モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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1話

 

俺はその日、運命と出会った。

 

その日とは高校2年の冬の日の事。

少し用があって、学校に遅くまで残ってしまっていた俺は時計を見て少し慌てて家路に就こうとしていた時。

 

僅かに金属と金属がぶつかり合う甲高い音を聞いた。

もう部活のあった生徒だって家に帰っているはずの時間だ。

 

もしここで遅い時間だからと気にもとめずに帰っていればこんな事に巻き込まれずに済んだのだろう。

だが、そんなのはもしの話だ。

俺は結局気になって音の鳴る方へと向かっていった。

 

辿り着いたのはグラウンドだ。

そこで目にした光景は全くもって信じられないものだった。

 

2人の男、全身青のタイツの様なものを着た青髪赤目の男が赤い槍を振るい、黒の服を上下に着てその上に赤い外套を着た白髪の男が剣を振るう。

超高速で行われ、余波だけで衝撃が発生するその戦闘。

非現実的すぎるその光景がそこにあった。

 

突然に戦闘が終わり、何やら戦っていた男2人が話し合っている。

内容は遠すぎて聞こえない。

 

だが、突然青い方の男が槍を構えたかと思うと一気に空気が変わった。

まるでテレビの向こう側で起こっているかの様な現実味のない光景だったのに突然、殺気という重厚な現実感がのしかかってくる。

 

完全に気圧され、知らぬ間に後退りしてしまう。

そして、その後退りした足が小枝を踏んだ。

パキッという小さな乾いた音。

だが、たったそれだけであの青い男は此方に気が付いた。

 

「誰だ!?」

 

構えを解いて完全にこちらの方向を見てくる。

マズい。

こんな所で殺し合いをする様な男だとか、見ちゃいけないものを見てしまっただとかを考えるよりも前にその考えが出てきた。

 

すぐに校舎内に駆け込んだ。

誰もおらず、明かりのない夜の校舎を只々走る。

シンと静まり返った校舎の中を出鱈目に走り回って体力が尽きて廊下で立ち止まる。

荒い息を整えようとしていると、

 

「よう、割と遠くまで走ったな。」

 

真後ろから声をかけられる。

振り向けば校庭に居た青い男がそこに居た。

接近に気付かなかった。

足音もしなかったし、男の息が上がっている様子もない。

基本的な身体能力から違う。

 

「お前さん、自分でも分かってるんだろ?

どうしたって逃げられねぇって。

なに、恥じる事ぁねえ。

やられる側ってのはえてしてそういうもんだ。

 

こちとらお前さんには恨みはねぇが……見られちまったモンは仕方ねぇ。

悪いが坊主、大人しく死んでくれや……!」

 

ズン、と体に衝撃が走った。

気がつけば青い男の持つ槍が自分の胸に突き刺さっている。

血が吹き出して体から力が抜ける。

倒れる瞬間、季節外れの花びらを見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッハァ……!!?」

 

忘れてた呼吸を思い出したかの様に飛び起きた。

何がどうなってる?

俺は確かにあの男に胸を貫かれた筈で……

 

だが、自分の胸を見てみれば血が出ているどころか服にすら傷一つ付いていない。

 

「悪い……夢でも見たのか……?」

 

いや、そんなはずは無い。

あれは間違いなく現実だった。

 

「……帰ろう。」

 

分からない事を考えるにしても何時までも学校にいる訳にはいかない。

取り敢えずは帰って……それからだ。

遅くまで学校にいたからだろう。

全く人通りのない帰り道を歩いて自宅へと帰ってきた。

桜は家の用事があって、藤ねぇは今日は藤村組の方にいて、舞弥さんは昔の知人と話があるとかで今日は遅くなるらしい。

その為、今の家は俺以外は誰もいない。

 

それをいい事に自室に入った瞬間、大の字に倒れる。

疲れた。

全力疾走を続けた疲労感や倦怠感、心労だって溜まってる。

 

結局何だったんだ。

着ている服、持っていた槍は当たり前のように知らない素材で出来ていた。

それにあの身体能力。

どう考えたっておかしい。

オリンピックに出るようなアスリートだってあんな動きは無理だろう。

 

そんな奴らが殺し合いをしていた。

そこに俺が居合わせてしまったん…………マズイ。

あの男は口封じのために俺に襲いかかってきたんだ。

もし俺が生きていると知られたら?

