「シロウ、ありがとうございます。
貴方のお陰で私は私の夢、原動力を思い出せた。
以前語った聖杯にかける願い、あれは忘れて下さい。」
晴々とした笑みを浮かべ、礼を述べるセイバーに士郎は自分の何気ない一言で目の前の人物を救う事が出来たという事に気付く
いや、そんな、と取り敢えず否定から入ろうとしたところで、セイバーは座り方を変えた
正座から片膝を立て、頭を下げる
さらに普段服から戦闘用のバトルドレスへと装いを変えた
「そして……騎士の誓いをここに。
我、アルトリア・ペンドラゴンはこの聖杯戦争において貴方を唯一無二の主人とし、決して貴方の信頼と期待を裏切らぬ事を誓いましょう。」
突然、畏まられて慌ててそれをやめさせようとした士郎だったが、セイバーの真剣な言葉と声色にやめさせようと伸ばした手を止める
「なら、俺もセイバーに誓う。
例え何があってもセイバーの事を信じる。
実力を、判断を、勝利を。
だからセイバー、この馬鹿げた聖杯戦争を終わらせる為に力を貸してくれ。」
「そのオーダー、完璧にこなしてみせましょう。」
「先に言っておくわ。
私が貴方に謝ることは1つだけ。
貴方と貴方の家族について誤解してた上に余計なちょっかいを出し続けていた事よ。」
「実質2つじゃないですか。
そうやって自分の非を出来るだけ認めようとしないのどうかと思いますよ。」
「む…………本当にそういうところ育ての親に似たわね。」
「褒め言葉です。」
ジャブの打ち合いと言えるような言葉の交わし合い
けれどそこには今まであった棘は無くなっており、どこか穏やかな雰囲気を感じさせる
「それにしても少し意外でしたね。
てっきり実父のした事に当主として責任の一つくらいは感じているものと思っていました。」
「父のした事と私のした事は全く別の話。
確かに父の考えや調べが甘かった事で桜には苦労かけたでしょうね。
それに同情する事はあっても余計に重荷を背負うつもりもないわ。」
その言葉に対する桜の反応は理解と納得だ
「まあ、妥当な話だと思いますよ。
強いて言うなら同情も必要ないですね。
辛くはありましたが、そのお陰で今の両親と出会え、現代の魔術師の中ではトップクラスにまで成長できましたし。
今では父と貴方のどちらにも実力で勝てるでしょう。」
これが間桐桜であったのなら欠けた自信と、唯一の大切な人に対する執着心、そして劣等感に苛まれ、何か大きな歪みがあれば暴走するにまで至っているほどだったろう
しかし、桜・ルフェイは人類史史上で3本の指に入る魔術師であるモルガン・ルフェイから教えを受け、現存する魔術師の中で最高峰の集う時計塔と繋がりがあり、己の才も実力も間違いなく現世最高峰であると自認している
「その言葉には心底ムカつくけど認めざるを得ないわね。
確かに貴方は私より強いわ。
まあ、それもいつまで続くか分からないけれどね。」
そう言って不敵な笑みを浮かべる遠坂だが、自分がここに来た理由を思い出して頭を振る
「って違う違う。
喧嘩売りに来たわけじゃないってのに……。
謝るのは2つだけだけど……他にも言いたい事があるのよね。
家の地下で見た夢、お互いの記憶を覗いてたわけよね?」
「……ええ、恐らく。」
記憶を見た事、というよりも愉快犯的な己のサーヴァントを思い出して苦い顔になる桜
行動1つ1つを見る限りは愉快犯と言うしかないのに、最終的に結果をプラスに持っていく計算高さ
流石はマーリンと言うべきか、腐ってもマーリンと言うべきか……
どっちかと言えば後者ですね、と結論付ける
「あれを見て今の貴方がどれだけ大きな奇跡の上に成り立ったのかがよく分かったわ。
本ッ当に良かった……!
可能なら私があの間桐のクソ爺に引導を渡したかったけど、それももうあの人達にやられちゃったし…………どっかに引っ越した間桐鶴野でも探し出して一発ブン殴ろうかしら。」
「やめてあげて下さい。
それに間桐の家にいた時点でアルコール依存症っぽかったので、生きてるかどうか怪しい所がありますよ。」
「じゃあ諦めるわ。
とにかく、今の今まで良く元気に生きて来れたわね。
貴女のその奇跡と巡り合わせには感謝と感激しかない。」
桜の体を強く抱きしめる遠坂に、桜は少し迷った後に桜も遠坂の記憶を見て思った事を吐き出す
「私も……すみませんでした。
姉さんがどんな気持ちで過ごしていたのか、想像こそしていましたが、意地を張り見て見ぬ振りをしていました。
師のいないまま、残った資料だけで一角の魔術師にまで成長する事がどれほど難しい事か。
そして、その成果を認める者も勿論おらず、いるのは廃人になった母とエセ神父のみ。
恵まれた環境も、その反対も知っていたのに……」
「バカね。
私がその程度で音をあげるワケないでしょ。
って強がっても無駄か。
確かにキツかったわ。
けど、その程度の苦難で諦めてたら師がいようがいまいが、魔術師を目指すなんて夢のまた夢、でしょ?」
微笑みと共に遠坂が語った言葉に桜も笑みを浮かべる
「……ええ、全くもってその通りです。」
ドバァン!!!
