モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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ちょこちょこ書いていたものがそれなりに溜まって一話分くらいにはなったので久しぶりの投稿
待っていただいていた方々には感謝しか無いです


6話

 

モルガンが夢を終わらせた後のマーリンの反応は早かった。

一瞬「あっ、やばい」という感じの焦った表情を見せると

 

「じゃあ、ボクは戻って大聖杯の警備を続けてるから。

モルガンにもセイ……いやもう真名でいいか、アルトリアにもよろしくね。」

 

と言い残して、一瞬で消え去った。

その時に起こった花吹雪を起きたモルガンが切り裂くが、そこには既にマーリンの姿は無い。

 

「チッ!」

 

割と本気の舌打ちをしたモルガンは卓上に置かれた遠坂と桜の夢を映すモニターをかき消す。

 

「……あのバカが失礼した。

話は一通り済んだ。

客室を貸すから、そこの娘が起きるまではこの家に滞在しててくれて構わん。」

 

そう言うと机に突っ伏して寝ている桜をモルガンは抱き抱えて、転移し、地下室から居なくなった。

それを見たカイは1つ溜息を溢すと

 

「そういうわけだ。

悪いが今回はここまでだな。

客室まで案内するが……」

 

「一応、私が彼女のサーヴァントだ。

私が連れて行こう。」

 

「余の出番全くなかったでは無いか。」

 

「別にいいんじゃないか、お前が出張ると大体面倒になる。

というかなりかけた。」

 

アーチャーが実体化して眠りこけている遠坂を抱き上げる。

それを見たカイは頷くと歩き始め、それに付いていくようにライダーとそのマスターも立ち上がって階段を上り始めた。

 

士郎もそれに着いて行こうとするが、モルガンとほぼ同時に起きていたセイバーが微動だにしないのが気になって足を止めた。

 

「セイバー?」

 

「っすみません、少し考え事を。」

 

「そうか?

なら良いんだけど。」

 

士郎が声をかけると、セイバーは意識を思考から戻したようで慌てて立ち上がり、士郎の後に続いた。

 

地下から出て、2階に上がる。

カイが一室の前で立ち止まり、エルメロイ2世とライダーはその一つ奥の部屋に入っていった。

 

「ここだ。

2組いるから一応、そこの手前の部屋も貸しとく。

後で飲み物でも持って行くが、紅茶か緑茶かコーヒーならどれが良い?」

 

「え?

ああ、いえお構いなく。」

 

「そう言うな、今のお前らは客人だ。

モルガンは気位が高いからな、例え気に食わない奴だろうが、敵だろうが一度客人として招いたなら帰るまではそれ相応の対応は取る。

まあ、それでもいらんと言うなら無理強いはしない。」

 

部屋の扉を開きながらカイが言った言葉に士郎が一瞬呆気に取られたような表情で断るが、カイはそう言う。

 

「……では私は紅茶を貰おう。」

 

「アーチャー。」

 

「そう怖い顔をするなセイバー。

これは敵味方の話ではなく、ホストとゲストの話だ。

なら、もてなしは受けるべきだ。

それが礼儀というものだろう。」

 

遠坂をベッドに置いた後、アーチャーがそう答えると、セイバーはアーチャーを咎める。

だが、アーチャーは飄々とした様子でそれを受け流した。

 

「それは……そうですが。

…………分かりました、私にも紅茶を。」

 

アーチャーの言葉に顔を顰めながら表情で納得を見せたセイバーは渋々といった表情でもてなしを受ける事にした。

それを見た士郎がそれに続く。

 

「じゃあ、俺は緑茶でも良いかな?」

 

「ああ、勿論。

少し待っててくれ。」

 

そう言ってカイが扉を閉めて出て行った。

そして、扉の前からカイの気配が消えたと同時にアーチャーが切り出した。

 

「それでセイバー、君の真名の話だが……」

 

「……ええ、事ここに至っては隠す必要もないでしょう。

我が真名はアルトリア・ペンドラゴン。

かつて民を偽り、掲げていた名はアーサー・ペンドラゴン。」

 