 

間違いなく奴はもう一度襲って来る!

 

その考えに至って体を起こすと同時に、何も無かった空中から男が現れた。

 

「なっ!?」

 

すぐに転がってその場から避ける。

 

「ったく、1日に2度も同じ相手を殺すハメになるとはな。

とんだ災難だ。

 

だが坊主、一つ聞きてぇ事がある。

お前さんどうやって俺の槍から逃れた?

俺は確実にテメェの胸を刺した筈だぜ?

 

それがもう一度会ってみりゃあ、傷一つなく五体満足でピンピンしてると来た。

どんな魔術を使った?

幻覚でも見せたか?」

 

魔術……!

この男も魔術の事を知ってるのか……!?

 

「……ああ、その顔は全く知らねぇんだな。

つまりは何処ぞの誰かが気紛れで助けたってこった。

悪いな坊主、恨むんならテメェの運の悪さと、一度助けた割にはアフターフォローもつけねぇそのバカを恨むんだな!」

 

咄嗟の判断で新聞紙を丸めて強化。

ろくに成功したことのない魔術が初めて成功した。

 

「……!

ほう?

ただの小僧かと思ってたが……お前、魔術師か。

成る程、ちったぁ楽しめそうだ!」

 

男が繰り出して来る攻撃を紙一重で逸らし続ける。

だけど全然本気じゃない。

攻撃の時に踏み込みもしていないし、真正面からのみ攻撃してきている。

 

「へぇ?

じゃあ、これはどうだ!?」

 

大きく振りかぶった槍を振るい、それを受ければこれまでとは比べ物にならない程の力が掛かって、窓をぶち破って庭に放り出される。

だが、これはチャンスだ。

男は必ず、破られた窓から来る。

そこを狙えば……!

予想通り追撃してきた男の槍をフルスイングで弾き飛ばせた。

 

男は立ち止まって一瞬、飛ばされた槍の方を見たかと思った次の瞬間、反応する間も無く俺の目の前に移動して蹴り飛ばされた。

蹴りそのものは新聞紙で何とかガード出来た……いや、ガードさせられたんだ。

その証拠に新聞紙は蹴りだけで何処かに飛ばされてしまった。

 

俺の体は再度吹き飛び、今度は庭の土蔵の壁に叩き付けられる。

 

「筋はいいぜ、褒めてやらぁ。

良い師が付きゃあ、それなりに大成するだろうよ。

だが、相手が悪かったな。」

 

槍を拾った男が、最早これまでだと言わんばかりにゆっくりと歩いて近寄って来る。

咄嗟に土蔵の中に逃げ込むが、もう逃げ道なんて無い。

行き止まりだ。

 

「じゃあな坊主。

今度こそ死んでくれや。」

 

突き出される槍を前に、思考が加速する。

考えたのはただ一つ。

こんな所で死ぬ訳にはいかないんだという諦めない事だけ。

 

その瞬間、目の前の地面から光が放たれた。

見れば魔術陣……だろうか。

それが光り、目の前の男が突き出して来ていた槍を戻して防御したかと思えば、金属のぶつかる音と共に土蔵の外まで弾き飛ばされた。

 

気がつけば魔術陣の上に人が立っていた。

青いバトルドレスを着た金髪の恐らく女性。

 

「問おう……貴方が私のマスターか?」

 

全く理解できない事柄を前に完全に思考が止まった。

いや、理解できないのは襲ってきた男の事もそうだが、少なくとも目の前の女の子からは敵意も殺意も感じられない。

 

「マスター……?」

 

「サーヴァント、セイバー。

召喚に応じ参上した。

これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。

ここに契約は完了した。」

 

全くもって理解が進まない。

完全に呆気に取られていた。

 

