モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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20話

 

「我と対峙するは真の英雄ただ1人で良いと言ったはずだが……まあ良い。」

 

現れたアーチャー、ギルガメッシュは2人の姿を見下ろしながら、腕を組む。

 

「……ほう?

セイバー、貴様正しさだの何だのとほざいていた割に聖杯を見た瞬間にそうも目の色を変えるか。

その鉄仮面にも隠せぬ欲望を見せるとはな。

全くもって貴様は極上の道化よ。」

 

その言葉にセイバーはギリ、と歯を鳴らす。

馬鹿にされているのだ。

怒りを隠す事無く、睨み付けるセイバーに対してギルガメッシュは涼しい顔のままだ。

 

「良いぞ、セイバー。

貴様には我の寵愛を受ける権利をやろうではないか。」

 

ここで一瞬、うん?と首を捻ったのはモルガンだ。

妖精眼から読み取れるギルガメッシュの感情は純粋な好意だ。

いや、まさか、とある考えが頭をよぎるがすぐに頭から捨てた。

 

「剣を捨て、我が妻となれ!」

 

と思ったら捨てたはずの考えが豪速球で返ってきた。

 

「英雄王、私は一旦席を外すか?」

 

「構わん、そこにいろ。

貴様はこやつの親族として我とセイバーの馴れ初めをその眼に焼き付け、後世に伝えるのだ!」

 

戦闘の空気が何処かにいったので、即座に一旦場を離れようとしたが、即刻却下された。

思わず眉間を揉む。

そんなモルガンに見向きもせずにセイバーはギルガメッシュに噛み付く。

 

「馬鹿な……何のつもりだ!?」

 

「理解は出来ずとも歓喜は出来よう。

喜べセイバー、他ならぬこの我が貴様の価値を認めたのだ。」

 

セイバーの頭の中は混乱の極みだった。

一体どんな策略を仕掛けようとしているのか。

今の時点ではアーチャーが本気で自分を妻として迎え入れようとしているとしか考えられない。

もし、本当にそうだとしても私は聖杯を手に入れるまでは止まれないし、そもそも私自身も妻を持つ身。

 

そして、これは聖杯戦争。

聖杯を求めて英雄が集う戦場。

そこで私に求婚などをするという事は奴にとって私は英雄ではなく、1人の女でしかないという事。

耐え難い侮辱だ。

 

「奇跡を叶える聖杯などと、そんな胡乱なものに執着する理由がどこにある?」

 

「……なんだと?」

 

「下らぬ理想も、誓いとやらも全て捨てよ!

これより先は我のみを求め我のみの色で染まるがいい。

さすれば、貴様にはこの世のありとあらゆる快と悦をその身に授けてやろう。」

 

自分の想いも何もかもを下らないと一蹴され、それどころか快楽に溺れろと言わんばかりの台詞にセイバーの怒りがピークに達する。

ふざけるな、と怒鳴ろうとしたところでセイバーの目の前に手が出される。

 

モルガンだ。

 

「英雄王、此奴は頑固でな。

捨てろと言われてそう簡単に捨てられる奴ではない。

つまり、だ。

此奴はこう言いたいのだ。

この私が欲しければ、私達2人に勝ち、勝者として奪ってみせろ、とな。」

 

何を勝手なことを!と言いかけたが、それを言う前に上機嫌そうなアーチャーの笑い声が響いた。

 

「ふはははははははは!!

良かろう、その愚直なまでの愚かさも纏めて愛でてくれよう!

さあ、剣を持て!

構えるが良い!

貴様の夫となる男がどういうものかをその身に刻み込んでくれるわ!」

 

恐らくはこれが狙いだったのだろう。

言いたい事が無いわけでも無いが、これ以上、アーチャーと無駄な話をするのも御免だ。

今は有り難く思おう。

 

「すまないキャスター。

だが後で話がある。」

 

小声で感謝と遺憾を伝えた。

正眼に剣を構え、モルガンも杖を構える。

それを見たアーチャーは港で見た時の様に黄金の波紋を空中に出した。

そして、その中から無数の武具が顔を出す。

 

「まずは小手調べだ。

この程度で音を上げてくれるなよ!?」

 

武具が雨の様に放たれた。

モルガンがセイバーの後ろに回る。

狙いが荒いこの射撃ならばセイバー1人でガードし切るのは容易い。

槍状に変えた杖で空中を突き、刺撃をアーチャーの真正面へと飛ばす。

そこから魔力弾を放ち、更にもう一撃、アーチャーの真上へと刺撃を飛ばした。

 

「ハッ、甘いわたわけ!」

 

だが、その全てが新たに波紋から出た盾によって容易く防がれる。

 