「アーサーって……!」

 

「なるほど世に名の知れた騎士王か。

剣を隠しているのにも合点がいった。

その聖剣はあまりにも有名すぎるからな。

では、ついでではあるが聖杯にかける望みについてだ。

選定のやり直し、そう言っていたが。」

 

「……ええ、その通りです。

私は……正しさのみを求めてしまったのです。

小を切り捨て大を救う。

それがブリテンの明日のためであると言い聞かせながら、切り捨て、切り捨て、切り捨て続けた。

そして最後には全てを失った。

……かつてトリスタン卿に言われた通りでした『王は人の心が分からない』

 

だから前回の聖杯戦争では聖杯には私の統治のやり直しを求めた。

ですが…………思い知らされたのです。

人の心が分からない私は……何度やり直そうともブリテンは救えない……!

 

……しかし、それで諦めてはあまりにも皆が救えない。

だから私は王という座を誰かに託す事にしました。

幸いにも円卓を囲んだ騎士たちは一人一人が王となるに相応しい人物ばかりです。

彼らならきっと私などよりも良い王になれる。

その為の選定のやり直しです。」

 

「……なるほど。

私は何も言わんよ、言い方は悪いが所詮は他人。

他人の決めた事にどうこう言う資格はないのでね。」

 

聞いておいてそれかよ、と士郎が睨み付けるも完全に無視。

 

「じゃあ、お前の願いはなんなんだよ。

セイバーに聞いておいて自分は言わないつもりか?」

 

「さてな、忘れた。

我がマスターの召喚時の不備でな、戦闘技能は覚えているのだが、出自や願いに関しては記憶が全くないと言っても過言ではない。

生憎と答えになる答えを持ち合わせていないのが現状だ。」

 

その理由に士郎はなんとも言えず、それでもどこか釈然としない表情で渋々矛を収めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイがダイニングに戻ると、モルガンはまだ眠っている桜に膝枕をしながら、その髪を梳いていた。

 

「……モルガン。」

 

「ええ、何が言いたいのかは分かります。

感情的になっていたのも認めます。

認めるのも業腹ですが、あのマーリンのとった手段も強引かつ心情を一切無視していた事に目を瞑れば最善に近い手だったのでしょう。

 

とはいえ、愚妹が相手となると少なからず感情的になってしまう。

あの2つの陣営との交渉は貴方に任せます。

どんな結果になっても私はそれに口出しも手出しもしません。」

 

「……そうか。

だが、どんな結果になったとしても桜の事は考える必要がある。」

 

「……ええ、桜がずっと悩んでいたのは分かっていました。

ですが、それこそ桜本人が決める必要のある事。

私達に出来るのは道を用意する事と桜がどんな道を選んでも味方であり続ける事。」

 

あの夢の中で桜が言っていたのは本心だが、それだけではない。

溜まっていた物をぶつけたのはその通りだろう。

だが、同時にいつも遠坂凛が自分の事を案じていてくれたのは何となく察していたし、それを無視し続けていた事には罪悪感を抱いていた。

 

モルガンに言わせれば

「2人とも魔術師として致命的なまでに優しすぎる。

非情になりきれない事が弱点であり、ただの人としては美点なのだろう。

その才能は間違いなく魔術師として一級品であるだけに精神がそうでないのは皮肉だな。」

との事だ。

 

「まあ、俺も口は出さないつもりだ。

精々、2人だけで話す場を作る程度に留めておく。」

 

「ええ、それがいいでしょう。」

 

そう言いながらモルガンは桜の髪をゆっくりと撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠らせた当の本人であるマーリンが去り、凛と桜の物理的距離が離れた事で2人の夢の繋がりは切れた、かの様に見えた。

 

だが、一度繋がった夢は薄く細い繋がりを未だに残していた。

 

そんな僅かな繋がりだからこそだろう。

心の防核とも言える部分は繋がっていることに気づかず、奥底に隠れた本心が露わになった。

 