「取り敢えずは表にまだ先程の敵がいる様なので撃破して来ます。

危険ですのでマスターはここで待っていて下さい。」

 

それだけ言ってその女の子は土蔵の外に駆け出して行った。

 

「一体何なんだ……!?」

 

危険だと言われたが、それよりも今一体何が起こっているのかの方が気になって仕方ない。

立ち上がって土蔵の扉の所まで歩いていく。

 

外では男と女の子が対峙していた。

 

「テメェが七騎目のサーヴァント……か。

一応聞いておくが、この勝負一旦預ける気はねぇか?」

 

「断る。

サーヴァント同士が顔を合わせたのなら次はない。」

 

「よくぞ言った。

それでこそ最優を冠するセイバーのサーヴァントだ。

ここで引くなんて言う腑抜けならどうしようかと思ってたところだ!」

 

そう言うと男は一気に踏み込んで来た。

さっき俺を相手にしていた時とは大違いの、本気だ。

だが、そうして繰り出された攻撃を女の子は見えない何かで受け続ける。

逸らすことなく真正面で受けて、更には反撃までする。

 

いや、反撃どころか押している。

あんな小柄な女の子なのに全く負けていない……!

 

「……ふぅ。

いけすかねぇマスターに威力偵察なんてシケた任務。

この聖杯戦争はハズレだったと思ってたが……こういう展開なら悪くはねぇな。

まさかこんな所でセイバーとやり合えるなんて思ってもみなかったからよ。」

 

「随分と口が達者だなランサー。

貴様もまた戦士なら口ではなく己が得物で語ってみせろ。」

 

「……ハハッ!

良いぜ、その勝負買ってやらぁ。」

 

ランサーとそう呼ばれた男はそう言うと顔から笑みを消して、構えを取る。

その構えは学校で俺が見て気圧された時のそれだ。

槍の穂先から赤いモヤの様なものが出てきて槍を覆っている。

 

「その心臓貰い受ける!!

……『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』!!」

 

次の瞬間には女の子は吹き飛ばされていた。

僅か一瞬の攻防だったが少しだけ見れた。

 

女の子はあの男の突き出された槍を体の横で、その手に持つ見えない何かで受け止めていた。

なのに次の瞬間には槍は女の子の胸を狙っていたのだ。

あの槍をまともに喰らっていたら……まず間違いなく心臓を貫かれている。

 

だが、女の子が吹き飛ばされた時に舞った土煙の中からは左肩に傷を負った女の子が出て来ていた。

良かった……!

上手く避けたんだ!

 

「貴様、俺の必殺の槍を避けたのか。」

 

「ゲイ・ボルク……だと。

つまり御身は、アイルランドの光の御子か!?」

 

「チッ……やっちまったな。

宝具を出したからには必殺じゃなきゃいけねぇってのに。

運が良かったな。

俺のマスターは心配性でな。

槍が不発だったならさっさと帰ってこいと言ってやがる。

別に追ってきても良いぜ。

ただし、その時は決死の覚悟を抱いてこい。」

 

そう言うと男は家の塀を軽々と飛び越えて去って行った。

その後はもうてんやわんやだ。

 

ようやく真面に女の子、セイバーと話せたかと思ったら家の外に敵がいると飛び出して行ってしまったり。

セイバーを追いかけて行ったら、学校にいたもう1人の男の方を斬りつけて、その男はその場から消え去ったり。

その勢いのまま表にいた女の子を斬ろうとしていたのを止めさせたら、その女の子はあの遠坂凛だったり。

そしてその遠坂から自分が一体何に巻き込まれているのかを聞かされた。

 

聖杯戦争という魔術儀式の事。

サーヴァントという過去の英雄を使い魔とする事。

令呪の使い方と重要性。

 

その説明のお陰で自分が何に巻き込まれているかは理解できた。

その後に遠坂に連れられて街を歩き、向かった先は教会だった。




はい、と言うわけで聖杯戦争開始でございます
のっけから原作との変更点あり

多分、キャスター枠が誰かも割れたでしょう

感想、評価お待ちしてます
次回は教会とバーサーカー戦っすな
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