勢いよくドアが開かれ、轟音を立てる
その突然さに2人は抱き合ったまま、ビックゥと体を跳ねさせ扉の方を見た
哀れにも扉はあまりの力の強さに蝶番が耐えきれず、バタン、と床に倒れ、扉があった先には赤毛の偉丈夫が立つばかり
「……何か用ですか征服王。」
「む、姉妹で夜伽の真っ最中だったか?
それならば済まないことをしたな。」
「「違う!!」」
「なに、恥じる事はない。
同性、近縁、しかしてそれがどうしたという話よ。
流石に近縁は余も経験は無いが、同性ならば……」
「お前は何の話をしてるんだ!!??」
唐突に始まった性癖の暴露に顔を真っ赤に茹で上げる2人
何かとてつもない事を言い掛けた征服王にマスターであるエルメロイ2世が渾身のツッコミで阻止する
「いや、本当にすまないレディ。
タチが悪い事にコイツに悪気は一切無いんだ。
許せとは言わないが、忘れてくれると助かる。」
「こ、ここ、こっちだって忘れられるならそうしたいわよ!!」
遠坂の叫びに桜が勢いよく頭を縦に振って同意する
「ライダー、お前は少し慎みというものを覚えるべきだ。
それと、すぐに話を逸らす癖もどうにかしろ。」
「おう、そうであったな。
この国に『同じ釜の飯を食う』という諺があるのを知った。
故に我ら世界を守る為に戦う者同士、1つ食卓を囲まんと思う。
キャスターのマスター、既にお前の親は同意したぞ。
貴様等2人と、また、そのサーヴァント2人は如何にする?」
キョトン、とする遠坂に対し、桜は両親が征服王に押し切られた事を察した
その夜、征服王が(ほぼほぼ無理やり)集めた計14人は新都のとあるお好み焼き屋に来ていた
その店の一角で幾つかの卓を囲んだ彼らの中心に大きなジョッキを持ったイスカンダルが立つ
「まずは貴様等、よくぞ集まってくれた。
我らこの地に集まりし英霊とそれを使役するマスター、本来争う身なれど今は同じ志を持つ同胞、盟友である。
決戦の日は近い、だが今は酒を飲み、現代の食事に舌鼓を打ち、英気を養おうでは無いか。
ここに、征服王イスカンダルが酒宴の始まりを告げる!
大いに飲み、食い、語らい、笑い合おうでは無いか!
乾杯!!」
手に持ったジョッキを大きく掲げてから、その中身を一気に飲み干して行くイスカンダル
それを合図に、他の参加者達も若干テンションにズレはあるものの、手に持った飲み物に口をつけた
「……本当にこういう催し物に関しては機会を逃さんな、征服王。」
「だろう?
聞くところによれば、10年前この地に顕現した余は聖杯問答なる酒宴を主催したそうだな。
我ら英霊、異なる時代を生きた者同士、やはり武を競い合うだけでは実に勿体無い!
やはり言の葉を交わさねば聖杯戦争を堪能したとは言えんだろうさ。
特に今回は英霊同士が協力し合わなければならない異常事態、言い換えれば特別な聖杯戦争よ。
ならこの特別さも心ゆくまで堪能せねばな。
それに、気取らぬ家庭の味も良いが、こうしてその地、その時代の美食や酒を堪能できるのも英霊の特権だろう。
おおい、酒の代わりを持て!
次はこの麦酒ではなく、ショウチュウとかいうのを貰おうか!」
ドスン、と大きな音を立てて勢いよく胡座で席に戻ってきたイスカンダル
大ジョッキの中身を一息に飲み尽くして店員に声を掛けた
注文を受けた店員は、その体格の良さと張りのある大声に萎縮し、慌てながら厨房へと引っ込んでいった
それを見ていたセイバーがイスカンダルに注意を促す
「征服王、貴方は少し声を抑えるべきだ。
この時代の人達にとっては迫力がありすぎて、相手が萎縮してしまっている。」
「む、そうか?
