モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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小ネタ集

 

げ、と一瞬声が出そうになったのを半ば無理矢理に飲み込んだ。

買い物に出ていたカイが出くわしたのは英雄王ギルガメッシュ。

 

本屋のだろうか、重そうな紙袋を下げ、買い食いしているその姿からは原初の英雄王らしさは微塵も感じられないが、一応は敵である。

 

「む、貴様キャスターのマスターか。

丁度いい、少し付き合え。」

 

拒否権など初めから無かった。

 

「最近、少し悩んでいる事があってだな。

我がセイバーと結婚した際には貴様を兄と呼ぶのは……」

 

「止めてくれ。

気持ち……が追いつかない、光栄すぎて。」

 

一瞬でかけた本音を飲み込んで即座に言葉をつなげた。

 

「やはりそうか!

フハハ、立場を弁えている様で何より!

まあ、一応血縁者になるであろう相手だ雑種と呼ぶのは止めておいてやる。

 

それとキャスターめに次の聖杯戦争までに式場をこさえておく様に伝えておけ。

我とセイバーの晴れ舞台だ、それに似合うだけの式場を用意させろ。

神前婚などというふざけたこともするなとな。

フハハハハハハハ、完成後の最初の結婚式が我とセイバーのものなのだ。

それだけで箔がつくというものよ!」

 

そう言って上機嫌に去って行った。

ギルガメッシュを相手にするときは何が不敬判定になるか分からないから神経を張りめぐらす必要があって余計に疲れる、と大きく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市商店街。

食料品店は当たり前として古本屋や花屋などの多様な店が並び、小さめながらもスーパーもある、冬木市深山町では住人達が買い物をする際に集う場所である。

 

だが、現在復興の進む新都側に品揃えが豊富で安い大型スーパーが出来たことにより、客足が減っていた。

 

「……店主、最近は少し人通りが少なくはありませんか?」

 

「ああ、奥さん。

なんでも新都の方に大きいスーパーが出来たみたいでなぁ。

お陰で客足が少し遠のいちまってるんだ。

今はまだ平気だが、このまま減ってくとなると商売上がったりだよ。

商店街の皆がそれで頭を悩ませてるんだわ。

 

復興が進むのは良いんだが、こうも影響が出ちまうと素直に喜べねぇや。」

 

「ふむ…………」

 

モルガンとしてはそれは少し困る。

商店街が閉まれば地味に遠い新都側にまで行かなくてはならなくなるし、噂という情報源を確保できなくなる。

それにこの商店街の雰囲気は嫌いではないのだ。

 

「どうにかする手立ては考え付くが……」

 

「本当か!?」

 

「まあ、な。

とはいえ、流石に元手が必要だ。

商店街の各人が金を出し合う、というわけにもいかんだろう?

そこで、だ。

出資者、つまりスポンサーになってくれそうな人物に心当たりがある。

それに私が話をつけられたら、また話そう。」

 

そうしてモルガンが会いに行ったのは

 

「なに?

商店街に出資しろだと?」

 

「ああ、その通りだ。

やはり市井は賑わうに限る。」

 

「ふん、何故我がそんな事に財を使わねばならん。」

 

「よく考えてみろ。

セイバーが再度召喚され、貴様と二人で商店街を歩く。

その時に出資された商店街の者達は恩人である貴様がセイバーと並んでいるのを見て祝福するだろう。

それにセイバーが貴様のやったことを商店街の者から聞いたらどう思うと思う?」

 

「…………貴様はアレか、天才か。

良かろう、その話に乗ってやる。

だがほんの僅かとは言えど我の財を使うのだ失敗は決して許さん。」

 

「安心すると良い。

こと人の心理に関して私程長けたものはそう居ない。

商店街に人を呼び込むなど容易い事よ。」

 

それから暫くして商店街は再び活気に溢れかえった。

この事が後にアルトリアにモルガンとギルガメッシュをほんの僅かにだけ評価を改めさせる事に繋がるのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お」

 

「ん」

 

道端でばったり出会ったのはカイと切嗣。

2人とも聖杯戦争の時のスーツ姿ではなく、ラフな普段服で買い物袋をぶら下げている。

嘗ての共闘相手であり、互いにどうにか最後に出し抜こうとしていた相手。

特に会う必要も無く、会おうとも思わない相手のため聖杯戦争が終わってからは互いにこの地に根を下ろしたのだけは知っていた。

 

「うん、なんだよ爺さん。

急に止まるなって。

って、その人は?

