

いわば夢の中にいるようなものだ。

 

「い、いきなりなんだよ!」

 

「いいから構えろ」

 

織斑一夏の足元に向かってビームライフルを発砲。

それに驚いた織斑一夏はISとやらを展開する。

 

「何するんだよ!」

 

「行くぞ」

 

ライフルを牽制で撃ちながら接近。

何も持っていない左手でビームサーベルを構えながら突進する。

 

ビームを持っていた刀で弾きながらも織斑一夏も応戦する。

右肩に浮いている砲塔がこちらを向く。

 

回避。

 

荷電粒子ビームがすぐ横を通り過ぎていく。

それを全く気にせずに織斑一夏の懐に入り一閃。

 

間一髪のところで両手の刀で防がれる。

砲塔がこちらを向くより速くドラグーンを二機展開。

織斑一夏の背中を狙ってビームが放たれる。

 

すると砲塔が盾に変形してビームを防ぐ。

それに気を取られている織斑一夏の腹部に蹴りを入れつつ後退。

新たに三機のドラグーンを展開し、織斑一夏のもとに放つ。

 

「っ!なんで攻撃してくるんだよ!」

 

「お前を試すためだ」

 

俺はその場で動かずにドラグーンを操作する。

五機のドラグーンに翻弄されて織斑一夏は回避することしかできない。

 

「お前はシンを守ると言ったな。その心意気はうれしい。だが俺にはお前がシンを守れるとは到底思えない」

 

追加で一機のドラグーンを射出してやる。

五機のドラグーンに慣れて反撃しようとした矢先にもう一機追加したことでまた回避に徹する。

 

「分かっていると思うがお前はシンより弱い。お前の覚悟には実力が伴っていない」

 

さらに二機のドラグーンを射出。

増え続けるビームにとうとう織斑一夏の被弾が出てくる。

 

「お前がシンを守れるとは俺は思えない」

 

ビームサーベルを連結し、「アンビデクストラス・ハルバード」状態……ダブルセイバー状態にする。

 

「だから俺に示してみろ」

 

サーベルを構えてビームの雨の中に突っ込む。

傍から見れば俺の行為は自殺行為以外の何物でもないが、このドラグーンを操るのは俺だ。

どこにどのようにビームが飛ぶかは目をつぶっててもわかる。

 

「お前の覚悟を」

 

そのまますれ違いざまに切りつける。

刀で受け止められるがその分織斑一夏の足が止まる。

 

そこへビームが殺到する。

 

浮遊している盾が主を守ろうとその身をさらすがビームは何も一方向からではない。

がら空きの背中をビームが迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら私の覚悟も見てもらおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑一夏の背中を狙ったビームが弾かれる。

 

織斑一夏と背中合わせに立つ紅いIS。

 

『紅椿正常稼働中。GoodMorningMaster。あなたの足りない実力と頭を埋めるためにいる自立型戦闘支援IAの椿と申します。以後よろしく』

 

「よろしくと言いたいが、何か失礼なことを言わなかったか?」

 

『さぁ?椿のログには何も残っていないな。あなたの記憶違いじゃないか?』

 

「……まあいい。レイと言ったな?進を守ると決めているのは何も一夏だけではない。私も、あいつには借りがある。だから守る!」

 

「先を越されましたわ」

 

その声と同時に放たれるのは幾重ものビームとミサイルの雨。

ビームを躱し、あるいはビームシールドで受け、ミサイルをドラグーンで撃墜する。

 

「進さんを守りたいのはここにいるみんなが同じ。だと言うのに一夏さんだけを試すのはお門違いというものですわ!」

 

後ろに巨大なバックパックを背負ったセシリア・オルコットがこちらに銃口を向けながら毅然とした態度で言う。

 

(あのバックパック……ミーティアに似ているな)

 

機体の色も相まってストライクフリーダムを連想させる。

 

「まぁ、そういうことよね」

 

アラートの鳴る方を見るが、そこには何もない。

だと言うのに機体に衝撃を受けた。

 

(……これは!?)

