[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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まさかの中編、次回で終わらせる……といいなぁ。





第五十話 「決戦あるいは終戦」 中編

 ラビット号から飛び立った彼女たちの目に入ったのは大群だった。

 無数の無人MSが、月を背にして宇宙を陣取っている。

 その彼らの後ろに見えるのは、シンとアスランにとって見覚えのあるもの。ザフト軍製の降下ポッドである。

 降下ポッドの中に次々と核ミサイルを積んだウィンダムが入っていくのがハイパーセンサーによって確認できる。

 

『降下ポッド!? あれで地上に降りる気か!』

 

『なに? あれ?』

 

「大気圏降下用のポッドだよ。MS単独で大気圏に降下なんて命がいくつあっても足りないからね、その為の足だよ。どっかの誰かさんは二回くらいやってるらしいけど」

 

『それを言うならお前もやっただろう』

 

『! くるよ!』

 

 シャルロットが叫んだ瞬間、ロックオンアラートが多数。

 散開すると無数のビームが進たちのそばを通り抜けていく。

 

『最優先目標は降下ポッドの破壊と主犯のラウ・ル・クルーゼの確保だ! ……死ぬなよ!』

 

『みんな、これが最後だよ! 頑張って!』

 

 千冬と束の激励に押され、彼女たちは飛ぶ。

 祖国を守るために、大切な学び舎を守るために。

 

 

 

 

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「ッ! 数が多い!!」

 

『まずいぞ一夏! 他のみんなと分断された!』

 

『どうする主? いくら相手が木偶の棒でも、このままでは押しつぶされるぞ』

 

 箒と椿の声を聴きながら、雪羅を荷電粒子砲に変えて薙ぎ払う。

 その隙に接近してきたMSを《雪片・甲》で真っ二つにし、他の接近してくるMSに向けてその残骸を蹴り出す。

 俺が蹴った残骸とぶつかって体勢が崩れたMSに《雪片・乙》を振り下ろし、一度下がる。

 ちょうど同じように下がってきた箒と背中合わせになり、同じように二振りの刀を構える。

 

 このままじゃ埒があかない。

 

「箒! 援護してくれ! 真打で一気に決める!」

 

『! 了解だ!』

 

 敵を箒に任せ、一度距離を取る。

 そのまま急いで雪片と雪羅を合体させ、《雪片・真打》を抜く。

 モニターに映る仲間の位置を確認し、被害が出ない場所を見極める。

 

「下がれ箒! 行くぞ!!」

 

 零落白夜を起動し、薙ぎ払う。

 エネルギーを注ぎ込み続ける限り何処までも伸びていくその刀身は、目の前の無人機を飲み込んでいく。

 

「いっけぇぇぇぇえええええ!!!!」

 

 振り切った後にできたのは何もない空間。

 今の一撃で無人機の半分くらいはやれたか?

 

「今の内だ! 一気に突っ切って降下ポッドを壊すぞ!」

 

『ああ!』

 

 箒と一緒に敵陣のど真ん中に空いた空白地帯を突っ切って月の近くにあった降下ポッド部隊を強襲しに行く。

 

 少しあたりを見回すとそこらじゅうで爆炎と閃光が走っている。

 あのどれかで進は戦っているんだろう。

 

(……俺は、俺にできることを!)

 

 今進の心配をしてもどうにもならない。

 一刻も早く降下部隊を片付けて、みんなと合流する。

 

 それしかないんだ。

 

 

 

 

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 (……分断された……みんなは?)

