モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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13話

イスカンダル達が去って行った後のキャスター陣営の拠点はまあまあ荒れていた。

迎撃に使用した貯水池やイスカンダルが通った通路はチャリオットが走ったせいで床はボコボコ、ゼウスにまつわるという逸話のせいで放たれた雷によって拠点にかけられた魔術に綻びが出来てしまっている。

 

最後にイスカンダルが出て行った排水口など爆発のせいで埋まってしまっている。

更にはあそこまで派手にやったせいで、今まではあった拠点が不明というアドバンテージが消失した。

 

だが悪い事ばかりではない。

ライダーが尻尾巻いて逃げたという事実がモルガンの魔術工房の中は堅牢そのものである証拠になった。

下手に攻め込んでくる奴はいなくなるだろう。

 

何より今回で荒らされた範囲など工房全体から見て僅かな範囲でしかない。

だからこそ荒れ具合に対してそこそこ、という評価に留まっているのだ。

 

取り敢えずイスカンダルに拠点を強襲されて撃退した事はセイバー陣営にも報告しておいた。

 

被害は微小、拠点防衛の観点から見てもなんら問題ないと判断したモルガンは予定通りに間桐邸の強襲を行えると判断し、男もそれに従った。

 

そして、その夜。

2人は間桐邸の地下にいた。

魔術付与されていない虫があちこちに巣食っており、モルガンはそれを見る毎に駆除していった。

 

「……なぁ、キャスターって虫が苦手なのか?」

 

「何を根拠にその様なことを?

確かに芋虫はほんの少しだけ苦手ですが、それ以外の虫は苦手ではありませんが?」

 

若干早口になりながらそう言うモルガン。

男は苦手なんだな、と察した。

 

「まあそれなら別に良いんだが。」

 

「それよりそろそろ時間でしょう?」

 

モルガンにそう言われて男は腕時計を確認する。

先に示し合わせてあった決行時間まで後5分を切っていた。

セイバーと切嗣が先に間桐邸へ強襲、その後にモルガンとカイが地下から地面をぶち抜いて挟み撃ちにするという作戦だ。

 

「だな、準備を頼む。」

 

男がそう言えばモルガンは頷いて、魔力を高めて術式を編む。

魔力槍だが、爆発する様にするのではなく、貫通力を高める。

 

「あと30秒。」

 

その魔力槍に魔力を込めて威力を高めていく。

 

「10秒………………5秒、4、3、2、1、0!」

 

男のカウントに合わせてモルガンが槍を射出した。

すぐさま槍は地面を貫通して、地上の間桐邸をも貫通。

夜空が確認できた。

 

「思ったよりも軽く抜いたな。

地下室でもあったか。」

 

槍を放ったモルガンがその手応えから予測を立てる。

空いた穴から蟲が大量に地下へと流れ込んできた。

その様子に一瞬、モルガンの顔が強張り、次の瞬間には蟲は魔力光で一掃されていた。

 

「早急に終わらせましょう。

こんな所に長居はしたくありません。」

 

魔術で男と自身を宙に浮かばせながらそう言って穴を進み始めた。

穴の先は石造りの地下室だった。

魔術工房、というよりも地下墳墓と言う方が合っているだろう。

 

壁や天井、床全てが蟲で覆い尽くされている。

男とモルガンはその全てから殺気を感じていた。

 

「気持ち悪いな。

焼き尽くすか。」

 

そう言って男は自身の魔術礼装である魔弾、弾丸に焼却や発火などの術式を付与したものが入ったマガジンを装填した自身の拳銃を構える。

 

「……いえ、少し待って下さい。」

 

だが、モルガンはそれを止めた。

その場で腕を振るえば、モルガンの視線の先にある蟲の山が焼き尽くされる。

その中から出て来たのは

 

「子供か?

