モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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はい!今回も早かった!
褒めて褒めてー


17話

「セラとリズは廊下で待ってて。」

 

「し、しかし2人きりなど危険では!?」

 

「シロウにはセイバーが居なくて私にはバーサーカーがいるのに?

それに魔術師としての腕も私の方が上よ。」

 

イリヤの命令に対し食い下がるセラだったが、返ってきたイリヤの正論に返す言葉も無い

目の前で敵扱いされたと思ったら、敵扱いすらされず、ずばずばと心に刺さる事を言われた士郎はイリヤの後ろで胸に手を当てて心の痛みに耐えていた

聖杯戦争が始まってからあらゆる方向からの精神攻撃が来て辛い……

……辛い

 

「……何かあったらすぐに声を上げてくださいよ。」

 

「セラ、心配しすぎ。」

 

「貴方は心配しなさすぎです、リーゼリット!

万一のことがあってからでは遅いのですよ!?」

 

「分かった分かった、ホラ行くよ。」

 

「なんで私が聞き分けのない様な言い方なんですか!?」

 

そのままセラというイリヤのお付きの人はもう1人のリーゼリットというらしい人に連れて行かれた

言い方はキツイけど、なんか同情してしまう

イリヤとあのリーゼリットという人に振り回されてるんだろうなぁ……

 

「じゃ、改めてお話ししましょ。

お兄ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤに割り当てられた部屋の中に立ち入る

中は以前、遠坂達と共に入った部屋と間取りは同じで、少し散らかっており生活感がある程度の違いしかない

イリヤは跳ねる様にベッドに飛び乗り、ベッドの上に座った

俺はどこに座ったものかな……と周りを見渡し、目に入った椅子に座ろうとするが、その前にポンポンという音が聞こえて目線をイリヤに戻すと、イリヤは自分の横をずっと笑顔でポンポンと叩いていた

つまりはここに座れ、と

 

少し迷った後に仕方ないなぁ、と指示された通りに横に座ればイリヤは顔を綻ばせてこちらに体重を預けてきた

 

「……取り敢えず渡したいものがあるんだ。」

 

そう話を切り出して持ってきたものをイリヤに手渡す

 

「これって……パスポートと……手紙?」

 

「両方とも爺さん、つまり切嗣のだ。

昨日屋敷を探し回って見つけて来た。」

 

「ふーん?」

 

イリヤは手渡された2つの内、先にパスポートを開いてその中を見ていく

切嗣の顔写真と個人情報の載っているページを開くとページをめくっていた手が止まる

表情は……かなり複雑そうだ

 

「パスポートで見て欲しいのはその後ろ、渡航記録の残ってるページだ。」

 

促されるままにイリヤはページを捲る

そこにあるのは渡航先に着いた時に押されるスタンプ

 

「……これ……」

 

押されていたのは全部イリヤの祖国、ドイツのスタンプだ

数は勿論、その頻度も凄まじい

何度も何度も、何度ダメだったって諦めずにドイツを何回も訪れていた

帰ってくるたびに憔悴しては体を癒すのも最低限でずっとイリヤを迎えに行ってたんだ

 

「俺には仕事に行くって言ってたのに、本当はイリヤを何回も迎えに行ってたんだ。

どうして爺さんがイリヤの前に行けなかったのかは流石に分からないけどさ……多分、その答えがそっちの手紙にあると思う。」

 

そう言って手渡したもう一つ、少し古ぼけた手紙を指さす

中は読んでいない

もしかしたら俺宛のものも入っているかもしれないが、宛先は『子供達へ』だ

まず間違いなくイリヤへの手紙も入っている筈だ

 

封を切り、中の紙を取り出す

数枚入ってるそれに軽く目を通すと、その内の2枚を手渡してくれる

 

「はい、こっちシロウ宛よ。」

 

それを受け取ると、イリヤはこちらに見向きもせずに自分宛の手紙を黙々と読み始めた

その様子を確認してから俺宛への手紙に目を向ける

 

 

 

【士郎へ

この手紙を見つけたということは魔術師としてそれなりに成長したか、あるいは舞弥が工房が必要だと判断したか、という事だね

士郎には至って普通の人生を送って欲しかった僕としてはどちらにせよあまり好ましい状況ではない

とはいえ、前者なら士郎の頑張りを無視するわけにはいかないし、後者ならそんな僕の願いと士郎の命を天秤にはかけられない

 