 

 群がる無人機を右手のレイブレードで薙ぎ払い、左手のライフルで撃つ。

 

 さっき見えた大きな光……あれはきっと話に聞いた一夏の零落白夜。

 実際に見るのは初めてだけど、きれいな光だったな。

 

『どうしたどうした!? その程度か鬼神!?』

 

「クッ……!!」

 

 量産型デスティニーのジャスティス型の斬撃をシールドで受け流し、反撃にレイブレードで切り付けようとする。

 

『やらせませんよ』

 

「あっ!」

 

 そこへフリーダム型の量産機が私へ向けてタックルを仕掛けてくる。

 すぐさま体勢を立て直し、改めて目の前の敵を見る。

 

 アスランが言っていた量産型デスティニーが目の前に十五機。装備しているシルエットはバラバラだけど一部かぶっているものもある。

 アスランの話では量産機は十九機。以前私が撃墜したのは四機だから、ここで全戦力を投入してきたと言う事でもある。

 

 一対十五……それに加えて私は切り札を温存しなきゃいけないから戦力は下がってる。

 さらに周囲には無人機もいるから戦力差はもっとひどい。

 

『こういうの、袋叩きっていうんですよね、隊長』

 

『「空飛ぶ棺桶」と呼ばれていたとはいえウィンダムを三十機、一個中隊をたった一人でつぶした相手だ。過剰とは言えまい』

 

『納得です。これだけの人数でも攻めあぐねるってホント化け物ですかね。さすがは鬼神だ』

 

「そんな風に褒められても、うれしくないか……なッ!」

 

 言いながらアポロンを展開、拡散モードで発射する。

 広範囲に向かって吐き出されたビームに反応してデスティニーたちは散開するが、逃げ遅れた二機が左足と左手を破損、無人機の大半がビームの餌食になった。

 私は逃げ遅れた二機に向かって光の翼を展開させて高速起動で接近、持っていたライフルとシルエットを破壊しておもいっきり蹴る。

 MSの膂力で蹴りだされた二機はそのまま戦闘中域外の月まで飛んでいく。これで何かの巻き添えになることはないと思う。

 

『……武装だけ奪って命は奪わないってわけか。まるでお前が落したフリーダムのようだな』

 

「なんとでも言えば? 私はもう誰の命も奪う気はないから」

 

 正直一緒になんてしてほしくないが、傍から見たら同じことをしているようにしか見えないので仕方ない。

 だけど、私はもう決めたんだ。この道に後悔はない。

 

「あと十三機……」

 

『いや、あと十一機だ』

 

 私がふと呟いた言葉に、聞きなれた男の声で通信が帰ってくる。

 見れば私の後ろからライフルで狙っていたデスティニーの二機が、真紅の機体によって四肢とシルエットを切断されて宇宙空間を漂っていた。

 

「アスラン……」

 

『すまない、合流が遅くなった。無人機は粗方片づけた。だから……』

 

『ここからはわたくし達がお相手いたしますわ!』

 

 声と同時にデスティニーたちに降り注ぐビームの雨。

 巻き込まれ、よけきれなかった三機が無数のビームとミサイルの雨に飲まれていき、爆炎に包まれていく。

 煙がはれると、ボロボロの状態だが何とかパイロットを保護しているデスティニーの姿があった。

 

『……あれだけ喰らってよく爆散しなかったな』

 

『今回の為に篠ノ之博士に用意してもらった威力を下げたミサイルですわ。ビームの出力も落としていてよ?』

 

『いい仕事するじゃない! というわけで喰らっときなさいッ!!』

 

 ビームの雨を躱したデスティニーの一機に、鈴が斬りかかる。

 不意を突いた猛攻で持っていた武器を弾かれたデスティニーは、退くこともできずにそのまま衝撃砲の一撃で吹き飛ばされる。

 

『どうよ! さぁ……次の相手は誰?』

 

「セシリア……鈴!」

 

 突然の援軍に驚いてあたりを見渡せば、あれだけいた無人機がほとんどいなくなっていた。

 

『一夏たちは? こっちに来てないの?』

 

『一夏さんたちは降下ポッドの方へ行きました。そちらは一夏さんたちに任せましょう?』

 

『そうだな。俺達は、こいつらだ』

 

 私の周りに集まった三人が、陣形を整えて私たちを睨みつけているデスティニーたちの方へ向き直る。

 

 さっきまで一対十五だったのが、四対七と一気に楽になった。

 

(このまま……たたみかける!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『残念だが、君のお相手は私が勤めよう』

 

 突然割り込んできた通信と、私とみんなを分断するように放たれたビームの雨。

 必死にビームを躱しながら応戦するけど、辺りを見渡しても相手はどこにも見えない。

 MSのないところからビームが飛んでくる。

 

「! ドラグーン!?」

 

『ご名答。さて、どこまで躱せるかな?』

 

 広大な宇宙空間の中ではあまりにも小さなドラグーンから発射されるビームを必死によける。

 私を狙うビームは無数、数えるのも億劫なほどの数がある。

 

(! みんなと離されてる!)

