[IS]運命の翼の少女   作:名無しのごんべい

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 決着。




第五十話 「決戦あるいは終戦」 後編

 

 

『あんたたちは、こんな事して何が楽しいのよ!?』

 

 ダブルセイバーとなった双天牙月を二本振り回しながら、鈴は目の前の男に問う。

 ジャスティス型を纏った男は日本のビームサーベルでそれをいなしていく。

 

『悪いな嬢ちゃん、俺たちに理由なんざ無いのさ!』

 

『はぁ!?』

 

『ただ、クルーゼについていけば戦える。それも鬼神なんて言うとびっきりの相手とな! だから俺たちはこうして戦ってるのさ!』

 

『そんな……そんな理由で!』

 

 激昂した鈴が衝撃砲を乱射する。

 男はそれを躱し、あるいはシールドで受けながら鈴に接近していく。

 

『ハハハハ!! この量産機に乗って戦ってるのは大体そんな奴らだ! 一部例外もいるが、大体が戦いの中じゃなきゃ生きがいを見つけられないバカ野郎どもなんだよ! だから嬢ちゃんも殺す気で戦いな! じゃねぇと、死んじまうぞぉ!!』

 

 遂に鈴に接近した男がサーベルを振りかぶる。

 だが、鈴はサーベルを振りかぶった男の手に向かって衝撃砲を放つ。

 腕への急な衝撃に耐えきれず、サーベルを手放してしまう男。

 

『こんなところで……負けてらんないのよ!!』

 

 サーベルを諦めて肩のフラッシュエッジを取ろうとした男に向け、双天牙月を振り上げる。

 二本の青龍刀は寸分たがわずジャスティス型の武装を切り刻む。

 

『これで終わりよ。他の奴らもあたしの仲間が捕まえているわ。戦争なんて、もうお終いよ』

 

『……はぁ~あ。やっぱり見えない砲弾っていうのは卑怯だねぇ~。向こうじゃ考えられないもんだわ。……もうちっと、戦いたかったんだがなぁ』

 

 男が見詰める先には、捕えられた男の仲間たちがいた。

 全員武装を破壊され、抵抗できないようにライフルを突きつけられている。

 

『……英雄様の監視付きか。逃げ出すのは無理そうだ。分かった、降参だよ』

 

 ここで、また一つ決着がついた。

 残る戦いは、あと一つ。

 

 鈴たちがいる場所から遥かに離れた場所に見える、いくつもの閃光。

 そこへまっすぐに向かっていく純白の機体。

 

 終わりは、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

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『躱しきれるかな?』

 

 その言葉とともに、無数のドラグーンがクルーゼの機体……『デスティニー・ルーラー』の強化パック『ディスベアー』から射出される。

 進はそれを躱しながらクルーゼに問いかける。

 

『あんたは……どうしてここまでしてこの世界を壊そうとするの!?』

 

『君ならわかるのではないかね? すべてを奪われた悲しみが! 怒りが!』

 

『だからって他の人から奪うの!?』

 

『何が悪いと言うのかね? 世界というものは醜い。いつの時代も人は憎み、妬み、その身を食い合う。それはこの異世界でも変わらない。人は愚かにも争いをはじめ、力を求め、他者を蹴落とし、見下し、その手に持つ銃を離さない』

 

 四方八方から放たれるビームを進は避ける。

 だが、いかに進と言えども絶え間なく進を狙うビームの雨を無傷で避けることはできない。

 やがて一本のビームが進の右足を貫通する。

 

『ッ! リミットカット!!』

 

 そして進は切り札を切る。

 進の声とともにデスティニーの翼が砕け、エネルギーでできた翼ができる。

 そのまま進はクルーゼの背後にワープし、レイブレードで斬り付ける。

 

(これで……終わり!)

