ミネルバ、食堂。
この場所はいつも人が少ない。
全員が一斉に昼食を食べるわけにもいかないので、持ち場を交代しながら順番に昼食をとっているからだ。
だけど私たちMS隊にはあまり関係なく、私、レイ、ルナ、隊長、ハイネ、たまたま休憩が重なったメイリンとヴィーノとヨウランの八人で食べようと言うことになった。
メニューは食糧班が勝手に決めているらしく、皿を出されるまでどんな料理かわからない。
ここ最近は戦闘続きで食料の補給もろくに行えていないから、ディオキアで補給ができた時はクルーの何人かがまともな食事が出ることを喜んで泣いていた。
かく言う私も、これといった趣味は持ち合わせていないが食事は楽しみの一つでもある。
「待ってました!」
「こりゃ楽しみだな」
ヨウランとハイネが出された食事に歓声を上げる。
その二人を眺めていると私の前にも料理が出された。
「いただきま…………!?」
皿に盛りつけられた料理を見て、私は絶句した。
(まさか……そんな!?)
今まで出たことがなかったから完全に油断していた!
皿の中の紫色のあんちくしょうは私をにらんでいる。
まるで「どうだ?食えるもんなら食ってみろよ?」と言われているような錯覚を覚える。
私のこの十六年間の人生で永遠のライバル、不倶戴天の敵が皿の中から私を嘲笑っていた。
「うまいな、これ」
「うん。久しぶりにまともな食事にありつけたね」
「メイリン、これおいしいわよ?」
「ホント?じゃあ私も……おいしい!」
みんながみんなこの紫の物体を胃の中に放り込んでいく。
正直信じられない。
こんなものをおいしいと言える彼らの神経を疑う。
「……?シン、どうした?」
レイがいつまでたっても食事に手を付けない私を見て不審に思ったのか声をかけてくる。
正直言いたくない。
だけどこのままでは紫の悪魔のせいでせっかくの食事を食べられない。
いつの間にか全員が私のほうを見ている。
今言えば私の弱点をみんなの前でばらすことになる。
口が堅そうなレイや隊長、ヴィーノの三人だけなら言ってもよかったんだけど、ここには人間スピーカーのヨウランがいる。
ルナも絶対私をからかってくるし、ハイネもそうだろう。
だけど言わなければ食事を食べられない。
「ちょっと?ほんとにどうしたの、シン?」
ルナが心配そうな声を上げる。
(言うしかない……)
私は決意を固めて口を開いた。
「私、ナスが嫌いなんだ」
みんながポカンとした顔をした。
「ぶっひゃっひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
ヨウランの笑い声が食堂に響いた瞬間、私は支給されていた拳銃のセーフティを解除した。
「ちょっ!ストップストップっプププ!!」
「ヨウラン、そろそろ、うるさい、よ。フフフ」
「…………クッ!」
みんなが笑ってる!
レイなんて必死にこらえようとしてるけど肩が震えてるのがわかる。
「ナス嫌いか……好き嫌いは軍人じゃ致命的だぜ?これを期に治しちまうのもいいかもな?」
ハイネ……いいことを言ってるつもりだろうけど顔が引きつってるよ。笑うの我慢してるのバレバレ。
隊長……あ、だめだ。向こうで笑いを必死にこらえてる。
メイリンはオロオロしてる。どう反応すればいいかわからないんだろう。
とりあえずまだ馬鹿笑いして転げまわっているヨウランに皿をもって近づく。
そして銃を突きつける。
「だまって」
「……」
よしよし、素直な人は好みだよ。私は。
「ねえヨウラン?確か女の子からあ~んってされたいってこの前言ってたよね?」
「……(コクコク)」
無言でうなずくヨウランに向けて銃を構えながら馬乗りの状態でナスをフォークで刺す。
そしてヨウランにナスを突きつける。
「はい、あーん」
「……!!(フルフル)」
「どうしたの?はい、口を開けて?あーん」
必死に首を横に振るヨウランになおもナスを突きつける。
そしてわずかに口が開いた瞬間にナスをねじ込む!
「はい、つぎねー。あーん」
ヨウランの口に次々と無理やりナスをねじ込んでいく。
気付けば私の皿の中からナスはなくなっていた。
「夢が叶ってよかったね、ヨウラン」
そうして再び席に着き、ナスの亡くなった(誤字にあらず)料理を食べる。
その日以来、ミネルバでナス料理が出ることはなかった。
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前回までのあらすじ!!
