「フフフハハハハハハハ!!
どうした、その程度か!?」
その言葉と同時に幾つもの宝剣、宝槍が飛んでくる。
バーサーカーがそれに対応しようとしたところで、そのうちの幾つかが自身のマスターに向かっているのを見て行動を変える。
マスターに当たるものを最優先で弾き返し、その次に自身の致命傷となるものを。
そうなると自然と致命傷にならない程度の武器は当たり、その岩の様な体に傷がついていく。
血が流れ続け、それでもお構いなしに全力で動き続ける。
それはバーサーカー故の狂気による考えなしのものではなく、マスターを守りつつ戦う為には常に全力でなければならないからだ。
「いやしかし、貴様もバーサーカーでなければそこの人形を守りつつ攻勢にうって出る事は可能であったろうになぁ?
少しばかり残念だが……まあ、暇潰しの狩りには丁度いい塩梅の獲物よ。
そら死に物狂いで踊ってみせろ。」
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎………」
ギルガメッシュの煽る様な言葉にバーサーカーは僅かに唸るのみ。
そして放たれた剣の一本がバーサーカーの片腕を刎ねる。
その瞬間、不利だと判断したのか、抱えていたイリヤを下ろし、逆の手で手と一緒に落ちた岩剣を掴み、地面に叩きつけて土煙で視界を遮る。
勿論、イリヤに岩の破片が当たらない様に自分の体で守りながらだ。
そして岩剣を背後にぶん投げ、イリヤを抱えて肩に置き、後ろに下がる。
走る途中で壁に突き刺さった岩剣を回収して、少し離れた所で最小の傷で死ねる様に自分の手で心臓をぶち抜いた。
その瞬間、発動する宝具『十二の試練』。
即座に怪我が治っていき、欠損した腕も生えてくる。
自死の、それも素手による死亡のためギルガメッシュを相手にするには必要のない徒手格闘への耐性が出来上がる。
理性も知性も無いバーサーカーになぜそんな冷静な判断が出来るのか。
答えは単純だ。
似た様なシチュエーションをつい先ほど経験したから。
その時は片腕を失ってなお戦い続けていたが、その結果不利になり、心臓を貫かれた。
そして蘇生のために行動が停止した時にイリヤに武器が向かっていたから、無理を通して動き、武器を弾いた。
そして次の瞬間には頭を砕かれたのだ。
バーサーカーでもヘラクレスは世界最強と名高い戦士だ。
理性も知性もなくとも、たった数十分の同じ戦いの中で同じミスを選択する様なら、その偉業を成し遂げられていなかった。
だからこそ、一度体験したなら二度目は最適解を本能だけで選び取れる。
生えて来た腕でイリヤを抱え直し、岩剣を掴み直す。
調子を確かめる様に岩剣の持ち手を何度か強く掴む。
次の瞬間、バーサーカーがその場を飛び退くと、そこに斧と槍が突き刺さり、爆発が起きたかの様に衝撃が拡散する。
「ほう、バーサーカーの癖に頭の回る奴だ。
だが、小賢しい小細工に過ぎん。
これで失った貴様の命は8つ。
さあ、あとどの程度踊っていられる?」
ニヤリと好戦的で見下した笑みを浮かべながら、その周りの空間にまた黄金の波紋が幾つも浮かんでくる。
そして、また横向きの武器の雨が降りそそぐ。
白い城の床が破壊され、バーサーカーの血で汚れる。
イリヤはそれまでの戦闘で既に悟っている。
このままでは勝てない。
勿論、バーサーカーだけなら負けない。
だけど、そこに私自身というバーサーカーにとって足手まといの存在が居てしまっている。
かといって、こんなに武器の降り注ぐ中、バーサーカーから離れればその瞬間には武器に貫かれ死ぬだろう。
セラとリズではこの戦いに介入する事すら難しいだろう。
最低でもサーヴァントクラスの戦闘力が必要だ。
それを考えた瞬間、脳裏に浮かぶのは衛宮士郎とセイバー、そして衛宮切嗣。
だが、すぐにその考えを振り払う。
ここにいない上に、連絡を取る方法もない。
無い物ねだりは魔術師のすることではない。
頭を回せ。
バーサーカーが私の手足となるなら、私はバーサーカーの頭になる。
何をするべきか、何が必要か、何が手札にあるのか。
自分自身の礼装、上手く当てて一度か二度攻撃を逸らせれば良い方だろう。
含んでいる神秘が違いすぎる。
じゃあ、私がバーサーカーから離れるのは?
