「おい、あれ見ろよ」
プラントコロニーの墓地
そこを歩く三人の男が、一つの墓を指さす
「シン・アスカの墓だぜ」
「シン・アスカ? ………あぁ…あのラクス様に歯向かった………」
「そうそう! 暴君デュランダルの番犬だろ? 確かプラントで最も人を殺した奴だっけ?」
「機械のように人間を殺すところから殺人機って言われてたらしいぜ」
「こいつも馬鹿だよなぁ……プラント国民なのにラクス様の歯向かうなんて…」
「両親はナチュラルらしいぜ?」
「ナチュラルに育てられたのか? なら納得だな」
「ああ、まっとうなコーディネーターならラクス様に逆らうはずないもんな」
「ハハハ! 違いない!」
笑いながら三人の男は墓地を後にする
そんな様子を少し離れたところから、アスラン・ザラは見ていた
アスランはその手に花束を持ってシンの墓に歩み寄る
「殺人機……か」
今、彼の胸は後悔の念と自責の念でいっぱいだった
⦅あんたが正しいって言うのなら! 私に勝って見せろ!⦆
その彼女の言葉通り、アスランは勝った
力が全てでは無いと言いながら、力でシンとの戦いを制した
その自らの矛盾に、アスランは今もなお苦しんでいる
(俺はどうしたらいい?)
決まっている
勝った自分があいつの分まであいつが望んだ戦争のない平和な世界を作るべきだ
だがどうやって?
思考はいつもそこで止まる
平和な世界を作ると言いながら、具体的な案を提示しないラクス
そんなラクスの横でただラクスに反発する人を押さえつけるだけで自分から動こうとしないキラ
オーブのことだけで手いっぱいで、世界全部に目を向ける余裕のないカガリ
(これじゃあ何も変わらない)
平和な世界を作っていきたいと思った
議長とならそれができると思い、それは間違いだと思って議長の下を去った
ラクスと……キラと共にならそれができると思った
だが何も変わらなかった
ラクスという神が、キラという力をふるって世界を抑え続ける
⦅どんなに綺麗事を並べても、結局は力がすべてなのよ!⦆
彼女の言ったとおりになった
結局は力が全てなのだろう
どんなに正しいことを叫んでも、そこに力が伴わなくては何の意味もない
自分より二つも年下の少女のほうがこの世界のことをよくわかっている
「なぁシン…………俺はどうしたらいい?」
無意味な問いかけは風に乗って消えていく
最強のパイロットの一人と呼ばれ
本気を出せばキラでさえもかなわないと言われる
史上最強の騎士、アスラン・ザラは
今、堕とした部下の墓標の前でどうしようもないほどに自分の無力を嘆いていた