Hulu、リリなの全シリーズも配信してるとか神かよ
猶予期間4日目
街の道中でセイバーと衛宮士郎はカイとばったり出会っていた
「こんにちはカイさん。
丁度そっちに向かう所だったんだけど。」
「ああ、モルガンやエルメロイ2世、アインツベルン達なら居るから俺個人への用事じゃなければ平気だろう。
俺は用事があるから、少し家を空ける。
で、俺への用件はあるのか?」
「いや、俺はイリヤに、セイバーはモルガンに用事があるんだ。」
「そうか。
なら特にセイバーは心して行くんだな。
相性が悪いだろ。」
「心遣いは有難く。
しかし、貴方は彼女の夫でしょう。
良いのですか、そんな事を言って。」
カイがセイバーに軽口を叩くが、セイバーもそれを無視も変に受け取ることも無く、同じく軽い口調で冗談混じりに答える
「聞かれてたら後が怖いが……まあ、この程度なら大丈夫だろう。
じゃあ俺はこれで。
時間が合ったらまた後で会うかもな。」
歩き去って行くカイの後ろ姿を見てからまた歩き出すセイバーに士郎は感じた事を口に出す
「セイバー、カイさんとは仲が良いのか?」
「仲が良い、というほどではありませんが、前回もモルガンのマスターとは思えないほどに気遣いのできる御仁でした。
なので、私もそれなりの敬意を持って接していますが……その程度です。
勘繰る必要はありませんよ。」
「そうか?
なら良いけど。」
振り返って答えたセイバーは、また前を向いて歩き出す
答えに一応納得した士郎もその背中を追って歩き出した
「……一言くらいは断っておいても良かったかもな。」
それから少しして、自宅に残っていたモルガンは自身の結界内にセイバー達が来た事を感知した
作業の手を止め、腰を上げる
「マーリン、貴様は怪我人らしく大人しくしていろ。
決して覗くな。」
「はいはい、ボクもそこまで無粋じゃないよ。」
嘘をつけ、という言葉は口に出さないでおく
ただマーリンを睨みつけ、マーリンは軽く肩を竦めてそれに答える
バタン、と音を立てて扉を閉められると同時、結界で部屋を囲われた事をマーリンは悟った
それと同時、胸に走る傷の痛みに顔を顰めてからマーリンはベッドに横になる
「まあ、今回はお言葉に甘えようじゃないか。
感情を摂取したいのは山々だけど、そう何度も龍の逆鱗や妖精の翅に不用意に触る気もないからね。」
そう嘯きながら目を閉じた
ルフェイ邸へと来た士郎とセイバー
その2人を迎えたのは彼らにとって意外中の意外、モルガンだった
「……アインツベルンならこの先の居間でエルメロイ2世とゲームに興じている。
用があるならさっさと行け。
アルトリアは此方に来い。」
返事を待つことなく背を向けて地下に降り始めたモルガン
少しの間、2人は互いに顔を向き合わせた後、一言「また後で」と言い合ったあと、別れてそれぞれ歩き始めた
セイバーは先に降りて行ったモルガンを追って階段を少し急いで降りていく
既に階段を降り終えていたモルガンは此方を一瞥することも立ち止まることも無く、悠々と歩いていき、幾つかある扉の一つに入っていった
それにムッとしながらも、セイバーは黙ってその後を追う
追ってその扉を開ければ、その先は1つの部屋だった
それまでの石でできた寒々しい広間とは異なり、暖かなランプが部屋の中を照らしていた
壁には本棚があり、そこには革で閉じられた魔術書と思われる本が幾つも並んでいた
そしてモルガンはその部屋に置かれた大きめの作業机に備え付けられた椅子に座っていた
「遅い。
何をモタモタしていた。」
「……たった十数秒程度で遅いと感じるのなら、それは申し訳ない事をしましたね。
そもそも貴方が私を招いたのでしょう?
ホストとしてその態度ではたかが知れますね。」
「ふん、少しは言うようになったものだ。
それ程まであの小僧を気に入ったか?
若い燕を囲うのも程々にしておけよ。
外見を保とうが貴様の中身は往年のものだろう?」
「と、歳の事を言うのは卑怯が過ぎるぞ妖精姫!