知り合いか?」

 

その切嗣の後ろから出て来たのは赤毛の男の子。

ちょうど桜と同じ位の歳だろうか。

 

「ああ、まあ昔少し仕事で一緒にな。」

 

「なんだよそんな人が冬木に居るなら挨拶くらい行っとけよな。

どうも衛宮士郎です。

初めまして。」

 

「ああ、初めまして。

カイ。

カイ・ルフェイだ。」

 

衛宮士郎。

衛宮の名前を名乗っては居るが、聖杯戦争の後に久宇舞弥とそういう関係になってこさえたとしたら年齢が可笑しい。

恐らくは養子だ。

 

「切嗣とは昔少しイザコザがあった相手でね。

そのせいで互いに少しギクシャクしてるんだ。

こっちからも会いに行かなかったのだからあまり責めないでやってくれ。」

 

「そうなんですか。

しかし、良い歳して年がら年中家でゴロゴロしてるだけの爺さんが貴方みたいな見るからに出来そうな人と一緒に仕事ですか。」

 

特に意識する事なく士郎の口から放たれた言葉のナイフがグサリと切嗣に刺さった。

 

「いやいや、今はどうか知らないが昔はキレる男だった。

互いに持ちつ持たれつでやってたさ。」

 

なんで俺がフォローしてやってんだ、と内心思いながら元同業のよしみ、そして養子を持つ者同士として思わずフォローをいれてしまう。

 

「士郎、そろそろ帰らないとまた大河ちゃんがお腹空かせて駄々こねはじめるぞ。」

 

「あっ、そうだ!

いっけね!

じゃ、すみません失礼します。」

 

「ああ、また会ったらよろしく。」

 

居心地が悪くなったのか、カイを警戒してか切嗣が会話を切った。

慌てて走り始めた士郎を切嗣がゆっくりと追いかける様に歩き始める。

一瞬、カイと切嗣の目が合い、結局何も話す事なく2人はすれ違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜・ルフェイはその日運命に出会った。

 

第四次聖杯戦争が終わってから7年後。

中学生になった桜はその日の放課後、友人と一緒に校舎を歩いていた。

楽しげに雑談しながら歩いていると、ふと誰かが廊下の向こう側から歩いて来た。

特に意識もせずに話しながら歩いていた為、一瞬だけすれ違う相手の顔に目を向けた瞬間だった。

 

まるで時間がゆっくりになったかの様に感じられた。

完全に無意識のまま、そのすれ違う相手を目で追っていた。

完全にすれ違った後の後ろ姿を振り返ってまでマジマジと見ていたところでハッと正気に戻った。

 

周りを見渡せばニヨニヨと笑う友人達。

 

「ちっ、違いますから!

見たことない人だから誰かなぁって思っただけですから!?」

 

「まだ何も言ってないよ?」

 

咄嗟に口からでた言い訳じみた言葉は即座に切って捨てられた。

無性に恥ずかしくなって桜はその場から駆け出した。

 

「わ、私今日用事があるんでした!

また明日!」

 

なお明日は土曜日である。

完全にテンパりながら逃げ出した桜を友人達は特に何も言わずに見送った。

 

友人達が見えなくなってもなんだか体の中でエネルギーが爆発してるみたいで学校から家までずっと走って帰った。

 

「ハァッ……ハァッ……た、ただいま。」

 

「おかえりなさい。

そんなに息を切らしてどうしました?

って…………成る程そういう事ですか。」

 

今一番会いたくない相手に出会ってしまった!