 

 そのまま進はレイブレードを振り下ろす。

 クルーゼはそれに気づき、進の方を振り向き……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その姿が突然消えた。

 

『え? キャアッ!?』

 

 衝撃は、進の背後からだった。

 慌てて進は後ろを振り向くと、そこにはクルーゼが不敵な笑みを浮かべながら進のことを見下ろしていた。

 

『その力が、君だけのものと思ってもらっては困るな……』

 

 そう言ったクルーゼの背後、背中にあるデスティニーの翼はなくなっており、進と同じような紅い翼を背負っていた。

 

『……その翼……』

 

『プロトユニットを持っているのは君だけではない。君の持つプロトユニットの完全なるコピーが、私にはある』

 

 そう言ったクルーゼが、いつの間にか進の目の前にいた。

 

『!?』

 

 振りかぶられるクルーゼのアロンダイトを躱し、進もアロンダイトⅡを抜きながらクルーゼから距離を取る。

 

『さぁ、これでお互い全力だ。改めて……始めようか』

 

 瞬間、クルーゼが消える。

 それに反応して進も消えた。

 

 消えては現れ、現れては消える。

 進の背後をクルーゼがとったと思えば、そのクルーゼの背後にいつの間にか進がいる。

 進のアロンダイトとクルーゼのアロンダイトが鍔迫り合う。

 

『世界は何も変わらない! それがどんな世界でも、人間の本質というものは何も変わらない! 君や彼がどれだけ叫ぼうが今更何も変わらない!! 私が手を下さずとも、この世界も、あの世界も同じ人間によって滅ぼされる!! それが早いか遅いかの違いだ!!』

 

『……ッ!』

 

 鍔迫り合いで拮抗していたところに、またしても幾重ものビームが進を襲う。

 咄嗟にワープで距離を取るが、それを追って目の前に現れたクルーゼに反応できずに胸の装甲を袈裟懸に斬られる。

 

(まだ……ッ!!)

 

 反撃に振るったアロンダイトⅡがクルーゼの左足を捉える。

 本体から切り離され、爆散した足の衝撃を利用して再び距離を取る進。

 

『君にもわかるだろう? 奪われる者の苦しみが! この世界全てを破壊しうるその衝動が! 私たちにはその資格がある! この世界を……あの世界を壊す権利が!』

 

 今度は進が爆炎に紛れてクルーゼの背後にワープする。

 不意を打ったその一撃はクルーゼの強化装備である『ディスベアー』のブースターの片方に大きな傷を残す。

 その瞬間、周囲を漂う無数のドラグーンが進を襲う。

 盾を構えて襲い掛かるビームを受け止め、背後から来ないうちに進はその場をワープで離脱。

 少し離れた場所からアポロンを起動し、照射モードでクルーゼとドラグーンが飛び回っていた場所を薙ぎ払う。

 

 いくつもの爆炎が上がる。

 だが進はそれに油断することなくアロンダイトⅡを構えてセンサーを全開にしてあたりを見回す。

 

 そして進の予想通り背後から現れたクルーゼに対し、進はレイブレードを装着した左足で回し蹴りを放った。

 

『なにっ!?』

 

 背後を取ったことで油断していたのか、クルーゼはその一撃をもろに受け、進と同様に胸部の装甲がレイブレードによってはじけ飛ぶ。

 

『クッ!?』

 

 ドラグーンを周囲に漂わせてビームを乱射させながら後退するクルーゼ。

 先ほどまでより明らかに数が減っているドラグーンを確認しながら、進はワープを使わずにただのデスティニーの機動力だけでビームを躱していく。

 焦ったクルーゼはもう一度進の背後にワープするが、今度は進の裏拳がその頬に刺さる。

 

『ガッ!?』

 

『あんたの言う事、確かにわかるよ』

 

 怯んだクルーゼに向かって追撃するわけでもなく、構えていたアロンダイトⅡを下ろしながら進はクルーゼに応える。

 

『お父さんが……お母さんが……マユが、ステラが死んだとき、確かに思ったよ。みんなを殺した戦争が、世界が憎いって。フリーダムが憎い。アスハが憎い。オーブが憎い。連合が憎い。人間が憎い。世界が憎い。……そう思ったことも確かにあるし、憎しみで剣を取ったことだって何度もある。私はそれが悪いことだとは思わないし、あんたの言い分も理解できるよ。

 だけど、やらせない』

 

 そう言い、進は降ろしていたアロンダイトⅡを再びクルーゼに向ける。

 

『あんたが世界を滅ぼす理由も、私が世界を憎んだ理由も、みんな私やあんたの自分勝手な理由だ。あんたがあんたの勝手で世界を滅ぼすと言うんなら、私は私の勝手で仲間を、友達を、……大好きな人を、護る。決着をつけよう、ラウ・ル・クルーゼ。私を殺せば、あんたの勝ち。あんたを倒せば、私の勝ち。お互いプロトユニットの反動で体はボロボロでしょう? ……だから、これで最後でしょうね』