 

 ドラグーンを躱せば躱すほどセシリアたちと離されていくのを自覚する。

 姿を捉えられないように光の翼で残像を生み出しながら必死に躱し、撃ち返す。

 何発か掠りつつもライフルで撃ち返して三機ほどドラグーンを落とす。

 

 やがてビームの雨が止み、私はそこでついに元凶と対峙する。

 

 真っ黒な装甲。

 ミーティアから二本の長い椀部の砲身を無くしブースターだけにしたかのような追加兵装。

 機体の周囲を漂う数十機のドラグーン。

 そして、仮面で姿を隠した男。

 

「ラウ・ル・クルーゼ!」

 

『さぁ、これより最後の扉が開く! 一緒に踊ってもらおうか……シン・アスカ!』

 

 

 

 

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『降下ポッドには核が積まれている! 絶対に至近距離で破壊するなよ!』

 

『一夏は僕の武器を使って! マシンガンとか弾をばら撒く系の武器を渡すから当たるはず!』

 

「助かる!」

 

『主! 今回は人手が必要だ、分離するぞ!』

 

『了解だ椿! フォローは任せたぞ!』

 

 俺と箒、シャル、ラウラと椿で降下ポッドに攻撃を仕掛ける。

 みんな自分で持っている射撃武器を打ち込んでポッドを破壊する。

 後ろからは幾本ものビームが撃ち込まれる。多分千冬姉と束さんの援護だ。

 俺もシャルから借りた銃でポッドを撃つ。

 半分ほど弾をはずしながらもちゃんと撃ち抜き、同時にポッドが大爆発をおこす。

 

『チッ! 数が多い!』

 

『まずい! 何機か降下を始めたぞ!』

 

『速度が速い! ここから地球まで距離があると言ってもこの速度なら二十四時間以内には着くぞ!!』

 

「どうすればいいんだよ!」

 

『なんとしてでも止めろ! 全門開放! 一基もここから通すな!!』

 

『一斉斉射!! バンバン行くよぉ~!! 弾切れとか気にしないで~!!』

 

『これで……ええぃ! 数えるのが面倒だ! シャル! あと何基だ!?』

 

『あと二十七! これで二十六!』

 

『二十五だ! クソッ! 全部動き出したぞ!!』

 

 箒が言った通り、今まで静止していた残りのポッドが全て動き出した。

 目標は……地球。

 

「行かせるかぁぁぁあああ!!!」

 

 銃を投げ捨て、《雪片・真打》の零落白夜を起動する。

 これを使えば白式のエネルギーも後がなくなる。

 他の五機から供給してもらえるとはいえ無限じゃないし、俺だけが動けなくなるのならまだしも他のみんなも一緒に動けなくなるのは危ない。

 だから、これが俺のこの戦いでの最後の一撃。

 

「全部……ぶった切れろ!!」

 

『行け! 一夏!』

 

『やって! 一夏!』

 

『決めろ! 一夏!』

 

『ブチかませ! 一夏!』

 

『行っけぇぇ!! いっくん!』

 

「うおぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」

 

 長く、太く伸びた零落白夜の刃を振り下ろす。

 残っていた二十五基すべてのポッドを飲み込んだ刃は、その余波で月の表面を浅く切り裂きながら消えていった。

 

「ハァ……ハァ……よし、……進達の援護に行くぞ……」

 

『……ああ、無理はするなよ、一夏』

 

「ここで無理しなきゃ……いつ無理するんだよ……」

 

 そうだ。進もみんなも頑張ってるんだ。

 

 だから、俺だってまだやれる。

 

 戦って、勝って、帰るんだ。

 

 進と一緒に、あの学園に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ……もはや何も言うまい。

 後編に続く。
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