……というより、貴様、気付いて……」
モルガンの悪態に対して、セイバーも嫌味で返すが、更にその返しでアルトリア個人として最も痛い部分を突かれて思わず大声で突っ込んでしまう
しかし、それと同時にあることに気づく
目の前の仇敵が、自分が未だ死んでいない事に気付いていたのだ
「当たり前だ。
はあ、愚か愚かとは思っていたが血迷って世界と契約するとは耄碌するのも良い加減にしておけ。
大抵の場合、碌な死後にはならん。
まあ、貴様の存在は世界も喉から手が出るものだ。
この聖杯戦争もどうせ世界が余計な手を回したのだろうな。
足りないピースをそれ程までして埋めさせる気か。」
「……足りない……ピース?」
何故か説教のような愚痴がモルガンの口から流れ出てくる
セイバーも世界と契約する事がどれ程下策なのかは知っていた為、思わず目を逸らすが、モルガンの話の中に気になる言葉が出て来た
「ああ、それはまだお前が知るべき事ではない。
忘れておけ。
話とは他でも無い。
ヴォーティガーン対策に『偽・霊脈閉塞型兵装』をくれてやる。
十三拘束も再現してあるから威力も十分だろう。
それで必ず奴を屠れ。
あれだけは聖杯に餌を与える羽目になっても倒しておかなければならん存在だ。
そして終わったら可能な限り早くギルガメッシュとの決戦の地に駆け付けろ。
業腹だが、貴様が勝利の鍵だ。
他のサーヴァントでは意表は付けようが、決定打にはならん。」
まさかの言葉にセイバーは一瞬固まった
仇敵モルガンが……私の事を勝利の鍵だと……?
確かに我が身に起きた様な事がモルガンにも起きたのだとしたら、多少の変化には頷ける
だが、決して相容れぬ存在であるはずの私にそんな事を言うとは
「不思議そうな顔だな。
だが、事実は事実だ。
それを受け入れられない愚図などでは決して無い。
私も貴様抜きで事が運ぶのならそうしている。
今回はそうではなかったというだけだ。」
「で、ですがそのロンゴミニアドがあればギルガメッシュも倒せるのでしょう?
そちらに使おうとは思わないのですか?」
「確かに倒せる。
だが確実では無い。
最悪なのはギルガメッシュとヴォーティガーンのどちらも倒せなかった場合だ。
ならば絶対に倒せると断言できるヴォーティガーンに『偽・霊脈閉塞型兵装』を用いるのが良策。
そしてギルガメッシュにはまた別の策をぶつける。」
その別の策について具体的な話は全く無いが、それ以外は頷ける話ではある
だとすれば気にするべき点は1つ
「そのギルガメッシュにぶつける別の策とやら。
勝算はあるのか?」
「五分五分……といったところか。
上手くいけば勝利は確実だが、その前提条件が崩れれば全てが無に帰る。
だがギルガメッシュに『偽・霊脈閉塞型兵装』を防げる宝具がないとも限らない。
五分五分か、勝算が不明かのどちらに賭けるかと言えば、まだ五分五分の方がマシだろう。」
その前提条件には恐らく私がギルガメッシュとの戦闘に間に合う事も含まれているのだろう
余りにも責任重大だ
国ではなく世界を背負って戦えと言うのだから
……だが絶望とは何度も相対して来た
あの魑魅魍魎が集うブリテンに比べれば、世界中の英霊が味方となり、勝算の見える戦いをこちらから仕掛けられるだけ大いにマシというものだ
「了承した。
不本意ではあるが、貴方の予言は正しかった。
私は確かに遥か昔に出したはずの答えを、今の時代になって思い出す事が出来た。
魔女としての貴方にではなく、我が姉にして、我ら円卓を支えてくれた湖の精霊の別側面の貴方に恩を返すとしよう。」
「ああ、精々役に立つがよい。
…………10年前、私は貴様を『正しさと言う鎖に囚われた阿呆』と称したな。
あれを撤回するつもりは一切無い……無いが……それで言うならば私は『復讐という底なし沼に自ら進んだ盲』だったのだろうな。
ウーサーの胤もそう良いものでは無かったらしい。
それで作られた姉妹が揃って己が道に惑ったどうしようもない小娘だったのだから。」
「……それは……」
突然、モルガンの口から語られた己を卑下するような言葉
素直に驚いた、同時に納得もした
側から見れば正しくその通りだったのだろう
……だが、私が姉の座るはずだった席を奪ったのもまた事実
それはきっと間違ってはいなかった
…………いや、あの時のブリテンは誰もがきっと間違ってはいなかったのだ
前王とマーリンが私という存在を作り出した事も、私が選定の剣を抜いた事も、島の意思が国を滅ぼそうとしたのも、モルガンが私に怒りを覚えたのも
個々を切り離して考えれば至極当然の事だった
間違ってはいなかった、だが明確な正解を選んだわけでもなかった
そしてその中途半端さのツケだけが…………全てに公平に降り注いだのだ
間違いも正解も積み上げることは出来ず、しかして、その選択の責任だけは過剰なまでに積み上がっていったのだ
「……いや、世迷言を吐いた。
忘れろ。
そちらからの話は……ないな。
ではさっさと去るが良い、私にはまだやるべき事があり、それはお前もまた同じな筈だ。」
その独白の後、姉は元のモルガンに戻っていた
もしかしたらこの独白すらも私の心を縛るための嘘であったのかもしれない
けれど、私にはどうしてもその言葉が嘘であるとは思えなかった
「あーーーッ!!!!
