モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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11話

聖杯問答から帰る途中に切嗣から資料を受け取り、拠点へと帰還。

そのまま、ベッドに腰掛けて資料を流し読んでいればモルガンは買ってきた本を手に取り、男の背に体を預けて読み始めた。

 

男はどこか不機嫌そうなモルガンの様子にとりあえず静観を決め込んで資料を読み続ける。

ペラリ、ペラリと紙を捲る音だけが響く。

 

その日はそのまま夜が更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一晩経ってモルガンの機嫌は元に戻ったらしくいつも通りな様子を見せている。

 

この聖杯戦争間でモルガンにセイバー関連の事を聞くと大抵面倒な事になると学習した男は昨日の聖杯問答の事は聞かないでおこう、と決意した。

 

「マスター、今回の聖杯戦争参加者の中に虫を使う魔術師、魔術使いはいるか?」

 

唐突にモルガンがそう聞いてきた。

 

「虫?

なら、間桐だな。

何でそんな事を急に?」

 

「結界内に魔術が付与された虫が侵入して来ている。

大抵は自動防御機構で駆逐しているが、数が多い。

いい加減鬱陶しい。」

 

モルガンが下水道の立体図を空中に浮かび上がらせる。

その図の様々な場所にバツ印がつけられていく。

そこが虫を排除した場所なのだろう。

 

どこかの入り口から入ってすぐの地点で排除されており、様々な場所に設置した拠点にまでは到達どころか近づけてすらいない。

とは言え数が尋常じゃない。

 

確かに天敵のいない環境で人の手によって育成されている虫はその数を爆発的に増やせるだろう。

だが、1000匹を何でもないかの様に使い潰せるとは限らない。

増やしたところで維持するのが最も大変だからだ。

 

だが、間桐は使い潰せるほどの虫を持っていると考えるべきだろう。

恐らく総数にして10万、場合によっては100万は下らないと男は予想した。

 

「だが、どうする?

恐らくだが、間桐邸には間桐のマスターは居ないぞ。」

 

「下水道は私達が抑えているのです。

なら、そのマスターはどう隠れようが地上にいるのは確か。

神代の魔術師の探知から現代の魔術師が逃げ切れると?」

 

それに、とモルガンは続ける。

 

「既に捕捉済みです。」

 

 

 

 

絡繰はこうだ。

間桐の魔術属性は水。

故に魔術行使には水はほぼ必須であった。

その水を何処から得ていたのか。

 

上水道?

否、そんなものを使えば水道会社に記録が残る上に虫にとって必要な栄養がほぼ無い。

つまりもう1つの水道、すなわち下水道である。

 

だが、聖杯戦争により下水道はキャスターの手に落ちた。

それを知りもせぬ間桐臓硯は聖杯戦争に長けた魔術師の仕業かサーヴァントに因るものかを判断するために虫を送り込んだ。

 

900匹余りを投入した結果、その全てが敵の姿を見る事も出来ずに排除され、その事実からサーヴァントであると判断した。

 

だが、サーヴァントが相手でも今のこの状況は困る。

故に勝って下水道を奪い返せれば上等だと、それを雁夜に伝えたのだ。

下水道に恐らくキャスタークラスのサーヴァントがいる、と。

キャスタークラスの厄介さを十二分に説明した上で。

 

それを伝えられた雁夜は自分でも確認する為に自身の虫を送り込む。

そして、下水道に入った虫の半数が撃破されたのを見て、無駄な消耗を避ける為に残った虫を退却させた。

 

しかし、モルガンの結界はただ単に迎撃用の物だけでは無い。

最も外側に侵入者を探知するだけの結界を張ってある。

この結界は相手に勘づかれ無い様に隠蔽も施されている。

 

その結界から十数メートル内に踏み込むと迎撃用の結界が張られているのだ。

案の定、探知結界に気付かなかった雁夜は撤退させた虫をも探知結界の中に入れてしまっていた。

そして、モルガンは元々迎撃結界を見て恐れをなし、一時撤退したり、今回の様に使い魔を撤退させた相手を追撃できる様に探知結界に入った相手には自動でマーキングをしておく様にしておいたのだ。

