[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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まさかこうなるとはだれも思わなかったであろう!


第三十七話 「飛翔あるいは誓約」

学園に帰るまで、俺たちの間には重苦しい雰囲気が流れていた。

そこには強敵を倒した喜びも、生き残った喜びもなかった。

 

進が敵のパイロットを殺した。

 

一切の躊躇もなく、急所だけを狙っていた。

 

進が元の世界で戦争をしていたのは知っているし、戦争がどういうものかもわかっている。

やらなきゃやられる。

殺さないと殺される。

そう言う場所だと言うのは、知識だけは知っている。

 

だけど、今日初めて俺たちは本当の戦場に立っていたんだと実感した。

 

進が五人の人間の命を奪ったことで、実感できた。

 

虹色の翼を広げ、戦場を縦横無尽に飛び回るその姿は俺たちの知っているIS学園一年一組の飛鳥 進ではなく、C.Eのザフト軍兵士シン・アスカだった。

 

(…………)

 

それが堪らなく悔しかった。

俺も、隣で飛んでいるみんなも唇をかみしめているのが見える。

 

進を守るために手に入れた新しい力は敵の有人機には歯が立たず、二度と進が戦場に出なくてもいいようにと願った思いは届かなかった。

 

「……なにが進を守るだ」

 

誰にも聞こえないように小さくつぶやく。

 

インパルスが修復不可能と聞いて、俺はホッとしていた。

これで進が戦場に出ることはない。

今まで戦ってばかりだったシンに、やっと戦わなくてもいい時間がやってきたんだ。

戦えない進の代わりに俺たちが戦って、進を守るんだ。

 

そう思っていた。

なのに、俺たちは進をまた戦場に出してしまった。

 

『よくやった。全員第三アリーナのピットに下りろ』

 

千冬姉からの通信が入る。

 

よくやった。

 

俺たちは何もできていない。

結局俺たちは足手まといになっただけだ。

 

『あとは私に任せて』

 

『さがってて、みんな。すぐに終わらせるから』

 

俺たちは、進の隣に立つことすらできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく生きて帰ってきてくれた」

 

「よかったよ~~!!」

 

千冬姉と束さんが笑顔で迎えてくれた。

 

ISを待機状態に戻す。

その瞬間、進が右肩を抑えながらうずくまった。

 

「進さん!?」

 

「ちょっと大丈夫!?」

 

急いでみんなが駆け寄る。

 

「あーちゃん、チョーっと肩とMS…IS?MIS?IMS?ちーちゃん!名前何にしようか!」

 

「また刺されたいか?」

 

「というわけでチョーっと肩とデスティニー見せてねー!」

 

そう言って束さんが進の肩とデスティニーのデータをチェックしていく。

 

「うん。原因はこの右腰に設置されてるビームマグナムだね」

 

「ビーム……マグナム?」

 

名前の響きがすっげーかっこいい。

一回使ってみたいな。

 

「機体自体にダメージはないけどあーちゃんの体が撃った衝撃に耐えきれなかったみたい。

っていうか右腕の装甲ごついね。外見は全く他の箇所と変わらないのに右腕だけ装甲の…なんて言ったらいいかな?密度?が全然違う」

 

束さんが次々にコンソールを操作していく。

 

「フラグメントマップも見たことがない形になってる……MSに組み込んだから?こっちでは再現不可能だった技術も全部再生してる。

ヴォワチュール・リュミエールとISコアもリンクしてる……ただの推進装置じゃないの?拡張領域が全部埋まってる?壊れてたハイパーデュートリオンエンジンも直ってる。

出力が元のデスティニーの3倍?プロパルションビーム?リミッター?……プロト…ユニット?」

 

「あ、あのー…束さん?」

 

「量子変換じゃない?え?ちょっと待って?これは……」

 

「いつまでやっている」

 

「あいだぁ!!」

 

千冬姉の出席簿が束さんに突き刺さる。

 

最近千冬姉の攻撃から容赦がなくなってきてるような気がする。

 

「お前たちももう休んでおけ。飛鳥、お前は一度保健室へ行け」

 

「…わかりました」

 

そう言って進は一人で歩いて行ってしまった。

 

「……千冬姉、俺進を送ってくるよ」

 

「…織斑先生だ。早く行け」

 

「私たちも行くぞ」

 

「もちろん」

 

そうして俺たちは進を追いかけていった。

 

 

 

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『クソ!クソ!クソクソクソクソクソ!!!クソォオ!!!』

 

『シン・アスカァァァァアアアア!!!』

 

断末魔が耳から離れない。

死ぬ直前の、あの私を射抜く瞳が記憶にこびりついて離れない。

 

こんな事は慣れていた筈なのに、あの戦争で何回も聞いてきたはずなのに。

 

耳をふさいでも、目を閉じても彼らは私を責めたてる。

 

思い出すのはみんなの私を見る目。

今までとは全く違う目で私を見ていた。

 

(当然……だよね)

 

みんなの前で人を殺したのだ。

私は人殺しだから、そんな風な目で見られるのは当たり前。

当たり前の……はずなのに……。

 

「……」

 

これからはなるべくみんなに近づかない方がいいだろう。

一人でたくさんの敵と戦うのは慣れている。

私一人で戦場に出て、今回の騒動の元凶を倒して、そして元の世界に戻ろう。

あいつらのトップを捕まえれば、元の世界に帰る方法もわかるだろう。

後はこの世界に来てしまったMSをすべて回収して、元の世界に一緒に持って帰ればいい。

今、あの世界がどういう状況になっているのかはわからないけど。

 

「進!」

 

呼ばれて、振り返る。

 