さて、まず士郎が魔術師として成長した時についてだ

騙すことになってしまったが僕は正確には魔術師ではなく魔術使いだから、そう魔術的に価値のある物は残せなかった

けれど、何も無いわけではない

工房内にあるもの、そして君の体に埋め込んだ騎士王の鞘、アヴァロンは正式に君に譲り渡そう

工房内にあるものの中でも1番特異的なのは起源弾という僕の魔術礼装だ

起源弾についての詳しい事は別紙に纏めておいたから後で読んでおくと良い

 

そして後者の場合、同様に工房内にあるものは全て使ってくれて構わないからどうか生き残って欲しい

卑怯な言い方になるのは重々承知だけど、どうか僕の残した道具を使う事を躊躇って僕が唯一助けられた君の命を失わないで欲しい

それと本当に危なくなったら以前街で出会ったカイという男を訪ねると良いだろう

それなりに情はあるし、他人を守れるだけの力がある男だ

きっと助けてくれる

 

 

そしてこれはお願いだ

実は君には姉がいる

僕の娘、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという子だ

仕事と嘘をついていたが、何度も僕が外国に行ってたのはあの子を迎えに行くためだった

けれど、ついぞ僕はあの子を迎えには行けなかった

 

居場所はドイツ、とある奥まった森の奥に居城を構える魔術師の一族だ

場所についても同じく別紙に纏めた

士郎、君が大人になるまで見守れなかったことに並ぶ僕の心残りだ

勿論断って貰っても構わないけど、どうかお願いしたい

そして会えたなら同封した彼女宛の手紙を届けて欲しい

 

あの子を迎えに行けなかったのは決して君を助けたから、というわけでは無いから気に病む必要は全くない

あの森は非常に危険で命の危険がある

だから本当にこのお願いは無視して貰って構わない

本当にできれば、という話だ

 

それでは士郎、最後になってしまったけど、君との出会いから一緒に住んでいた間、その全てが僕にとっては救いだった

地獄の底からになってしまうだろうけど、僕は死んでも君の事を見守っている

どうか舞弥や大河ちゃんと一緒に平和に暮らして欲しい

 

衛宮切嗣】

 

もう一枚の方は手紙に書いてあったその起源弾という魔術礼装とイリヤのいた故郷の森についてのメモのようだ

そっちは今はしまっておく

ふと手紙を読むのに集中してしまっていた事に気付いてイリヤの方を見て……驚いた

イリヤは泣いていた

声を上げず、顔は顰めず微笑みながら

静かに静かに……涙を流していた

 

「イリヤ……?」

 

「シロウ、ううんなんでもない。

なんでもないの。

…………私も間違えてたのね。

キリツグの事、信じ切れなかった。

間違った事をしなくても、捻じ曲がって結果だけ間違ってしまう事だってあるのにね。」

 

それは……多分その通りなのだろう

過程と結果、その片方は正解を選べても、その両方が正解になるとは限らない

そうじゃなかったら、この世の悲劇はもう少し少なかった筈だ

イリヤがベッドから降りて俺と向かい合う

そして……

 

「シロウ……ごめんなさい!

私、お姉ちゃんなのにシロウの事殺そうとしちゃってた。

もっと考えなきゃいけなかったのに考えるのをやめてた。

お母様のふりをしていた穢れた聖杯を、お母様そのものだと信じちゃってた。

もっと良く繋がりを見てたら分かってたかもしれないのに、アインツベルンが聖杯を完成させるためだけに何をしていたか知ってたのに、疑うことすらしなかった。

 

私……キリツグの悪い所に似ちゃってたのかな。

結局、都合の良い所だけ見て、悪い所は無視してたんだ。

ダメな……お姉ちゃんだよね。」

 

謝った

そこには色々な後悔が混じっていて……皮肉げに自分の事を嗤っていた

 

「そんな事……ないとは言えない。

けど、俺にもダメな所は幾つもある。

正義の味方っていう爺さんの夢を継いで、けどその本質は考えなかった。

魔術もダメ、聖杯戦争も命の取り合いをしたくない甘ちゃんだって遠坂もセイバーに叱られた。

 

けどな、イリヤ。

ダメな所は誰にだってある。

だから互いに支え合って生きていくんだ。

イリヤのダメな所は俺が、俺のダメな所はイリヤが埋め合わせる。

それでもまだダメな所は残るかもしれない。

なら、セイバーや遠坂、カイさん、イリヤならバーサーカーやあのメイドの2人かな。

皆で皆のダメな所をカバーしあうんだ。

 