故に追える。

 

キャスターとして聖杯戦争に参加したサーヴァントの十八番は自身の工房というキルゾーンに誘い込んでの完封勝利である。

だが、今回はその十八番を敢えて捨てる。

 

他陣営は未だにセイバー陣営とキャスター陣営が組んでいる事を知らない。

攻めてこようとする敵を横から数的有利で殴れる。

キャスターは穴熊を決め込むという思い込みを利用するのだ。

 

なお、ここまでモルガンのやる気があるのと彼女の少し(自称)苦手な物が芋虫(を始めとする昆虫)なのは関係が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間桐雁夜の拠点はそこらのビジネスホテルの一室だ。

あの間桐邸に居たくない上に、間桐邸を囮にするという理由があったからだ。

 

その一室でベッドに横たわりながら雁夜は爺、臓硯に言われた事を思い出す。

 

「下水道にキャスターがいる。

キャスターの十八番は魔術工房を敷き、その防備を固め、他のサーヴァントを己の工房に誘い込んで殺す方法じゃ。

それ故に後に回せば回すほど工房はより厄介により強固になる。

 

それに間桐の魔術に下水道、もとい水は重要じゃ。

それを抑えられているのは痛い。

 

別にキャスターを倒せとは言わん。

じゃが、下水道は蟲達の重要な栄養源の1つ、それに貴様はまだどのサーヴァントも倒せておらん上に戦闘すら初めの一回のみ。

 

結果を出してない者にどうして期待できようか。

キャスターを倒すまでいかずとも痛手を与え、交渉の席に着かせ、下水道の一部を奪還すればそれで良し。

出来なくば腹を空かせた蟲達がどの様な事を始めるか分からんからのう。」

 

つまりは何とかしなければ桜ちゃんがどうなってもいい、って事だと判断すると脅してきた。

仮にハッタリだとしても、これを無視する訳にはいかない。

そう考えた雁夜は自身の蟲を使って偵察させたが、確かに半数が下水道に入って暫くの場所でやられた。

 

強ち嘘でもないらしい、と判断した雁夜は今夜にもバーサーカーで強襲する事にした。

夜までは体を休ませなければ、と考えてベッドに横たわっている。

 

眠気はあるのに眠れない。

変に意識が興奮してしまっている。

 

それもそのはず、初日の港での戦いは激情に駆られて衝動的に戦闘に加わったのに対して今回は全く関係のない相手に意識して襲わなくてはならない。

必要な事ではある。

だが、憎しみも何も無い相手をこれから襲う、と来て落ち着いていられる程一般人を辞めていないのだ。

 

そうしている内に夜になってしまった。

特に休めてもいない体を起こしてホテルから出る。

人目を避ける様に裏路地を進んでいき、1つのマンホールの前に着いた。

 

緊張か興奮か、バクバクと鳴る心臓を抑えつけて、マンホールに手を掛けた。

 

「跳べ。」

 

ふいにそんな声が聞こえた。

バーサーカーが実体化し、辺りを見回すが誰も居ない。

瞬間、地面に魔術陣が浮き上がり、その動きを縛り付ける。

 

そして、魔術陣が光ったと思えばその場から雁夜とバーサーカーは居なくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強制転移は成功した。

バーサーカーとそのマスターは冬木の海岸へと転移させられた。

何もない海岸、足元には波が当たる。

 

そして、そこにはセイバーとキャスターが待ち構えていた。

 

「セイバーにキャスター!?

それにここは!?」

 

2人は海の上に何でもないかの様に立っている。

湖の精霊の加護による効果だ。

その2人の姿を視認したバーサーカーが雁夜から魔力を吸い上げ、吠える。

 

それに苦しみながらバーサーカーに指示を出す。

 

「キャスターだ!