余は自他共に認めるフランクな王なのだがな。」
「それは貴方をよく知っている者達の評価だろう。
少しは自分の事を客観的に見ると良い。」
「酒の席でそんな小言を言ってくれるな。
折角の料理と酒が不味くなる。
酒の席でくらい、その真面目さはどこかにしまっておけセイバー。」
「やあやあ、モルガンの夫君。
君には以前から前回の聖杯戦争について色々と話しがしたいと思ってたんだよね。」
「カイ、此方に。
あの女狐とは一切話さない様に。」
「異世界のマーリン!
私に似た声で猫撫で声を出さないで頂きたい!」
「2人とも酷いなぁ……」
「ああ見ると英霊といっても同じ人である事には変わりないってよく分かるわよね。
1人だけ人じゃないのがいるけど。」
「とはいえ、頭のネジがどこか緩んでいるか外れているのが普通らしいですけどね。
その点、ここにいるのは比較的まともと言っていい人達ですよ。」
「魔術師だってその頭のネジが緩んでるか外れてる人種でしょ。
それにサーヴァントはその人の性格によっても呼ばれる事があるのよね。
今回はいないけど、アサシンクラスのハサンとかそうよね。
ん、これ美味しい。
セラもリズも食べよ?
なんかアーチャーが凄い焼いてくれてるし。」
(肩身が狭いし、心当たりが一切無いのにあのメイドさんにめっちゃ睨まれてる……隙を見て向こう側に行こう。)
「いや全く、何度奥方の持つような高ランクの妖精眼があれば良いと思った事か。
それがあれば誰が何を考えているのか全て分かる。
つまりwhy done itの謎が一瞬で片付けられるんだ。
余計な謎解きなんぞする事も無くなる。
私は時計塔のトラブルシューターじゃないんだぞ……!」
「聞く限り片っ端から厄介ごとを引き込んでるらしいなエルメロイ2世。
あのストレスとはあまり関わりのなさそうな小僧らしい顔が、たった10年でよくもまあここまで顰め面が似合う男になったもんだ。
同情だけはしておくよ、絶対に巻き込まれたく無いがな。」
「幾つか余計な言葉が混じっているよミスター。
まあ、そのおかげで胸を張って、とまでは言えないがあの『王の軍勢』の末席くらいにはいれる様になれたと思う。」
何となくで最初に別れた席から時間が経つにつれて、席替えが起こっていく
サーヴァントの集まった席、大人の集まった席、未成年で集まった席から王族に関わるサーヴァントや元サーヴァント、男性陣、そして女性陣といった具合に
「そも王とは如何なる者か。
余は貴様らにこの問いを投げたい。」
「その類の話、貴方は本当に好きだな征服王。
前回も似たような事をしていたぞ。」
「それは余ではない余であろうが。
一切覚えておらん!
故に聞かせよ、ブリテンを守り、滅ぼそうとし、見守ったお前らの理想の王というものを。」
その一角、英霊達の集う場所、その大半が王族に関係のある者であった
そこに征服王がいるとなれば自然とそういう話になる
「私にとって、王は国という大きな物語を最前線で紡ぐ者でしか無いよ。
そして国という大きなうねりを乗りこなさないといけないから、自然とその物語は笑いあり涙ありの名作になる。
だから個人的には好きな類の人間だ。
それが名君であれ、暗君であれね。」
「……モルガン。
以前貴方が言っていた事、薄々分かってはいましたが今確信しました。
たしかにこのマーリンは此方のマーリンよりタチが悪い。
幾らマーリンでもあそこまで無責任ではない。」
「…………」
「モルガン?」
「……気にするな、少しは見れる顔になったと感心していただけだ。」
セイバーが話しかけてから、答えも返さずその顔を見ているだけだったモルガンは一言返すと視線を外してコップに口をつける
たった半日も経たない内にアルトリア・ペンドラゴンは大きく変わった
否、戻った、と言うべきだろう
その変化を齎したのは……セイバーのマスター、衛宮士郎か
やはりこの聖杯戦争が奴にとっての転換点だったか
「アルトリア、後日で構わん。
もう一度我が家に訪れるが良い、決戦への対策に関して話がある。」
セイバーにだけ聞こえるように小声で呟いた
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水着鯖は鈴鹿とメリュ子の2人逃しました
あのメリュ子のメスガキムーブ好きだから欲しかったんだけどなー
流石に追い課金はなー
それはそうとモルガン陛下とAAがこれ以上なく夏を満喫してて良かったわ
あと、闇の精霊王くん、黒幕ムーブしてるだけのただのお助けキャラで笑ったわ
ウミヌンノスのくだりとか、ただ主人公に注意する為だけに黒幕ムーブしに来たのかよ
凛と桜の姉妹は互いに記憶を見たことで特に拗れることも無く解決
MVPはマーリン
この宮廷魔術師、王以上に人の心が分からないのでは?