モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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第5次聖杯戦争
プロローグ


 

今回の聖杯戦争における我々の勝利条件

 

ルフェイ邸地下の工房に置かれたホワイトボードにそう書き込まれる。

続けてモルガンがキュッキュッとペンの擦れる音を鳴らしながらその下に書き加えていく。

 

・小聖杯の顕現阻止

・ルフェイ家全員が生存する事

 

そう加えられ、さらに下に

 

・サーヴァント7騎全てを敗退させない事が最善

 

と付け加えられる。

 

「これがこちらの勝利条件。

対して相手の勝利条件は、」

 

言峰綺礼・ギルガメッシュ陣営の勝利条件

 

・小聖杯の顕現

・大元となる大聖杯への大量の魔力供給

・召喚されたサーヴァントの敗退

 

「サーヴァントが1騎敗退していく毎に、それによって発生する魔力によって大聖杯に巣食うアレは活性化していく。

だが、向こうはあくまで監督役。

その役割を捨てていきなりマスターとして表に出れば間違いなく袋叩きにされるのが目に見えているので初めのうちは大々的には動かない筈だ。」

 

マスター候補とサーヴァント候補

 

ホワイトボードをひっくり返し、そう書き込む。

 

「まずはやはり衛宮士郎。

恐らくはアヴァロンを触媒として愚妹、アルトリア・ペンドラゴンを召喚するだろう。

魔術師、魔術使いとしての腕は三流も良いところ。

懸念すべきは戦い方というものを知っている久宇舞弥が参謀としてつく事。」

 

・衛宮士郎 → アルトリア・ペンドラゴン

 

「そして遠坂の現当主。

だが、完全に落ち目にあるあの家にそう簡単に触媒が用意できるとは思えない。

故に召喚するサーヴァントは現時点では予測不能。

魔術師としての腕は師のいない割にはよくやっている、といったところだが、桜には劣る。」

 

・遠坂凛 → 不明

 

「時計塔からの参加者。

エルメロイ2世、使用する触媒は前回と同じだという。

故に召喚されるのは征服王イスカンダル。」

 

エルメロイ2世 → イスカンダル

 

「次にアインツベルン。

ギリシャで動きがあったそうだ。

とは言え古代ギリシャの英雄なんぞ全員が全員、超一流だ。

どのクラスでどの英雄が召喚されるにせよ戦力的には一筋縄ではいかないだろう。」

 

アインツベルン → ギリシャの英雄

 

「そして我がルフェイ家からは……桜。

大聖杯に知恵でもあるのかと思うほど嫌な選択だ。

巻き込みたくはなかったのだが……本当に良いのですか?」

 

「勿論です。

私だって母さんに教えを受けた1人の魔術使い。

いつ迄も母さんと父さんの重荷ではありません。」

 

「そうか……

召喚するサーヴァントに関しては触媒を用意させている。

私自身も強力な触媒になれるが、その場合呼ばれるのは円卓関係ばかり。

相性が悪いのは明らかだ。

そして狙うはキャスタークラス。

大聖杯の監視と警備を任せ、浄化の際には私と2人がかりで万が一のリスクも無く速やかに終わらせたい。」

 

桜 → キャスター

 

「これで推定5人、御三家の関係者としてカウントされたのだろう。

故にかなり早い段階で桜には令呪が発現した。

恐らくはアインツベルンと遠坂も既に令呪が出ている筈だ。

後の2人に誰が選ばれるかはまだ分からん、それどころかエルメロイ2世が選ばれるかどうかもまだ分からん。

 

今回の聖杯戦争のキモはどれだけ敗退者を出さないまま味方を増やせるかだ。

向こうとてその考えは同じの筈。

だが向こうは積極的にサーヴァントを敗退させるのが狙いだ。

戦闘があっても放置するだろう。

だが我々は戦闘があれば介入し、脱落者が出ない様にする必要がある。

その為のカギは『大聖杯の現状』、これに限る。

真っ当な魔術師や魔術使い、英霊ならば必ず聖杯戦争の決着よりも大聖杯をどうにかする事に注力するはずだ。

 

