大気圏を抜ける。
衝撃でシートが揺れ、視界がぶれる。
C.Eの時よりも何倍も強い衝撃を伴って、私たちは重力の檻から抜け出した。
「お疲れ~!もう大丈夫だよ~!」
揺れが収まり、しばらくしてから束さんに声をかけられる。
ゆっくりと息を吐いてシートベルトをはずし、立ち上がる。
みんなはまだシートにしがみつくように座っている。
「みんな、もう大丈夫。大気圏は抜けたよ」
「……お、おう」
そう言って一夏がシートベルトをはずして立ち上がろうとし、そのまま体が宙に浮いた。
「お、おわぁ!?なんだこれ!?」
「い、一夏さん!?」
「ちょっとぉ!?誰かおろしてぇ!?」
一夏だけじゃなく、他のみんなも同様に浮かび上がる。
シャルとラウラは何とか体勢を立て直して天井に足をついている。
「……あ」
「!?見るな一夏ぁ!!」
そう思ったら一夏が箒のスカートの中を見てしまったようでそのまま空中で一回転した箒の回し蹴りを食らっていた。
回転しながら扉の向こうへと吹っ飛ばされる一夏。
その一撃で箒はコツをつかんだのか何とか床に降り立つ。
「…うっ……ちょ……誰か……」
「だんだん……ッ気持ち悪く……!」
空中で回り続けたせいかセシリアと鈴はかなり気分が悪そうだ。
「大丈夫?二人とも。掴まって」
そんな二人のそばまで飛んで行ってこれ以上回らないように支える。
「あ……ありがと……うぷっ」
「た、助かりましたわ……」
ゆっくりと二人を誘導してシートに座らせる。
ここで座っていればそのうち気分もよくなるだろう。
「不思議な感覚だな……。ISではこんなことにはならなかったのに」
「それはねぇ箒ちゃん!!ISにはオートバランサーシステムを組み込んだからだよ!
宇宙空間でも目が回らないようにその時の最適な姿勢を自動でとってくれるんだ!」
『つまりろくに姿勢制御もおぼつかない主が宇宙空間での戦闘で其処の二人のようにならないのは椿のおかげというわけだ。
感謝してもいいんだぞ?』
「姿勢制御位できる!お前は私を何だと思ってるんだ!?」
『主は主だろう?何を言っているんだ?』
「こ、こいつ……!」
「まぁ、機体で無重力空間を移動するのと生身で移動するのは違うと言うわけだな」
「ISと同じ感覚でやってたら危ないね」
その辺はみんなには慣れてもらうしかないだろう。
さて……と。
「ん?どこに行くんだ?進」
「ちょっとね……一夏とお話ししてくる♪」
不可抗力だってわかってるよ?
見られた箒にとってはそれじゃあ済まないだろうけど、やっぱり仕方ないことだってわかってるよ?
だから、その辺のことも踏まえてちゃんとお話ししなくちゃね。
ブリッジを出る。
通路の奥、突き当りの方で一夏はぷかぷかと浮いていた。
「一夏!」
「ん?おう!どうした進?」
「一夏こそ、そんなところでどうしたの?動けないんだったら降ろそうか?」
「あ、いや、それは大丈夫だ」
そう言って一夏はくるりと回転すると床に着地する。
私たちが話をしている間にコツをつかんだのだろうか?
「なんというか……箒に悪いことしちゃったなぁ…って」
さっきのことで悩んでたみたいだ。
「しょうがないよ、ほとんど不可抗力だもん」
「そうだけどな……謝る暇もなく追い出されたから。
今から謝るにしても顔を出しづらいって言うか……」
「なら私も一緒に行くから謝ろう。
さっき話してたけどそんなに怒ってなかったよ」
「そうか?なら、今から行こうかな」
そう言って一夏は手すりを持ちながら通路を進んでいく。
「それとね……一夏」
「ん?」
「今度他の女の子の下着を見たら…………覚悟してね?」
「お、おう。わかった」
そのまま一夏を追い越して通路を進む。
「……そう言えば嫉妬深いって言ってたっけ?」
「はい、言いました!
