どうやってIS世界に来たかはまた今度。
「…………アスラン?」
目の前に広がるのは圧倒的な紅。
彼のイメージカラーでもあり力の象徴。
剣を交えたのはたったの二回。
だけど衝突は数知れず。
第一印象はアスハの腰巾着だった。
本当はアスラン・ザラだってわかって、ルナが礼儀がどうのとか言ってたけどアスハに尻尾を振るやつなんて私は信用できなかった。
だけど、彼はみんなが諦めて撤退する中でただ一人でユニウスセブンの破砕作業を続けた。
たった一人で地球を護ろうとしていた。
『貴方みたいな人が、なんでオーブなんかに……!』
だから思わず本心をぶつけてしまった。
ザフトを裏切り、オーブに行ったことが理解できなかった。
『敵って……誰だよ』
その言葉が胸に突き刺さった。
敵……私にとっての敵。
それは私はザフトの軍人だから敵は連合で間違いないはずだ。
だけど、彼にとっては違うみたいだった。
その言葉が妙に頭に残った。
『戦争はヒーローごっこじゃない!!』
正直ふざけるなと怒鳴り返したかった。
虐げられている人を救うことの何が悪いんだ。
私はそんな人たちを守る力がほしくて軍に入ったんだ。
『力を手にしたその時から……今度は自分がだれかを泣かせることになる』
力を手に入れることはそんなに悪いことなのか?
私が望んだ力は間違っているのか?
わからない。
『キラは敵じゃない!』
フリーダムはステラを殺したんだぞ?
なのになぜ敵じゃないんだ?
あいつのせいでミネルバも被害が出たしあんただって落とされたじゃないか。
わからない。
『彼らの言葉は、やがて世界の全てを殺す!お前も一緒に来い!シン!』
わからない。
議長やレイの言う通りにすれば戦争が無くなるんじゃないのか?
なんで二人を……私たちを裏切るの?
わからない。
『オーブを撃ってはだめだ!お前が!』
わからない。
オーブは敵だ。
ジブリールをかくまったこれからの世界にとっての敵なのに、どうして邪魔をするの?
わからない。
『過去に囚われたまま戦うのは、もうやめるんだ!』
わからない。
なにもわからない。
わからない。
「シン?」
その一言で、思考の海から引き戻される。
「どうした?ボーっとして。戦闘中に余裕だな」
ミネルバにいたころと変わらない皮肉った言い方。
「別に?誰かさんが突然現れて美味しいところだけ持っていくからどうしてやろうかと考えてただけですよ」
「それくらいで拗ねるなよ。俺もあれは撃たせてはいけないと思っていたからな」
「って言うか、どうしてあんたがここにいるのよ」
「お前を……いや、話は後みたいだな」
その瞬間にアラート。
私とアスランは同時にその場から飛び退くと一瞬遅れて今までいた場所に無数のビームが殺到する。
地上からはゲルズゲー。
上からザムザザー。
真横からMS形態になったデストロイ。
「見事に囲まれてるな」
「こうなる前に手を打とうとは思わなかったんですか?」
「誰かさんがボーとしていたからな」
「それはすいませんでしたね」
《レイブレード》ビームサーベルを構える。
アスランも《アンビデクストラス・ハルバード》状態のビームサーベルを構えて周りを見渡す。
「斬り込めるか?シン」
「自分で行ったらどうです?」
「まったく……なら同時に行くぞ」
「どうぞご自由に?私は勝手に行くんで」
「相変わらず生意気な減らず口だよ!」
「そいつはどうも!」
お互いに言い合いながら上空を陣取っていたザムザザーに突っ込む。
私が左、アスランが右の鋏を斬りおとしてそのまま背後に回る。
「付いて来ないでくださいよ!」
「お前が一緒に来たんじゃないのか?」
「冗談じゃない!」
そのままザムザザーのスラスターを同時に斬りおとす。
落ちていくザムザザーを見ずに今度は地上にいるゲルズゲーへ。
ビームを乱射してくるがそれらはすべて盾で受け止めながら前進。
盾を構える私の後ろからアスランがビームライフルとリフターに付いた二つのビーム砲でゲルズゲーを撃つ。
それが陽電子リフレクターで跳ね返されるのを確認したら、その隙にゲルズゲーの後ろにワープ。
右肩を斬りおとして陽電子リフレクターをつかえないようにする。
その隙に近づいたアスランが左肩を切り落とし、返す刀で頭部を破壊する。
アスランに気を取られたゲルズゲーの後ろ脚を切断。
バランスが崩れ、後ろから倒れ込もうとしたゲルズゲーの右腋に移動してそのまま上半身と下半身の境目にアロンダイトで切り込む。
反対側から同様に切り込んでいたアスランと中央で合流しそのまま離脱。
上半身が地面に落ちてそのまま爆発。
下半身はそのまま取り残された。
「勝手に盾に使わないで下さいよ」
「いいところにいたからな」
そのまま前進。
目指すはデストロイ。
今度はアスランがビームシールドでビームを受け止めながら前進する。
「速く進んでくださいよ!」
「なら援護でもしたらどうだ?」
「冗談!」
アスランの影から出て前進。
