モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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モルガンさん家の日常

第四次聖杯戦争により発生した冬木大火災からの復興が進む冬木市。

とはいえ、それは川を挟んだ反対側に住む人達にとっては半ば他人事であり、物騒な事件は冬木大火災後はなりを潜め、日常が戻ってきていた。

 

それはこの冬木に根を下ろした嘗ての聖杯戦争参加者も同じであった。

 

まずは衛宮切嗣。

冬木大火災から助け出した士郎と言う子供、そして聖杯戦争の途中から入院していた久宇舞弥の2人を迎え入れ、仮の拠点として確保していた日本家屋にそのまま住み着いた。

ボロボロだった母屋は3人で手分けして直し、雑草まみれだった庭は草を刈り、どうにかして人が住める家へと姿を変えた。

幸いにも金は衛宮切嗣と久宇舞弥が傭兵時代に貯めたものがあり、平穏に暮らす分には十分だった。

 

次に言峰綺礼とギルガメッシュ。

第五次聖杯戦争への参戦を決めている2人は、特に準備する事もなく過ごしていた。

第四次聖杯戦争の復興に言峰綺礼が忙しかった事もあるし、ギルガメッシュが準備などする必要ないと判断していたのもある。

言峰綺礼は父の跡を継いで神父になった敬虔な信徒であると思われているし、新たに冬木教会の住人となったギルガメッシュは冬木市商店街全体に景気良く金を落とし、子供達には優しく、そして何よりカリスマA+である。

これらが相まっていつの間にか冬木市に完全に馴染んでいた。

 

そしてカイとモルガン。

家名をルフェイとして、旧間桐邸にカイ、モルガン、桜の3人で住み着いた彼らはまずは家に大穴が開き、庭は雑草で薄暗く、壁にもツタが這い、ガラスは何箇所か割れてしまっている家の改築から始める事にした。

とはいえ、モルガンが魔術で一晩で改築を済まし、周辺住人には何日かかけて今の状態へと改築したという暗示を入れる事で解決したのだが。

 

その結果、幽霊屋敷と見間違う程の荒れっぷりだった旧間桐邸は綺麗な洋館へと姿を変えた。

因みにモルガンは初めは小さな城にしようとしていたのだが、カイに止められてこの形になった。

 

これはその日常の記録。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意外に思うかもしれないがモルガンは普通に料理が上手い。

というのも簡単な話だ。

モルガンの得意な魔術は空間と水に関わるものであるが、モルガンは自他共に認める天才である。

 

毒や薬などの作製もお手の物。

その為にはしっかりと原材料を確かめ、適切な方法で処理し、適切な量を決められた順番通りに入れ、温度管理をしなければならない。

これは要は科学者がそれなりに料理ができるのと同じ理由である。

 

そんなモルガンが料理の材料を買いに行くのは冬木商店街であった。

 

「ふむ、店主。

今日のイチオシは何です?」

 

「おお、奥さん。

今日は活きの良い鯛が入ったんだ!

ちょっとばかし値は張るが味と新鮮さは保証する!」

 

「構いません。

ではそれを。」

 

「毎度あり!

また寄ってくれ!」

 

そして予想以上に馴染んでいた。

初めの数回は様々な国を訪れていたカイが着いていたものの、そのカリスマ性と話術、妖精眼を以ってして僅か数回のうちに冬木市に馴染んでいた。

 

今のモルガンは冬木の住民にとっては事故で家に大穴が空いてしまって、人が居なくなった間桐邸に引っ越してきた外国人夫婦の美人な若妻なのだ。

商店街での買い物を終えたモルガンは自身の家へと帰る。

今日は珍しくギルガメッシュとは出くわさなかった。

 

商店街を歩いていれば暇なのか高確率で出くわし、その度に妹、アルトリア・ペンドラゴンの事を話せと言われるのだ。

先日、「婚姻したなら2人で出かける事もあろう。

その時に聖杯に与えられた物以外の知識があれば会話のタネになる。

どうやら現世は娯楽がかなり発展しているらしい。

書物や映像などから知識を得て再度召喚された奴に色々と教えてやれるようにしておくのはどうだ?」

と言ったからそれを実践でもしてるのかもしれない。

 

何が悲しくて仇敵だったからプライベートの事は大して知らない妹の話をほぼ毎日しなくてはならないのか。

王の話をさせるならマーリンだろう。

いや、アレが来るとロクな目に合わないからそのままアヴァロンの塔に引きこもってれば良い。

どうせ今も千里眼であちこちを覗いているに違いない。

 