 

「言いたいこと全部あんたらに言われちゃったけどね。あたしもいるってこと忘れないでよ!」

 

「そうだよ」

 

声が後ろから聞こえる。

そちらを振り向くが何もいない。

 

(いや、これは!?)

 

熱センサーに反応有。

 

センサーと自分の直感を信じてサーベルを振り下ろす。

果たしてそこには何かがいた。

 

「まだ僕が選んだ服、一夏に向けてお披露目してないし、僕も進には悪いことしちゃったからね。罪滅ぼしっていうわけじゃないけど、友達だしね!」

 

サーベルと何かが鍔迫り合いになっている目の前で、何かが姿を現す。

 

光学迷彩。

 

それもミラージュコロイドに限りなく近いもの。

あの世界では再現が難しいと言われていたはずだが…。

 

「私は闘う理由が増えたな」

 

近づいてくる熱源。

そちらを見れば四本の腕をはやした漆黒のISがこちらに迫る。

 

「進が私と同じ存在だったとはな……厳密には違うだろうが、今までよりあいつを近くに感じるよ!」

 

四本の腕から繰り出される近接攻撃。

鍔迫り合いをしていたシャルロット・デュノアを引きはがし、後ろに引く。

 

「まあ、私からも言わせてもらおうかしら!」

 

周りの湿度が急激に上がる。

危険を感じ即座に退避。

 

さっきまで俺がいた場所が爆発した。

 

「生徒を守る!それが私の役目よ!たとえ異世界から来たんだとしても、今は大切な我が校の生徒で私の友人よ!守らない理由がない!」

 

そして全員が織斑一夏のそばに立つ。

 

「レイ。確かに俺は弱い。俺一人で進を守るなんて絶対に無理だろう。だからこそ!俺たちには仲間がいる!

独りでできないことも、仲間と一緒なら乗り越えられる!

ここにいる俺たち全員で進を守る!誰一人欠けることなく、進を日常に迎えて見せる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、俺の覚悟だ!!」

 

涙が出そうだった。

 

あのいつも一人でいた進に、今はここまで友がいる。

 

(もう……お前は独りじゃないんだな……シン)

 

そのことが何よりもうれしかった。

 

「わかった。行け。シンはこの奥だ」

 

「お姉ちゃんを頼みます!」

 

「シンを…助けて!」

 

シンのいる方を指し示す。

 

そこに向かって彼らは力強く飛んでいった。

 

 

 

(シンを頼む)

 

 

織斑一夏の眼をまっすぐに見て、強く思う。

伝わったかどうかはわからない。

 

だが、すれ違いざまに見た織斑一夏の眼は確かに俺の言葉に応えていた。

 

 

 

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レイの眼が何かを訴えるように俺を見る。

何も言わないレイだけど、何が言いたいかわすぐに分かった。

 

だから俺も眼だけで応える。

 

(任せろ)

 

それが伝わったかどうかはわからない。

だけど、わかったことはある。

 

あいつは進が好きで、だからこんなことをしたんだろうと思う。

俺たちに進のことを託したかったんだと思う。

 

もうあいつは進を守ることはできなかったから、だから進を守れる立場にいる俺に嫉妬して、だけど俺に進を託すしかないから、せめて託すに値するかどうかを確かめたんだと思う。

 

「絶対に守って見せる」

 

「ああ」

 

「当たり前ですわ」

 

「今更ね」

 

「うん」

 

「言うまでもないな」

 

「お姉さんは今だいぶ本気よ」

 

俺の言葉に、みんなが頷く。

 

そしてついに広い空間の中にポツンと膝を抱えて座り込む進を見つけた。

 

 

 

「進!!!」

 

 

向かおうとした俺の前にビームが薙ぎ払われる。

 

すぐに撃たれた方を見ると、そこにいたのは進だった。

 

「進が……二人?」

 

『オチロ!!』

 

再びこっちに向かってビームが撃たれる。

 

それを躱しながら襲い掛かる進を観察する。

肌も機体もすべて黒塗り。

さながら進の影が襲ってきたみたいだった。

 