その瞬間、頭部と胸部に備え付けられている《スーパースキュラ》が私を狙う。
「撃たせるか!」
ビームライフルを頭部に向けて発射。
スキュラが発射される前にビームが頭部を貫き、その衝撃でデストロイが大きくのけぞる。
「うぉぉぉ!!」
のけぞったところにアスランの渾身の蹴りが右足を切り裂く。
流石にあの太い足を一撃で斬りおとすのは不可能だった。
「まだだ!」
アスランが斬った場所にリフターを射出する。
そのままリフターはビーム刃を展開して右足を更に深く切る。
「てぇい!!」
私は厄介な背中にある円盤形のバックパック(MA時の頭部)を切り刻む。
《フラッシュエッジⅢドラグーンビームブーメラン》を投げておき、二機のブーメランでデストロイの各部に切れ込みを入れつつアロンダイト2でバックパックを斬る。
私やブーメランを追い払おうとデストロイは腕を振り回すが、鈍重なため動きが鈍く、当たらない。
「トゥ!!」
そうしているうちについにアスランが右足を半ばまで切断する。
半分まで切られ、デストロイの体重を支え切れなくなった右足が崩壊。
そのまま倒れ伏す。
それでもまだこちらに手を向けてビームを撃って抵抗するデストロイ。
そのコックピットがあるであろう場所にアロンダイトで袈裟懸に斬りさく。
それによって空いた穴に手を突き入れ、装甲を無理やり引きはがす。
中にいたのは私よりも年下の少年。
年はまだ十を超えたばかりだろうか?
涙を流しながら私をにらむその眼には隠し切れない憎悪が宿っていた。
「来なさい!早く!」
だけど、私はその少年に手を伸ばす。
「この機体を破壊するわ!だけどそれにあなたを巻き込みたくない!」
少年は一歩後ずさる。
「この手を取って!絶対に助けるから!だから!」
少しの沈黙。
私とアスランが与えたダメージと倒れ込んだダメージで機体の各所から火の手が上がっている。
「お願い!もう誰も…………誰も殺したくないの……」
少年の眼をじっと見つめる。
やがて少ししてから少年は私の手を取ってくれた。
急いでデストロイから離脱する。
十分な高度まで上がって振り返るのとデストロイが爆発するのは同時だった。
「誰も殺したくない……か。変わったな、シン」
「別に……」
少年を抱きかかえたままアスランと睨み合う。
言いたいことは山ほどある。
この少年がいなかったら今すぐにでも銃を向けていただろう。
「本当に……変わったな、シン。それもいい方に。
この世界はお前にいい影響を与えたようだな」
「何を偉そうに」
「そうだな……俺も、お前にそんなことを言える資格はないのにな」
目を見開く。
今なんて言った?
資格がない。
どういう意味?
もしかしてあのアスランが自分の非を認めた?
「シン」
「な、なによ」
「戻って来い」
「え?」
「C.Eに戻って来い、シン。あの世界にはお前が必要だ。
今、あの世界は火薬庫同然だ。
C.Eを正しい道に進ませるためにはお前が必要なんだ。
だから戻って来い」
突然の言葉。
いつかは来る別れ。
それは今、唐突に訪れた。
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「…!お前は!」
「見つけたぞ!織斑一夏!」
ビームを躱したと思ったらいつの間にか接近していたカズキ・ヤマモトによって振り抜かれたビームサーベルを間一髪で左の《雪片・乙》で受け止める。
「くっ!また進を狙いに来たのか!?」
「今回は違う!貴様を倒さねばまた邪魔をされる!何より貴様にやられた屈辱を晴らす!」
そのままカズキのMSに増設されている大型のスラスターが火を噴く。
その推力に押され、他のみんなから引き離されていく。
「一夏!?」
「一夏さん!」
「こいつは俺が引き受ける!みんなはほかの無人機を!」
右の《雪片・甲》の柄でビームサーベルを跳ね上げてそのまま後退。
「逃がさん!」
追いすがるカズキの剣を躱しつつ、みんなから離れる。
飛んできたミサイルを盾にした雪羅で防ぎながら相手を見る。
右手にビームサーベル、左手にビームライフル。
一際目を引くのは以前にはなかった背中の大型のブースター。
両腕も以前やほかの同じMSに比べても太くなっている気がする。
(進……)
大多数のMAを引き受けて一人で行ってしまった進。
早く合流してやらないと。
「悪いけど長々と戦っている暇はないからな!すぐに終わらせる!」
《操縦者の要請を確認》
《雪片・真打を起動します》
二振りの雪片と雪羅が合体して一振りの刃になる。
刀身からあふれ出した白い粒子が高質化し、刀身をコーティングする。
「それを待っていたぞ」
途端、カズキが声を上げる。
「なんだと!?」
「その武装で、私は不覚にも以前敗れ去った……それから考えた。
貴様のその武装は脅威だ。粒子の高質化で攻撃も防御もでき、さらにあの斬撃。
もしあれを出されれば私の負けだ。
ならどうすれば出されないようにできる?