そんな事を考えながら歩いていればすぐにルフェイ邸に着いた。

既に土地全体の工房化は完了しており、結界も張られている。

中の気配を探れば地下にカイが居るのが分かった。

 

激しく動いているので恐らくはゴーレムを相手に模擬戦でもしているのだろう。

桜はまだ学校だ。

元姉であるという遠坂凛との関係はまだ微妙であるそうだが、以前よりかは会話は増えているらしい。

まあ、あの神父に何か吹き込まれたのかモルガンと顔を合わせる度に軽く敵意が飛んでくるのだが、子供のソレなどモルガンにとっては可愛いものだ。

 

ポストの中に入っていた新聞を取り、家の中に入った。

帰って来たのを察知したのか地下からカイが上がってきた。

 

「別に私が帰って来たからと気にせずに続けていてもよかったのですよ?」

 

「何かしてないと気になるんだよ。

一応、魔術を付与した道具を作って売るっていう仕事はしてるけどまだ顧客が限られてるからな。

元々は傭兵稼業の序での小金稼ぎ程度しかやってなかったからな。」

 

「既に一生分の蓄えを作ってあるというのに真面目ですね。

まあ、勤勉なのは良い事です。」

 

カイがモルガンの持っていた荷物を受け取って冷蔵庫へと入れていく。

 

「……鯛丸々1匹?」

 

「ああ、それだけは今すぐに捌いてしまいましょうか。

ですが、魚を1から捌くのは初めてですので教えて頂けますか?」

 

「俺だってこんなデカいの釣った事すら無いわ。

……まあ、出来ないことは無いと思うが。」

 

カイが取り敢えず頭を落として、内臓を出して……と考えている内にモルガンはエプロンを着て、髪を結った。

 

モルガンが包丁を持ってまな板に乗っけた鯛の前に立ち、その後ろからカイが抱きつくようにモルガンの手を持って教えていく。

実はモルガンは料理で事あるごとにこうして教えて貰うという建前で後ろから抱きつかれる様なこの状況を楽しんでいる。

 

初めの頃は本当に学ぶ目的もあったが、最近では既に基本となる料理法はマスターしてしまっている。

それでもこうしてカイに教えを請うのはこうした日常の中で感じる甘い幸せが好きになってしまったからだ。

 

だから今も鯛を相手に少し苦労しているカイを横目に捉えて、隙を晒したと判断して頬にキスを落とす。

 

「……実は1人で捌けるな?」

 

「あら、バレてしまいましたか?

ええそうです。

ですが、貴方にこうして貰うのが好きなので。」

 

聖杯戦争が終わってからというもの、モルガンはこうして好意を真っ直ぐに伝えてくる事が多くなった。

養子になった桜の前では自制して、桜を甘やかす事が多いモルガンだが、それでも偶に桜が気を利かせて自室に撤退する事がある程度にモルガンは家ではカイに甘える事が多くなった。

 

まあ、その裏にはカイが甘えてくるモルガンを邪険に出来ないからそれを利用しているという魔女らしい思惑があったりするのだが。

 

実際、今回もカイは甘えてくるモルガンに仕方ないとばかりに付き合って鯛を捌くのを手伝った。

その後は夕方まで2人で地下へと行き、モルガンは次回の聖杯戦争で使う為の魔術や礼装の研究を、カイは注文の入った礼装を作り続けた。

 

そして夕方になり、桜が帰ってくる頃に合わせてモルガンは研究を一旦中止し、地下から出て来る。

日によってはカイも出て来るが今日は礼装の作製の為に地下に留まった。

 

帰って来た桜を出迎え、一緒に夕飯を作り始める。

嘗ての間桐邸では考えられない程の穏やかな日常。

その変化に最初は戸惑った桜も何日かすれば慣れてくる。

台の上に立って先程のカイとモルガンの様にモルガンから教えられながら桜は食材を切っていく。

 

1時間ほどもすれば鯛をふんだんに使った夕食が完成していた。

それからカイが上がって来て家族揃って夕食を食べる。

その後は家族団欒の時間だ。

初めのうちは魔術の研究や礼装作製にしようとしていたが、桜に寂しい思いをさせたく無いとモルガンがそれを禁止したのだ。

 

