[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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第四話 「確信あるいは原罪」

「準備はいい? それじゃあ始めるよ!」

 

「はい!」

 

 束さんの声と同時にカウントがスタート。

 0になると同時に空中を自由自在に動くターゲットが射出される。

 

 まずは右手に持つビームライフルを二連射。

 

 放たれた閃光は狙い通りに二機のターゲットを撃ち落とす。

 ターゲットの一機が近づいてくる。

 

 左手で右肩にマウントされているフラッシュエッジを抜き、そのままターゲットを切り落とす。

 

(これで三機! あと二七機!)

 

 後ろにいるターゲットから銃弾が発射される。

 

 それを左手の盾で受け止め、振り向きざまにライフルを五連射。

 

 うち三発が着弾。また三機のターゲットを撃ち落とす。

 

 バーニアをふかしターゲットに接近。

 

 すれ違いざまに二機切り落とし、振り向きながら後ろのターゲットにエッジを投げつける。

 

 そして自分の失敗を悟る。

 

(………しまった!)

 

 すぐにフラッシュエッジのドラグーンシステムをオフラインにする。

 エッジはターゲットを真っ二つにするとそのままトレーニングルームの地面を転がって行った。

 

 途端に視界の端に黄色い文字が出る。

 

《エネルギー残量75%》

 

 舌打ちをしつつライフルを左手に持ち替え右手で左肩にマウントされたエッジを抜き放つ。

 

 銃弾を躱しながらライフルを三連射。

 

 だが利き手でない腕で撃ったライフルは照準が定まらず、ランダムに動くターゲットにかすりもしない。

 焦ってさらにライフルを乱射、うち二発は命中するも他は当たらず貴重なエネルギーを無駄にする。

 

《エネルギー残量70%》

 

 ライフルを捨ててターゲットに接近。

 

(もうこれ以上エネルギーを無駄にはできない!)

 

 右手に持ったエッジを振りかぶり、私はまだ一九機も残っているターゲットに向かって接近戦を挑んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで最後!」

 

 フラッシュエッジで最後の一機となったターゲットを袈裟懸に切り落とす。

 

 かかった時間は10分23秒。

 

 デスティニーと私自身が本調子ではないとはいえ、この程度の雑魚相手に時間がかかりすぎだ。

 

 束さんに回収され簡単な修理がされたデスティニーは、本来のスペックの10%も引き出せていなかった。

 まずデスティニー最大の特徴といってもいいその両翼は側だけの張りぼてにも似た状態であり、ヴォワチュール・リュミエールどころか推進装置としての機能すらまともに果たしていなかった。

 背中のウェポンラックも破壊されており、そこに装備されていたはずの《アロンダイト》と《高出力長射程ビーム砲》もアスランとの戦闘で紛失し、そこに存在しなかった。

 無事なものは肩にマウントされている《フラッシュエッジⅡビームブーメラン》のみであり、ビームライフルと《アンチビームシールド》は束さんが即興で作ってくれたものである。

 

《エネルギー残量63%》

 

 視界の端に映る文字にイラつきながらデスティニーから降りる。

 

「乙カレー! アーちゃん!」

 

 少し怪しいイントネーションで私をねぎらいながら束さんが現れる。

 

「ねえアーちゃん、やっぱりそのMS私に貸してよ! 完璧に直して見せるから!」

 

「ダメに決まってるじゃないですか! 束さんに貸したら私の大事な愛機がISに魔改造されて帰ってくるじゃないですか!」

 

「いいじゃん! MSもISも変わらないよ!」

 

 と適当なことを言いながらデスティニーに向けてにじり寄ってくる束さん。

 それを必死に阻止しながらどうしてこんなことになったのかと私は三日前から今までのことを振り返っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそもこうなった原因は三日前、私がまさかの異世界に来てしまったことが判明した日。

 

「ねぇちーちゃん! アーちゃんとデスティニーは私がもらっていい?」

 

