トネリコ、水着キャストリア実装につき、やる気が再燃しました
閉ざされたドアの前に立ち、1つ大きく深呼吸をする
それでもノックしようと上げられた手は震えている
緊張か、あるいは怖いのか
……どちらにせよ、向き合わなければならないし、ずっと向き合いたいと思っていた
鼓動の大きくなっていく心臓が酸素をよこせとねだってくる
それに応えてもう1つ大きな呼吸を
ゆっくりと息を吐き出して、最後の一息だけフッ、と素早く吐く
腹は決まった
行くんだ、遠坂凛
自分と父と母の間違いに向き合いに行こう
コンコン、と2回ノックする
「はい、空いてますよ。」
何かを察していたのだろう
中にいる桜は自分からドアを開ける事なく、ただ少し緊張の伺える声で返事をしてきただけだった
戸惑う事なくドアノブに手をかけて扉を開ける
桜はベッドに腰掛けてじっとこちらを見ていた
後ろ手に扉を閉め、そのまま歩み寄り桜の隣に少し勢いをつけて座った
「……座っていいかどうかとか普通聞きません?」
「ええ、普通はそうかもね。
けど桜が良いと言うなら遠慮なく座るし、ダメと言っても率直に本音を全部吐き出すために座るわね。
聞く意味がないから聞かなかったのよ。」
「……フ、それでこそリンらしいと言うものだ。」
自身のマスターと桜が一つの部屋で隣に座って話し始めたのを見届けたアーチャーは自身が割り込む様な話では無いと判断し、部屋の前で実体化した状態で立っていた
もう、記憶も薄れた遥か過去の事ながら、あの姉妹の事はよく覚えていた
一見、性格はまるで真逆であるように見えて根本は同じ
強気で押しが強く、何かあればどちらかと言えば力押しで解決しようとする姉と、丁寧で物腰は柔らかく、多少は改善されているもののどこか受け身で、知恵と工夫を凝らして物事にあたる妹
しかし、その根は2人とも魔術師としては必要ない他人への優しさで溢れている
何があったかまでは覚えていなくとも、2人に何度となく助けられたという印象だけは焼き付いている
それこそ、あの運命の夜の如くだ
「…………私も、やるべき事をやらねばな。」
そう言って扉の前から立ち去る
この家の主人は相手が手を出してこない限り、一度迎え入れたものを騙し討つような真似をしない事は知っていた
そして、現状この家の中ほど安全な場所はない
このタイミングならそう遠くへは行けないはず
走ればすぐに追いつけるだろう
霊体化し、家を出る
上に大きく飛んで、衛宮邸へと向かう道を探せば……見つけた
民家の屋根に降りて後を追う
そして2人の前に立つ
心境は……正直複雑だ
擦り減った心に未だ焼き付いて離れない騎士王と若く未熟で、現実を知らない己
「アーチャー?
何か用か?」
「ああ、そうだとも衛宮士郎。
投影、開始」
世界に映し出すは最も手に馴染んだ干将・莫耶の二振り
それを見たセイバーが衛宮士郎の前に入る
「アーチャー!
貴様、何のつもりだ!?」
「おっと、紛らわしい真似をしてすまないセイバー。
今更敵対する意思は無い。
衛宮士郎、これを受け取れ。
貴様に必要なものだ。」
「俺に……必要なもの?」
「ああ、今は分からなくともその内分かる。
その時まで肌身離さず持っておけ。」
「持っておけったって……」
士郎は干将・莫耶の二振りを受け取るとそれをしげしげと色々な角度から見て、戸惑った様な言葉を発する
「精々、一般人に見つからない様にする事だな。
それとセイバー、決戦の日には宜しく頼むぞ。」
「外で渡しておいて、見つからない様にするんだな、は性格悪すぎるだろ!」
性格悪い、その士郎の言葉を聞いてアーチャーはニヒルな笑いを浮かべる
「性格が悪い、か。
ああ、知っているとも。
だが覚えておけ衛宮士郎、性格の悪さも時には必要だ。
性格が良くて生き残れるのはほんの一握りの実力者だけ。
お前の様な未熟者は卑怯な手を使っても生き残れるとは限らん。」
「卑怯な手を使って生き残ったって、いつかそれは自分に返ってくるんだ。
なら使わない方がいいに決まってる。」
「ハ、綺麗事だな。
世間知らずもここまで来ればいっそ清々しい。
周りの人間に聞いてみるといい、大人になってやった事で卑怯だと後悔することは無かったか、とな。
学生特有の人生の悩みか何かだと思って答えてくれるだろうな。
まあ、貴様もそれくらいの年頃だ、丁度いいだろう。」
霊体化し、アーチャーはその場を去る
