モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

27 / 54
ルフェイ家イギリス旅行②

 

「わぁ……!」

 

桜が飛行機の窓から外を覗き込んで段々と小さくなっていく街を見る。

エルメロイの用意した小型ジェットに乗り、イギリスへと目指す。

流石にプライベートジェット自体は持っていないものの、レンタルする事は可能な様でこの様な移動となった。

 

「没落しかかっているとは言え貴族としての見栄とプライドというものがありますので。」とはライネスの言葉だ。

その横で予想外の出費に眉間にシワを寄せて頭に手を当てたエルメロイ2世の姿が印象的だった。

 

「飛行時間はざっと半日か。

長い旅になるな。」

 

「無論、暇潰しの為にゲームも用意してあります。

どうです一勝負。」

 

「そりゃいいな、ポーカーでもやるか。

だけどモルガン、妖精眼使うなよ?」

 

「フ、生まれ持った物を活用する事の何が悪いと言うのです?

というのは冗談で、妖精眼を使えば容易く勝ててしまいますからね。

流石に使いませんよ。

桜もやりますか?」

 

「うん。」

 

「では此方に。

まずはルールとやり方を覚えねばなりませんからね。

最初は私がやりながら説明してあげます。」

 

カイとモルガンとエルメロイ2世とライネス。

この4人でのポーカーが始まる。

4人それぞれに山札が回されて山札を切っていく。

 

「ルールは5カードクローズドで良いか?

チップは……」

 

「これを使おう。」

 

モルガンがグラスに入った水をテーブルの上に溢す。

だが、テーブルに着く前にそれは氷となって固まり、チップの形へと姿を変え、高い音を立ててテーブルの上で山になった。

 

何気なく為されたその魔術行使にエルメロイ2人が驚く。

作られたチップは公平に分けられた。

 

それぞれにカードが5枚ずつ配られる。

 

「この様にまずカードが5枚配られます。

持っているカードの種類から同じ数字、同じ記号、数字の順並びなどにより強さが決まります。

 

何も揃わないノーハンド、同じ数字のカードが2枚あるペア、ペアが2つのツーペア、同じ数字が3枚のスリーカード、数字が連続しているストレート、同じ記号のみのフラッシュ、ペアとスリーカードのあるフルハウス、同じ数字が4つのフォーカード、同じ記号で数字が連続のストレートフラッシュ、そして同じ記号で10、J、Q、K、Aの順に並んだロイヤルストレートフラッシュ。

 

今言った順に役は強くなっていきます。

そして同じ役でも数字の大きい方、ただしAが一番強く、そして同じ記号でも上からスペード、ハート、ダイヤ、クローバーの順で強くなります。

 

配られた後は5枚の内、好きなカードを好きな枚数、一度だけ交換できます。」

 

この様に、と言ってモルガンは1枚カードを伏せて出した山札から1枚取った。

その手札を桜に見せると桜は驚いた様に笑った。

 

それを見たエルメロイ2人はそんなに良い手札なのかと考え、カイは早速桜で揺さぶりをかけて来たと判断した。

養子であり弟子なのだ、簡単な心理戦程度ならモルガンがとっくのとうに教え終えている。

 

ライネスは3枚、エルメロイ2世は4枚、カイは交換無しで最初のレイズが始まる。

 

「手札の交換を終えたら賭け金を設定します。

最低でも1枚、自分の手札に自信があるのなら更に増やしても良いし、自信がなくてもハッタリで増やしても構いません。

ここが1番の駆け引きポイントでしょう。

レイズ。」

 

当たり前の様にモルガンは賭け金を上乗せ。

エルメロイ2人は僅かに迷った後に賭け金を合わせてくる。

カイは迷う事なく降りた。

 

それで何かを察したのか次の順ではエルメロイ2人も同様に勝負を降りた。

明かされたモルガンの役はいきなりフルハウス。

カイがスリーカード、ライネスはフラッシュ、エルメロイ2世はツーペアだった。

 

「では次は実践してみましょう。

私がアドバイスするので桜、やってみなさい。」

 

賭け金を回収したモルガンはなんでも無いかの様にプレイヤーを桜に交代する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初の数回は桜を使った盤外戦術を敷いて来たモルガンとそれを予測していたカイが優勢に進めていたが、その後は慣れて来たエルメロイ2人も巻き返してくる。

 

結果的には良い勝負になったが、最初の数回でのリードが勝敗を分け、順位は桜&モルガン、カイ、ライネス、エルメロイ2世となった。

 

その後もカードゲームやボードゲームをしたり、映画を見たりでなんとか時間を潰し、約12時間後、ロンドンへと到着した。

慣れない空の旅で疲れたのか眠ってしまった桜をカイが抱き上げながら飛行機から降りる。

その後にモルガンが続き、桜の幸せそうな寝顔を見て微笑んでいる。

 

「これから手配した車に乗って頂き、ロンドン郊外の街にあるエルメロイの屋敷へと向かいます。

今日の残りはそこで過ごして頂き、明日になったら車に乗って霊園へと移動します。」

 

空港内を歩きながらライネスがそう話す。

VIP対応なのだろうか、荷物は全てスタッフが運んでくれている。

なお、そのスタッフには会話に関して一切気にしない様に暗示をいれてある。

明らかな特別扱いとモルガンという超級の存在に空港の利用客の視線が集まるが、一切気にした様子はない。

 

「エルメロイの屋敷からその霊園へはどの程度かかる?」

 

「早ければ5時間程で。

近くまで車で移動して、途中からは歩きになるでしょう。」

 

「往復だけで半日程か……

いや、帰りは跳べば一瞬で済むな。

鏡かマーキングか、だな。」

 

「長距離転移を?」

 

「ああ、構わないならエルメロイの屋敷の一角、もしくは姿見を貸して貰いたい。

それだけで帰りはずっと楽になる。」

 

「分かりました。」

 

長距離転移をなんでもないかの様に行使するというその言葉にエルメロイ2人は内心で戦慄する。

 

「ああ、仕掛けるところを見たいのなら好きにすると良い。

別に秘する程の魔術ではない。」

 

「そうなんですか。

ならば是非とも見させて頂きたいです。」

 

秘する程の魔術ではない?