ちょっとそれ卑怯よ!!」
「ハメ技を使わないだけ有り難いと思え!
ただのコンボだ、対策してない方が悪い!!」
イリヤという見た目の幼い子供に対して真剣に対戦ゲームで遊んでいる時計塔の頂点というとんでもない光景が衛宮士郎を待っていた
更には、それぞれの後ろにライダーとメイド2人がいてその様子を見守っているのだから、場の混沌さは物凄い
「あ、お兄ちゃん!
ちょっと待っててね、今すぐこの大人の風上にもおけないエセロードに引導を渡すから!」
随分と熱中してた筈なのに最初に気付いたのはイリヤだった
一瞬だけこっちを見てからはまた画面に目を向けて物凄い勢いでコントローラーを操作し始めたが
「お、おう。」
「面食らったかセイバーのマスター。
だが、幾つになっても夢中になれる事があるという事はいい事よ。
退屈は人の魂そのものを腐らせる毒、それがなんであろうとも退屈を紛らわせる事は魂に潤いを与える行為そのものである。」
イスカンダルがそう纏めるが、その後ろでわー、だのぎゃー、だの悲鳴が上がっていては締まるものも締まらなくなる
その言葉には納得しかないが、苦笑いが止まらない
「分かりますよ先輩。
夢中なのは良いですけど、この光景には苦笑いしか浮かびませんよね。
それに、これでエルメロイ先生が勝ってしまうとイリヤちゃんは多分、先輩の事を放っておいてリベンジに躍起になるでしょうし……
先生には少し悪いですけど……」
キッチンの方から出てきた桜が士郎の思考に賛同し、イリヤスフィールに用があるのを見抜く
更に下手をすれば対戦が長引く事を予想し、1つ悪戯をする事を決めた
自身の影から2つの触手を伸ばし、ゆっくりとエルメロイ2世へと忍ばせる
それに気付いた観戦者にしーっ、と静かにする様にジェスチャーで伝える
そして一定の距離になった途端に触手を一気にエルメロイ2世の脇に突っ込み、脇腹をくすぐった
「うひゃいッ!?」
その途端、情けない声を上げながらエルメロイ2世は飛び上がった
それによりコントローラーの操作が狂い、その隙にイリヤはエルメロイ2世の操るキャラクターにトドメの一撃をさした
「わーい!
勝った勝ったー!
サクラ、ナイスアシストよ!」
「それは良かったです。
では、先輩の話、聞いてあげてくださいね。」
「一体全体、何してくれて」
「まあ、そう怒り立つな。
次は余が相手になろう、大きめのコントローラーがあったよな、どこに行った?」
イリヤスフィールが勝った事で、イリヤスフィールはゲームを中断し、士郎の話を聞く気になったようだ
対してエルメロイ2世は邪魔をされて負けた事で怒って立ち上がるが、それを宥める様にイスカンダルが間に入り、話を逸らした
「場所を変えても良いか?
少し落ち着いた場所で話したいんだ。」
「良いわよ、じゃあ私の部屋に行きましょ。」
この冬木における3組目の捻じ曲がった兄妹
その捻れを戻そうという試みが始まる
はい、アルトリアとモルガンの姉妹コミュニケーション回でした
因みにアルトリアさんがこのルートを通った後に両者がカルデアに召喚される様な事があると、アルトリアさんからモルガンへの好感度は改善してるけど、モルガンからアルトリアへの好感度は改善してない&円卓はアルトリアとモルガンの事を全く知らないので、物凄く話が拗れる
特にモルガンの子供達の辺りとか死ぬ程拗れる
モルガンも更に拗れる
アルトリアさんだけは余裕たっぷりに笑みを浮かべてる
そして余計拗れる
それと総合評価が遂に30000ptを突破しました!
皆様のご愛読のおかげで、本作はまた1つ大台に登る事が出来ました
これからも本作『モルガンと行く冬木聖杯戦争』をよろしくお願いします
という事で、感想、評価よろしくお願いしまァす!!