そこにいたのは一夏たちいつものメンバー。

 

「…なに?」

 

意識して冷たい声を出す。

これ以上私の問題にみんなを巻き込めない。

デスティニーが戻った今、みんなの力を借りる必要はない。

みんなを……人殺しの戦場に付き合わせてはいけない。

 

「保健室まで一緒についていくよ」

 

「必要ないよ。肩が痛いだけで、ちゃんと歩けるから」

 

「だけど、さっきまで大怪我してただろ?治ったみたいだけど、やっぱり心配だからさ」

 

一夏は優しい。

人殺しの私に声をかけて、あまつさえ心配してくれるのだから。

 

『俺がお前を幸せにしてやる!!』

 

不意に一夏の告白を思い出した。

本当に、私にはもったいない言葉だ。

 

「心配ないよ。一人で行けるから」

 

そう言って、一夏たちに背を向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「独りでなんて……行かせるかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足を止める。

 

「独りで行くなんて言うなよ。俺は言っただろ?お前と一緒にいるって」

 

「聞いてないよ」

 

「ならもう一度言ってやるよ。

お前が進めないなら俺がひっぱってやる。お前が歩けないなら俺が肩を貸してやる。お前が立てないのなら俺が背負ってやる!

……お前がつかれたのなら俺が一緒に休んでやる。

どんなにお前が独りがいいって言ったって、俺がずっと一緒にいてやる。

お前がどこに逃げても追いかけて、どこに隠れても見つけ出してやる。

どんなに嫌がっても絶対にお前を独りになんかさせやしない。

今の俺じゃお前の隣に立つのは難しいかもしれない。

お前を守るなんと言うのはおこがましいかもしれない。

だけど何度でも言ってやる!

俺がお前を守る!

二度とお前に人殺しなんかさせない!

だから進!お前も約束してくれ!

俺は強くなる!お前が戦わなくてもいいくらい強くなってやる!

だからお前も、もう二度とその手を血で汚さないでくれ!」

 

一夏が目に涙をためながら言い切る。

 

「……どうして……そこまでしてくれるの?」

 

答えがわかっているのに、私は聞いた。

きっと一夏は私が思ったとおりに応えるのだろう。

 

「好きだからに決まってんだろ?」

 

やっぱり、あれは夢じゃなかった。

 

「……私は……」

 

「ん?」

 

これは言ってはいけない。

これを言えば私の元の世界に変えると言う決意が揺らいでしまう。

帰りたく、なくなってしまう。

 

この気持ちは胸に秘めておかなければいけないはずなのに……。

 

「……私は今までたくさんの人を殺してきたんだよ?」

 

溢れ出すのが、

 

「知ってる」

 

「…私の手は血で汚れてるんだよ?」

 

止まらない。

 

「知ってる」

 

「違う世界から来たんだよ?」

 

「知ってる」

 

「お父さんもお母さんもいないからあいさつもできないよ?」

 

「知ってる」

 

「戦ってばかりだったから、普通の女の子の生き方とか忘れちゃってるんだよ?」

 

「知ってる」

 

「私、実は嫉妬深いよ?」

 

「え?」

 

「一夏が女の子と仲良くしてたら拗ねちゃうよ?」

 

「それは知らなかったなぁ」

 

いつの間にか、私は一夏のほうを向いていた。

 

「本当に、私でいいの?後悔しない?」

 

「進でいいんじゃない。進がいいんだ。後悔なんてするわけないだろ?」

 

その言葉で、もう限界だった。

私は一夏に抱き付き、それを一夏は優しく受け止めてくれた。

 

「約束する。進を絶対に独りにさせない。進を守れるくらい位強くなってみせる。

だから進も約束してくれ。

もう自分から独りで行くなんて言わないでくれ。

もっと俺たちを頼ってくれ。

……もう、その手を血で汚さないでくれ」

 

「うん…うん!」

 

前がよく見えない。

もっと一夏の顔が見たいのに、視界がにじんでよく見えない。

涙をぬぐって目を開いたとき、目の前には一夏の顔がいっぱいに広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてのキスは、涙の味がした。

 






あとがき


リアルで壁ドンしたのはSAOのアニメ見た時以来です。

作者は誤字を見つけるために書いた文章を確認してたらいつの間にか壁ドンしていた!
何を言っているかわからねぇと思うが作者にもさっぱりわからなかった。
頭が(嫉妬で)どうにかなりそうだった。
二次創作だとかTSだとかそんなちゃちなもんじゃねぇ!
もっと恐ろしいリア充の片鱗を味わったぜ…!

まぁ今回はちょっと展開が早かったかな?
がんばってる一夏君への御褒美ということで。

もともとここが分岐点となっていて、ここで一夏君がシンちゃんの後を追わなかった場合ifルート「鬼神の帰還」編になります。
いわゆるノーマルエンドですね。

さて、一夏君との約束によってシンちゃんはこれから不殺を強いられることになります。
原作みたいにバッタバッタと敵をなぎ倒すのは無人機だけになりますね。

次回は久しぶりに日常回にしようかな。
最近戦闘ばっかりでしたからそろそろ日常描写が恋しくなってきました。
次回!ブラックコーヒーの用意をしろ!(必要になるとは言っていない)





次回予告はお休みです。
って言うか書くことない。


おまけ

「おい一夏、進」

「そろそろわたくしたちのことも」

「思い出してくれるとうれしいわねー」

「真っ赤な進可愛いなぁー!いいなぁー!」

「そ、そうだな(シャルと距離を取りながら)」

そこにはお互い顔を真っ赤にしながら離れる二人がいたそうな。
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