セラとリズに合図を送って特定の位置につき、良いタイミングで私はバーサーカーから離れ、全力で戦って貰える。
だけど、どこでどうやって合図を送るのか。
そもそもその用意ができてもアイツがこっちを狙ってこないとも限らない。
けど、これしかない。
これしか打開策が思いつかない。
そのために必要なのはセラとリズの今いる場所を私が知ること。
多分、そんな遠くには行ってない。
近くで機を伺ってるはず。
伝える方法は……私の礼装!
鳥型にして自動索敵を使って2人を探せる。
その上、形を変えてメッセージを送れるはずだ。
そう考えると同時に礼装を使う。
糸のようなそれは、一部が鳥に変わると戦場から離れるように飛んでいった。
「ほう?
何か考えついたか人形。
その企み、やれるものならばやってみせよ。」
だが、戦闘中にそんなことをすればすぐにバレる。
案の定、自分の指と繋がったそれに向けて剣が放たれる。
「バーサーカー!」
イリヤがバーサーカーの名を呼べば、それだけでバーサーカーは放たれた剣を弾く。
だが、第一撃をどうにかしたが、実際のところは守る対象が増えたのだ。
更にジリジリと追い詰められていく。
上手くイリヤが誘導し、下がりながら応戦する事で致命的なミスは無いが明らかに傷つくペースは上がっている。
早く早くと焦る中、ようやくセラを見つける。
即座に礼装の形を変えて文字とし、自分の考えを伝えた。
それを読み終わったのかそこから離れていくセラの気配。
恐らくはリズと合流するはず、と考えて礼装を戻した。
「悪巧みは終わりか、人形。
まあ、せいぜい必死に足掻くが良い。」
ギルガメッシュはその様子を見ても笑っているだけだ。
気付いていないのか、あるいは気付いていて敢えて見逃しているのか。
どちらでも構わない。
あと、どれくらいで準備が整うのか。
セラとリズからの合図がどんなものか分からない以上は見逃さないように、目の前にいる相手だけでなく周囲にもより一層気を配る必要がある。
正直に言って目の前の敵に手一杯になっている現状を考えるとかなり難しい。
だけど、活路はそこしかない。
制限時間はバーサーカーの命のストックが完全に切れるまで。
やるしかない。
そう覚悟を決めた時、落雷のような音と共に外壁が吹き飛んだ。
僅かな空白の瞬間が生まれる。
だが、動けなかった。
完全に意識外の出来事に一瞬とは言え思考が止まってしまっていた。
次の瞬間には焦りと共に目の前の敵に向き直る。
だが、そいつは今にも放たれそうな武器を止めたまま、薄く笑ったまま土煙の中を見ている。
「ほう?
中々に早かったな。
再会はもう少しムードのある時が良かったが……まあ良い。」
「アーチャー……!」
姿を現したのは青いバトルドレス姿のセイバー。
更に赤髪の偉丈夫、ライダー、イスカンダル。
そしてセイバーに瓜二つだが銀髪でセイバーが成長したような姿の女。
確か……前回のキャスター、モルガン。
そしてその後ろに黒い長髪の男、ライダーのマスター、エルメロイ2世だ。
「アインツベルンのマスター。
大聖杯については聞いているな?
誰か一人でもサーヴァントを落とす様な事があっては困るからな。
そちらもまだ死にたくは無いだろう?