答えは簡単だ。
出す暇を与えなければいい!」
カズキが背中に手を伸ばすと、背中につけられたブースターの一部が突出する。
その突起を掴むとブースターがみるみる変形し、一振りの大剣になった。
「《タクティカル・アームズ》。
私たちの世界で有名な傭兵が使っていた兵器のレプリカだ。
レプリカと言っても、性能はオリジナルと遜色ないがなぁ!」
振り下ろされる大剣を避けようとし、いきなり振り下ろす速度が上がったので受けざるを得なくなった。
「がっ!ぐっ!」
予想以上の衝撃にそのまま吹き飛ばされる。
「まだまだぁ!!」
今度はちゃんと力を入れて受け止める。
それでも衝撃で白式が軋む。
(お、重い!)
粒子で刀身をコーティングしていなかったら雪片がおられていたかもしれない。
「ふん!」
「ぐぇ!」
そのまま腹に蹴りを入れられて体勢を崩される。
またしても振るわれる大剣。
(避けられない!)
咄嗟にPICとスラスターを制御して前進。
カズキに体当たりをする。
「ぬ!やるな!」
(どうする!?)
カズキの頭部にあるバルカンが火を噴く。
何発か被弾し、そのまま後退。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「休む暇は与えん!」
またしても大剣が振るわれる。
今度は右に避ける。
「(躱せた!?)もらった!」
「甘い!」
そのまま雪片で斬りかかろうとした瞬間、躱したはずの大剣が直角に軌道を変え俺を追尾してくる。
「ぐぁぁ!!」
すでに攻撃モーションに移っていたため回避ができず、直撃。
絶対防御が働くが衝撃を吸収できず、そのまま吹き飛ばされて下にあったビルに激突する。
「ここまでよく戦った方だろう。ただの学生風情が我々軍人相手によくもった方だ。
素直に賞賛に値する」
視界が回る。
吹き飛ばされたときの衝撃で体が言うことを聞かない。
大剣が直撃した脇腹に鈍い痛みが走る。
「さぁ、これでとどめ……む?なんだ?」
俺に歩み寄ろうとしていた足を止め、そのまま硬直する。
しばらくするとカズキは俺の前まで来た。
「これで一勝一敗だ。
今回は見逃す。
だが次に戦場に出てきたなら容赦はしない。
それでもまだ戦う気があるのならその時に決着をつけよう」
それだけ言い残してカズキは去って行った。
(負けた……)
完敗だ。
完膚なきまでに負けた。
何もできなかった。
それどころかとどめを刺さずに情けまでかけられた。
(なにが進を護るだ)
また俺は……無力だ。
今回のシン&アスランの戦闘シーンは書いてて一番楽しかったりする。
最近いくら寝ても眠気が取れない作者です。
このあとがき書いてる最中も半分寝てたりします。
さて、今回は前半と後半で対照的な回でしたね。
シン&アスランはバッタバッタとMAをなぎ倒し、一夏は完敗。
にしてもシンVS大型MAは何回かいてもほんとに楽しい。
やっぱりデスティニーは大型MAに向かっていくのがすごく絵になりますね!
そして今回オリキャラのカズキ二尉がすごいものを引っ提げてきました。
だけどその代償は大きく、ムラサメの強みの一つであった変形ができなくなっています。
完璧な対一夏君用の装備です。
ムラサメにつけれるの?って話ですけどそれは確認してみたところ単純なフレームジョイントでくっついているためそのジョイントを装備するだけでつけれると判断しました。
次回は設定紹介!シードデスティニーの全容をお届けします!
以下、次回予告!脳内BGMはvestige-ヴェスティージ- で!
完敗。
たった二文字が一夏を蝕んでいく。
護りたいと思った少女の背中はあまりにも遠く、その隣に立つ紅い騎士に苛立ちを覚える。
一方、アスランもまた一夏に対して複雑な感情を抱いていた。
次回![IS]運命の翼の少女 第四十二話「共闘あるいは恋敵」
約束を守るためにも、諦めるな!一夏!