長距離転移なんて現代では名家の魔術師だろうが出来ない方が多いであろう様な魔術に関わらずか。

分かってはいたがこうも見せつけられると、神代の魔術師の凄まじさが否応にも分からせられる。

 

そんな心の声を妖精眼で見て楽しんでるんだろうなぁ、とカイは考えた。

実際その通りであった。

 

迎えに来ていた車に乗り込み、一路エルメロイ邸を目指す。

その途中で桜が目を覚まし、異国の街並みや風景に目を輝かせる。

 

「時計塔、か。

実際に行くのは10年ぶりだな。」

 

「ああ、没落した名家の出身でしたっけ。」

 

「勘当されたけどな。

それ以来、時計塔には近付いていない。

用があってもこのロンドンで済ませてた。

…………先に聞いておくがあの頃のウチの関係者とか居ないよな?

今頃になって祭り上げられるのは御免だ。」

 

「時計塔に在籍しているのは何人かいますが、エルメロイには居ません。

それに流石に10年も経っていれば分からないのでは?」

 

「過去の栄光にしがみつこうとしてる老害ほど執念深いのも中々居ないだろ?

出会さなきゃ良いんだが。」

 

「一応こちらでも注意しておきます。

特にあなたについての情報が漏れ出ない様に。」

 

「ああ、頼む。

俺も時計塔ではあまり出歩かない様にしておくから。

観光なら別の場所でやろう。」

 

そう決めたカイは窓の外の景色に夢中になっている桜と現代のイギリス首都ロンドンの街並みに興味を持っているのであろうモルガンにあちこちに立っている主要な建物の解説を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

エルメロイ邸はその大きさにも関わらず内装は最低限。

客を迎え入れる廊下や部屋は飾り付けられているが、少し外れた廊下に入れば装飾具の数はぐっと減る。

更には屋敷の大きさに見合わないほどに使用人の数が少ない。

 

「お恥ずかしながら経済事情が少し逼迫しておりまして。

使用人や装飾は必要最低限にしているのです。」

 

エルメロイといえば時計塔でも名門中の名門だ。

それが没落しかかっているとなれば思い当たるフシはある。

突っついてもエルメロイも此方も良い事にはならないだろうとカイは判断して黙っておく。

 

「まあ、兎に角此方へどうぞ。

夕食にしましょう。

荷物は此方で部屋に運び込ませておきますので。」

 

そう言われて案内されたのは、それこそ映画やドラマで見るような長細い机の置かれたダイニングルームだ。

それを見た桜は映画で見たのと同じ……!と目を輝かせている。

嘗てはこの部屋のダイニングテーブルが埋まる程の人物が集まり、ディナーや昼食会などをしていたのだろう。

そう考えながら座ろうとしていたモルガンの為に椅子を引く。

 

元はそれなりの家の出である。

マナーや立ち振る舞いは叩き込まれていた。

それ故に半ば無意識にこの様な行動を取ってしまう。

傭兵としては必要のないソレだったが、一度家でモルガンに対して完全に無意識でやったところ好評だったのでそれ以来こうしてエスコートの真似事をしているのだ。

 

「ほら、あれくらい兄上も自然とやれる様になって貰いたいのだがね。」

 

「そうなっても絶対にお前にだけはしないからな。」

 

その様子を見たライネスがエルメロイ2世を揶揄うが、エルメロイ2世は塩対応だ。

桜を子供用の座高の高い椅子に座らせたカイは桜を挟んでモルガンと反対側に座った。

 

「そんなに緊張しなくて良い。

失敗しても良いからテーブルマナー実践してみな。」

 

完全に貴族の家での食事となって緊張し始めた桜にカイはそう声をかけた。

 

「うん。」

 

緊張が解れたのか、その後のディナーでは拙いながらも失敗する事なくテーブルマナーを実践してみせた。

 

 

ディナーの後、部屋に案内された3人は寝る前に話していた。

 

「桜、先に言っておいた様に明日は私達は仕事があります。

無論すぐに終わらせて帰って来ますが、その間あなたはキチンと持って来ていた宿題をやっておく様に。」

 

「明後日から観光だ。

しっかり楽しめる様にやる事はちゃんとやっておきな。」

 

「うん、分かった。」

 

「ではもう寝ましょう。

途中で少し寝たとはいえ長いフライトで疲れたでしょう。」

 

若干うつらうつらし始めていた桜をベッドに入れて寝かせた。

 

 

そうしてエルメロイ邸での夜は更けていった。




というわけでエルメロイ邸
絶対この頃とか経済状況悪かったと思う
どの程度だったかは分からんけど

それとは別に更新だんだん遅くなってって申し訳ない

感想、評価お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。