一時的で良い、同盟を組め。」
その上から目線の口調にむっとしつつ、イリヤは考えを巡らせる。
サーヴァントクラスの戦力が3人。
これならあいつがどれだけ強かろうが、どうにかなる筈だ。
「……受ける以外ないじゃない。
仕方ないわね、同盟を組んであげる。
それとそこのライダーのマスター。
近くにセラとリズ……私の付き人のホムンクルス2人が居るはずだから連れてきて。」
「お言葉だがね、レディ。
私がそのホムンクルスに負けて殺されるかもしれない以上はそれは受けられないな。」
「ヘタレね。
情けなくないの?」
「プライドで身を守れるのならそうするとも。」
暗に同盟の主導権はこちらにあると言ってやれば、モルガンは余裕そうに薄く笑うだけ。
それにムカつきながらも、同盟を組んだと判断してバーサーカーから下りる。
こうなればバーサーカーの手は空く。
私が死ぬのも困るだろうから守ってくれる。
下りながら暇そうだったエルメロイ2世にセラとリズとの合流を頼むが、随分と弱気な返事を自信たっぷりにしてきた挙句、言い返せば更に皮肉たっぷりの言葉が返ってきた。
「他に手が空いてない。
行け。
夫に頼んで防御術式がふんだんに盛られた服を着ているんだろう。
それは何のためだ、時間がない。
さっさと行け。」
「……お見通しか。
クソッタレめ、私を置いて逃げるなよ、死ぬ自信しか無いからな。」
そう言い残してエルメロイ2世は城の中へと駆けて行った。
やっぱり大人になっても何処となく不運な様だ。
とはいえ、悪運が強いから踏んだり蹴ったりの後に生きて帰って来るのだろうが。
「まさか余がかのヘラクレスを助ける様な機会に恵まれるとは、聖杯戦争とは何とも愉快な祭りよ。
ところで聞けば、貴様。
前回の聖杯戦争で余を下したそうだな。」
イスカンダルはその同盟が組まれた様子を見て感慨深げに呟く。
そして、ギルガメッシュを睨め付けエルメロイ2世から聞いた話について確認する。
「そうだが、それがどうかしたか征服王。
まさかこんな状況でリベンジマッチだとでも言うつもりか?」
「非っっっ常に残念だが違う。
好きに生き、好きに死ぬ。
それこそが征服王たる余の生き様よ。
だが、このイスカンダル、同時にこの世界を愛している。
余が冒険し、征服するための世界そのものを消されるとあっては多少の我慢もしよう。
大聖杯とやらの問題が片づいた後にまた改めてリベンジさせて貰うこととする。」
「ハッ!
あいも変わらず傲慢な奴だ。
やはり我と貴様は永遠に相容れんらしい。」
2人の王の睨み合いだけで、その場の空気がドッと重くなる。
その2人の王の姿にセイバーは僅かに気圧される。
決して鈍らず曲がらない信念を持つ2人の王、対して今のセイバーには確固たる芯と呼べるものが無い。
「だが、戦う前に一つだけ聞いておこう英雄王。
何故、貴様は大聖杯による災厄を望む。」
「答える義理は無い。
無いが……よかろう、答えてやろうとも。
剪定だ。
我はこの星の人間の行く末を見定める。
だが、今の人間どもは余りにも脆弱になり過ぎた。
前回の聖杯戦争、その最後の聖杯の泥でここに住んでいた人間は粗方死んだ。
……あまりにも弱い!
見るに耐えん程にな!
我の治めるウルクの民であったのならば、あの程度の泥で死ぬのは赤子か老人程度であろうよ。
その癖、人間は増えすぎた。
今の世界にはあの様な脆弱な人類が蔓延っていると聞く。
故に人類の裁定者たる我が間引く!
それが裁定者として人理を見定めると決めた我がやらねばならん事だ。
邪魔はさせん。」
人類の、人理の行く先を見定める。
それが傍若無人としか思えなかったギルガメッシュが己自身に定めた英霊としての在り方。
傍若無人に見えるのは、恐らくこの聖杯戦争はあくまでも人類が終わるその日までの暇つぶしでしか無いからだろう。
「……この答えで満足か征服王。」
「応ともよ!
その答えを聞いて、より一層血が滾るわ!
一対一で戦えん事が本当に残念で仕方ないわい。
しかし是非もなし。」
「そういきりたつな、今日はまだ余興に過ぎん。
存分に楽しませろ、雑種共!」
その言葉と共にこれまでのバーサーカーとの戦いとは桁違いの数の波紋が生まれる。
「退路は私が開く。
多少の自己防衛は出来るが、その分遅くなると思え。
可能な限りこっちに攻撃を通すな。」
「応よ!
ハハハハハハ!!
まさかヘラクレスと肩を並べ、英雄王と戦う事になるとはな!」
「◼︎◼️◼️◼️◼︎◼︎◼︎◼️◼︎◼️◼︎◼︎!!」
イスカンダルに応える様にヘラクレスが雄叫びを上げた。
そして戦端が開かれる。
約1ヶ月ぶり
まあ、結構更新早い方だし許して
酷い時は半年とか年単位とかで空くからね
バーサーカーの冷静な判断に関しては、一度やられたならそれくらいはしそうという妄想
コミカライズ版アガルタでもメガロスが『触れれば転倒』を攻略するのに自分の足潰してたからやるでしょ
ギルガメッシュも自分の認めた相手であるイスカンダルなら結構真面目に答えそうという予想
因みにこの2人の会話中、地味にセイバーのメンタルにスリップダメージが入ってる模様
セイバーの影が薄いのは仕様です
次回こそ本当に戦闘開始
感想、評価お待ちしてます