近しいものを挙げるとすればマスターがサーヴァントの記憶を夢として見る事だろう。

互いの記憶の断片を互いが見る事になった。

 

 

そこはまるで美術館の回廊の様な場所だった。

壁に掲げられた額の中には記憶の断片が映像として流れている。

白昼夢を見るようなフワフワとして、だが、どこかハッキリとした思考の中、2人はそれぞれの記憶を見る。

 

間桐に来てから虫蔵に落とされ、その時の混乱、恐怖、苦痛、欲しくもない快楽、作り替えられる違和感。

それが続いていくと同時に心が死んでいくのが分かった。

 

間桐に送った後、自分を産んだ人が1人で泣いている様子を扉の隙間から見ていた。

ふとした瞬間に父親だった人が間桐の家の方を向いて物憂げな表情をしていた。

自分自身もそれを見て、寂しさを何度も感じた。

 

聖杯戦争が始まる。

 

どうせ無駄だという諦観。

突然現れて縛り付けていた全てを壊し、忘れていた温もりをくれた人。

温もりと同時にどこか冷たさもあった。

けれど、ずっと冷たい場所にいた自分だからこそじわじわと心が解される様に感じられた。

 

突然全てを失った。

父は死んだ、母は死んでこそいないけど決して戻らぬ人となった。

その後に桜が無事だった事を知った。

けれど、間桐は無くなったのに遠坂には戻って来なかった。

私は1人になった。

 

そして普通の日常がやってきた。

 

いつの間にか父と母になってくれた人からは冷たさは消えていた。

嫌だったはずの家が本当の意味で帰る場所になった。

けれど、いつもこっちを見ている姉の事が気になって、でもどうすればいいのか分からなくて、冷たい態度をとる自分が嫌で、でもやっぱり許せなくて……

成長して考える幅が広がる度にそんな心のささくれは大きくなっていく。

 

帰る場所はあるのに迎えてくれる人は居なかった。

だから、唯一の肉親である桜が気になって、でもどう声をかければいいか分からなかった。

親の仇かもしれない2人が桜の親になり、考える幅が広がる度にあの時の送り出していた桜の表情を思い出しては後悔した。

どうすべきかを教えてくれる人はおらず、それでももう同じ後悔はしたくないから迷いながらも声をかけ続けた。

 

そしてまた聖杯戦争が始まった。

 

倒すべき敵となった。

なら、後の事は勝ってから考えよう。

勝たなければ全てが無駄になりかねないのだから。

勝てば強引にでも話す場は作れる。

だから負けられない。

 

ああ、でも…………

 

もっと素直になれたらなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柳洞寺の山門の上に腰掛けたマーリンは脚をプラプラとさせながら、物語の推移を見守る。

1つの姉妹の話が大きく進んだ事に微笑みながら、次の手を打つ。

 

「いやはや、千里眼持ち同士は意識してないと引かれ合って勝手に見えちゃうからねぇ。

互いに手札は基本全部オープン。

その状態での君との知恵比べは久方振りに頭を使う事になって楽しいよ。」

 

そこにはいない誰かと話すかの様に言葉を紡ぐ。

 

「えー、心外だなぁ。

それと生前と性格微妙に違わない?

やっぱり天下の英雄王と言えども泥の影響を完全には免れなかった?」

 

揶揄う様に言えば、相手から受ける感情に内心舌鼓を打つ。

 

「まあ、君の事だからね。

最後に現れて全てを覆す。

そんな勝ち方を狙っているのだろうけど、並行世界のとは言えど私の愛弟子2人を相手取るんだ。

結末がどう転ぶにせよ、退屈はしないだろうね。」

 

クスクス、とあまりに綺麗すぎる笑みをこぼす。

本来なら傍観者としてこの物語がどう転ぶかを楽しみたいのだが、依頼は依頼。

しっかりと報酬を貰っている以上はその分の仕事はする。

 

「そろそろ第二幕の始まり、かな?」




今回はここまで
次の投稿もいつになるか分からないけど待っててくれたら嬉しいです
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