モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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ルフェイ家イギリス旅行③

「それで、ブラックモアの墓地とやらにいる愚妹の代わりに作られたのはどんな者だ?」

 

「名はグレイ。

どうやらこの前の第四次聖杯戦争の開催と同時に顔がアーサー王のそれと酷似する迄に変わったそうです。

元は少し似ていた程度だったそうですが。」

 

「……ロンゴミニアドでも使ったか。

そういえば邪魔になるからと置いていったな。」

 

頭の中で考えを纏めていく。

第四次で肉体が変化した理由はロンゴミニアドが召喚されたアルトリアに反応、共鳴してその機能を活性化させた事で、現在の持ち主が聖槍の担い手として相応しくある様に改造を行なったのだろう。

 

妖精郷(アヴァロン)に持ち込めぬからと放置しておいた結果か。

アレは世界というテクスチャを縫いとめる最果ての塔の影。

故に表側に無くてはならないのだ。

(アヴァロン)同様に湖にでも沈めておくべきだったか。

 

「それで、何故その村は愚妹の紛い物など作ろうなどと考えた?」

 

「流石にそこまでは……

ですが、どうやらアーサー王に対する崇拝がある様で。」

 

「……アレはその時になれば勝手に蘇ってくる。

英霊という存在とは似て非なる世界の守り人だ。

そんな事すらわからずに紛い物を作るだと?

愚かにも程がある。」

 

心底不快そうな表情でそう呟くモルガンだが、静かな車内ではその声は十分に周りに伝わった。

その言葉に対する周りの反応で気が付いたのかモルガンは不承不承といった表情で僅かにだけ語った。

 

「アレを『いつか来たる未来の王』として認め、態々妖精郷(アヴァロン)まで行って葬ってやったのが誰だと思ってる。

アレはブリテンの王として認めるに値する存在だ。」

 

「それ本人に言ってやれよ。」

 

「絶ッッッ対に嫌です。」

 

即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言いたくもないことを無駄に語らされたからだろうか。

モルガンのとった策は彼女らしくもない考えうる限りでは最も単純で暴力的な手法だった。

村に押し入り、対応すべく出て来た墓守達を殺さない程度に薙ぎ払い、突き進み、対象を確保。

 

対象の母親から聞かされたアーサー王の精神は、そのグレイという少女から伸びる因果を辿って殺した。

どういう理屈かは分からないがギャーギャーと騒がしく話す魔術礼装を黙らせ、地下墓地を全て粉砕した後、村人達をこれでもかという程に脅し、そして長距離空間跳躍でエルメロイの屋敷へと戻った。

 

一周どころか五周くらい回って清々しさすら感じるほどの八つ当たりであった。

ついでに言えば気乗りのしない仕事を早めに終わらせたかったのもあるのだろう。

誤解がない様に言えば初めのうちはキチンと姿を隠して村の中に入り、夜中を待ってグレイを連れ出すという案もあったのだが、無駄に時間がかかる、面倒という理由でモルガンが却下、この様な強襲になったのだ。

 

全てが終わり、水鏡で転移してエルメロイの屋敷に戻って来た。

途中から情報処理が追いつかなくなり、エルメロイの屋敷に来てからも放心しているグレイをモルガンはエルメロイ2人に渡してさっさと部屋を出て行った。

 

「あーー、すまんな。

めちゃくちゃ手荒い方法になったが、まあ、そっちが方法や方針を全く指定しなかったのが悪いと思って諦めてくれ。

やっぱりモルガンもモルガンで色々とその子の存在は複雑なんだろうさ。」

 

「ああ、うん、まあそれは良いんだが…………どう報告したモノかな。

あんな事になったらもう同じ事をしようなんて少なくとも数世代に渡っては考えもしないだろう。

時計塔による介入は見合わせだな。

 

その子の世話は頼むよ兄上。

私は今から考えるだけで頭の痛くなる報告書を作成せねば。」

 

はあ、と大きく溜め息を吐いてライネスも部屋を出ていった。

グレイは未だにフリーズしている。

 

「カイ、何をしているのです。

早く来なさい。」

 

ほぼ入れ替わりでモルガンが部屋に入ってきて、カイの腕を掴んで連れ出した。

 

「じゃ、そういう事で。」

 

残されたのはエルメロイ2世とグレイ、ついでにモルガンに口を塞がれた魔術礼装。

完全に面倒なのを押し付けられたと察したエルメロイ2世は取り敢えずグレイの意識が現世に戻って来るまで待つ事にした。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり色々と複雑か?」

 

「……ええ、まあ思う事が無いと言えば嘘になります。

とはいえ、これまでの様子で愚妹とは全く違うものだとは分かりました。

似た顔なら毎日鏡で見てますし、そこまででもありません。

 