だからまず、俺はこの間の事は許すよ。

そして家族としてイリヤの事、何があっても助ける。

後でセイバーに遠坂、アーチャーにも一緒に謝りに行って、許して貰ったらそれであの日の夜のことは終わりだ。

そしたらもう俺たちは英雄王と大聖杯を止める仲間で俺とイリヤは家族だ。

だから、イリヤも何も知らなかった俺と、イリヤを迎えに行けなかった爺さんの事、許してくれるか?」

 

話している最中にベッドから立ち上がって、イリヤの目の前に膝をついて目線を合わせる

姉、とは言うけれどイリヤは外見も、そして内面もずっと幼い様に見える

勿論、幼いところだけじゃないのは教会で襲われた時に嫌ってほど理解させられた

けれど、魔術師ではない素の、イリヤスフィールという1人の女の子はきっとまだ幼いのだろう

だから俺の言葉も自然と子供を諭す様なものになる

そして俺はイリヤの事を許して……イリヤに俺と爺さんの間違いについて許して貰おうとすれば

……返答は力一杯の抱擁だった

 

 

 

 

 

 

 

…………蛇足ではあるが、この後2人で部屋を出た時、イリヤの泣いてた跡をセラさんに見られて軽い修羅場に陥ることになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市、墓地

教会に併設された西洋風の墓地ではなく、街中にある和風の墓地だ

目の前にある墓標に刻まれた文字は衛宮切嗣

かつて2度、俺が共に戦った男の名前だ

 

「……死者に餞を……なんて性格じゃなかったんだがなぁ……

魔術師殺し、衛宮切嗣。

お前もお前で色々と聖杯戦争に対して準備していたみたいだけど……それは50年後、つまり本来の周期の聖杯戦争に対してだったらしいな。

本当に呆れるくらい、間と運の悪い奴だなお前は。

まあ、心配はいらない。

お前はついぞ認めなかったけど、俺個人としてはお前は戦友に他ならない。

結局、10年前も敵対はせずに終わったしな。

だから戦友としてお前のやり残した事は俺たち家族が生きる為、そのついでに終わらせておいてやるよ。

 

何十年後…………いや何百年後の可能性もあるのか。

とにかく、死んだら俺も地獄行きだろうからな、そっちで首を長くして待ってろよ。

土産話なら幾らでも持って行けそうだ。

お前の娘と息子の世話、聖杯戦争の後始末、その他諸々への対価は勝手に貰ってく。

 

じゃあな衛宮切嗣。

死んだらその辛気臭い面拝みに行ってやるよ。」

 

線香の代わりにタバコを

花束の代わりに空砲を……といきたかったが流石にそこはやめておく

まあ、この聖杯戦争の終結そのものが奴にとっては何よりの餞になるだろうさ

らしくない事をした自覚はあるが、これもまあ俺なりのケジメだ

この10年、肉体は兎も角、精神、魂は鈍ったと言っても過言ではない

だからこのケジメで、死者の願いを勝手に背負って精神の起爆剤とする

そうなりゃ魂も肉体と精神に引っ張られて戻ってくるだろう

 

「我ながら面倒な起源と呪いの組み合わせを背負ったもんだ……」

 

携帯灰皿にタバコを押し付け、火を消す

墓標に残ったタバコだけがゆっくりと煙を吐き出し続けていた

 

決戦まで……あと少し




イリヤ宛の手紙に何が書いてあったか
それは秘密です
原作だとイリヤはルートが削除されたせいで、どのルートでもなんか有耶無耶の内に死ぬか、味方側に回るかしてたけど、本当の意味でイリヤを救えるのは切嗣に他ならないと思うんだ

だから今回のMVPは切嗣
やったねケリィ!
死んだ後になって漸くパーフェクトコミュニケーションが出来たよ!

さて、次回からは最終決戦かな
猶予はあくまで猶予、それ以前に準備が出来たなら攻め込むのは普通です

それと最後のカイについて
第四次聖杯戦争の最終決戦、本来残ったのは正義の味方()と外道神父だよ?
そこに割り込ませるならそのキャラに歪みを持たせないわけにはいかないじゃん?
違いがあるとすれば自分で理解出来てた事と、そこそこ自己供給が出来てた事かな
因みに、その歪みに対するヒントは既に出尽くしてるよ

それでは感想、評価お待ちしています
はぁ……ここから怒涛の戦闘描写が待ってるのか……
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