 という私の人権(異世界人にあるのかな?)を無視した束さんの提案から始まった。

 

「おい束……」

 

 織斑さんが呆れたような声を出す。

 

「大丈夫だって! わたしはしばらくこの学園にいるつもりだし、それにこの子は異世界人……つまり一人ぼっちで後ろ盾が何もない状態でしょ? だからこの天災の束さんが守ってあげるんだよ!」

 

 一人ぼっち………。

 

 その言葉は私の胸に深く突き刺さった。

 そう、この二人の言うようにここがほんとに異世界だというのなら、私はこの世界で知り合いのいない本当の一人ぼっちなのだ。

 

「それに、あのデスティニーのことももっと調べたいし……」

 

 と言いながら束さんがこちらを見る。

 

「私自身、この子に少し興味がわいてきちゃった」

 

 と、少し聞き方を変えれば変な意味に聞こえてくるような言葉を言った。

 

「安心しろアスカ、束にそちらの趣味はない」

 

 私の考えを呼んだのか、織斑さんがそんなことを言う。

 

「それに束のところはこの世界で一番安全なところだ。安心しろ」

 

 その一言で、これからの私の処遇が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして束さんのもとで保護されることになって三日。

 ただ保護されるだけではあまりにも申し訳ないので手伝えることがあれば何でもするといったのが二日前。

 昨日は私の世界のMSの話を束さんとし、今日はこうやってデスティニーの性能テストをしている。

 

「にしてもすごいねーこのMSって! これだけ動けて10%も出力発揮してないんでしょう?」

 

「まぁ私のは特に燃費の悪い子ですから、全開で動かしたらすぐにガス欠になっちゃうんですよ」

 

「私がちゃんと修理できれば全開で動けるよ?」

 

 束さんの提案に心が揺れる。

 だがデスティニーにはザフトの技術のすべてが詰まっている、いわば重要機密の塊だ。

 いくら異世界とはいえ、軽々しく人に見せるべきではない(もう遅いような気もするが)。

 

 というよりも、私にはいまだにこの束さんとたまに私の様子を見に来る織斑さんのことが信じられずにいる。

 この二人はなぜにこうまで私の世話を焼いてくれるのだろうか?

 最初はただのお節介かと思ったが、昨日織斑さんがこの世界での私の戸籍を作ってきたといった時は本当に驚いた。

 なぜこの二人はこうまでして私の面倒を見てくれるのだろうか?

 その疑問は、今日の夕食の時に解消されることになった。

 

 

 

 

 

 夕食時、私がご飯を作り、束さんと様子を見に来た織斑さんに振舞う。

 ちょうど二人がそろっていたので、私は意を決して二人に問いかけてみた。

 

「あの! 束さん! 織斑さん!」

 

「ん~?」

 

「どうした?」

 

 

 

「どうしてお二人は私にここまでしてくれるんですか?」

 

 

 

 

 私の言葉に二人が食事の手を止める。

 

「自分で言うのもなんですけど、私すごく怪しいですよね? 異世界から来たり、この世界のISとは全く違う兵器を持っていたりして………ふつうここまで親切にしようだなんて思いませんよ」

 

 私の疑問を素直に二人にぶつける。

 

「こんなに怪しい私に、どうしてお二人はここまで親切にしてくれるんですか?」

 

 私の言葉に、織斑さんが少し考えるそぶりを見せて…………。

 

「あれを見たからだろうな」

 

 と言った。

 

「あれ?」

 

「デスティニーからとってきた戦闘記録だよ」

 

 戦闘記録。

 そこにはデスティニーのこれまでの戦闘すべてが映像として記録されている。

 それだけではなく、私がインパルスに乗っていた時の物も記録されていたはずだ。

 

「アーちゃんがここに来るまで何をしてきたのかは大体見せてもらったんだ……………戦争してたんでしょ? 元の世界で」

 