残されたセイバー組はアーチャーの言い残した言葉と渡された剣の意味を考えながら、人目を気にして急いで帰って行った
そして衛宮亭
居間のテーブルの上に、干将・莫耶の二振りを置き、それを挟む様に士郎とセイバーが座る
「…………コレ、どういうつもりで手渡して来たんだろうな?」
「分かりませんが、今までの言動から考えるに、アーチャーは無駄な事はしないでしょう。
敵であるなら、そもそもこれについて考えさせる事自体が目的、なんて事もあるでしょうが、現時点では1番信用の置ける味方同士です。
その様な真似はしないでしょう。
であるなら、彼の言葉通り、これがシロウへと何らかの影響をどこかのタイミングで与えるものだと考えるのが普通です。
取り敢えず言われた通りに持っておくのが良いかと。」
「持ってろったってなぁ……。
……何とか考えてみるかな。
それで、話は変わるけどアーチャーのもう一つ言い残した『後悔した事』。
藤ねえとか、舞弥さんにも聞いてみる気ではいるけど、今丁度いるし、パートナーだし、俺に稽古をつけてくれる師匠でもあるセイバーにまず聞いてみたいと思って。
勿論、言いたく無いなら断ってくれても良いんだけど……」
「いえ、シロウの心遣いはありがたいですが、後悔といえば私の願いに直結するものです。
マスターたるシロウには話しておくべきでしょう。」
思いを馳せる
何もかも間違えた人生だった
だが、その全てを話すのは流石に長い
抜粋して話すのなら……やはりあの時の事だろうか
「まず、私の真名アルトリア・ペンドラゴンについて、即ちアーサー・ペンドラゴンについてシロウはどの程度知っていますか?」
まずは相手の認識について知る
前提が異なるのならそれ以前から話す必要がある
「ええっと、聖剣エクスカリバーの担い手、ブリテンの国王、責任を背負う国王であり清廉な騎士、とかかな。」
それを聞いてセイバーは眉を顰める
「つまり、具体的にどんな事をしたかは知らないと。」
「うっ……ハイ、その通りです。」
「……まあ、シロウからすれば遠い国の遠い昔の話ですからね。
仕方ないでしょう。
私は前王ウーサーが白き邪龍と化したヴォーティガーンに対抗するために赤き龍の化身として創り出した存在です。
ブリテンの片田舎で身分を知らぬままに育てられ、夢の中でマーリンに師事を受けていました。
やがて王を選定するカリバーンを引き抜き、正統な王となりました。
私について来てくれる多くの騎士達を率いてヴォーティガーンを討伐し、国を纏めていました。
しかし当時のブリテンは異民族から何度も襲撃を受け、また、作物も育たぬ土地であり、更にはローマからの侵攻もあるなど問題は山積みでした。
国は疲弊し、度重なる争いで土地は荒れ続けました。
国を救うために護るべき民を切り捨て、騎士達の中からそんな私に呆れ離反する者もいました。
トリスタン卿が離反する時にはこう言われたものです。
『王は人の心が分からない』と。
当たり前ですよね、私は王として多くを救うだけの天秤の様な存在となっていたのですから。
残ってくれた騎士達も私が至らぬばかりに諍いを起こしました。
私が女であり、子を残せなかった事で妃であったギネヴィアは親友であったランスロット卿と恋に落ち、それを突き止め糾弾したアグラヴェイン卿とその弟であるガレス卿、ガヘリス卿はランスロット卿に殺されました。
海を渡った彼を追いかけている間にモードレッド卿が反旗を覆し、ガウェイン卿が戦死。
戻って来た時にはモードレッド卿により国は荒れ果て、戦争の果てに残ったものは血で染まった大地、地面に突き刺さった数多の武具、そして大地を埋め尽くす騎士達の死体だけでした。
しかし、それでも私は聖杯に願えばやり直しが叶うと、そう考えていました。
前回の聖杯戦争に参加し、最後の最後まで勝ち残りましたが、あと一歩というところで敗退。
国のため、民のため、騎士達のためと臨んだ聖杯戦争すら勝てぬ始末。
私は…………私は何もかもを間違えたのです。
だから私は私が王である事を諦め、より良い人物にブリテンを纏めてもらう事を望むのです。」
そのセイバーの独白を聞いた士郎は少し考え込む
アーサー王という世界有数の知名度を誇る英雄ですら己のした事に後悔を持っている
アーチャーの言っていた卑怯、ということに関しては多くの為に小を切り捨てた、辺りがそれにあたるだろう
「今話を聞いただけだから細かい事は分からないけどさ。
少なくともセイバーは自分のしたことに後悔しているんだろ?