「さしずめシャドー・進ってところかしら?」

 

「アンチ・進でもいいんじゃないかな?」

 

「まさかシャルさんが一緒にボケるとは思いませんでしたわ」

 

「来るぞ!」

 

シャドー・進(会長命名)は蝶のような大きな翼を広げてこちらに残像を引きながら突っ込んでくる。

 

「あの進の記憶にあったデスティニーって機体か!」

 

『ウオォォォォォオオオオオオオ!!』

 

大上段から振りかぶられる大剣。

 

狙いは箒。

 

『おい主!さっさと受けるか避けないかしないと刺身になるぞ!』

 

「分かっている!」

 

そして箒は受けることを選んだ。

シャドー・進と箒の鍔迫り合い。

 

「あたしたちを忘れてもらっちゃ困るわよ!」

 

連結させ、ダブルセイバーの形状になった双天牙月を二本持って鈴が突っ込む。

その瞬間にシャドー・進はブーストを思いっきりふかして箒ごと鈴から離れる。

 

「残念だったね!」

 

だが、姿を消していたシャルが進にタックル。

そのまま箒から離れて無防備になる。

 

「これで終わりですわ!」

 

セシリアの一斉射撃。

 

爆発が起こり、辺りを煙が覆う。

 

「やった…か?」

 

「もう!織斑君!フラグを立てないでくれないかしら!?」

 

会長に突っ込まれる。

 

煙がはれるとシールドを展開してほぼ無傷の状態のシャドー・進がいた。

 

「ほら!一夏のせいよ!」

 

「俺のせいかよ!」

 

「来るよ!」

 

再度こちらに迫るシャドー・進。

牽制にみんなが持っている遠距離武器を放つが、そのどれも残像を残しながら高速で飛翔するシャドー・進には当たらない。

 

「っ速い!」

 

「なんで当たんないのよ!」

 

「クソ!」

 

そうしてまた接近を許してしまう。

 

今度は俺。

 

『ハァァァァァアアアア!!!』

 

「!雪片!!」

 

《操縦者の要請を確認》

 

《《雪片・真打》を起動します》

 

斬撃を躱しながら雪片・真打を起動する。

今の細身の雪片・甲と乙ではあの大剣は受け止めきれないと判断したからだ。

 

真打と大剣がぶつかり合う。

 

ふいにシャドー・進が左手を俺のほうに突き出した。

それが何か気付くのに遅れ、

 

『クラエ!』

 

つかまれた左腕が爆発した。

 

「がぁっ!」

 

「一夏!」

 

「このっ、離れなさい!」

 

箒とセシリアの援護のおかげでどうにかシャドー・進と距離を取る。

 

「あのスピードは厄介ね」

 

「どうする?七対一でもとらえきれないとなると打つ手がないぞ?」

 

膝を抱えて座り込む進を見る。

ちょうど俺たちとシャドー・進の位置は入れ替わり、俺たちが進に背中を向けている状態になっていた。

 

「…………進、聞こえるか?迎えに来たぞ」

 

返事はない。

ただただ膝を抱えて震え続ける進。

 

「お前の過去も見せてもらった。頑張ったんだな」

 

ピクリと、進の肩が震える。

 

「正直、俺は今お前が何を思ってそこでうずくまっているのかはわからない。だけどさ……そろそろ顔を上げてくれよ。

お前が俯いてるのは似合わないじゃないか」

 

シャドー・進が大剣を構える。

 

「お前にはいつも笑っていてほしい。もしそれをお前が赦さないんだったら、俺が…俺たちが赦す。

お前がずっとその胸に秘めてきた人殺しって罪を俺たちが赦してやる」

 

シャドー・進がこっちに突っ込んでくると同時に真打の刃がビーム刃に代わる。

 

「だからさ……いい加減、こんな暗い部屋からとっとと出ようぜ?」

 

零落白夜で作られた刀身はどんどん大きくなる。

この前は地上だったこともあって百メートルで遠慮したけど、ここなら遠慮する必要はない。

 

動く右腕だけで真打を上段に構える。

刀身の長さは十キロを超えただろうか?