ただ、あの礼装はいただけない。

アレはロンゴミニアドを十三の拘束で覆った更に上から別の礼装で覆ったものです。

仮想人格がある辺り相当優秀な者が設計したのでしょう。

ですが、何故人格のモデルがよりにもよってあの男、ケイなのか。

確かに円卓でも比較的マトモな性格ですが、ベディヴィエール辺りの方が適任だったでしょう。」

 

「え、アレがケイ卿の人格なのか。

確かに毒舌で知られちゃあいるが……」

 

「違うとは分かっていますが、あの男の人格があると愚妹がチラついて仕方がない。

対聖杯戦争用にロンゴミニアドの観察もしたいというのにアレだ。

……まあ目的の前には微々たる障害にもならない。

ただ単に喋らせれば神経を逆撫でされるというだけの話、ならば喋らせなければ良い事だし、その程度のストレスならカイと桜で十分に癒してもらえますから。」

 

「なら出来る限り要望に応えるさ。

次の聖杯戦争のカギは間違いなく味方となるサーヴァントとモルガンの作る礼装次第だ。」

 

「ええ、是非ともそうしなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はというとブラックモアの墓地から帰って来たその日は桜が持ってきた宿題を終わらせる為に1日エルメロイの屋敷で過ごし、その後は時計塔の街から出てイギリス、特にロンドンを観光した。

 

大英博物館、ベーカー街、ビッグベン、タワー・ブリッジなどの名所を訪れた。

3人にとってかけがえのない思い出の一つとなる旅行ではあったが、特にこれといった出来事があったわけでもないので割愛。

 

一方その頃、ルフェイ家の帰りの便を把握しているエルメロイ2人は家族水入らずでどうぞと同行せず、(半ば分かってはいた事だが)唐突にエルメロイに放り投げられたアーサー王の贋作とも言えるグレイとその魔術礼装アッド、そしてブラックモアの墓地の件について情報の隠蔽や然るべき報告をする為にデスマーチの真っ最中であった。

 

エルメロイ2世はグレイを自身の内弟子として時計塔に通わせるべく根回しをし、問題児どもに振り回され、アーサー王そっくりのグレイから勝手に精神的ストレスを受けつつ、普段通りの授業を行い、というデスマーチだ。

更には人に慣れていないグレイは街の雑踏を見るだけで軽い目眩を起こす為、基本エルメロイ2世の持つアパートで過ごしている。

せめてもの救いはそのグレイが手持ち無沙汰なのが居心地が悪いのか、家事をしてくれている事だろう。

 

対するライネス。

関係各所への連絡と報告書の作成である。

その上でモルガンとの関係を匂わせつつも決定的な情報は出さないという方法で時計塔の敵を牽制していた。

更にはカイの元の家の関係者達を監視しつつ、モルガンという特大の餌に飛び付こうとしている他のエルメロイや敵の出鼻を挫く事で対処。

更に反撃としてエルメロイ2世に引っかかった奴らの情報を渡して、言外に『いつもの様に他家の特許のない魔術を解析して特許申請してくれたまえよ』と催促。

 

まごう事なきデスマーチであった。

 

そんなデスマーチを3人の出国の日までに何とか一段落終わらせて、屋敷に戻ればデスマーチ再開。

時間も労力もかなり消費したが、得られたリターンは非常に大きい。

 

まずはモルガンとの繋がり。

エルメロイ邸の鏡がルフェイ家の自宅にある鏡と繋がった事により、いつでも連絡が取れるどころか行き来すら簡単だ。

そして、モルガンがロンゴミニアドの解析をする為に訪れた場合はその度に特別講師としてエルメロイ教室に呼べる様に交渉した。

 

そして対霊戦闘のスペシャリスト、グレイも手に入れられた。

サーヴァントも分類的には霊の一種である。

グレイの身体能力とロンゴミニアドという超火力の切り札。

この2つがある事で次の聖杯戦争では有利に動ける。

 

その事を考えればこの程度の出費は安いもの。

短期的に見れば赤字も赤字ではあるが長期的に見れば必ず黒字となる。

そう考えておこう、とルフェイ家を見送った後にライネスは大きな溜め息と共に一旦この事に関する思考を放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい貴様ら、ここ数日間どこに行っていた。」

 

「仕事と旅行だギルガメッシュ王。

少しばかりイギリスにな。」

 

「何?

イギリスといえばセイバーの故郷ではないか、何故我を誘わなかった。」

 

「そんなこと言われても……」

 

ルフェイ家は帰った後に盛大にギルガメッシュに絡まれていた。




たった数行で終わるブラックモアの墓地。
この後どうしようかな、小ネタは幾つかあるんだが一つ一つが1話分にも満たないから出すとしても短編集みたくなるし。
このままstay night入っても良いし。
というわけでアンケート取ります。

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