故に我々の初手は大聖杯の確保。

正直に言って読まれやすい一手だ、相手の出方は出張ってきて戦闘が起こるか、読んだ上で敢えて見逃してくるかだ。

確率にして高くて2:8といったところだな。

まあ、恐らくは戦闘は起こらんだろう。

とはいえ警戒はしておいて損はない。」

 

魔術による空間への画像の投射をして大聖杯の置かれている円蔵山の大空洞の立体マップを表示させながら話していく。

入り口から大聖杯までは一直線で、大聖杯という超級の魔力炉心があり、誘爆を恐れてか対侵入者用のトラップも防備も無い。

その大空洞に入るルートは1つのみ。

柳洞寺を通るしかないが、聖杯戦争参加者、即ちサーヴァントを連れているマスターは唯一の参道を通らなくてはならない。

 

これは柳洞寺周辺の林には「自然霊以外は通れない」という効果の結界が張られている為である。

つまりはサーヴァントが攻め入るとしたら1箇所のみ、というアドバンテージが取れるのである。

ここを拠点として工房を作り上げられればキャスターにとっては最高の城と化すだろう。

 

また、令呪に関しては桜の令呪の発現は恐らくは御三家と同等程度の扱いだからだろう。

実際、時計塔内では令呪が発現したなどという話は噂程度にすら流れていないそうだ。

 

ここからカイ、もしくはモルガンに令呪が宿る可能性も十分にあれば、エルメロイの手の者に令呪が宿らない可能性もある。

今回の家族会議(というには少々物騒な内容だが)はあくまで桜に令呪が発現したから行ったものであり、現時点での作戦でしかない。

 

恐らくは聖杯戦争の勃発まであと一年程度、といったところだろう。

モルガンとカイは家に残っていた間桐の魔術的な情報が記された書物からそう予想を立てた。

この猶予期間が有利となるか不利となるか。

まずはそこを見極めなければならない。

 

まずは計画が大きく変更せざるを得ない状況にならない事を祈っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルフェイさん、ちょっと良い?」

 

桜が自身の姉、遠坂凛に話しかけられたのは放課後。

中学3年生の冬となり、高校受験が控えている中、友達との会話もそこそこにまっすぐ家に帰るその途中だった。

 

「それはすぐに終わる用事ですか?

ほら、私受験勉強があるので。」

 

「ええ、時間は取らせません。」

 

「では少しだけ。」

 

他人行儀な会話をして、凛の後をついていった先は遠坂邸。

かつて自分が住んでいたその家に一瞬だけ目を細め、すぐに微笑みというマスクを被る。

案内されたのは応接室。

 

「少し待っててくださいね。

お茶を淹れてきます。」

 

「いえ、結構です遠坂先輩。

先ほども言った通り受験勉強があるので手短にお願いしますね?」

 

「…………分かりました。

では率直に。

ルフェイさん、令呪は貴女に?」

 

「ええ、出てますよ。

この通りに。」

 

桜が左手で右手の甲を薄く撫でると、魔術によって隠蔽されていた令呪が浮かび上がった。

それを見た凛はほんの一瞬、顔を顰めた。

 

「では遠坂先輩も令呪が出ているんですね?」

 

「……ええ、そうよ。」

 

桜の問いに対して一瞬の沈黙の後に凛は誤魔化すことなくそう答えた。

 

「…………桜・ルフェイさん。

血を分けた姉として警告するわ。

聖杯戦争では……ッ!」

 

「聖杯戦争では……何ですか?

まさか、勝てないから参加してもすぐに降参しろ、と?

ねぇ、遠坂先輩。

私の母にして魔術の師が一体誰なのかご存知ですよね?」

 

桜の影から黒い帯の様なものが伸びて凛の首を撫でる。

虚数魔術。

モルガン・ル・フェイというブリテン屈指の魔術使いの教えを最も長く受けていた桜は自身のその魔術を使いこなせるまでに成長している。

対して遠坂凛。

才能もある、努力もしてきた。

だがそれは全て、遠坂邸に残る書物からどうにかして自己流で研鑽を続けてきた結果だ。

実力は劣る。

 

