モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

33 / 54
3話

 

「舞弥さんまで聖杯戦争に出てて、それで爺さんの呼び出したサーヴァントがセイバーだったぁ!?」

 

「正確には私は切嗣の補助的な役割。

狙撃や観測、潜入などによる援護や情報収集、工作が主な目的でしたが。」

 

夜中の衛宮邸に士郎の大声が響いた。

それを手で制しながら舞弥は淡々と答えた。

 

「とは言っても私は途中で襲撃を受けて敗退。

終盤については切嗣から軽く聞いた程度で詳しい事についてはそこまで知りません。

後はただ、士郎の母親代わりになって欲しいと、それだけでした。」

 

舞弥さんがそう締め括ったので、今度は凛の方を向く。

 

「それで遠坂、あの男とライダーが話してた内容って一体何だったんだ?」

 

「詳しく話すと長いから簡単に説明するわね。

魔術師達の総本山、そう呼ばれる場所があるの。

それがイギリス、ロンドン郊外にある魔術師だけの街、時計塔。

その時計塔には12の学科が存在する。

それぞれの学科の頂点に立つ魔術師の事をロードと呼ぶのよ。

つまりロードとは魔術師達の頂点に立つ者達の事。

 

どいつもこいつも化け物並み。

人によってはサーヴァントにすら勝てる。

そういう連中。」

 

「……あの男が?」

 

「あれは別ね。

当主代行って言ってたでしょ。

多分だけどエルメロイの本当の当主が幼いのか不在なのかで一時的に立場を預かってるのよ。

だから本物のロードに比べればまだマシな筈。

 

それより、私が聞きたいのはセイバーが前回の聖杯戦争の記憶を有している事よ。

サーヴァントって召喚されてもそれとは別の召喚時の記憶は持てないはずなんだけど。」

 

「それは……申し訳ありませんが私に聞かれても分からない。

恐らくは召喚の不備の一つなのでしょう。

霊体化が出来ない代わりに記憶を継承できる。

そういったものなのでは……という予想程度しか出来ません。」

 

何処となく歯切れの悪いセイバーの言葉だが、考えられるのがそれしかないのでそうと納得するしか無い。

 

「ふぅん、召喚の不備で記憶継承なんかも出てくるのね。

まあ、良いわ。

それなら少しは話が早くなるかも。

衛宮くん、私は貴方と同盟を組みたいって言ったわよね。」

 

「ああ、ある陣営に対してって言ってたあれか。」

 

そう答えた士郎の言葉に頷く。

 

「その陣営ってのは前回の聖杯戦争の勝者よ。

あの胡散臭い神父の言う事には……ってつくけど。

前回のキャスタークラスのサーヴァント、モルガンとそのマスター、カイと言う男。」

 

「モルガンが!?」

 

「カイさんが!?」

 

遠坂の言葉にほぼ同時に驚いたセイバーと士郎が机に勢いよく手をついて乗り出す。

 

「聞きたいことが増えたけど、まあ、そうよ。

そして今回の聖杯戦争ではそいつらの養子になってる桜・ルフェイさんがマスターとして参加しているわ。

恐らくは魔術師としての腕は私以上。

サーヴァントを互いにつければ状況と相手のサーヴァント次第で何とか互角に持ち込める位ね。

 

そして、さっき乱入してきたライダー、イスカンダルとそのマスターの同盟相手というのもコイツら。

アーチャーに後を追わせて確認したわ。

これで実質向こうには3騎のサーヴァントがいる様なものよ。」

 

「……成る程、それで同盟を。

ですが、同盟を組んだとしてもまだ此方の方が数で劣っています。」

 

「分かってる。

だからもう1陣営引き込みたいのよ。

でも今しっかりとマスターと拠点が分かってる他の陣営ってさっきのバーサーカーとアインツベルンだけなのよね……」

 

強さとしては申し分ない。

殺しても死なない上に押しも押されもせぬ大英雄のヘラクレスとそんな超級の存在を狂化させてなお、余裕のあるイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

「……桜も魔術師だったのか……!?」

 

「反応が遅いわよ。

まあ、いい加減驚きっぱなしでキャパオーバーしてるんでしょうけど。

で、貴方はあの男と知り合いなの?」

 

半分呆れた様な表情で遠坂がツッコミを入れ、その後にカイの名前に反応した士郎に質問する。

 

「ああ、爺さん……切嗣がまだ生きてた頃に商店街で会って、それ以来見かけたら世間話する程度には……」

 

「では、モルガンにも会ったのでは?」

 

「会った……のか……?