キャスターを狙え!」

 

「ほう、素人にしてはなかなか良い指示だ。」

 

そう言ってキャスターは後ろに下がり、セイバーが前に出る。

湖の精霊の加護があるセイバーとキャスターは例えそこが沼だろうが水辺であるなら戦闘に支障はない。

 

対してバーサーカー、その様なスキルがあるか無いかは不明だが、周囲に物のないこの場では物を持って宝具化するなど、それこそ砂や水を手に乗せて宝具化し投げつける程度しか出来ない。

この辺りに流れ着いていた流木などは既に撤去済み。

 

案の定、バーサーカーは水の上に立てていない。

とは言え、狂化のランク次第では水に入りすぎる事を躊躇うだろうし、そんな事をすればマスターが制止するだろうからそこまで沖には出られない。

 

だからこそ、比較的浅瀬でバーサーカーの機動力を削ぎつつ戦うだけでいい。

 

予想通り、バーサーカーは砂を手に含んで宝具化。

駆けながらそれをキャスターに投げつけるが、キャスターは水の壁を作って片手間に防ぐ。

 

それでも今度は海水を手に含ませるが、セイバーが突っ込んでくる。

その攻撃を避けて間合いを取ろうとするが、水と砂に足を取られて思うように動けない。

 

そこにキャスターの魔力弾が撃ち込まれる。

海水を弾き、相殺しついでにセイバーにも投げるが風で容易く受け流される。

 

完全にバーサーカーの分が悪い。

それを見た雁夜は即座に撤退を決めた。

 

「令呪を以って命じッ」

 

だが、それは叶わない。

何処からか飛んできた銃弾が雁夜の脇腹を貫通した。

撃ったのはカイだ。

 

「運のいい奴だな。

偶然展開中だった蟲に当たって弾丸の軌道が逸らされた。」

 

そう呟いてスコープをもう一度覗き込む。

既に蟲が壁の様に展開されていて視認ができない。

まだ何処から撃ったのかは分からない様だが、2度目以降となればそうはいかない。

変に外してバーサーカーをけしかけられても困ると判断して射撃は止める。

 

バーサーカーはあの2人相手によく善戦している。

とはいえこのままなら倒されるのは時間の問題。

今ので気を失っててくれれば楽なんだが、と考えたところでバーサーカーが方向転換してマスターを抱え上げた。

 

そしてそのまま去って行ってしまった。

 

「しくじったなぁ。」

 

今回の作戦、狙ったのはバーサーカーではなくバーサーカーのマスター。

バーサーカーは港で過剰に反応していたキャスターとセイバーで抑えて貰い、その間にマスターを狙撃する、という作戦だった。

 

その為に態々バーサーカーにとって不利で此方に有利な環境を設定して、そこにバーサーカー達を招待した。

狙いはバーサーカーであると誤認させる為に。

 

持っていたスナイパーライフルを解体してスーツケースに仕舞い込む。

キャスターに念話で撤収を指示して、男はその場から去って行った。

 

 

 

 

 

その後、城へと戻ったセイバーは自身に与えられた個室で思案していた。

あのバーサーカー、私の剣の切先を見極めて回避していた。

偶然だとは思うが、もしそうで無いのなら……あのバーサーカーの正体は私に縁のある人物なのか……?

と。




この後の展開どうしよう
せや、バーサーカーと戦わせたろ
で、バーサーカーハメ殺すなら何もない海岸に誘き寄せるんが1番だよな?
でもそうなるとバーサーカー一方不利やし、まだ生きてて貰いたいし
バーサーカー、アロンダイト使えたやん!
調べるとアロンダイト使う為にはその他の2つの宝具封印せなダメやん!

まだ正体明かすには早いな
でもそうすると一方不利は変わらんから即座に撤退させよ←イマココ

因みに臓硯が蟲を何匹か撤退させてたら間桐邸強襲からの桜ちゃん魔女の弟子になるルートが解放されてたぞ
なお、その場合バーサーカーからめっちゃ狙われる事になる


間違いなく過去最高の総合評価なのに対戦相手が悪すぎて1回も日間1位になる事なく日間10位圏内どころか日間ランキングから外れてた悲しみよ
高評価くれて日間1位に押し上げてくれてもええんじゃよ?
というか感想も評価も下さい(ドゲザー

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