「……なんて、ね。

遠坂先輩、ルフェイ家の聖杯戦争での目的は勝利ではありません。

父さんも母さんも私も、欲しいのはこの穏やかな日常の延長。

今言えるのはそれだけです。

詳しい事は聖杯戦争が始まってから。

では失礼しますね。」

 

「……桜、貴女の父親は遠坂時臣で母親は遠坂葵よ。」

 

「ええ、生みの親という意味ならその通りです。

ですが、育ての親は間違いなく今の父さんと母さんですよ。

では今度こそ失礼します。」

 

そう言い残して桜は遠坂邸を後にした。

ガチャリ、と玄関のドアが閉まる音がした。

残された凛はやるせない表情で柱を叩いた。

 

「…………あー、もう知らない!

桜のバカ、バカ、大バカ!

良いわ、そっちがその気なら徹底的に負かしてあげる!

ブリテン最高の魔術師!?

前回の聖杯戦争の覇者!?

知ったこっちゃないわ!

桜の親を名乗るいけすかないあの2人も纏めて叩きのめしてあげるわよ!

泣いて謝ってくるまで絶対に許さないんだから!」

 

そして突然、大声を上げた。

自分の中の気持ちを外に出して、変な方向に舵を切ろうとしていた己の思考を戻す。

 

「そうと決まれば鍛錬よ。

幸い桜はこれから受験勉強が本格化する。

入試までの数ヶ月間で絶対に今の差を縮めるどころか追い越して突き放してやるわ。

それと触媒は……今のウチの経済事情じゃ無理ね。

だったらせめてクラスは最優のセイバーを狙いましょう。

そして可能なら、いの一番にあの家を落とす。」

 

そうやって今の思考を言葉に出す事で纏めてから、フン!と鼻息荒く工房へと向かう。

ただ、少し気になるのは桜の言葉。

 

ルフェイ家の聖杯戦争での目的は勝利ではありません。

 

聖杯戦争には参加する。

目的は勝利ではない。

なのに開戦後、すぐに降参しろという提案は切って捨てられた。

一体何が目的なのだろうか。

 

参加するだけの理由はある。

けれどそれは賞品である聖杯ではない。

ならば聖杯戦争の過程で生まれるもの?

サーヴァント?

これは普通に考えられる。

どうしても倒したい相手がいる?

少なくとも自分が知る限りでは思い当たる人物は居ない。

聖杯戦争という大規模な儀式において発生する多大な魔力?

考えられはするが確率は低いだろう。

そもそもあの言葉自体がブラフ?

相手が相手だ、非常に可能性は高い。

 

思考がドツボにハマりそうになったところで眉間を揉む。

いけない、こうやって悩む事自体が相手の策かもしれないのに。

何にせよ答え合わせは聖杯戦争が始まってから。

分からないものに思考リソースを回す程余裕があるわけでもない。

一旦忘れよう。

そう決めて工房へと繋がる扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1年。

僅かな猶予期間を経て聖杯戦争は始まる。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

 

僅か数日の間に冬木市の何処かでその詠唱は6度唱えられた。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。」

 

その詠唱に込められた想いは違えど、その想いの熱量は凄まじい。

各々の譲れないものの為に召喚は成される。

用意した触媒に繋がる縁、マスターとなる人物との縁を辿り、歴史にその名を残した英雄が再度この地に降り立つ。

 

「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

 

だが、今回の聖杯戦争は一味違う。

マスターは7人、召喚されるサーヴァントもまた7騎。

そして前回の聖杯戦争から引き続き参加する2組。

聖杯戦争という魔術儀式がなされ、聖杯が完全な形で顕現したのならギルガメッシュ、言峰綺礼の勝利。

聖杯戦争という魔術儀式を中止させ、大聖杯の浄化をなせばルフェイ家の勝利。

残念ながら正規のマスター、サーヴァントが一人勝ちする未来は存在しない。

 

「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝 三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

幕間は終わりを告げ、冬木市における因縁劇の第二部が幕を上げた。




じゃあ因縁だらけの第5次聖杯戦争はっじまーるよー

視点は……士郎メインで行こうかな
ルフェイ家メインでも良いけど士郎視点の方が面白くなりそう

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