桜が宿題をするのを手伝い、それが終われば3人でテレビを見たり、トランプやボードゲームで遊んだりして過ごす。

 

テレビを見る時は大抵桜はモルガンの膝の上に抱えられている。

その後は風呂に入り、歯を磨き、就寝。

桜の就寝後はカイとモルガンの2人きりの時間だ。

今日は聖杯戦争中に買って飲めなかったワインを2人で飲んでいる。

ソファに2人並んで座って、モルガンはカイに垂れかかる。

 

ゆらゆらとグラスに入ったワインを揺らすモルガンにカイは問いかける。

 

「どうした?」

 

「ああ、いえ。

ただ単に感慨に耽っていただけです。

嘗ては魔女と呼ばれた反英霊の私がこうして願いを叶え、幸せな日々を送れているのです。

多少ではありますが思う事もあります。」

 

「悪事を働いていただけの自分がこんなに幸せで良いのかって?」

 

それを聞いたモルガンは可笑しそうにクスクスと笑う。

 

「まさか。

そんな事を考えなどはしませんよ。

今更ですが私を召喚したのが貴方で良かったですし、召喚された私が精神的に最も落ち着いていた全てが終わった後の私で良かった。

そして、あの聖杯戦争を勝ち抜く事が出来て良かったと、それだけです。」

 

「サーヴァントは全盛期の姿で召喚されるって話か。

モルガンにはその全盛期が幾つかあるのか?」

 

「ええ。

魔術師としての全盛期は2つ。

ロット王に嫁いだ直後と今の全てが終わった後。

前者は私の魔術師としての極みに辿り着いた時、後者は全てが終わり精神的に落ち着き、成熟した時でした。

バーサーカーとして召喚されるのならアルトリアへの復讐に躍起になっていた頃でしょう。

あの時は私の人格が大きく乖離していましたから、側からみれば狂っている様に見えたでしょうね。」

 

と、語っていくモルガン。

カイは黙ってその話を聞き続けている。

 

「他の私が召喚され、敵としてアルトリアがいるのなら、その瞬間からアルトリアが消えるまで他の事など頭に入ってこなくなるでしょう。

その点私は既にある程度生前の事を割り切れています。

だからこそこうして貴方を愛し、受肉という望みを叶えられたのです。」

 

カイに垂れかかっていたモルガンは立ち上がって自分のグラスとカイのグラスをテーブルに置いた。

カイをソファに横向きに座らせて自分はその膝の上に乗り、カイと向き合う。

カイがモルガンの腰に手を回し、モルガンはカイの首に手を回した。

 

「随分と甘えん坊な女王様になったな。」

 

「好きでしょう?

攻めて欲しいならばそうしますが。」

 

「それも良さそうだけどな。

素直に好意を向けられる事があまり無かったからな、新鮮だし嬉しくもある。」

 

生まれは魔術師の一族、その後絶縁されて戦場を渡り歩いていたカイにとっては何の打算もない愛などとは縁が無かった。

だからこそこうしてモルガンが隠す事なく愛情を伝えてくると、どうすべきかが分からずされるがままに応えてしまうのだ。

 

因みに初めの頃はモルガンも何の意図もなく甘える事が少し恥ずかしかったが、カイが少し困った様な顔はしても嫌な顔をせずに応えてくれるのでこれはこれで良いかもと甘える事に慣れてしまっている。

 

「ええ、知っています。

ですがそろそろ甘えられるだけではなく、刺激的なのも欲しいのでは?」

 

そう言うとモルガンはカイの首に唇を落とした。

 

こうしてルフェイ家の夜は更けていく。

 

 

 

 

 

「お母さん、首のところ虫刺され?」

 

「む、そうかもしれませんね。

徹底的に駆逐した筈ですが何処からかまた湧いたのやもしれません。」




前話で書こうとして忘れてましたが令呪での受肉は一応前例があります。
まあ、prototypeでの話なので並行世界の話ですが、この話でも可能としています。

あと、汎人類史のモルガンがルーラークラスでの召喚されるならどういう時のモルガンが呼ばれるのか考えてみたら、霊基がヴィヴィアンよりなのではという結論に至った。
もしくはブリテンの神秘の王としての側面が強調されたのかな。

感想評価お待ちしてます
これからもっとブリテン異聞帯の二次小説増えへんかなぁ
汎人類史からのチェンジリングオリ主とか妖精転生とかによるモルガン様と妖精騎士ズの救済物が増えて来そうではある
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