エネルギーは大丈夫なのかと思いふと見て見ると、逆にエネルギーが増えて行っている。

原理はわからないけど多分束さんのおかげだろう。

これで本当に遠慮する必要はない。

 

「さっさと起きろ!この泣き虫!」

 

そして振り下ろす。

長くなれば長くなるほど幅も大きくなる。

刀身の幅だけで一キロもあるそれを回避することなど不可能だろう。

 

シャドー・進は青いビームの光に中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目は覚めたか?」

 

後ろを振り向きながら問いかける。

 

進は呆然としてこちらを見ていた。

 

「さあ、帰るぞ」

 

「……わ、私は……」

 

まだ進は俺たちを拒もうとする。

 

「私はもう無理だよ……。

あの人からトダカさんを殺したのは私だって知らされて……今まで頑張って進んできたけど、もう歩けないよ。

もう立てないよ。

……もう疲れたよ」

 

「なら、俺が背負ってやる」

 

また俯こうとした進が顔を上げる。

 

「お前が進めないなら俺がひっぱってやる。お前が歩けないなら俺が肩を貸してやる。お前が立てないのなら俺が背負ってやる!

……お前がつかれたのなら俺が一緒に休んでやる。

でも、休んだ後はまた歩き出そうぜ?」

 

「…………どうして……そこまでしてくれるの?」

 

「好きだからに決まってんだろ?」

 

「ヒューヒュー!」

 

「あついな!一夏!」

 

「誰か、コーヒーをくれないか?」

 

「僕もほしいな」

 

「あ!お姉さんもほしい!」

 

「紅茶でしたらありますわよ?」

 

「「「「「なんで持ってんの!?」」」」」

 

「静かにしろよ!!」

 

進が真っ赤になってるじゃないか!

俺も多分そうだけどな。

 

「とにかく!俺はお前を好きになっちまったんだ!それが理由じゃダメか?」

 

フルフルと進は首を横の振る。

 

「さあ、帰ろうぜ?」

 

「……うん!」

 

進が俺が差し出した手を取ると、頭上から光が差してきた。

 

「マユ…ステラ…レイ…」

 

進の言葉につられてみると、そこには三人が静かに笑いながらこっちを見ていた。

 

もう一度進を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その顔は笑顔であふれていた。

 




というわけで今回は9425文字という圧倒的な長さでお送りしました!

ながぁ~い!説明不要!

誤字の確認も一苦労です。

「私のデスティニーとあの兵器に結局どんな違いがあるっていうんだ?」

↑のセリフもやりたかったですけどやったら確実に一万文字をこえるので泣く泣くカット。
テンポって大事だからね。仕方ないね。
ていうかカットしないとほんとに中編後編に分けてた可能性がガガガ。

にしても書いてて思いましたけどレイって強いですね。
ドラグーンって厄介です!一度一夏VSレイの一騎打ちで物語を進めようかと思ったんですが、どう考えても一夏君にとってムリゲーなので止めました。

そして出そろった原作強化IS!設定などは次に挙げます!一夏君のエネルギーが増えてたのも設定紹介で解明したいと思います!

にしてもシンちゃん復活にここまで時間かけるつもりはなかったんだけどなぁ。

一夏君のイケメン指数がどんどん上がっていきますね。
そしてシリアスに作者が耐え切れなくなり瑞所にはいるネタ。

これ書いてる時はリアルsan値ピンチでした。

設定紹介が終わればPHASEシリーズを挟んで最終章突入!その前に一回番外編が入るかな?
ではまた次回!



以下、次回予告!脳内BGMはvestige-ヴェスティージ- で!


一夏たちにより進は目覚め、反撃の準備が始まる。
そこへ現れたMAにより、一夏たちは思わぬ苦戦を強いられる。
その時、運命が目覚める。

次回![IS]運命の翼の少女 第三十四話「一生あるいは目覚め」
壊れた翼を広げ、飛び立て!デスティニー!
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