分からない、すれ違っているだけかもしれないし。」

 

これはあまり良くない、とセイバーは考えた。

モルガン、自身の姉と自分の顔は瓜二つなのだ。

そうなれば、親族だという予測が簡単に立ってしまう。

 

その中で剣を使うとなればガウェインを始めとする彼女の子達か、私に行き着く。

……いや、元から風の鞘を解けば『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を使わずとも正体は分かってしまうのだ。

それにこの身は歴史では男と語られている。

ならば、まずはガレスに思考が向くのが普通だ。

真名候補が絞られたからこそ、モルガンの存在はミスリードになる。

 

「まあ、同盟に関しては1日待つわ。

情報が多すぎて混乱してるでしょうし、そんな状態で同盟を組んで後で冷静になってやっぱりやめる、なんて言われても困るだけだから。

それと今日は泊まらせて貰うわよ。

アーチャーはライダーの後を追わせてそのまま拠点を見張らせてるから今日は帰って来ないし。」

 

セイバーが思考を回しているその間に遠坂はそう言って出された茶を飲む。

 

「え゛」

 

「なにその反応。

じゃあ、衛宮くんは私がアーチャーのいない帰り道で襲われて殺されても良いんだ?」

 

「……その言い方はズルくないか?」

 

「事実よ。

実際その危険は十分にあり得るの。

いい加減、自分が一体なにに首を突っ込んでしまったのか自覚しなさい。」

 

「そうだけどさぁ……」

 

助けを求める様に士郎はその場にいる他の2人に目を向けるが、実際言っている事は正しいのだ。

どちらかと言えば戦術面に寄った判断を下すセイバーと舞弥の判断は黙殺だった。

それに気付いた士郎は肩を落とすと、渋々ながらも遠坂が一晩過ごすのを受け入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「こっちです。」

 

取り敢えず居間での話が終わった後、舞弥は三人を連れて土蔵へと向かった。

土蔵の奥へと向かう。

置物を退かして、その地面を舞弥が撫でる。

そして取り出したのは一つの鍵。

 

ネックレスとして首から下げていたその鍵を地面に突き立てる。

そして鍵を回すと、地面が一瞬光り、次の瞬間には地下へと続く階段がそこにはあった。

 

懐中電灯を奥に向けると、階段は少しだけ続きその先には木の扉がある。

士郎が舞弥の方を向くと、舞弥は黙って頷き、手で入るように示す。

恐る恐る中へと踏み込んでいく。

 

階段を降りきり、扉を開ける。

すると勝手に灯りがついて、中の部屋を照らした。

中には中央に机があり、壁には冬木市の地図が貼られ、あちこちにピンが打たれていたり、書き込みがある。

地図の反対側の壁には銃器を始めとした武器が棚の上に乗っかっている。

 

「ここは……」

 

「一応、魔術工房です。

前回の聖杯戦争の際に作成しました。」

 

部屋の奥には更に奥に続く扉がある。

 

「あの先は?」

 

「二部屋あります。

あの扉の先は会議室のようなもので、その更に奥は仮眠室です。

以前は防御機構もあったのですが、管理もままならず機能の一部は失われてしまっています。

それでも一応、魔術師の拠点としては最低限ながら十分ですし、ここでならセイバーも地脈からの魔力供給を受けられるでしょう。」

 

「へえ、案外しっかりしてるのね。」

 

感心したかのように遠坂がそう言う。

 

「武器は今も使用可能です。

危ないのであまり触らない様に。」

 

銃は弾を込めてないので暴発する事も無いが、念の為にとそう言えば、何処となく興味を示していた士郎が目を逸らした。

 

「いつまでも居間で重要な話をする訳にはいきませんからね。

次からはこっちで行いましょう。」

 

「あの、そういうのはあの居間で話し合う前に言いません……?」

 

そんなセイバーの控えめなツッコミに確かに、と遠坂と士郎の心の声が重なった。

 

「……ここでならセイバーも地脈からの魔力供給が可能でしょう。」

 