「流石にこの程度は容易いか。

ならば、少し精度を上げてやろう。」

 

波紋の向く方向が修正される。

そして、次の武器が波紋から顔を出す。

 

「そら、第二撃だ。

足掻いてみせよ。」

 

またもや武器が放たれた。

だが、今度は時間差を付けた上に幾つかの武器はカーブしてセイバーの後ろに回ったモルガンに当たる様な軌道を描いている。

 

魔力波を出し、壁の様にして外側から狙ってくる武器を全て弾く。

 

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!!」

 

その分、先程よりも防御が楽になったセイバーが剣に纏う風を飛ばして攻撃。

それに続く様にモルガンの出した魔力波がその矛先をアーチャーへと変えて攻撃に転化される。

だが、アーチャーは1つ剣を取り出すとその攻撃全てを一撃で容易く薙ぎ払った。

 

「ふむ、これでもまだ容易く反撃までしてくるか。

良かろう、少し本気を出してやる。」

 

そう言うと先程までとは比べ物にならない程の波紋が現れ、武器が出て来る。

 

「いつまで耐えられるか見ものだな?」

 

そして、第三波が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対する公民館地下。

カイと切嗣のコンビが対峙するのは元聖堂教会代行者の言峰綺礼。

身体能力、戦闘技術、精神性全てが並外れていなければなる事の出来ない聖堂教会の主戦力。

 

その言峰綺礼が指に挟んだ小さな持ち手へと魔力を注ぎ、刃を出した。

聖堂教会の専用礼装、黒鍵。

それが片手に3本ずつ、合計6本展開された。

 

そして駆け出す。

先に対応したのは切嗣だ。

キャリコから弾丸を吐き出し、迎撃するがその全てが黒鍵と綺礼の鍛え抜かれた肉体によって弾かれる。

 

次に動いたのはカイ。

P90から吐き出されたのはたった1発の弾丸。

嫌な予感を覚えた綺礼はそれを避けた。

避けられた弾丸は反対側の壁へと当たると、爆発した。

規模は小さいものの、威力は綺礼の体にダメージを与える分には十分。

何よりも、あの弾丸が多数当たれば、踏ん張る事も難しくなるだろう。

 

その予想通り、カイは連射を始めた。

受けるわけにもいかず、円を描くように走りながら弾丸を避けていく。

更に悪辣なのは避けられる事を前提として足元に放っている事だ。

これにより、弾丸を避けて直撃を回避しても爆発の余波が綺礼を襲う。

そして僅か一瞬、体勢を崩したその瞬間に切嗣が虎の子である起源弾をトンプソン・コンテンダーから放った。

 

その威力は銃器には詳しく無い綺礼にも分かる程度には強力な一撃だった。

体勢を崩している為、避ける事自体は可能だが後が続かない。

黒鍵で受け止めるべきだと判断するが、代行者としての本能が警報を鳴らす。

 

本来なら魔力を込めて強化すべき所を逆に魔力を弱める。

その代わりに黒鍵を弾丸に対して斜めにする事で反射させようとした。

だが、弾丸が黒鍵に当たると同時、受け止めた黒鍵だけで無く全ての黒鍵が砕け散った。

 

それと同時に綺礼の腕の魔力回路が暴走し、血管が切れた。

だがむしろ、その程度で済んだと判断すべきだろう。

幸いにも戦闘に対する支障は軽微なもの。

切嗣の持つ片方の銃から放たれる弾丸は要注意である事を念頭に置き、再度黒鍵を展開させた。

 

それに対して切嗣は苦々しい表情をする。

言峰綺礼が全開で魔力を黒鍵に込めていたら確実に倒せていたし、カイに対して自身の切り札がどのような物であるのかというヒントを余計に与えずに済んだはずだったのだ。

 

カイが射撃している間にキャリコのリロードを終わらせていた切嗣が弾丸を吐き出させ、カイがリロードに入る。

だが、綺礼はそれを見て一気に距離を縮める。

2人とも厄介だが、脅威度が高いのは自身に条件が整えば致命傷を与えられる切嗣よりも通常攻撃から自身にダメージを与えられる弾丸を撃てるカイだ。

 

黒鍵で必要最低限の防御をしながら、カイに近づく。

カイがリロードを終えると同時に懐に潜り込む。

打撃の構えを取った瞬間に迎撃では無く防御に移り、更に衝撃を逃す為に後ろに跳ぼうとしているカイの判断は正しい。

だが、それよりも先に自身の技が決まる。

掌底がカイの胸、心臓を狙って放たれた。

 

腕に防御されるが、攻撃を受けたカイの体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

だが、その手応えに綺礼は違和感を覚えた。

 

