[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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やっぱり難産だった。

今回で進ちゃんが一つの答えを出します。

とくとご覧あれ。





第四十八話 「死闘あるいは幕引き」

 

 

漆黒の宇宙を翔ける。

目指す先には黄金のMA。

攻撃は全て強固なシールドに阻まれて通らず、みんな次々やられてしまった。

私だって最初の一発でやられたし、今だって満身創痍の体を引きずってここまで来ている。

 

だけど、泣き言なんて言ってられない。

 

これで最後、あの黄金のMAさえ倒せばこの戦いは終わる。

 

『…!進!?』

 

『なに!?』

 

途中でシャルとラウラとすれ違う。

誰にも言わず病室を抜け出してきたから、戻ったら多分みんなに説教されるだろうな……。

 

もう一度武装を確認する。

 

使えるのはビームマグナムとレイブレード、そして右腕のパルマフィオキーナとアロンダイトⅡのみ。

 

右腕しかない状態でビームマグナムを使うのは無理だろう。

アロンダイトも満足に振れるかわからない。

つまり、ちゃんと使えるのはレイブレードとパルマフィオキーナのみ。

 

対する相手は射撃武器で固めており、近接武器は見たところあのクローのみ。

 

射撃戦では不利だし、接近しようとしてもあのフィールドに阻まれる。

そう、普通の機体なら。

 

シードデスティニーは普通の機体じゃない。

 

『シン!?』

 

『な!?なんで!?』

 

『性懲りもなくまた来るとはなぁ!』

 

一夏とアスランが驚き、黄金のMAがその頭頂部にある二門のビーム砲を撃ってくる。

繰り出される二本のビームの間を縫うようにして躱し、左足に装着したレイブレードを振るう。

 

『無駄だ…』

 

ジブリールのあざ笑うかのような声と同時に、あのフィールドが展開。

レイブレードは受け止められ、それと同時にアラート表示。

その場から一気に離脱すると同時に四機のドラグーンが私のいた場所に向けてビームを放つ。

 

『進!どうして!?』

 

『なぜ戻ってきた!?』

 

「話は後!二人はできる限り奴を牽制して!」

 

『お前!』

 

「いいから!」

 

もう一度突っ込む。

今度は右膝に収納されているレイブレードを右手に持ち、ビームの弾幕をかいくぐりながら前へ。

前進する私を援護するように、後ろからビームがMAに向かって行く。

 

『無駄だ!このアルヴァトーレを落とすことなどできん!』

 

放たれたビームを防御するためにフィールドに引きこもるMA……アルヴァトーレ。

だけど、私の狙いはそのフィールドを張らせることにある。

 

「いっけぇぇぇえええ!!」

 

叫ぶと同時にフィールドの内側にワープ。

思った通りフィールドとアルヴァトーレの間にはスキマがあった。

 

『!?なんだと!?』

 

「ハァァアアアアア!!!」

 

レイブレードを振りかぶり、右翼のビーム砲を切断。

クローが私を狙うが、咄嗟に持っていたレイブレードを捨ててそのクローを掴む。

 

パルマフィオキーナをサーベルモードで起動。

 

高圧縮のビームサーベルに貫かれたクローは各所からスパークを発し、そのまま爆散した。

 

『バ、バカな!?』

 

頭頂部のビーム砲が再び私に狙いを定めたので、ワープを使ってフィールドの外へ退避。

ジブリールは残ったビーム砲で私を狙おうとするが、私の意図を察してくれた一夏とアスランが牽制射撃でフィールドを解除できないようにする。

 

(よし、このまま……ッ?!)

 

もう一度ワープでフィールドを突破しようとした瞬間、私の胸に鋭い痛みが走る。

 

(まさか……もう、限界なの!?)

 

あまりの激痛に意識を手放しそうになるが、ドラグーンが私を狙っているのに気付き必死に機体を操作する。

もし今意識をなくせば、それこそ今度こそ死んでしまうだろう。

それはだめだ。

今ここで私が死ねば、ジブリールに勝つ手段が無くなってしまう。

 

(だから、もう少しだけ持って!あと少し!)