だったら人の心が分からないわけじゃない。
自分の心を殺してしまっていただけだ。
……俺もさ、実はあるんだよ後悔していること。
俺の場合は生き残った事だ。
多くの人が死んでいった10年前の冬木の大火災、それに巻き込まれて俺以外の多くの人が死んだ。
その中には血の繋がりがあったはずの両親やもしかしたら兄弟もいたかもしれない。
何の意味もなく死んでいった人達のために、生き残った俺がその人達の分まで意味を残さなきゃならないって、そう思ってる。」
それを聞いたセイバーは10年前の火災と聞いて即座に悟る
聖杯戦争による余波だと
そして最終局面まで残っていた私に責任の一端があるのだと
「それは!
それは……聖杯戦争があったから。
つまりは私達、前回の聖杯戦争に参加した者達の罪です。
シロウが背負う事なんて無いのですよ。」
「ああ、そうかもしれない。
けどさ、今更そんな事知ったって割り切れるもんじゃ無いんだ。
それはセイバーだって同じだと思う。
セイバーの話を聞いてるとさ、確かにセイバーにも責任はあるのかもしれないけど、多くの場合、他の人にも責任はある筈なんだ。
王だからって、それを全部背負う必要は無いと思う。」
士郎の言葉には一理ある
しかし、だからと言って……
思い起こすのは前回の聖杯戦争で2人の王に突き付けられた事実
分不相応で無謀な理想に周りを巻き込み、国全てを巻き込んで破滅した
国民に騎士達に、ありもしない夢を見せ、煽動したにも関わらず纏めきれず、誰も彼もから何かを奪ってしまった
それが罪と言わずして何と言うのか
「…………殆ど同じな俺たちだけどさ。
1つだけセイバーと違うところがあるんだ。」
違うところとは?
ふと漏らした様な士郎の言葉にセイバーの思考が現実に戻る
「……俺はやり直しだけは望まない。
例え本当に過去を変えられるとしても、どんなに酷いことがあったとしても、その道を選んだから手に入れられたものだってあるんだ。
爺さんと、舞弥さんと、藤ねえと会えて、凛や桜、カイさん、そしてセイバー。
色んな人と知り合えて、色んな事を学べた。
冬木の大火災があって良かった、とは絶対に言えないけどさ、そうやって手に入れられた物だけは絶対に手放せない大事な物なんだ。
過去をやり直すっていうのは、そんな色んな物を手放すのと同じなんだ。
セイバーもさ、最後は酷い結末だったかもしれないけど、その途中には大事なものが沢山あったんじゃないか?」
その言葉だった
正しく士郎のその言葉がセイバーにとっての救いの一言だった
確かにあったのだ
皆と喜び、笑い、民も笑顔を浮かべていたその時が
僅かな安らぎの時が
…………ああ、完全に忘れていた
どうして私が王を志したのか
マーリンが選定の剣を引き抜こうとした私を止めた時に私は……
そうだ
こう答えたのだった
「『多くの人が笑っていました。
それはきっと、間違いでは無いと思います。』」
……征服王の指摘した通りだ
私の我儘で多くの人を巻き込んだにも関わらず、当の私はその願いを忘れ、現実だけを見て、勝手に絶望し、騎士達の献身もかつての安寧も何もかもを無かったことにしようとしたのだ
酷い王ですまない
過去は変えられず、また変えるべきものでは無い
そんな当たり前のことにも気付けず、多くの人に迷惑をかけた
だから、せめて未来だけは守ろう
既に死んだはずのこの身、未来の為、そして今だけは我がマスターの為に捧げよう
それが贖罪になると信じて
長い、長い時を経て漸くセイバーは心からの微笑みを浮かべる事が出来た
間違いや罪は無くすものではなく、認め、贖うもの
正しさや思い出は決して忘れてはならぬものであり、己が信念の決して燃え尽きぬ薪とすべきもの
そして信念とは、それが明確な間違いでない限り決して曲げてはならぬもの
その全てを久しく忘れてしまっていた
だが、もうセイバーはこれらを絶対に忘れる事は無いだろう
今回のMVPは士郎、と見せかけて実はアーチャー
今後の為に布石をばら撒きつつ、クリティカル連発しているので
同一人物じゃんとか言ってはいけない
なお、勝ち筋を拾うには後4つのコミュニケーションイベントでクリティカル連発が必要
ところで皆さんはガチャ如何でした?
私は周年ガチャで水着沖田オルタ、デスティニー召喚でドゥルガーを引きました
勿論、トネリコも確保済みです
やっぱ書くのが1番の触媒なんだよなぁ
願わくばこの小説が皆さんの触媒とならん事を
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