妖精眼の前には嘘も隠し事も出来ない。

一瞥のうちに何があったのかを知られた事を悟った。

 

「一目惚れ、ですか。

『敵を知り己を知れば百戦危うべからず』という諺の通り、まずはしっかりと相手のことを知りなさい。

名前はもちろん、趣味や交友関係、好きなものと嫌いなもの。

ああ、夜伽の作法が知りたくなったら遠慮なく言いなさい。

男が悦ぶやり方というものを一からしっかり教えましょう。」

 

「母さんのバカーーー!!」

 

我慢できなくなって思いっきり叫んで自分の部屋に入った。

後に桜はこの日の事をこう語った。

 

「先輩と出会ったのはとても嬉しかったです。

何か私じゃない私が先輩と色々と困難を乗り越えた末に結ばれた様な、そんな運命的な何かを感じたんです。

……だけど、それ以外がちょっと…………思い出したくないですね。」

 

その時、桜は遠い目をしていたという。

 

 

なお、後日桜の恋した相手の名前を聞いたとき、モルガンはえぇ……という困惑と不安の表情を、カイは納得した上で全力で応援するぞと言った。

 

 

 

「あの、母さん……」

 

「きっかけが欲しいのならまずは同じ部活に入ってみたりやっていることの手伝いをしたりで面識を持ちなさい。

そこから雨の日に態と傘を忘れたりして送って貰ったり、相手の家の近くで態と濡れたりして家に上がり込んだりして関係を少しずつ深めるのです。

そして日常的に相手の家に上がれる様になったのなら今度は相手に自分が魅力的であると意識させなさい。

あなたのその体は女性としては非常に魅力的ですからそれを使っても良いですし、手料理を振る舞うなどして胃袋を掴むなどでも良い。

そうなれば、他にライバルでもいない限りはあとは時間の問題です。

頃合いになったと思ったら告白するもよし、夜這いして既成事実を作るもよし、逆に薬でも盛って襲ってもらうもよしです。

あなたがやりたい様にやりなさい。」

 

「は、はい!

頑張ります!」

 

またその数日後にはそんな親子の会話があった。

それを見ていたカイは(なんだかんだ言って女性って強いよな…………色んな意味で)という感想を持った。

なお、カイがこの事を数年後、聖杯戦争で召喚された男性陣に話すと非常に共感されたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計塔のエルメロイ教室では月に一度ほど特別講座が行われる。

その特別講座は非常に人気で、エルメロイ教室に在籍する学生のみならず、外部の教室に在籍する学生、更には他学科の講師すら見学に来るという。

 

特別講座を行う講師は、かつてこのブリテン島で魔女として恐れられ、かのキングメイカーにして大魔術師、マーリンをアヴァロンの幽閉塔へと叩き込んだブリテン最高の魔術師、モルガン。

 

彼女が教える授業内容は、魔術の理論としてはかなり難しいが一部の魔術師なら何とか理解は出来る、だが実現するとなれば不可能だと受講した全員が断言しそうになる程のモノである事が多い。

とはいえ、理論だけなら理解できる者が少数とはいえど居るのだ。(なお、良くも悪くも常識に縛られない上に無駄に実力の高いエルメロイ教室在籍者は割と理解できている事が多い。

グレイは完全についていけずにお目目グルグルであるが。)

ならば簡略化して転用できればほぼ間違いなく己の魔術の発展へと繋がる。

 

何よりそれを実践してみせた者がいるのだ。

かつてのエルメロイ家の当主、聖杯戦争ではボロクソにされ、当主の座から転がり落ちてからは心機一転し、1人の魔術師として研鑽を重ねて来たケイネス・エルメロイ・アーチボルト。

無論、彼とて自身を失脚させる直接的な原因となったモルガンから教えを受けるなど自身のプライドが許さない……筈だった。

 

だが、魔術師としての意地と好奇心がその程度のプライドなど捨ててしまえと囁いた。

結果として苦虫を噛み締めた様な顔で第一回の特別講座を見学し、そこで説明された理論を数年かけて解析、理解、そして簡略化して特許申請を行い、通った。

 

奇しくもその特許申請が彼の復活劇の幕開けとなるのであった。

 

なお、いつの間にか問題児の集まりになっていた自身の元教室と、そこで輩出された魔術師の殆どが大成しているのを知って何とも言えない表情をしていた。

また、教室の現在を知ってしまったが故に常日頃から起こるエルメロイ教室在籍者達による大騒ぎが原因のストレスに悩まされる事になったとか。




はい、小ネタ集でした
カイとギルガメッシュの会話
モルガンによる冬木商店街の再興
衛宮家とカイの出会い
桜ちゃん運命の相手と出会う
ケイネスさん時計塔復活序章
の5本をお送り致しました。

次回からstay night行きます。
話が拗れに拗れること間違いなし。

感想、評価お待ちしてます。
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