 

ドラグーンに接近して、左足のレイブレードで切り裂く。

残り三機になったドラグーンの猛攻を何とか回避するが、ボロボロの状態で出てきたため機体が重い。

さらに断続的に続く胸の痛みが私の動きを鈍らせる。

回避も限界になり、右腕に残ったソリドゥス・フルゴールを使って防ぐ。

 

『進!』

 

その声と同時に、私を狙っていた三機のドラグーンが全て爆散。

どうやらシャルとラウラが助けてくれたみたいだ。

 

『行け!進!!』

 

『進ならできるよ!!頑張って!!』

 

その声に励まされ、再びジブリールのところへ向かう。

 

『えぇい!!貴様さえいなければ!!』

 

そこでジブリールはフィールドを解き、狂ったようにビームを撃ち続ける。

 

『くっ!これじゃあ近づけない!』

 

『いや、近付いて見せる!』

 

そう一夏が言い、白式が今まで見たことないようなスピードを見せる。

直線的な軌道から、おそらく瞬時加速を使った九十度ターン。

パイロットへの負担を一切考えない機動で瞬く間にジブリールに接近した一夏は、そのまま両手の雪片を叩き付ける。

それによって残った左翼のビーム砲が破壊される。

 

『今だ!!』

 

クローが一夏を狙って展開された瞬間、アスランがビームサーベルを展開しクローに向かって投げつける。

見事に命中し、クローに突き刺さったビームサーベルを、雪片を捨てた一夏が握りそのまま振り下ろす。

 

真っ二つになったクローが爆散。

 

それと同時にアルヴァトーレの頭頂部が割れ、中から二十メートルはある巨大なMSが現れる。

 

『まさかアルヴァアロンまで使うことになるとはな……。

だが、貴様らの快進撃もここまでだ!!』

 

ジブリールのMS……アルヴァアロンが両手に持ったビームライフルを一夏に向ける。

クローの爆風に押され、体勢を崩していた一夏はとっさのことで反応できていない。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」

 

アロンダイトを抜いて再びワープを使い、アルヴァアロンと一夏の間に立ちアロンダイトを盾にする。

 

『進!?』

 

放たれた二発のビームはアロンダイトに命中。

だが、PS装甲とラミネート装甲の二重装甲の上からアンチビームコーティングが施されている三重装甲のアロンダイトを破壊することはできず、私も一夏も無傷。

 

『なんだと!?』

 

『ウォォォオオオオ!!!』

 

アスランが漂っていた雪片を拾い、左肩に突き刺す。

 

『はぁぁああああ!!』

 

一夏がビームサーベルで反対側の右肩を突き刺す。

 

『な、なぜだ……なぜ私が負ける!?

なぜ!?私の新世界が!?』

 

アルヴァアロンの正面に立つ。

右腕一本でアロンダイトを上段に構える。

 

『や、やめろぉぉぉぉ!!!』

 

そのまま振り下ろす。

アロンダイトはアルヴァアロンの胸部装甲を切り裂き、中のコックピットを露出させる。

 

それが、決着の一撃となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぜ……止めを刺さない?』

 

「決めたから」

 

そう、私はこの戦いの前に決めてきた。

誰も死なせない。

それがたとえ、敵でも味方でも。

 

それが今、私が戦場に立つ理由だ。

 

「あんたが何を思ってこの世界に戦争を仕掛けたのかは知らない。

だけど、私はもう戦いで誰かが死んでいくのを見たくない。

だから、誰も殺さないし、殺させない」

 

『そんな……綺麗事を!!』

 

「綺麗事の何が悪いのよ!

あんたたちみたいに誰かを殺して自分たちの意見を押し通そうとする連中よりいいでしょ!?」

 

『それのどこが悪い!

所詮人間は戦う生き物だ!

どんな綺麗事を並べても、結局は力が全てだ!!』

 

それは、かつて私がアスランに言った言葉だった。

 

結局は力が全て。

 

かつては私もそう言って、アスランと対峙した。

 

「絶対に違う!!」

 

だから、私は否定する。

 

かつての私の言葉を否定する。

 

「たとえどんなものでも力は力。

それだけが全てじゃない!

憎しみも、悲しみも、怒りも、楽しさも、喜びも、愛情も、弱さも、強さも、全部ひっくるめて世界なんだ!

あんたは、その一部だけを見て他を見ようともしていないだけよ!

もっと目を開いて、前を見てよ!