魔力による強化をした一撃、いつもならほぼ確実にガードされた腕を破壊して肋骨や肺、心臓にまで衝撃が届いた筈だ。

だが、腕の骨が折れた感覚すら無い。

精々ヒビが入った程度だろう。

更には壁に大きな陥没が出来るほどに叩き付けられたカイは、倒れる事なくその場で膝をついた。

咳き込みながらも反撃の弾丸を放って来る。

 

ダメージ自体はある。

だが、その威力の大半が軽減されている。

自分と同じ様な武術を齧っているのなら、それと分かる。

だが、そうでは無い。

だとすれば考えられるのはキャスターの手によってなされた魔術的防御。

その中核となるのは?

 

考えられるのはネックレスなどのアクセサリー、服そのもの、もしくは肉体に刻んだという事もあり得る。

いずれにせよ、防御自体を打ち砕くのは難しいだろう。

そうなれば狙いは変えるべきだろうか。

衛宮切嗣を先に無力化し、残ったキャスターのマスターを殺す。

これが最善だろう、と判断した。

 

カイの持つ銃の弾丸の数は先程の爆破弾を掃射していた時に把握している。

リロードのタイミングで衛宮切嗣に接近する事は容易い。

唯一、衛宮切嗣のあの弾だけは警戒する必要があるが、あれは一発撃った後にすぐにもう一発放つ事は出来ない。

対応は可能だ。

 

カイのP90から吐き出される弾の数をカウントしていく。

後20、10、5、0

ここだ。

 

弾丸の雨が止んだ所で一気に駆け抜ける。

予想通り、切嗣が弾丸を放とうとする。

それよりも先に3本の黒鍵を投擲、避けるか迎撃するか。

避けた。

 

そして、弾丸を放った。

それを必要最低限の動きで避けて、一気に接近。

 

Time Alter(固有時制御) Double Accel(二倍速)

 

接触までの僅かな間に切嗣が固有時制御の詠唱を唱える。

その直後、切嗣1人だけが早送りされたかの様に驚異的な速度で動き出した。

顔面に飛んできた蹴りを避けて、キャリコで反撃しながら距離を取る。

距離が開けた所にカイが横から掃射。

 

足元に狙って放たれる弾丸を避けるが、今度のは爆破では無く放電。

大したダメージにはならない、だがその電撃で一瞬、体が麻痺して動きが止まった。

そこに2倍速でリロードを終えた切嗣の起源弾が放たれた。

 

避けられないが対応は可能。

黒鍵では無く、その腕を残った最後の一画の令呪を使用して強化、受けた。

だが、予想に反して弾丸は容易く手の肉を抉り、更に起源弾の効果が発動。

今度こそ右手が使い物にならなくなった。

 

ここで僅かに3人の動きが止まった。

 

 

右腕を失ったのは痛いが、大凡分かった。

衛宮切嗣の武器は今の2倍の速度で動く魔術とこの弾丸。

キャスターのマスターは銃から放たれる様々な魔術加工の施された弾丸。

どれ程の種類があるのかは知らないが、やはりこちらの方が厄介だ。

衛宮切嗣の動きは初めから2倍で動くと想定していれば対応は容易い。

狙いは変えずに先に衛宮切嗣を下す。

 

 

固有時制御も起源弾も使った。

何とか押してはいるが、あの威力、一撃貰えば致命傷になるだろう。

アヴァロンを体に埋め込んでいる事で即座の回復により無効化は可能だが、奴には見せたくない。

キャスターはモルガン、アヴァロンを奪ったという逸話がある。

そういう宝具を所持していてもおかしくはない。

最悪の場合、体に埋め込んだアヴァロンを引き抜かれる。

幸いにも3倍速はまだ見せていない。

このまま一気に終わらせる。

 

 

まだ見せてないのは凍結、火炎、貫通、拡散の4種類。

爆破は残り2マガジン、電撃は3。

後はナイフのみ。

言峰綺礼を倒し、ギルガメッシュが敗退したら即座に衛宮切嗣とは敵だ。

可能な限り余力を残した状態で言峰綺礼を下したいが……やはり腐っても元代行者。

そう簡単には勝たせてくれなさそうだ。

 

時間にして数秒。

僅かな睨み合いの間に3人は思考を回す。

そして第二ラウンドが始まった。




累計ランキング200位以内にまで入ってってたわ
いや、ホント有難いです

6章後半を読んでモルガン様ハッピーエンドお祈り感想が増えて思わず愉悦方向に舵を切ろうとしたのを止めました。
6章後半に関しては、おのれきのこ!としか言いようが無い……

感想、評価待ってまーす
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