 

『……シン・アスカ』

 

『違う!』

 

 クルーゼのつぶやきを、進は全力で否定する。

 

『私はIS学園一年一組、生徒会所属兼篠ノ之束博士専属助手! 飛鳥進! それが私の今よ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『飛鳥進? ……今までの自分を捨てると言うのかね? そんなことをしても、君が赦されることはないと言うのに?』

 

 周囲にドラグーンを漂わせ、アロンダイトの剣先を進に向けながらクルーゼは問いかける。

 

『確かに、私は赦されないのかもしれない。この手はいろんな人の命を奪い続けてきたし、今でも私が殺した人たちの顔が頭から離れない。どんなことをしても、私は私が殺してきた人たちに許されることはないと思う。

 だけど、一夏は赦してくれた。セシリアも、箒も、鈴も、シャルも、ラウラも、刀奈さんも、みんな赦してくれた。みんなが赦してくれたおかげで、私は私自身を赦すことができた。だから私は、シン・アスカという昨日を道しるべにして、飛鳥進として今日を歩む。そして私の大事な人たちと一緒に、明日へと歩いていくんだ!』

 

 進は言い切ると同時にクルーゼと同様にアロンダイトⅡを構える。

 

 もはや、二人の間に言葉はなかった。

 

 いくつかのドラグーンから進に向かってビームが放たれる。

 進はそれを躱しながら左手のシールドをクルーゼに向けて投げる。

 飛んでいくシールドはCIWSをフルオートで連射しながらクルーゼに向かっていくが、クルーゼはビームシールドを構えて全てやり過ごす。

 シールドはそのままクルーゼまで加速していくが、いくつものビームに貫かれ爆散する。

 その爆炎に紛れ、進がライフルを乱射しながらクルーゼに接近する。

 咄嗟にシールドを構えたまま後退するクルーゼの目に映ったのは、次々とビームに貫かれていくドラグーンの姿。

 それに舌打ちしながらクルーゼは進にフラッシュエッジを投げつける。

 進に向かって接近するフラッシュエッジは、進があらかじめ投げておいたフラッシュエッジに切り裂かれ爆散する。

 そのままフラッシュエッジはクルーゼのもとまで行き、『ディスベアー』を切り刻む。

 残ったドラグーンを総動員してフラッシュエッジを破壊したクルーゼは『ディスベアー』をパージ。その瞬間、『ディスベアー』は爆発した。

 フラッシュエッジに気を取られていたクルーゼに向かって、進が突っ込む。

 今までで間違いなく最速、体への負担を完全に無視したスピードで残像を残しながら一気に接近する。

 振り下ろされたアロンダイトⅡを、クルーゼはビームシールドで受け止めた。

 だがあまりの力にビームシールドを貫通し、そのまま左腕を斬りおとす。

 クルーゼはワープで距離を取り、その隙にドラグーンが進に殺到する。

 今までクルーゼの周りを漂うだけでまったく動かなかったビームスパイクが、進を貫かんと迫る。

 後退しながら迫るスパイクを切り払う進だが、数に圧倒され右肩に、左足にスパイクが突き刺さり、脇腹を掠める。

 それでも痛みを無視してアロンダイトⅡで切り払い、あるいはライフルで撃ち落としていく。

 スパイクだけでなく通常のドラグーンまで入り乱れ、ついに進は回避に専念せざるを得なくなる。

 そんな進に、クルーゼは残った右腕だけでアロンダイトを構え、突進する。

 すべてがスローモーションになる。

 アロンダイトを構えて進に迫るクルーゼ。

 ドラグーンとスパイクを回避して致命的な隙をさらす進。

 

 そのままアロンダイトの切っ先は進に迫り、

 

 

 

『やらせるかよぉ!!』

 

 

 

 

 一夏がその間に割り込んだ。

 真打から二本の雪片に戻して二刀流に戻っていた一夏は、目の前で雪片をクロスさせアロンダイトの切っ先と合わせる。

 火花を散らしながら拮抗する雪片とアロンダイト。

 

 やがて、砕けたのは雪片だった。

 