そしたら、あんたにもきっとわかる……。

怒ったり、憎んだりするだけが全てじゃないって。

誰かを否定して、自分を押し通すだけが世界じゃないって。

私は、それをこの世界で学んだ。

一夏は私がどんなにひどい人間なのかわかっても、私に手を伸ばし続けてくれた。

セシリアも箒も鈴もシャルもラウラも刀奈さんも、こんな私を友達だって言ってくれた。親友だって言ってくれた!

織斑先生も束さんも、こんな私に力を貸してくれたし、アスランは私を心配して異世界まで追ってきてくれた。

私が目を塞いでいただけで、力だけが全てだと思っていた世界は、こんなにもやさしさにあふれていた……。

だから、あんたにもきっと見つかる日が来る。気付く日が来る。

だって世界は…………こんなにも簡単なんだから」

 

『…………』

 

沈黙が続く。

今の私の気持ちをすべて言葉に乗せて伝えた。

相手を殺すことは簡単だ。

話を聞かずに、引き金を引くだけで済むんだから。

だけど、それでしか分かり合えないなんて、悲しすぎるから。

だから、私は綺麗事を選ぶ。

みんなどんな理屈を並べても、本当は綺麗事で済む世界がいいはずだから。

 

『私を生かせば、また今回のような戦争を仕掛けるかもしれんぞ?』

 

「その時は、私が……私たちが止める。

何度でも止めて、また話をする。

あんたがわかってくれるまで、何回でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリールはしばらく目を閉じ、何かを考える。

 

やがて目を開き、手を上げた。

 

『……私の負けだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大破したアルヴァアロンを引きずって、ラビット号へ戻る。

 

『進さん!大丈夫ですの!?』

 

『ちょっと進!?あんたあたしたちより重症なのに何で安静にしとかないのよ!!』

 

『椿!!なんで進を止めなかったんだ!!』

 

『ポンコツ主がやられなければ止めたさ』

 

『ええい貴様ら!!病室で騒ぐな!!』

 

『キャー!?箒ちゃんの玉のお肌が気付だらけーー!?

あーちゃん!!すぐそいつをここまで連れてきて!!生まれてきたことを後悔させてやるから!!!』

 

『進は病室を抜け出してきたのか―……。罰として着せ替え人形の刑だよ?』

 

『自業自得だな、進』

 

『ほら、雪片返せよ』

 

『そう言うお前も俺のビームサーベルを返したらどうだ?』

 

うん。すっごくうるさい。

だけど、やっぱりみんなの声を聞いてたら安心する。

 

ここが、私の帰る場所なんだって実感できる。

 

『ふん。姦しいな』

 

「いつもお通夜みたいな雰囲気よりましでしょ?」

 

『その例えはどうなんだ?…………だが、これも悪くないな』

 

そのまま私たちはラビット号を目指す。

戦争はこれで終わり。

後の面倒なことは織斑先生たちに任せて、私たちは残り少ない夏休みを満喫しよう。

二学期には文化祭があるらしいから、私たちで何か出し物をするのもいいかもしれない。

そう言えば、刀奈さんに二学期から生徒会に入ってくれって頼まれてたんだ。

生徒会の仕事って全然知らないけど、まぁ何とかなるよね。

 

文化祭は一夏と一緒に回りたいな。

他にも一夏の住んでた町の案内とかしてほしいし、オーブやプラントの話を聞いてほしい。

ミネルバ隊の話もしたいな。みんな私の大切な仲間だし。

マユや父さんや母さんの話もしたい。

ステラとのことも話したいな。

織斑先生に掛け合って、一夏と相部屋にしてもらうとかどうだろう?

それぐらいの我が儘、許してくれるよね。

 

『?どうした、進?』

 

「ねえ一夏」

 

『ん?』

 

「二学期、楽しみだね」

 

『ああ!いろんなところを紹介してやるからな!』

 

「うん!」

 

そうだ。これから始まるんだ。

私と一夏たちの学園生活は、今日この日から!