あ、これ忘れてたんだな……と誤魔化す様にそう話す舞弥を見て3人は察した。

とは言え、仕方のない事である。

顔には出さなかったが、舞弥も内心ではかなり動揺していたのだ。

起こるのは60年後だと思っていた聖杯戦争の開催、巻き込まれた士郎、召喚されたのはセイバー。

更に聞けば実際に士郎はこの夜に2度も3度も命を狙われたと言う。

そして狙ってきた内の1人は切嗣の子であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

こんなにも驚く事が揃っていればそりゃあ動揺して多少の事は忘れてしまう。

 

「取り敢えず今日はもう寝ましょう。

体力の回復はできる内にしておくべきです。」

 

まあ、言っている事は正しいんだけど……と一瞬前の事を思い出すが、実際疲れているのでその言葉通りにする事にした。

遠坂の方は舞弥さんが用意してくれるので、自分の部屋に戻って自分の布団を用意するだけで済んだ。

 

軽くシャワーを浴びて着替えた後に、布団に潜り込んだらすぐに俺の意識は落ちていった。

 

こうして激動の1日は漸く過ぎ去ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんまりちょっかいを出すなって言われてたけど、あんまり、だから多少は出しても大丈夫だよね。」

 

 

 

「ん?

私が誰かって?

それはまだ秘密さ、そっちの方が面白いだろう?」

 

 

 

「ここは何処か?

おかしな事を聞くなぁ。

ここは君の夢の中さ、泡沫に消える夢そのものだよ。」

 

 

 

「君の存在はこの戦争、この街、そしてこの星にとっては一つの特異点だ。

君自身のため、私のマスターのため、そしてあの王様……と、それは秘密だったかな、まあ、つまりは君のセイバーだ。

ついでに私のため、君の物語をこんなところで終わらせる訳にはいかないからね。

 

少し……ほんの少しだけ助けてあげよう。」

 

 

 

「胡散臭い?

ハハハ、自覚しているとも。」

 

 

 

「まあ、ものは試しと言うし、取り敢えずは試してみたらどうかな。

私は味方……とは現時点では言い切れないけど、明確な敵ではないつもりだよ。」

 

 

 

「おっと、もう朝が来てしまったか。

私は退散する事にしよう。

また夢で会おう、といっても君は覚えていないだろうけどね。」

 

 

 

「何でってそりゃあ、これが夢だからさ。

夢なんて覚めたら忘れてしまうものと相場が決まっているだろう?」

 

 

 

「恐れずに前へ進み続けなさい。

花の祝福が少しばかり導いてくれるだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の日差しによってだろうか。

自然に目が覚めた。

少しぼーっとして辺りを見回すと

 

「おや、起きましたか。」

 

布団の横に女の子がいた。

 

「…………うおおっ!?」

 

思わずのけぞった。

起きてすぐ側に美少女が気配もなく座っているのは心臓に悪すぎる。

 

「え、えーっと……セイバー。

もしかして一晩中そうやって?」

 

「無論です。

寝ている時ほど無防備な姿はないでしょう。

故にこうしてそばで護衛を、と。

ああ、サーヴァントには睡眠は必要ではありません。

行動に支障はないのでお構いなく。」

 

「こっちが構うわ!

せめて、隣の部屋にいてくれ、心臓に悪い。

それに男女が一緒に同じ部屋で夜を過ごすのもあんまり良くないだろ。」

 

それでも食い下がってくるセイバーを何とか説得して明日からは隣の部屋に居てもらう事になった。

サーヴァントって現代の知識とか常識とか与えられてるんじゃないのか?

 

「常識とマスターの安全、どちらの方が大切ですか?」

 

「どっちも大切だ!」




遅くなりましたすみません

感想評価お待ちしてます

切嗣 次の聖杯戦争は60年後だし、その前に地脈に仕掛けたのが作動するし、余計なものを士郎には背負って欲しくないから情報はあんまり伝えようとしなかった

舞弥 第四次の事は軽く知ってるし、イリヤも話でだけ知っている
けど、動揺してて伝え忘れ

セイバー 第四次の事は聞きたいと思ってるが、個人的な望みだからと自重 イリヤについては近い内に舞弥に聞こうと思ってる

士郎 気になる事が多すぎて優先順位が決まってない


結果、コミュニケーションが滞る衛宮家
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。