モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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第4次聖杯戦争
プロローグ


それはちょっとした運命のボタンの掛け違いから始まったあり得ざる物語

 

時は1980年代の日本の冬木市

60年に一度、この地で行われる大規模な魔術儀式、聖杯戦争が起きようとしていた。

7人のマスターが、かつてこの地球上で偉業を成し遂げた英雄の影法師、サーヴァントを率いて、最後の1組になるまで、殺し合いをする。

 

最後の1組になれば、万能の願望器、聖杯が与えられ願いを叶える事ができるという儀式だ。

7人のマスターの内、3人はその聖杯と聖杯戦争の実現化に関わったアインツベルン、間桐、遠坂の三家から選出され、残りの4枠は聖杯が選出した者に与えられる。

 

そして、本来ならばその4枠の内の1人は魔術のまの字すら知らぬ殺人鬼に与えられる筈であった。

だが、ここで運命が変わる。

聖杯が選んだのは聖杯戦争という大規模な儀式の様子を見に来た魔術師崩れの男であった。

 

実はこの様な事はそう珍しい事ではないのだ。

過去にも聖杯戦争を見に来た魔術師は大勢いた。

ただ単にアインツベルンの聖杯やサーヴァントという最上級の使い魔に興味を持った者。

時計塔の権力争いの真っ只中にいる者が参加するので、何か起こらないか監視する者。

顕現した聖杯を掠め取ろうとする者。

 

様々な目的を持った魔術師や魔術使いがこの聖杯戦争の開催時には集まる。

そして集まった魔術師や魔術使いが余った参加枠を手に入れることも多々あったのである。

 

今回はその枠をその男が手に入れただけの事であった。

 

 

 

 

「……どうしようか。」

 

適当に取ったビジネスホテルの一室で男は顎に手を当てて悩む。

それもそのはず、元々は見学しに来ただけの身。

念の為戦闘用の魔術触媒や礼装は持ってきてはいるものの、本格的に参加するとなればもっとキチンとした拠点が必要になる。

 

アサシンの様なこれと言って拠点が必要にならないサーヴァントを引けるとも限らない。

 

最善なのは無人の家を探し出して拝借する事だが、聖杯戦争に参加している遠坂はここ冬木のセカンドオーナー。

バレる可能性が十分ある。

 

人がいる家を借りるなんてもっと無理だ。

 

だとすれば手軽さから下水道に降りるのも手だが、呼び出したサーヴァントが王族や貴族に連なる場合、面倒なことになりかねないので出来れば取りたくない。

 

それならば、聖杯戦争参加を望んで冬木に来ている他の魔術師、魔術使いにマスター権を売るか?

いや、もし他のマスターにそれがバレたら厄介どころじゃ済まない。

運が良くて左手ごと令呪を奪われる、そしてかなりの高確率で殺される。

サーヴァントに追いかけられるなんぞ御免だし、敵に容赦のない魔術師、魔術使いが相手なら念の為で殺そうとしてくる。

 

どこかの陣営に取り入るか?

現在参加が確定してるのは御三家と時計塔のエルメロイ。

それなら、交渉用に先にサーヴァントを召喚していた方が良いか。

 

……何にせよ、早いうちにサーヴァントは召喚したい。

幸いにも召喚後でもマスター権は譲渡可能だ。

召喚したサーヴァント次第でどう動くかを決めるのが1番だ。

召喚する場所はここで良いか。

 

 

そう考えをまとめた男は徐に立ち上がり、部屋の床にチョークで召喚陣を描き始める。

サーヴァントの召喚陣なんて使う機会が無さすぎるマイナーな陣ではあるが、幸いにも秘匿されているわけではない。

今回の聖杯戦争を見に来るにあたって参考資料として持ち込んだ本の中に描かれている。

 

数分かけて陣を描き終えた男はチョークを捨てて、陣の前に立つ。

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

 

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝 三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

詠唱の途中から召喚陣が青い光を発する。

脈打つ様に段々と光は強くなり、詠唱の最後には目も開けられないほどの光が辺りを照らし、召喚によって使われた魔力の残滓が風となって吹き荒れる。

 

僅か一瞬、光に目が眩んで目を閉じたその一瞬で召喚は完了した。

 

「サーヴァント、キャスター。

貴方が我がマスターですか?」

 

ゾッとする様な美人だった。

まず目に映ったのはあり得ないほどの白い肌と長い白い髪、そして青い瞳。

服は白と黒をベースとした薄着で、所々にある青い部分が、肌の白さと相まって氷の様な印象を与える。

髪は黒いリボンで結われてポニーテールになっており、黒い十字の杖を携えている。

 

一瞬、その雰囲気に呑まれそうになったところで正気に戻り、思わず笑ってしまう。

雰囲気だけでわかる、ヤバいのを呼び出した、と。

 

「そうだ、俺がお前を呼び出した。」

 

男がそう言えばキャスターは薄く笑みを浮かべた。

 

「ではマスター、先に言っておきましょう。

私は貴方に仕える事はありません、貴方が私に仕えるのです。

私にとって貴方はマスターではなく、臣下。

そのつもりでいなさい。」

 

その言葉がドッと覆い被さってくる錯覚を受けた。

それを無視する。

 

「なるほど、だが仕えるべき相手の名前すら知らないのはどうかと思うんだが、キャスターの真名は?」

 

ピクリ、と一瞬だけキャスターの眉が動いた。

 

「いいでしょう。

我が真名はモルガン・ル・フェイ。

正統なるブリテンの後継者です。

そういう貴方は?