本当の意味で、始められるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『離れろ!!』

 

瞬間、アルヴァアロンが私を振り払った。

 

「ジブリール!?」

 

『お前、何を!?』

 

『ちぃっ!やはりまだ懲りないか!!』

 

ふり払われた私が宙を漂い、一夏が驚愕で動きを止め、アスランがライフルをアルヴァアロンに向けて構える。

 

『―――――――』

 

「…………え?」

 

次の瞬間、アルヴァアロンが爆発した。

 

 

 

 

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私は負けた。

 

だが、負けたと言うのに気持ちは晴れやかだった。

 

今まで、私は何をしていたのだろうかと思う。

今となっては、私は本当は何がしたかったのかわからない。

 

ただ、この少女に賭けてみたくなった。

 

どこもまでも綺麗事を言うこの少女に賭けてみたい。

その綺麗事をどこまで貫き通せるのか見ていたい。

 

そして願わくば、私もこの少女たちの輪の中に入ってみたい。

 

三十路を超えた男の言葉ではないな、と自嘲する。

 

それと同時に、アルヴァアロンに通信が入る。

少女たちが使っているオープンチャンネルではなく、ネオ・ロゴス内の秘匿通信だ。

 

(ちょうどいい。待機している別働隊に投降を促してみるか)

 

さっそく、言葉で語ってみよう。

回線が開くと、別働隊の隊長を務める仮面の男が出てきた。

 

『マスター・ジブリール……やはり捕まったか』

 

「やはり?貴様は私が負けると思っていたのか?」

 

『なんとなく、そんな気はしていたよ』

 

「……まぁいい。分かっているのならこれからするべきことは分かるだろう?

武装を解いて投降しろ。

これ以上の戦闘は無意味だ」

 

『…………クククククク』

 

「ん?なにが可笑しい?」

 

『可笑しいとも!!なぜ我々が君の命令に従わないといけないのだ?』

 

「なに?」

 

『マスター・ジブリール!君はいい道化だったよ!

君が矢面に立ち派手に動いてくれたおかげで、ネオ・ロゴスの党首は君だと思わせ、世界中の人間の目を君に向けさせることができた!!

まったく、本当に思い通りに動いてくれて私もやりやすかったよ!』

 

「貴様……!私を謀ったか!!このジブリールを!!」

 

『ふむ……ではわたしもこのシチュエーションだ。こう、切り替えさせてもらおう。

そういう物言いだから(・・・・・・・・・・)器量が小さいのさ(・・・・・・・・)

 

「ラウ・ル・クルーゼェェェェ!!」

 

『ああ、アルヴァアロンの処理は私に任せたまえ。

君の機体のプロト・ユニット・レプリカには自爆装置を組み込んである。

最後は道化らしく、盛大な花火を上げてくれ』

 

瞬間、アルヴァアロンを操作してデスティニーを振り払う。

 

『ジブリール!?』

 

『お前、何を!?』

 

『ちぃっ!やはりまだ懲りないか!!』

 

ふり払われたデスティニーが宙を漂い、少年が驚愕で動きを止め、アスラン・ザラがライフルを私に向けて構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の綺麗事を最後まで見れないのが、残念だ」

 

『…………え?』

 

ああ。本当に残念だ。

できれば、この世界で君が今後どう生きていくのか、見て見たかった。

 

『さようなら、ジブリール』

 

さぁ、シン・アスカ……いや、飛鳥 進よ。

その翼をもって大空を存分に羽ばたいてくれ。

私は君の羽ばたきを、この宇宙で見守らせてもらう。

 

さらばだ。

 

 

 






さて、皆さん的には今回はいかがでしたでしょうか?

ジブリール説得は作者も何パターンも考えて試行錯誤しました。
そして今回進ちゃんが出したのがIS世界に来たことでたどりついた答えです。

原作とも、他の二次創作とも違う「女性」としての道を歩んできた進ちゃんの答えです。
ホント、ここに作者もたどり着くまでだいぶかかりました。
当初はアロンダイトで突き刺しておしまいでしたからね。
さすがにそれはないと言うことで今回頭をひねって出したのがこれです。

そして進ちゃんを襲う謎の激痛。
進ちゃんとアスランは原因がわかってます。
その辺はまた次回をお楽しみに!

では、次回から真の最終決戦です。
ラスト二話(予定)!!









以下、次回予告!脳内BGMはLife Goes On で!

戦いは終わった。
誰も死者を出すことなく、終わらせることができた。
そう思っていた。
倒れる進。
姿を現した仮面の男……ラウ・ル・クルーゼ。
今、再び戦いの火蓋が切って落とされる。

次回![IS]運命の翼の少女 第四十九話「幕引きあるいは血戦」
今…………最後の扉が開く。
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