こりゃまた典型的な魔術師の家系らしいな。」

 

紫色の髪をしたまだ幼い女の子が全裸で蟲の中に埋まっていた。

先程の槍の衝撃でだろうか、気を失っている。

 

モルガンはその子供を抱き抱えてマジマジと観察を始めた。

 

「どうした?」

 

「この子供、生まれ持ったにしては中々の魔術回路の量と質だ。

才能があるな。」

 

「…………おい、まさか育てるとか言い出さないよな?」

 

「さてな、それは保留にしておこうか。

先にやるべき事はこっちだ。」

 

そう言ってモルガンは子供を目の前に浮かばせる。

そして左手で何かを掴む動作をした瞬間、蟲が急に騒めきだし、襲いかかって来た。

 

それに対してモルガンは防御魔術を発動して蟲の雪崩を防いだ。

 

「少し集中する、この鬱陶しい蟲の群れは頼むぞ。」

 

「女王様の仰せのままに、ってな。」

 

男は冗談まじりにそう答えて、拳銃から魔弾を吐き出させる。

狙いのつけられていないそれは、天井や壁、床に着弾すると同時に周囲を発火させた。

燃えた蟲から火がどんどん燃え移っていく。

 

本来なら燃え始めても下水道から水を汲み上げて消火するのだが、今は下水道はモルガンの魔術工房となっている。

その為、消火することも出来ずに、蟲の群れは火に包まれていく。

 

「捉えた。」

 

地下室全体が火に包まれた所でモルガンがポツリとそう呟いた。

直後に何かを掴む様に握っていた左手を更に中にあるものを握りつぶす様に力を込めた。

ぐじゃり、と何か水っぽい物が潰された様な音がした。

 

その途端、火に包まれてもまだ動こうとしていた蟲達の動きが止まり、完全に燃え尽きた。

 

「この子供の心臓の辺りに蟲達の主がいたからな。

握り潰した。

場所が場所だった上にそいつも極小の蟲だった上に体中を逃げ回ってたんでな、少し手間取った。」

 

杖の1振りで地下室の消火をしたモルガンはそうやって事もなさげに説明をした。

 

「鬱陶しい蟲も主が居なくなった以上、出てこまい。

上へ行ってバーサーカーを倒してそれで終わりだ。」

 

そう言いながらモルガンは女の子を何処からか出した蒼い布を服がわりに体に巻いて下水道へと降ろした。

その様子に男は、最低でも聖杯戦争中は面倒を見る気だなと考えた後に思考を切り替える。

 

地下室からは階段が地上へと伸びている。

その先へと飛んでいけば、扉があった。

扉の向こう側からは戦闘音が聞こえて来ている。

 

どうやらまだ戦闘は続いているらしい。

扉を開ければ、その先で不可視の剣と宝具化したであろう鉄パイプの様な物でセイバーとバーサーカーが争っていた。

それを見たモルガンが素早く男の隣から離れて魔力弾を撃ち込んで戦闘に加わった。

 

「間桐臓硯が急に死んだ。

そっちの仕業か?」

 

あちこちに浅い切り傷をつけた切嗣が男に話しかけて来た。

今はバーサーカーのマスター、雁夜が操っていると思われる蟲の相手をしているが、男に話しかけられる程度には余裕がある様だ。

 

「ああ、多分な。

そっちはどうだ?」

 

「セイバーは見ての通りだ。

後はバーサーカーのマスターだが、どうやら魔力が全然足りていない様だ。

このままでも向こうが勝手に自滅するだろう。

だが、」

 

「令呪か。

後2画の切り方次第では突破されるかもな。

令呪を切られる前に終わらせよう。

その本人は?」

 

「庭だ。」

 

蟲の群れに魔弾を撃ち込んで燃やし尽くした男は拳銃のマガジンを替えて備える。

新手の蟲はやって来ない。

2人で庭に出てみるが、やはり攻撃は来ない。

罠か、待ち構えてるのかと警戒しながら庭を探索するが、結局蟲どころか雁夜の姿すら見つけられなかった。

 

「逃げたか?」

 

「かもな、臓硯が殺されたのを見て怖気づいたか……もしくは連れ去られたか、だ。」

 

「誰が、何のために態々そんな事をする?」

 