独り言はもっと小さな声で言わないと周りに聞こえるよ?」
「あ、あはは」
ブリッジに戻って一夏が箒に謝ってそのまま箒のお説教が始まるなど、一悶着あったけどそれ以外は何事もなく宇宙の航海は進む。
織斑先生が言うにはこのまま何事もなければ目的地まで二日と掛からないと言われた。
発信機の反応があったのは月の周辺。
望遠で見ても月の周辺にそれらしきものはないのでもしかしたら月の内部に基地を作っているのかもしれない。
「もしくは、ボギー1のようにミラージュコロイドを搭載した戦艦……あるいは基地を持っているのかだな」
そのことをアスランと話していると懐かしい名前を耳にした。
ボギー1。
正式名称は確か『ガーティ・ルー』だったはず。
思えばあの艦を追うのが私の初任務だった。
それが今ではこの異世界の命運をかけて戦うなんてところまで来てしまったのだから人生分からないものだ。
「実際、ミラージュコロイドを使われているとしたら厄介だね。こっちはそれ対策の装備もないし……」
「それでも戦闘中にずっと潜伏しているはずがないし、ミラージュコロイド展開中はほぼ無防備だ。
流れ弾一発で大ダメージを追わせられるんだから逆にチャンスだと思ってもいいだろう」
アスランの言うことも一理ある。
いるのかいないのかわからないが、いる前提で作戦を立てた方がいいだろう。
いないと決め付けるには、私たちはあまりにも相手のことを知らなさすぎる。
「相手の戦力は未知数。対してこちらは八人。
まるでいつかのアークエンジェルやミネルバだな」
「まぁ、多対一の戦闘には慣れてるからね。誰かさんのせいで」
「……すまなかったな」
「……………………は?」
え?今この人なんて言った?
「あの時のことだ。
実際、碌に謝ることもできずにそのまま戦ってしまったからな。
あの時の俺は、キラの……フリーダムのことで頭がいっぱいだった。
そうして俺が迷った結果、どうなるかも考えずに全部お前に押し付けてしまった……。
本当にすまない」
そう言ってアスランは頭を下げる。
この男が私に頭を下げるだなんて……天地がひっくり返ってもあり得ないことだと思ってた。
「…………じゃぁ、今度は迷わないで下さいよ」
「え?」
「もう全部終わったことです。今更そんな風に蒸し返されてもリアクション取り辛いんですよ。
そんなことよりもほら!ちゃんと作戦考えてくださいよ!」
私の言葉にアスランはきょとんとして、
「ああ。そうだな、すまなかった」
すぐに気を取り直してあーでもないこーでもないと作戦を練り始めた。
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「もうすぐ最後の扉が開く……」
仮面の男は嗤う
自分の元いた世界を
新たに訪れた異世界を
あがき続ける人間たちを
そして自分自身を
「この可能性のかけらの中で、どこに希望があると言うのか……」
男が見上げる先、一機のMSが鎮座している
それは漆黒のMS
紅い悪魔のような羽
まるで血の涙を流しているかのよなメインカメラ
その後ろにはまたしても漆黒の大型モジュールがある
「君たちもいずれ知るだろう……今我々が生きているこの世界がどんなに空虚で儚いものかを……」
仮面の男は絶望する
自らの生まれを
自らの境遇を
そしてこの世界の真実を
「君もいずれ私と同じことを知るだろう……世界は絶望に満ちていると言うことを……。
そして君も絶望する。
所詮、我々はただの可能性のかけらに過ぎないのだと……」
男は嗤う
故郷を、世界を、全てを、
おのれ自身さえも
いやぁ~遅くなったね~!
というわけで人生最後の夏休みを満喫している作者です!
今回はいろいろ準備回ということで短めです。
作者は今式場の準備で忙しかったりします。
ああ……待っててね?雷ちゃん!シノンさん!響ちゃん!(重婚)
というかそろそろ仮面の男さんの名前を出したい……。
タイミングを逃して今までずっと謎の男になってる!
すっごいかわいそう!
そんな謎の男が意味深な言葉を残して今回は終了です!
次回もお楽しみに!
以下、次回予告!脳内BGMはLife Goes On で!
宇宙にたどり着いた進たちについに戦いの幕が開く!
友のため、仲間のため、愛する人のため。
ウサギたちは戦いを挑む!
次回![IS]運命の翼の少女 第四十五話「嘲笑あるいは決戦」
今…………最後の扉が開く。