 そう、私は元の世界では戦争をしてきた。

 血に濡れた手を血で洗う、そんなどちらかが滅びるまで終わらない泥沼の戦場。

 そこについ三日前まで私はそこにいた。

 

「同情なのだろうな。そんなことをしても意味がないと思いながらも、お前のことが気になってな。ついお節介を焼いてしまった」

 

「だけどね? あの記録を見る限り、アーちゃんはすっごく辛い戦いを今までしてきたんでしょ? だからお姉さんたちがやさしくしてあげなきゃな~って」

 

 そういった二人の眼には優しい光が広がっていた。

 

「……………ぁ」

 

 いつ以来だろうか?私をこんな風に心配してくれる大人に出会ったのは。

 

 元の世界では今は亡き両親くらいしか本気で私の心配をしてくれた人に心当たりがない。

 それがこの異世界では目の前に二人もいる。

 それが暖かくて、

 

 同時に受け入れることができなかった。

 

 

(そうだ…こんな幸福を、私は受け入れちゃいけないんだ)

 

 毎晩見る夢を思い出す。

 血の海をただ歩き続ける私。

 そんな私の前にマユとステラが現れて、私の後ろを指さす。

 それにつられて振り向くと怨嗟の声を上げる夥しい量の死体。

 

 ユルサナイ

 

    ノロッテヤル

 

       ドウシテオマエガイキテイル

 

                   ヒトゴロシ

 

                        アクマ

 

 その声とともにこちらに這いずってくる死体………私が殺した人たち。

 戦争を終わらせるために戦い、そして犠牲になった人々。

 

 

「今日はこれを渡しに来た」

 

 そう言って織斑さんが私に向けて何かを差し出す。

 それは、

 

「……………服?」

 

「IS学園…………お前が落ちてきた場所で、これから通う場所の名前だ」

 

「IS学園はどんな国からの干渉も受け付けない絶対不可侵の場所だからね。どこかの国から干渉も受けずにちゃんと学園生活を送れるよ」

 

 それは日常への誘い。

 私が失い、そして二度と戻ることのないと思っていた平和な世界への道しるべ。

 

(…………私は幸せになっちゃいけない)

 

 私のような人間が二度と生れないように、「シン・アスカ」がいない世界を作るために私は闘ってきた。

 平和な世界に人殺し(わたし)は必要ない。

 

 

 

 

 

 

 

(………………だけど)

 

 ちょっとだけなら……………。

 ここは異世界だし、ちょっとだけならいいよね?

 

 

「ありがとう………ございます!」

 

 私は目に涙をためながらIS学園の制服を受け取った。

 

 

 

 

 

 近い将来この選択を後悔する日が来ることも知らずに。

 

 

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「え~、今日は転校生を紹介します!」

 

「飛鳥 進です! こんな中途半端な時期からになりましたが、よろしくお願いします!」

 

 その言葉に私は耳を疑う。

 

 

 飛鳥 進? アスカ・シンだと?

 

 目を向けるとそこにいるのは長いストレートの黒髪を揺らしながらまっすぐに前を向く紅い瞳の少女。

 

 ウィンダム30基を単独で撃破した『中隊つぶし』

 

 C.E最強の機体フリーダムに勝った『自由堕とし』

 

 ヘブンズゲート攻略戦で配備された五機のデストロイのうち二機を同時に相手取り撃破した『巨人殺し』

 

 運命の名を関するMSをまといデスティニープランの旗印となるはずだったデュランダルの番犬『運命の担い手』

 

 連合艦隊をたった一人で殲滅した『鬼神』

 

 そのシン・アスカ本人が目の前にいる。

 

 ………計画の大幅な修正が必要だな。

 

 

 

 

 

 

 

 歯車は狂い出す

 

 彼女の登場により物語は大きく変わる

 

 

 

 

 

            狂った歯車はこれから先も狂い続ける

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