「チョリーッス!」
「待っていろ少年!」
「お母さんは認めませんよ!」
「喧嘩番長だ!」
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「ガンダムガンダムガガンダム!ガガンガガンガンガガンダム!」
「だ~んだだ~ん!だ~んだ~んだ~んだ~んだだ~ん!」
廊下の向こうから歌が聞こえ、ものすごく嫌な予感がした私はその場を後にしようとした。
「待ちなさい!」
だが回り込まれてしまった!
恐る恐る振り向くとそこにいたのは!
「……鳳さん?」
いつものツインテールではなく、髪を下ろした鳳さんだった。
「えーっと……どうしたの?今はあっちに行かない方が…」
「貴方は無理をしている」
「へ?」
先ほどとは打って変わって優しげな声で鳳さんが私に近寄ってくる。
「私の脳量子波がそう言っている」
「の、のう……?」
そう言って近寄ってくる鳳さんになんだか威圧感を感じて私は後ろに下がるが、すぐに壁に背中が当たる。
そうして鳳さんの手が私の頬にあてられる。
「決めたから……」
「へ……?」
「私があなたを守るって……」
ゾワゾワゾワっと鳥肌が立つ!
(なんかやばい!)
身の危険を感じた瞬間、さらなる厄介ごとが舞い込んできた。
「だ~んだだ~ん!だ~んだ~んだ~んだ~んだだ~ん!喧嘩番長だ!」
「でたな、
「
「私は
そのままにらみ合う二人。
(…………逃げよう)
訓練で培った歩法を使い、音もなくその場から撤退する。
「
「チョリッス!?」
「しょしょしょ少年!私とベッドの中で愛を語り合おうじゃないか!!」
「……狙い撃つ……男と同衾なんてお母さん許しませんよ……」
(…………なにこれ?)
一夏にやたらと威圧的なボーデヴィッヒさん。
変な挨拶しか言わない一夏。
変態になった篠ノ之さん。
やたら一夏のお母さんになるセシリア。
みんなおかしくなってる。
「ふっふ~ん!どう?あーちゃん!驚いた?」
「束さん……」
「今回は、あーちゃんのMSのデータを参考にして新しいISを作ったんだけどね?いつの間にか変なAIまでできてたから組み込んでいっくんたちに渡してみたんだ!」
「ほう……それで?」
「だからね!いっくんたちがどうなるかなーって…………ハッ!」
束さんの後ろに鬼がいた。
「なるほど。一連の騒動の原因はやっぱりお前か。ちょっと来い」
織斑先生に引きずられていく束さんの口がパクパクと動く。
私は読唇術でそれを読み取った。
(あーちゃんたすけて……ね)
私は両手を合わせて合唱のポーズをとった。
「うらぎりものーーーー!!!」
「うるさい」
「ひぎゃっ!!」
「チョリッス!!チョチョリッスス!!」
「ガンダムガンダムガガンダム!ガガンガガンガンガガンダム!」
「狙い撃つ……狙い撃つ……」
「だ~んだだ~ん!だ~んだ~んだ~んだ~んだだ~ん!」
「ああ……ヴェーダ……!」
「私の脳量子波が告げている……。こっちにいるの?私が慰めてあげる」
「…………帰ろう」
そう言えば今日ってまだ一時間目始まってないんだよね。
ずる休みか~。
あはははは。
『この後、千冬によって全員正気に戻された(CV.蒼月 昇)』
ということで番外編3をお届けしました!
シンのナス嫌いは公式です。
知った瞬間にこのエピソードを思いつきました!
いずれIS側でもナスはでます。
そして作者は別にナスが嫌いではないです。
むしろ好きです。
シンちゃん「じゃあ私に出さずに代わりに食べてよ!」
やだよめんどい。
シンちゃん「なんだとー!!」
チョリッスはちょっと無理やり終わらせた感がありますが、まあ書いてて気づいたんですが、これ作者の技量ではネタを膨らますことができないんですよね。
誰か代わりに書いてくれねぇかなぁ~(チラッ
シンちゃん「正直トラウマになりそうだからやめてほしいんだけど」
やったねシンちゃん!トラウマが増えるよ!
シンちゃん「おいやめて」
PHASE-5の次回予告がないのは仕様です!
アスラン編と番外編の連投でしたが、次回からは最終章!
物語も佳境に差し掛かってきました!
アスランはシンを見つけることができるのか?
キラは平和をつかむことができるのか?
一夏はシンを救えるのか?
そしてシンは過去と決着をつけ、平和な世界で生きることができるのか?
こうご期待!