 雪片によってわずかにそらされた剣閃は一夏の脇腹をえぐる。

 

『邪魔だ!』

 

 そのまま横薙ぎに振るわれたアロンダイトが、一夏を払いのける。

 

『し、進! 使え!!』

 

 その一夏の言葉と、進の目の前で漂っている雪羅によって進は理解した。

 右腕を伸ばし、雪羅を籠手のように装着する。

 

『ハァァァァアアアアアアア!!』

 

 雄たけびを上げ、アロンダイトⅡを振るう。

 一夏に気を取られていたクルーゼはとっさにアロンダイトを構えたが、鍔迫り合いにもならずにクルーゼのアロンダイトが叩き折られる。

 後退するクルーゼと、接近する進。

 進に向かって殺到するスパイクを、進はアロンダイトⅡを捨てビームマグナムを構えて応戦する。

 右腕の展開装甲と雪羅を緩衝材代わりにしてビームマグナムを発射。

 圧縮されたビームは残っていたスパイクをすべて破壊するが、爆炎に紛れて発射されたドラグーンが進の左腕とビームマグナムを破壊する。

 痛みも損傷も、すべて無視してクルーゼに迫る進と、近づけさせまいとドラグーンとビームライフルを乱射するクルーゼ。

 

 あと一歩という距離で、進は回避を捨て右手の雪羅を構えながらクルーゼに向けて突進する。

 突き出した右腕にビームが殺到する。

 

 そのまま爆発。

 

 勝利を確信したクルーゼの顔に笑みが浮かび上がる。

 

 

 

 次の瞬間には進がクルーゼの目の前にワープしてパルマフィオキーナⅡを突き出していた。

 

 咄嗟に応戦しようとライフルを突き出すクルーゼ。

 だが一歩遅く、突き出した手は進に掴まれ爆散する。

 

 衝撃でクルーゼの意識が遠くなっていく。

 

 最期にクルーゼが見たのは、アポロンを使って全てのドラグーンを破壊した進の姿だった。

 

 

 

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(……終わった)

 

 そう、終わった。

 雪羅を囮に、ビームが私を貫く前に雪羅を盾にして、爆発に紛れてワープしてからの急接近。

 紙一重の戦いだったけど、クルーゼにもう抵抗する術はない。

 核ミサイルは全て一夏たちが破壊してくれたみたいだし、デスティニーの量産機と戦っているセシリアたちは心配しなくても勝っているだろう。

 

「一夏……」

 

 ふらふらと、漆黒の宇宙に浮かぶ純白の機体に向けて進む。

 体中がボロボロだ。

 意識が朦朧としているし、ワープの使い過ぎで体が蝕まれているのがわかる。

 

 それでも、歩みを止めない。

 

「一夏……!」

 

 斬られた脇腹から血を流し、力なく宇宙を漂っている一夏に近付く。

 

『……し……ん?』

 

「一夏!! しっかりしてよ!!」

 

『……大……丈夫だ。俺より……お前の方がよっぽど重症じゃないか』

 

 意識がハッキリしてきたのか、一夏の言葉もハッキリとしたものに変わっていく。

 

『だから、そんな泣きそうな顔をしないでくれ。笑ってくれ』

 

「……うん!」

 

 今、私が笑えているのかどうかはわからない。

 だけど、一夏も笑顔でいてくれているから、きっと私はちゃんと笑いかけることができたのだろうと思う。

 

 遠くに、ラビット号が見える。

 私の大切な友達が待っていてくれる場所がある。

 

『……なんか、どっと疲れたな。濃い夏休みだよ。俺まだ宿題終わってない』

 

「じゃあ、帰ったら一緒にやろう? 二学期までもう少ししかないから、勉強会だね」

 

『……俺帰らなくてもいいかも』

 

 一夏の冗談に、二人で笑う。

 

 そう、全部終わったのだ。

 これからは、何でもない日常が始まる。

 くだらないことで一喜一憂したり、みんなと一緒に遊んだり、勉強したり。

 

 これからは……そんな日常が……始まるんだ。

 

「帰ろうか……一夏……」

 

『ああ、帰ろう。あの学園に』

 

 優しい一夏の声を聴きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 






 次回、最終回。

 第五十一話 『終戦あるいは終幕』
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