「既に敗退した奴。

後ろ盾を無くした間桐雁夜の新しい後ろ盾になって聖杯を狙う、とか。」

 

「……言峰……綺礼。

あり得ない事では無いか。

まあ、それは後で確認しよう。」

 

男2人がそうして話している間に、いつの間にか屋敷からの戦闘音は消えていた。

 

『令呪による転移で逃げられました。

バーサーカーのマスターの蟲に付けられていたマーキングも蟲が死んでしまったので追えません。』

 

「バーサーカーにも逃げられたらしい。

同じやり方で行き先を追うのも無理だ。

どうやら俺らが殺した蟲がマーキングした蟲だったらしい。」

 

「……仕方ない、今日はこれで終わりだ。

明日から仕切り直そう。」

 

その直後にサーヴァント2人が合流。

セイバー陣営は乗って来た車で、キャスター陣営は通って来た穴から拠点へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここは?」

 

間桐桜が目を覚ましたのは、いつもの蟲蔵や自室では無かった。

蝋燭の様な灯りがコンクリートの無機質的な壁や天井を照らしている。

自分はベッドの上に横になって寝ていた様だ。

こんな場所は知らない。

 

何があったのかを思い出そうとする。

確か、あの時は少し焦った様なお爺さまに連れられていつも通り蟲蔵に放り込まれた。

その後はいつも通りにされていたけど…………その後から思い出せない。

 

寝かされていた部屋はベッドと机、椅子、そして部屋を照らす灯りがあるだけ。

人も居ない。

出口と思わしき扉が一つある。

 

そう言えば私の服は今日は脱ぐ暇が無くて、蟲に破かれて裸だった筈なのに、いつの間にか青色のワンピースを着せられている。

こんな服は持ってなかった筈なのに。

 

その事実に首を傾げていると扉が開いた。

入ってきたのは金髪の男の人と銀髪の女の人の2人。

男の人は何処か困った様な顔をしていて、女の人は優しそうな笑顔を浮かべていた。

 

「おじさん達は?」

 

「おじ……せめてお兄さんって呼んでくれ。

聖杯戦争は知ってるか?」

 

「うん。」

 

「その参加者だ。

お兄さんがマスターで、こっちのお姉さんがサーヴァントだ。

君の家を襲った時に君を見つけて連れて来た。」

 

「じゃあ、雁夜おじさんは死んじゃったの?」

 

「いいや。

死んだのは臓硯の方だ。」

 

「お爺さまが?

本当に?」

 

「本当ですよ。

貴方の心臓に寄生していた蟲を殺しましたから。」

 

明らかに子供らしからぬ落ち着き様で間桐桜は話を続けていた。

その桜を相手にモルガンは笑顔で接する。

ベッドに座っている相手と視線を合わせる為にしゃがんで話し出す。

 

「貴方には幾つかの選択肢があります。

1つ目はあの間桐の家に戻る事。

2つ目はこれから雁夜おじさんと過ごす事。

3つ目は私達と過ごす事。

4つ目はこのどれでも無く、1人でこれから生きていく事。」

 

「…………」

 

それを聞いた桜は一瞬目を見開くが、すぐに俯いてしまった。

 

「急に聞かれても分かりませんよね。

決まるまで、もしくは聖杯戦争が終わるまでは貴方を連れて来た私達が貴方の面倒をみましょう。

それで良いですか?」

 

そうモルガンが聞けば桜はコクンと頷いた。

 

「では暫くの間宜しくお願いしますね。

貴方の名前は?

私はちょっと名乗るわけにはいかないのでキャスターと呼んで下さい。」

 

「…………桜、間桐桜です。」

 

「ではサクラ、改めて宜しくお願いします。」

 

こうして地下のキャスター陣営の拠点に1人同居人が増えた。




無駄に悪運だけは強い雁夜おじさんは若き外道麻婆に連れ去られて窮地は脱しました(その先が地獄では無いとは言っていない)

臓硯さんはあの世へ

桜ちゃん魔女の弟子ルート解放

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