まさか仕える相手に名を明かさぬなどとは言うまい?」

 

真名が判明した事で詳細なステータスやスキル、宝具が確認できる様になった。

 

「これは失礼、俺の名前はカイ、生憎と家を追い出された身でね、家名は無いんだ。

で、さっきのはこれか。

『渇望のカリスマ』、初っ端からマスター相手にスキル使うかね?」

 

「意図して効果を弱めてありました。

その程度にも耐えられない愚図なら臣下以下の人形になってくれた方がやり易いので。

ですが、貴方が耐えてくれた様でなによりです。

ご褒美でもあげましょうか?」

 

その瞬間、モルガンの雰囲気がガラリと変わった。

氷の様なイメージから男という虫を誘う花へ。

男の頬に手を当てて、誘う様な文句を言う。

 

「やめておく。

手を出したら絡め取られそうだ。」

 

「……またもや合格です。

どうやら良いマスターに巡り会えた様で嬉しいですよ。」

 

そしてまただ。

先程の氷の様な雰囲気に戻る。

 

「それはそうとして、相談がある。

工房の場所についてだ。」

 

「ここではダメなのですか?」

 

「ホテルだからな。

防衛力に難ありだ、この部屋しか使えない。

フロアごと貸し切れば別なんだが流石にそんな金はない。」

 

「他人の家を使うのは?」

 

「聖杯戦争参加者にこの街のセカンドオーナーがいる。

オススメはしない。」

 

そう答えるとモルガンはベッドに腰掛けて足を組んだ。

 

「相談、と言う事は幾つか案があるのでしょう?

聞かせなさい。」

 

「1つ目は他の陣営と組む事。

特にこの地に縁がある参加者が3つある、恐らく予備の工房も持ってる筈だ。

手を組む代わりにそれを貸してもらう。

 

2つ目は下水道に降りる事。

広大な下水道の一角を工房化する。

人払いの魔術を仕掛ければバレる可能性も低くなる筈だ。

 

3つ目はキャスターのマスター権を誰かこの地に工房のある人物に売る事。

俺はおさらばだがな。」

 

「3つ目はあり得んな。

優秀な臣下をむざむざ手放す訳がなかろう。」

 

3つ目の提案を言った瞬間にそう否定してきた。

 

「……おお、そうか。」

 

「何ですか、何か言いたい事があるならハッキリと言いなさい。」

 

「いや、極悪非道な魔女ってイメージだったからついな。」

 

「否定はしません。

理由は先程言った通りです、他意はありません。」

 

まるで何かに言い訳する様なその言い方にまるで子供の様な印象を受ける。

コロコロと変わる印象にやりづらさを感じながらも話を進める。

 

「それで、どの案がいいと思う?」

 

「下水道は嫌ですが文句を言ってられる状況では無いでしょう。

1の準備を進めながら2を並行して行います。

仮に1が成功しても相手の知らない拠点があるのはアドバンテージになりますから。」

 

「良いのか?」

 

「生前はキャメロットからの追跡を躱すためにその様な場所で過ごす事も少なくありませんでしたからね、慣れてはいます。」

 

あっけらかんと言うモルガンに納得する。

 

「ところでマスター、貴方には聖杯にかける願いは無いのですか?」

 

「無いな、元々参加するつもりじゃなかった。

ただ単に最上級の神秘であるサーヴァント同士の戦いと顕現した聖杯を見るためだけに来たからな。

キャスターの願いは?

やっぱりブリテンへの復讐か?」

 

「いえ、復讐は生前のうちに済ませたのでそこまで。

願いはブリテンの支配です。」

 

「あの時期のブリテンなんて国としては最低限の形を為してるだけだったのにか?」

 

「…………何だと?

いや……待て。

そう言われれば確かに栄えていたのはキャメロットだけ…………」

 

一瞬だけ呆けた顔を見せたモルガンは暫く顎に手をあてるとブツブツと呟き始めた。

 

「……マスター、現代にはあの時のブリテンはどの様に伝わっている?」

 

ある程度考えが纏まったのかモルガンは男に質問を投げかけた。

 

「不作が続いていたのにも関わらず大規模な戦が何度もあったせいで物資も人手も足りない。

殆どが防衛戦や奪還戦だったから戦に勝っても得られるものは少ない。

どう考えても滅びに向かってた、って所か。」

 

「……元はと言えばヴォーティガーンがいたからだ。

奴がサクソンを招き入れる前に殺せば……いや、その前にブリテン内で争いが起こっていたか……成る程、誰が統治しようが変わらん結末か。」

 

フッ、と最後に諦めた様に笑うとモルガンは立ち上がった。

 

「気が変わった。

ブリテンの支配は止めておこう。

滅びゆく国を治めたいと思うほどの酔狂でも無いからな。

だが、そうなると目的が無くなってしまうからな。

その目的を見つける事が取り敢えずの目的だ。

 

聖杯にかける願いは……受肉とでもしておこう。」

 

後ろ向きとも言える言葉なのに自信満々に言うから男はつい吹き出してしまう。

 

「……ええい、笑うな!」

 

「悪い悪い、ついな。

まあ、目的がはっきりした様で何よりだ。

じゃあ、拠点を探しに行こうか。」

 

「っ…………覚えていろよ貴様。」

 

そう顔を赤らめながら睨みつけるモルガンはなんだか可愛かった。




モルガンのステータス
筋力 D
耐久 E
敏捷 C
魔力 EX
幸運 B
宝具 EX

異聞帯と違ってキャスターなので物理ステは1ランク下がり、魔力ステは1ランクアップ
スキルはおいおい説明していきます
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